オトモの枠にウマ娘があるとしたら[凍結]   作:つヴぁるnet

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第5話

セイウンスカイは雲の上にいた。

 

今日はとても幸せなことがあったから。

 

彼から貰った極彩色の羽根の如く、天に登るような気持ちがあったから。

 

そして、その雲の上に誰かいる。

 

 

彼だ。

 

 

青雲と共に流れる雨雲の様なあの人だ。

 

 

感情が膨れ上がる。

 

 

耳が立つ。

 

 

尻尾が落ち着かない。

 

 

鼓動がうるさい。

 

 

青雲が震える。

 

 

 

「あ! あ、アマグ__え?」

 

 

 

誰かがいる。

 

あの人の隣に誰かがいる。

 

 

そして青雲が黒く濁る感覚。

 

 

 

エ?

 

ダレナノ?

 

ダレダ?

 

ナゼトナリニイル?

 

ソコハワタシノダヨ?

 

 

 

 

 

しかし…

 

そこにいたのは見知った顔のウマ娘。

 

その子は…

 

 

 

 

「え? ス、スペシャル…ウィーク?」

 

 

 

「…」

 

 

 

「なんで? あなたがアマグモの隣にいるの?」

 

 

 

「…」

 

 

 

 

彼女は何も語らない。

 

 

 

それが少しイラッとした。

 

 

 

そのトレーナーはアマグモだ。

 

 

 

セイウンスカイが隣に立つべき人だ。

 

 

 

すると彼女からボソボソと声が聞こえる。

 

 

 

 

 

 

「………ま、せん…」

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「 あ げ ま せ ん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゃーー!!!」

 

 

「ぐはぁっ!? が、がぁぁ…ウマ娘の、足、やべぇ……ぐふっ」

 

 

「…………へ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、言うことがあってだな、茶の間で二度寝中のあいつに近づくことをしばらくやめようか考えている…てか、セイウンスカイがまた曇りそうになっているんだが、あの子の天候荒れすぎでは?」

 

 

「へー、なんか嫌な夢でも見たんですかね? でもアマグモさんの見立てだとスカイさんはいつも通りなんですよね? なら大丈夫ですよ!」

 

 

「随分と軽いなスペシャルウィーク? まぁ、昨日よりは爽快だから大丈夫だろう。 いつまでもクヨクヨしてるような子じゃ無いからそのうち『青い空の様にセイウンスカイだよ〜』ってフワフワしてくれるだろう」

 

 

「はい! ……あ、そろそろ私行かないと! あ、あとさっきからアマグモさんが見てるこのお団子はトレーナーさんのお団子なのであげませんよ?」

 

 

「いや、自分のあるから」

 

 

 

何故か知らないけど一瞬だけヒヤッとしたのは名前にスペシャルって文字が入ってるからか? それならテイオーが帝王なら…いや、まず素行が帝王らしからので、そうでも無いなうん。

 

そんなくだらない事を考えながらヨモギちゃんのお団子を食べているとまもなく約束の時間だ。

 

そろそろ向かうか。

 

 

さて、何が一体約束の時間なのか?

 

それは…

 

 

「ハモンさん、こんにちは」

 

「来たなハンター、時間ぴったりだ」

 

 

カムラの里1番の加工屋であるハモンさん。

 

若い頃はカムラの里のハンターとして活躍し、50年前の百竜夜行を乗り切った強者。 また仕留めるに到らなかったにせよマガイマガドと言われるやばいモンスターと一戦交えては生きて帰ってきたりと様々な武勇伝を持っている。 元々加工屋としての才能もあり、戦線を引いて裏方でハンターを支えているカムラの里のいぶし銀だ。

 

さて、ハンターのオレが加工屋のハモンに話しかけるのはただ一つ。

 

 

「受け取れ"闘士の剣"だ。 ハンターナイフを強化した武器だ。 一人前のハンターが使う事で価値を発揮する。 今のアマグモなら相応しいだろう」

 

 

「ありがとうございます。 あと俺は一人前なんですね」

 

 

「ワシから見たらな。 お主は幾度なく死線を超えた狩人の目をしている。 その右の手のひらの厚さも、本来なら片手剣では無い武器を使ってきたのだろう」

 

 

「!……そんなことまで分かるならハモンさんの目利きは本物ですよ。 ええ、俺が使っていたのは片手剣ではありません。 しかし今は回収班ターとしての役割を果たす故に片手剣が適任だと判断したまでです。 それだけの話ですよ」

 

 

「そうか。 それもまた助かる役割よ。 加工屋として武器は大事にしてもらいたい思いだ。 お主の様なハンターがいるからこそ手に馴染んだ最高な武器が帰ってくる。 里を、頼んだぞ」

 

 

「わかりました」

 

 

そう言ってハモンさんは加工中の武器をジャリジャリと研いで集中し始める。

 

俺は我が家まで歩きながらハンターナイフを超えた闘士の剣を軽く振って確かめる。

 

うん、盾の重量が丁度いい。

 

それに殴りやすいように強固されている。

 

ありがたい。

 

 

「ただいまセイウンスカ……おや?」

 

 

 

セイウンスカイのほかに誰かの靴がある。

 

お客さんだろうか? 茶の間で確認すると…

 

 

「アマグモさん、お邪魔しています」

 

「お邪魔してますわ」

 

 

一人はオトモ広場が好きなウマ娘だ。 その子は…

 

 

 

「グラスワンダーか。 それと…」

 

 

そしてもう一人のウマ娘。 綺麗に手入れされたやや長めの髪に、青色の耳当て。 そして傘鳥アケノシルムの素材を明るい緑色に塗装して作られた装衣で身なりを整えられているその子は…

 

 

「キングヘイローも居るのか。 珍しいな?」

 

 

「この家に来るのは確かにそうですわね」

 

「ふふっ、私たちは少しセイウンスカイさんと話をしたくて来ました」

 

「ええ、最近元気が無いと聞きませて、少しだけ心配になりましたですのよ?」

 

「もう、私はいつも通りだよ〜? この通り、お昼寝を邪魔されて少しだけ不機嫌なセイウンスカイだ〜」

 

「あらあら? アマグモさんが帰ってくるまでソワソワしていらっしゃったのに」

 

「ぅぇ!!?」

 

「セイウンスカイ、あなた案外わかりやすい子ですわね。 これは面白い事を知りましたわ」

 

「ちょちょ! な、何言ってるのかな? ええと…ア、アマグモ! クエストとか無いのかな? 久しぶりに動きたいと言うか…」

 

 

「セイウンスカイから動きたがるとか明日は落雷でも光るのか?」

 

 

「むむむ! それって青雲たる私に対する当て付けかな〜? アマグモ〜?」

 

 

「いてててて、頬を引っ張るな、やめい」

 

 

こちらの頬っぺたを引っ張って抗議するセイウンスカイに俺は抵抗するけどなんか今日はしぶとい。 いつもなら緩い感じなのに、今日は少しお堅い感じだ。 あとほんのりとセイウンスカイの顔が赤いのは気のせいでは無い…?

 

 

「ふふふっ、どうやら元気みたいですね、キングヘイローさん」

 

「そうですわね。 邪魔者は帰りましょうか」

 

 

「なっ…君たち、二人は! もう、帰った帰った。 今は気持ちよくお昼寝できる時間なんだよ。 来るなら別の日にしてよね」

 

 

「ふふふっ、そういたしますわ。 では、アマグモさん、お邪魔しましたわ」

 

「それじゃあねスカイ。 あとセイウンスカイのトレーナーさんもスカイをよろしくお願いしますわ」

 

 

そう言って家を後にした二人。 そんなセイウンスカイはテーブルに顔を乗せると少しプクーと膨れ面なり、二人をいつまでも牽制していた。 うーん、なんか今日はいつものセイウンスカイらしからぬ、そんな感じだ。 今日の二度寝から目覚める時の鳩尾蹴りと言い、どこか少しだけ余裕が無い。 しかしセイウンスカイは3日間程走ってないからエネルギーが溜まっているのだろう。 人間が日光を浴びて免疫つけるように、ウマ娘も走って体の衰えを抑える。 精神的にも肉体的にもケアするならウマ娘は走らないとダメだ。

 

 

それなら…

 

 

 

「セイウンスカイ、今から砂漠に行くぞ」

 

「え? 唐突にどうしたの?」

 

「ちょっと依頼があってな。 お団子屋さんのヨモギちゃんからデルクスの素材を求められているんだ。 お団子の開発に使いたいらしく、数匹ほど狩猟しておきたい。 あと表向き期限外となった武器の紛失依頼も探しに行く」

 

「期限外??」

 

「依頼ってのは公式上だと一定期間設けられるが、優先順位が低い依頼は新規として張り出される他の依頼に枠を譲らないとならないため、表向き抹消されてしまうけれど大雑把な依頼として『サブ・ターゲット』や『フリークエスト』と言う形にスライドされ、その依頼は裏向きとして無期限として続くんだよ」

 

「え、ええと……?」

 

「デザートは別腹」

 

「えー、それだとますますわからないよ」

 

「冗談だよ。 それでな、回収班ターでも『フリークエスト』と言う形でも紛失した武器を探して欲しいって依頼が出るんだよ。 それが残っているかも怪しいけど、見つけれてくれたなら回収して欲しい、そんな片手間の話が出るわけだ」

 

「ふーん。 じゃあ基本的にはヨモギちゃんの依頼なんだね? それで寄り道する感じって事?」

 

「その認識でいいよ。 本当は滅多に受けないけど、俺個人として向かいたいところ……まぁ、本当の寄り道って奴だな。 その俺の寄り道に、フリークエストとして寄り道するぞって話を」

 

「え、ええ? ええ?? ちょ、ちょっと待って、またわかんなくなっちゃたよ〜? 寄り道の寄り道で? ええと…」

 

「あっははは! まぁ、あまり深く考えるな。 セイウンスカイは俺と来て欲しいって事。 それだけのはなし」

 

「!……あ、うん、そうか。 うん、いいよ〜、アマグモについて行くね」

 

「じゃあ準備しよう」

 

 

 

装備を確認して、アイテムも持ち込む。

 

カムラの里から砂漠への移動は半刻程度だろうけど、砂漠についてからは3日程の期間を過ごす可能がある。 うまく音爆弾を引っ掛けれるならデルクスは簡単に狩猟できるし、今はディアブロスも暴れてない時期だ。 ティガレックスにさえ気をつければ今の砂漠はそこそこ安全だろう。

 

 

 

 

 

「ふーん? お、俺と来て欲しい……か。 アマグモが私に、俺と来て欲しいと。 ……え、えへへ。 も、もう…し、仕方ないなぁ。 ならこのセイウンスカイがついて行こうでは無いか〜、ふふ〜ん」

 

 

 

なんか楽しく独り言を呟いてるが今日のセイウンスカイは元気だ。

 

いつも通り、ゆるりとした調子のクエストになりそうだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハルウララ!頑張りまーす!」

 

 

「いや、君はもうカムラの里に帰るんじゃ無いのか?」

 

 

「おお!? そうだった! じゃあじゃあ! カムラの里に頑張って帰りますって事になるんだね! そしたら! 今日のお使いでトレーナーさんが集めた熱帯イチゴを凍らせて! それで頭をキーンとするんだよ! 楽しみだね! むふふ〜、ウララ〜」

 

 

 

なんかもうかなりいろいろやばいくらいにめちゃくちゃすごくすげぇげんきすぎる、って語彙力が溶けたくらいの言葉が似合うほどに入れ違う形でカムラの里に帰る彼女はまだまだパワフルだ。 ハルウララの|トレーナーもその元気に置いていかれてる。

 

ちなみにハルウララは良く砂漠のクエストに向かっては採取をメインで活躍する。 それはには理由がある。 彼女はウマ娘の中で特に脚が遅く、ガルクに追い抜かれてしまうくらいに遅い。 そもそも荒事は向かない性格なのでモンスターとの討伐面で無理強いできない。 不向きがあるのは仕方ないが、でも彼女にしか無い得意がある。 それは砂漠であることが条件だ。

 

彼女の真価値は砂上を駆け抜けるその脚だ。

 

ハルウララはオトモダービーの中ではかなり珍しいタイプであり、砂上や泥濘を得意とするウマ娘。 いや、言い方を変えるから砂の上でも走る速さが変わらないと言った能力だ。 まず砂漠は足がとられて動きづらい。 デルクスやディアブロスなどが潜って砂を掘り返せばさらに動きづらくなる。

 

そのため砂漠は暑いことが大変じゃ無くて、その足場の悪さが難敵である。 あのガルクでさえ砂上を走る訓練をしなければうまく走れない。 しかも条件としてそこそこ重たい装備をつけた上に、ハンターを背に乗せての疾走だ。 それならまだ重たい装備をつけた上で砂漠に足が取られない走り方を心得ているハンターの方がマシでもある。

 

そのため砂漠ってのは馬鹿にならない。

 

だがハルウララはどれだけ荷物を持っても砂漠に足が取られず、変わらない速度で駆け抜けることができる。 走る速さは遅いが、その速さが遅くなることはない。 よくわからない人からしたら、頼もしような、頼もしく無いような、そんか微妙な評価だろう。

 

しかしエリア10やエリア9と言った砂上でなければ収穫できない三つ星サボテンや熱帯イチゴと言ったクエスト中の"精算アイテム"と言われる収穫物はハルウララでなければ安定して納品できない事実がある。

 

しかも砂漠でしか収穫できない精算アイテムのサボテン系に関しては庶民の中で需要が高く、料理や美容に鑑賞など取引として非常に価値が高い。 下手したら飛竜に対して命をかけた1回分の討伐クエストより、精算アイテムを収穫する3回分の納品クエストの方がまだマジかもしれない。

 

植物なら大社跡、昆虫なら水没林、魚貝なら寒冷群島、鉱石なら溶岩洞。

 

 

そしたら砂漠なら……骨塚?

 

 

いや、本当に美味しいのは精算アイテムだろう。

 

 

 

「ハルウララ、君のトレーナーが呼んでるよ」

 

 

「あ! 本当だ! じゃあねアマグモ! またー!!」

 

 

 

 

そしてどのウマ娘よりも得意とし、どのウマ娘もハルウララに勝てないものがもう一つある。

 

それはあの元気の良さだろう。

 

これには勝てる気がしない。

 

 

 

「セイウンスカイ、行こうか」

 

 

「うん、ぼちぼち行こう。 しかしあのハルウララのトレーナーさん、めちゃくちゃ疲れていたよ。 砂漠が過酷なのは知ってるけど、あの子に元気吸われているじゃ無いかって苦笑いしていた」

 

 

「2日間って短く思うけど砂漠では長く感じるから元気ってのはそう保てない筈だ。 けど終始あの元気を継続してるとしたらハルウララの最強の武器は間違いなくそれだよ。 それに関してはどのウマ娘よりも強い」

 

 

「うん、私も本当にそう思うよね〜。 ハルウララのトレーナーさんも『あの元気にはわたしも勝てないわ…』って力なく笑ってた。 あとハルウララのトレーナーさんって女性だったんだね」

 

 

「ああ。 まだ新入りだけど砂漠でのクエストを無事に達成できるなら腕は確かだよ」

 

 

 

さて、ハルウララの話も良いがココは常にナツウララって感じの暑さが引かない土地だ。 しかし夜になると一変した寒さに切り替わる。 そのため体調管理が非常にしんどい場所であり、初めて砂漠に向かうハンターは一日研修を受けてから、向かわないとならないレベルだ。 出てくるモンスターもタフな奴ばかり。

 

実のところ激戦区と言われる火山や溶岩洞よりも砂漠の方が死亡率が高い。

 

主に体調管理が取れずに砂漠のど真ん中で焼け死ぬパターンだ。 普通に迷って死ぬパターン。 または蜃気楼を見て足を踏み外して高いところから落下するハンターや、砂地獄に巻き込まれて四方八方からデルクスに噛みちぎられた酷い死に方もある。 あと水分補給が取れずに干からびたり、特に気性がとてつもなく荒いディアブロスに殺されてしまう新人ハンターが絶えない。 砂漠デビューは新人ハンターからした大きな壁である。 俺も最初は辛かった。 無事に帰って来てからは2週間くらい敬遠したレベルで砂漠は苦手になりそうだった。 砂漠までディアブロス討伐に向かうための脚が重かったのは今でも思い出す。

 

 

 

「アマグモ、あれがデルクスだよね?」

 

 

「そうだ。 あのぴょんぴょんしてる奴がそう」

 

 

「そうなんだ。 わたしもアマグモと砂漠に来るのは3回目だけど、ここまで来たのは初めてだね」

 

 

「そうだな、基本的に荒野の辺りまでしかセイウンスカイとは来て無いな。 まぁそもそもエリア9や10で戦って武器などが紛失したとしても、砂の中に武器が沈んで飲まれたらもうそれは探せるところの話じゃないからな。 だから回収班ターとして砂漠の奥地まで向かうのは無いに等しい」

 

 

「でも今日は回収メインじゃないからここまで来たんだよね?」

 

 

「そう言うこと。 じゃあちゃっちゃデルクスが移動するポイント見極めたら音爆弾投げ込んで、それで新調した闘士の剣で試し切りと行くか」

 

 

「おお〜、頑張ってね」

 

 

「…頑張って? おめぇもがんばんだよ」

 

 

「冗談だよ〜、もう、砂漠の熱だけにカリカリしない」

 

 

「ははは、骨塚だけにカラカラ笑ってやるよ」

 

 

「なんだと〜?」

 

 

 

やっぱりセイウンスカイはこうで無いとならない。

 

それが嬉しいから砂上での移動も軽く感じる。

 

ちなみにウマ娘にも得意と不得意は存在する。 ハルウララが砂上での走り方を得意とする話をしたが、それはエルコンドルパサーも似たようなものであり、彼女も足場の悪いところでの走りが得意…いや"強い"って表現が正しいか? もちろんセイウンスカイも砂上だろうがウマ娘としての脚で駆け抜ける。

 

しかし彼女が持ち合わせるトップスピードにまでその足は至らない。 足は速いのにいつもの力が発揮されない。 どうも不安になる話だ。 かと言って走る脚が遅いわけでは無い。 だがいつものポテンシャルを発揮しようと己を無理をするならば確実に大怪我を負ってしまう。 慣れないことをして怪我するのは人間も同じ。

 

なので自然とリミッターをかけて怪我しない程度に速さを抑えているわけだ。 そこら辺は人間としての理性のコントロールと、馬としての野生の本能がそうさせている。

 

一応「全力で走れ!」とオーダーを出せばトレーナーに応えようとウマ娘は喜んでリミッターを外して駆けようとする。 もちろんそんな事はしてならないが、彼女達は人間を助けるために現れた。 例え、過酷なオーダーの中でそれに対する"適性"が無かろうともウマ娘は応えるために走る。 だからトレーナーと慕って随従するウマ娘をこちらも理解して彼女達を頼り、そして頼らせさせないとならない。

 

 

 

「セイウンスカイ!」

 

 

「あいよ〜!」

 

 

 

セイウンスカイはデルクスへ先回りして音爆弾を投げる。 音の衝撃に驚いたデルクスは砂上から飛び上がり、ピチピチと暴れている。 俺は片手剣を構えてデルクスに振り下ろし、流れるように次のデルクスを斬りつける。 うん、カムラノ鉄片刃とは違ってなかなかに使いやすい。 そもそもハンターナイフが原点だから当たり前か。 実際のところ闘士の剣とは言っても形はハンターナイフで、少しだけ重量を弄っただけのオーダーメイドだ。 使いやすさは抜群である。

 

 

「あ、デルクスが何匹か逃げたよ」

 

「2匹倒したし充分だ。 安全なところまで引っ張って解体する」

 

「ところでヨモギちゃんはこれをお団子に混ぜるの?」

 

「らしいぞ。 まぁデルクスは乾きやすいからな。 お団子の余分な水気をとって少し何かするんじゃ無いのか? 例えば表面はカリッと、中はもっちりとか」

 

「おお〜、ぜひ食べたいね〜」

 

 

 

デルクスの解体を終えて持ち運べる形にする。 それを近くのサブキャンプに持っていき、フクズクを飛ばしてサインを出す。

 

さて…

 

 

 

「ごはんを釣り上げるぞ」

 

「おお! 釣りなら任せて〜」

 

「君寝ちゃうからダメ」

 

「え〜」

 

「冗談だ。 サシミウオ釣って欲しい」

 

「わかった〜、スカイちゃんサシミウオをテイクオフしちゃうね〜」

 

「マヤノ補正掛かってるし中途半端に期待できそう」

 

「なんかそれバカにされてる?」

 

「そんな事は(ぎょ)ざいません」

 

(うお)っと、これは寒い寒い…」

 

「さーて、何から調理しようかな」

 

「おいこら〜、逃げんな〜、アマグモ〜!」

 

 

そんな感じにセイウンスカイが近くの池で釣り糸を垂らしてサシミウオを釣り上げた。 味が美味しい上に失った塩分を補給してくれる素晴らしい魚である。 その間に俺は持ってきた干し肉の携帯食料をトウモロコシの油で炒めてこんがり焼きながら、途中採取した三つ星サボテンをスライスする。 セイウンスカイが釣り上げたサシミウオを〆るとそれを薄く解体した。 そして焼いた携帯食料と、スライスした三つ星サボテン、サシミウオの三つを挟んで……それを食べる。

 

 

パクッ

 

 

 

「「うおぉぉぉ!! うまいッッ!!」」

 

 

 

やばい、なにこれ、最高すぎる。

 

 

 

「美味そうニャ」

 

 

 

食べたいると傍から声がする。

 

声の方向に顔を向けると…

 

 

 

「んん? ……おお!? お前ニャン三郎じゃないか!? 久しぶりだな!!」

 

 

「ご無沙汰しているにゃ、アマグモ」

 

 

 

樽を転がして現れたのは運び屋のアイルー。

 

ユクモ村で代表する運び屋の"ニャン次郎"ってユクモの三度笠が似合うアイルーがいるが、その次男であるニャン三郎ってアイルーもいる。 兄弟に憧れて運び屋に職をつけているのだ。 そして当然ながらニャン三郎はユクモ村出身のアイルーである。

 

いやー、久しぶりだな。

 

 

 

「あ、食べていく? 美味いぞ」

 

 

「あやかってもいいかニャ?」

 

 

「いいぞ。 あ、セイウンスカイ、このアイルーはニャン三郎って名前で砂漠の運搬を担当している。 オフ中は温泉で良く話していた」

 

「そうなんだ〜。 わたしは青い空のようにセイウンスカイだよ〜」

 

 

「よろしくニャ」

 

 

ニャン三郎を交えて3人でお昼ごはん。

 

あまり長居できないがそれでも軽く話が弾む。

 

そんな会話の中で…

 

 

「そういや聞いてニャ! あのノッポなウマ娘、火山の落石を利用してティガレックスを倒したらしいにゃ!」

 

 

 

ノッポなウマ娘?

 

たしか…

 

 

「ええと、もしかしくなくとも…あのウマ娘か?」

 

 

「うにゃ。 話ではなニャ……第13惑星から受信した大砲モロコシがハリケンアッパーの秘術を暴くとハチミツ星人の副隊長を忍耐の種と特産キノコの関節を使って頭皮にぶちまけると次に斜め45°からドロップキックを冷却中のガンランスにぶち当ててウマ娘の左足の謎を改名したらユクモ温泉で茹でたゆで卵を人質に取りながらジャギィに俺の名を言ってみろと脅迫したあとピッケルを持ってルドロスの調教をブナハブラ先輩とケルビ二等兵に任せてから生肉にラインハルトくんと名付けてそれをマックイーンに任せると畑で収穫した長ネギに聖剣ドンパッチソードと名付けで火山に殴り込みに向かってからラングラトラとワンコそばロッククライムゲームを右手縛りで楽しんだのちに落石でティガレックスを倒したらしい」

 

 

「待て、待て、おい待て、意味が分からん」

 

「うん、わたしもなにがなんだかね〜」

 

 

 

なにが起きてるかわからないし、脚色を加えるにしろどうしてその発想に至るのかわからないが、真面目に考えるだけ無駄なことを悟る。

 

それを代弁するようにニャン三郎がため息をつく。

 

 

 

「まぁ、仕方ないにゃ…」

 

 

 

 

 

そう、仕方ないのだ。

 

 

だって…

 

 

 

 

 

 

「「「ゴルシだし」」」

 

 

 

 

 

 

お腹も、意見も、満たされたお昼だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっと、ストップだ。 エリア6にボルボロスいるじゃねーか。 うーん、どうしようかな…」

 

 

「でもあのボルボロスから得体素材があるんだよね?」

 

 

「正しくは"落とし物"と言う方が正しいかな? だから落とし物として砂漠のどこかにあったらラッキーだなの感覚でここら辺を徘徊する個人的な理由だったが、まさか本人様ご登場だとは少し予定外だ。 でも、そうだな、一度かちあうか」

 

 

「え、珍しく戦うんだ!?」

 

 

「必要とあらば俺は武器を持って戦うよ。 だから、セイウンスカイは巻き込まれないように見てて」

 

 

俺は翔蟲を確認して、さらに野生の翔蟲が飛んでそうなポイントも再確認する。

 

すると袖をチョンとつまんで引っ張れたような…

 

いや、セイウンスカイが摘んでいた。

 

 

 

「ぁ……ッ、その! アマグモ!」

 

「?」

 

「わ、わたしに出来ることは無い……かな?」

 

 

 

セイウンスカイの耳が少しだけ垂れ落ちる。 恐らくこの言葉を言うのに勇気と恐怖を持ったのだろう。 そして彼女は"逃げ"のウマ娘であり、戦闘に向いたウマ娘では無い。 "差し"とは違って加入するスタイルは向かないのだ。 一応"先行"も出来るがそれでもその脚を使ってモンスターを引きつけたり誘導するに特化した能力のみ。

 

そんな彼女が戦闘に関わる事はできない。

 

けど…

 

 

「じゃあさ…エンエンクを使ってエリア5までボルボロスを引き連れてくれないか?」

 

 

「!」

 

 

「そこで泥遊びをさせてから、ボルボロスと戦い、わざと怒らせて活性化させて、欲しい素材をいただく。 このプランで行こう」

 

 

「じゃ、じゃあ!」

 

 

「頼んだよウマ娘」

 

 

「ッ〜! う、うん! もちろんだよ〜、任された〜! このセイウンスカイがしっかり雨雲の中に巻き込むから!」

 

 

「ああ、嵐の前の静けさの青雲に心躍るよ」

 

 

 

俺は怪力の種を齧りながらエリア5に移動して、セイウンスカイはエリア6に駆ける。

 

さっそく作戦は開始された。

 

 

 

「モンスター! こっちだよ〜!」

 

 

「グォォォオオオ!!」

 

 

 

セイウンスカイはエンエンクを使って自分の体に振りまき、さらにエンエンクのフェロモンを塗りつけた投げナイフをボルボロスに投げると、ボルボロスはセイウンスカイを発覚して大声をあげる。 セイウンスカイはよく聞こえる耳を伏せながらしっかり足を走らせる。

 

ボルボロスもセイウンスカイを追いかけて、追いかけられるセイウンスカイは逃げに徹する。

 

逃げのウマ娘としての能力いま発揮される。

 

あまり本気で走ればボルボロスは見失ってしまうだろう。

 

だがここは砂漠でやや走るには慣れない荒地だ。

 

しかし駆ける脚が軽く、胸の奥は高調する。

 

それはセイウンスカイがトレーナーのオーダーに応える気持ちが強いからこそだった。

 

 

 

でも俺は知らない。

 

セイウンスカイはアマグモだからその力が満遍なく発揮されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしはセイウンスカイ。

 

彼の『オトモダービー』として随従する。

 

彼は…

 

いや、トレーナー(ハンター)であるアマグモはとても良い人で、わたしの自由とこの陽気さを受け止めてくれる。

 

最初は百竜夜行を乗り越える同じ目的の上で、それでウマ娘として人間を助ける、その程度だった。

 

でも彼と時間をかけて共に居るうちにそれ以上の物で満たされる。

 

助ける関係と、助けられる関係。

 

これだけを認知していれば充分。

 

もちろん仲良くして、それで苦楽に生きるのも良い事だ。

 

 

でも最近は…

 

アマグモがとても……良いと思って。

 

 

うぅ〜、言葉にすると面映いなぁ〜

 

 

ふふふ、なんだからしくないね。

 

 

でも、彼に応えたいが強くなってるから、この脚でどれだけをアマグモに捧げれるのか、自分でも不思議なくらいに気持ちが大きい。

 

 

だから、その時に限ってわたしはおやすみベアーを握りしめたラージャンのアクシデントに身を震わせて、それでアマグモに悲しい思いをさせそうに…いや、させてしまった。

 

本当はあのモンスターが怖くて、それで脚が言う事を効くのか心配した。

 

でもウマ娘は『応える』が存在意義だ。

 

だからアマグモに応えようとして、空回った。

 

さらにわたしは崖から落ち、そしてアマグモはわたしを助け、腕に引きちぎれるような痛みを走らせた。 アマグモはわたしを命懸けで助けてくれた。 けど痛みにガタガタと震わせる腕は本当に痛そうで、でもわたしを絶対に落とすまいと彼は堪えて、そして二人は助かった。

 

そのあと青雲らしからぬ大雨が眼から溢れて、またそこでアマグモに慰められて、自分が恥ずかしくて、情けなくて、どうしようもなかった。 無理させまいと彼はわたしを家に置いて、一人でクエストに向かい、なんとか気持ちを取り戻そうとお留守番をしていた二日間を頑張った。

 

そして彼が帰ってくる気がしたからお風呂を温めたから本当に帰ってきて、少しでも報いたいから気持ちを取り戻したフリをして、それで体をほぐしてあげようと頑張った。 でも腕を見て震えがまた出てしまう。 ウマ娘は怪我に敏感だから、アマグモの腕を見て泣きそうになった。

 

彼は困ったようにする。

 

わたしは青雲なのに曇らせてばかりだ。

 

でも彼はたまに雨が降らないとならないと言う。

 

 

でも元気つけるためにアマグモは証明した。

 

 

極彩色の艶羽根 と言われる超が付くほどの高級品素材で、それでわざわざわたしのために持ってきてくれた。

 

引きちぎれそうになったこの腕が、脆くて仕方ない人間の腕だけど、それでも自分よりも大きくて強い亜種のモンスターを覆して、しかもその理由がわたしを元気つけるためにだ…

 

 

 

アマグモ…

 

アマグモ……ッッ!

 

 

 

わたしは、あなたの青雲でいたい!

 

 

そしてあなたの雨雲に潤わされたい!!

 

 

だから!

 

 

あなたのために応える!

 

証明してソレを応えてくれたあなたに!

 

 

わたしは…!!

 

わたしの出来るこの脚で雨雲の上を駆けたい!!

 

 

 

「アマグモー!!」

 

 

 

 

この砂漠に広がる青雲に、青雲の声を広げる、

 

 

 

 

 

「よくやった、セイウンスカイ」

 

 

 

「!!」

 

 

 

 

彼はボルボロスの通る場所に飛び降りた。

 

 

そして、その盾を強く握ると……狩人の眼が開く。

 

 

 

「!?」

 

 

 

モンスターをハンターするためだけに実行するようなその眼。

 

潜めていただろう威圧感。

 

いつもとは見たことない姿にわたしは走る足を止めてしまいそうになる。

 

 

 

 

 

__雨雲が荒れている。

 

 

 

 

 

 

そう思わせるような一撃を振り下ろした。

 

 

 

 

「グォォォオオオァァァ!!!??」

 

 

 

あの巨体を持ってボルボロスにものすごい大音を響かせて殴り倒したアマグモの姿。

 

あまりにも強力な裏拳から放たれる盾の打撃にボルボロスは自分よりも小さな人間に対してのけぞった。

 

 

 

「さぁ、一狩り行こうぜ…」

 

 

「グォォオ…! グォォォオオオ!!!」

 

 

 

わたしは安全な場所に退避する。

 

そしてアマグモとボルボロスは戦う。

 

ボルボロスは思ったよりも動きが早い。

 

しかしアマグモは難なく攻撃を捌く。

 

盾だけではなく片手剣でも受け流す。

 

 

 

「すごい…」

 

 

 

わたしは、ウマ娘は武器が使えない。

 

でもなんとなく凄いことがわかる。

 

アマグモは少し違うんだ。

 

片手剣の戦いじゃない。 まるで…

 

 

 

「お侍さんみたい…」

 

 

 

大きく踏み込みながら放たれる回転の一撃。

 

片手剣になにかエネルギーが備わっている?

 

いや、なんとなくそう見えるだけ…

 

薬やアイテムを使った様子はない。

 

ただ肉を食らい付いた"鬼"が備わったような…

 

広い範囲を一瞬で裂いてしまう大回転斬り。

 

 

 

「あ…」

 

 

 

ボルボロスは突進を回避されて泥水のところまで転げる。

 

しかし突進はフェイクでそのまま泥遊びを始めた。

 

なかなかに賢いことをしている。

 

しかしアマグモは「やっとか」と言って砥石で片手剣を研いでボルボロスを待つ。

 

そしてボルボロスは興奮気味になり、泥の色が少しだけ濃くなった。

 

アマグモはチャンスとばかりに詰め寄り、ボルボロスは尻尾を薙ぎ払って迎撃するが、目の前には閃光玉が弾ける。

 

急な光にボルボロス目が眩んで怯むと、アマグモをなにかを投げた。

 

あれは環境生物のイチモクラブだ。

 

それをボルボロスの顎下から風が噴射する。

 

そして…

 

 

 

「気炎万丈!!」

 

 

 

盾を構えながらイチモクラブが吹き出す部分まで滑り込み、ボルボロスの顎下を強烈にかちあげた。

 

 

 

「ガァ…!!? …ァ……ァグ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「すごい…」

 

 

 

青雲に向けられて放たれるアマグモの一撃。

 

ボルボロスはめまいを起こしながら…

 

その巨大を地面に倒した。

 

 

 

 

 

 

つづく




スペちゃんの「あげません!」が凄い中毒になっている。
ヨヨヨ〜(涙)


若干セイウンスカイの口調安定しないけど
青雲じゃない雨雲な、シットリスカイも良くない?良くなくない?

あとアマグモくんなろう系の主人公ムーブしてる。
大丈夫? 無意識にハーレムしてしまわない?
セイウンスカイは大丈夫?? なんか曇ってきたよ?




あとゴルシはゴルシなので、なにも考えるな。
いいね?


ではまた
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