オトモの枠にウマ娘があるとしたら[凍結]   作:つヴぁるnet

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第9話

 

 

体が痛い。

 

 

 

足は付いてる?

 

 

 

手は残ってる?

 

 

 

頭は動いてるか?

 

 

 

眼は見えているか?

 

 

 

脳はまだ生きてるか?

 

 

 

俺はまだ戦えるのか?

 

 

 

 

「ゼェ…ゼェテ……死んで…たまるか…ゼェ……絶対に…死ねない……死にたくは……死にたく……」

 

 

 

死にたく『ない』まで言い出せばそこで張ってきた虚栄は欠如してしまう。

 

俺はそれを堪えて、誤魔化すように、鬼人薬と硬化薬を飲んで、感覚を麻痺させる。

 

力が体に染み渡る。

 

人間の脆さを鬼で誤魔化す。

 

悲鳴をあげる体を忘れさせる。

 

 

……味はしないな。

 

繋ぐように飲み続けたから。

 

でも飲む量には困らない。

 

生憎この場所は虫や木の実や種で溢れているから調合の素材には困らない。

 

 

だがモンスターも溢れている。

 

何よりここは狩猟環境が不安定だから。

 

けれど、それを承知の上で乗り込んだ。

 

 

 

「もう、4日目だ……救助に、期待なんかしない…」

 

 

 

最初はただの採取クエストだった。

 

 

しかし大嵐が起きた。

 

 

何日も収まらない大嵐で荒れ続ける。

 

 

小型モンスターは隠れて雨風を凌ぐ。

 

 

俺も隠れていた。

 

 

だが"奴"はこの大嵐の中でも俺を探す。

 

 

 

「左目と、左耳と、左首と、左足と、左前足は、4日掛けてズタズタにしてやった……勝機はあるさ…ゲッホ……ぐっ…!」

 

 

 

生捕にしたサシミウオの頭を叩き斬り、その身にかじりついて、少しでも多く秘薬を摂取しようと、混ぜて、それを体に流し込む。

 

 

「んぐぅッッ…!? おえええ"え"…が、が……ごはっ…」

 

 

 

秘薬は万能で、瞬く間に傷を癒す。

 

皮膚に塗り込むことで出血などの傷は塞がり、飲むことで体内の出血を抑えてしまう。

 

治癒力も高めて助けてくれる強力な代物。

 

それでも薬には変わりない。

 

過剰に薬を取ると言うのは危険だ。

 

クエスト中でもその過剰摂取を抑えるためにハンターは持ち込む数を抑えてくるのだ。

 

 

 

「けっほ……くっ…」

 

 

 

体が俺にこれ以上は秘薬を飲むなと訴える。

 

数日続けてこの状態だ。

 

でも体は薬を欲して、脳が薬を拒否する。

 

しかしこのままでは死んでしまう。

 

そもそも既に体が千切れてもおかしくないくらいだ。

 

そのため体の裂傷を癒してくれるサシミウオを食べて、それを秘薬で強引に治す。

 

活力剤も飲み物代わりに喉に流し、染み渡るこの感覚で体の悲鳴を麻痺させる。

 

痛みも、恐怖心も、震える体も、騙す。

 

死ねない。

 

死んでたまるか。

 

 

 

「もうすぐ晴れる…な…」

 

 

今は夜だが…

 

ああ、綺麗な月が見えるだろ。

 

今日は満月かな?

 

それが最後の日になるのかもしれない…

 

 

 

「そんなの、関係無いな…はは…」

 

 

真夜中でも晴れることで視界が良好になり、音もよく聞こえて戦いやすい。

 

しかしそれはモンスターも同じことだ。

 

人間よりも嗅覚や、聴覚や、視覚など、優れている化け物はいくらでも存在する。

 

フィールドの天候が好条件だからと言ってハンターが一方的に勝ることなど考えない。

 

だから今この大嵐は俺を追い続けるあのモンスターから活かしてくれている。

 

 

「はっ…この大嵐の所為でこんな酷い目にあっているけどな…皮肉なことだ…」

 

 

サシミウオで腹が満たされたのかわからない。

 

体がどのくらい正常なのかもわからない。

 

濁った水面に映る俺の顔は当てにならない。

 

息を絶え絶えに、脚を引きずり、視界はぐらぐらと揺らぐ。

 

生きているのか?

 

いや、まだ俺は生きている。

 

ツタの葉を掴み取り、蜘蛛の巣を回収して、廃棄されたトラップツールを使えるところまで直した。

 

凡ゆる物を使って落とし穴を作る。

 

効果は半分以下だろう。 でもこれに全てを賭ける。

 

俺もだが、アイツもまもなく死ぬだろう。

 

 

 

「来いよ……まもなく晴れるだろ?」

 

 

 

そうすれば半殺しな俺の息遣いが聞こえるだろ?

 

心臓が、命の灯火が、よく見えるだろ?

 

 

そうだろ?

 

出てこいよ。

 

 

 

「ごく…ごくっ……ぷはぁ………おぇっ…」

 

 

もう何本目かわからない、おそらく2桁は飲み続けた鬼人薬と硬化薬を投げ捨てて、怪力の種を齧り、秘薬となる砕いたケルビの角を傷口に抉り、活力剤を半分飲んでからもう半分を首筋に掛けて、半分に折れてしまったプリンセスレイピアの片手剣を構える。

 

 

それでも奴の喉を掻っ切るなら充分だ。

 

 

 

そして、現れた。

 

 

 

 

「グルルル…」

 

 

「……」

 

 

 

俺を4日近く追い続けたそいつは威嚇する。

 

でも初対面で俺を襲った時の面影はもう無い。

 

左目が抉れて溶けており、左耳は腐食して額の骨が見えており、左首は皮膚が爛れて肉が飛び出して、左足前後はガクガクと震えて地面を引きずるから、毛が抜け落ちて骨が見え始めている。

 

 

しかし俺を殺すまで奴は死のうとしない。

 

 

その姿勢は未だに"暗殺者"を果たそうと俺を睨む。

 

 

 

 

「グォォォ……キシィィィ…」

 

 

 

 

水没林に潜む緑色の毛を持つ迅竜。

 

 

深淵の暗殺者である"ナルガクルガ亜種"はこちらの命を狙う。

 

 

そして俺の首を刈り取ろうと飛びついた。

 

 

 

「あははッ…!」

 

 

片手剣を右手に持ち替えて亜種ナルガの攻撃を回避する。

 

ナルガクルガ相手に見てから回避など出来るはずも無い。

 

しかし4日続いた戦いの中で亜種ナルガはリオレイアの毒に蝕まれていた。

 

そうとも、この片手剣が折れるまで何度も切り裂いては奴を毒に脅かしてきたのだ。 右利きの俺は少しでも戦いやすくするために亜種ナルガの左側を攻撃し続けてた。 結果として眼や耳、足や翼はレイアの毒で蝕んで溶かし続けた。

 

当然ながら亜種ナルガは動きが悪くなる。

 

何せ左側全ての機能を奪ったのだ。

 

本来ある亜種ナルガもスペックを半分を損失している。

 

まずナルガクルガ種はしなやかに動かすためだけの筋肉を付けてきた生き物だ。 爆発的に全身の筋肉を膨らませて敵の懐に飛び込む戦いをする。 尻尾が伸び縮みするのも筋肉の使い方が上手いからな。 だから暗殺者のような動きが可能である。

 

しかし左側全てが使い物にならない今、全身の筋肉を爆発させて飛び込む動きはもうできない。 かと言って今までの戦いを直ぐに変えることはできない。 そのためこれまでの爆発力を全て右足で補っていた。 お陰で亜種ナルガの動作がよく分かる。 フラフラのこの体でも奴の攻撃は回避できるくらいに奴はもう弱い。

 

 

 

「あっはははは!!」

 

 

「グォォォア!?!?」

 

 

 

亜種ナルガから見て左回りに攻撃してくる俺に対応が取れずイライラを隠せない。

 

亜種ナルガは痺れを切らして左側を尻尾で払おうとするが、尻尾の大ぶりに対して左足は支えきれず転倒した。

 

惨めな姿を晒す死に間際なソイツを俺は嘲笑う。

 

皮膚が爛れている首筋の肉に向けて狙いを定める。 右手で握りしめているプリンセスレイピアを逆手に持ってねじ込み、左手はファンゴの牙でその肉をガリガリとこじ開ける。 ぐちゃぐちゃとほじくり、柔らかい肉からは激しく血しぶきが上がる。 亜種ナルガは悲鳴をあげた。

 

 

「キィィィィ!!」

 

「はっはっはっは!!!」

 

 

 

ここは湿地帯だから水分が多く、水没林に住むモンスターは少しだけ皮膚が柔らかくなる場合が多い。 それは水没林で縄張りを作るナルガクルガ亜種も同じだ。 そこにレイアの強力な毒で皮膚の腐敗が加速させたのでファンゴ程度の牙でもその肉をぐちゃぐちゃにこじ開けることができる。

 

 

「グォォォア! グォォア!!? ググアア!!!」

 

 

深淵の暗殺者は大きな悲痛を上げながらその巨大で暴れる。 プリンセスレイピアは亜種ナルガの血肉を纏いながら抜けてしまう。 そんな亜種ナルガは怒りと恐怖を交えながら狂乱して俺から離れようとする。

 

しかし右脚から落とし穴に突っ込んでしまう。

 

 

 

「どうだ? 毒々しい罠の味は?? なぁ??」

 

 

「ギャァァァァア!!!!」

 

 

半分以下の効果しか発揮できないだろうトラップツールだが、別にそれでも構わなかった。

 

ドクガスカエルやフロギィの毒袋などを使って確実に毒に沈み込ませるための毒々しい落とし穴だ。

 

けれど雑な落とし穴なのだから、亜種ナルガならこの程度直ぐに抜け出すだろう。 しかし亜種ナルガは運悪く右側部分を落とし穴に突っ込んでしまう。 落とし穴に囚われた右脚では抜け出せない。 そのため落とし穴の外に出ている左側全体を使って抜け出そうとする…が、今の亜種ナルガでは抜け出せる訳がない。 弱々しくなった左足を使って必死にもがき続けるが、ここは足場が滑りやすい水没林だ。 こんなところで抜け出せる訳もなく、ガクガクと足を動かしながらもがき苦しみ、毒々しい落とし穴の効果でさらに奴を追い込む。

 

 

もうまともに動けないだろう。

 

 

 

「終わらせようか」

 

「!?」

 

 

亜種ナルガは俺を捉えたその右目で威嚇する。

 

 

笑わせるな。

 

どうみてもその眼は恐怖だよ。

 

 

 

「…」

 

 

「ギャァ!ギャァ!!」

 

 

近づく俺に向けて威嚇する亜種ナルガ。

 

死に征く声になんの価値もない。 左手に握っていたファンゴの牙を捨てるとドクガスカエルを取り出した。 亜種ナルガはその牙を剥けながら掠れた声でこちらを威嚇する。 俺はその空いた口に左手を突っ込んだ。 亜種ナルガの牙が左腕に食い込むが痛みは感じない。

 

もう体に感覚は無い。

 

薬物の取りすぎで俺がどこまで俺なのかわからない。 わからないけど関係ない。 俺は弱いが、俺がお前を追い込んだ。 俺より強いお前は俺より弱くなるように追い込んだ。 今のお前は俺より良い。 弱いから強い俺に殺されろ。 強かったお前は弱い俺に殺される。 弱いお前が弱いから殺される。 お前はもう弱い。 弱くなったから殺されろ。 強いは弱くなった。 弱いは強くなって弱いお前は弱かった俺に殺されろ。 ああ、弱い俺に弱いお前は強いだろうが弱くなったお前は強い弱いになったから殺されろよ。 殺されよ。 殺されてくれよ。

 

 

 

「さっさと死ねよぉォォ?????」

 

 

ドクガスカエルを握りつぶして亜種ナルガの体に流し込む。

 

異物を放り込まれて抵抗する亜種ナルガ。

 

 

 

うるさい…

 

ドクガスカエルの血肉と毒液の混じったその左手で亜種ナルガの右目に触れると爪を立て掻っ切る。

 

悲鳴をあげる亜種ナルガにプリンセスレイピアを逆手に持って振り下ろす。

 

レイピアは左目を深く貫き、口内を貫き、舌を貫き、顎を貫き、口が開かないように固定するする。

 

ドクガスカエルを吐き出せない亜種ナルガはガクガクと痙攣を起こして泡を噴き出し始める。

 

 

 

「あぁ……はは、ここに、あったのか…」

 

 

亜種ナルガと戦って失っていたプリンセスレイピアの盾を運良く見つけた。

 

それを拾う。

 

掠れて死にゆく亜種ナルガに近づき…

 

その頭を叩く。

 

 

 

「ガッ……ガッ……ガッ………ギィ…ガッ…」

 

 

 

叩く。

 

叩く。

 

何度も叩く。

 

力か続くまで叩き潰す。

 

殺し切るまで何度でも……殺す!!

 

 

 

 

「……… … …」

 

 

 

 

 

気がついたら白目を剥いて絶命していた。

 

 

ああ、終わったようだ。

 

 

嵐は収まっている。

 

 

すると亜種ナルガの口から吹き出したドクガスカエルの煙を吸って、視界が揺らぐ。

 

 

 

「んぐっ………!!!???」

 

 

 

酷く嘔吐する。

 

あらゆる薬物を摂取した体が壊れた。

 

 

 

「ひゅ……ひゅ……」

 

 

 

な、なにか、飲んで抑えないと…

 

 

薬は?

 

 

ああ、無い……無い!

 

 

クスリはドコダ?

 

 

っ、左手に握る、それでも良い。

 

 

ぐにゃりとした、ソレを飲み込んで、抑える。

 

 

 

 

「あ、は……」

 

 

 

そして、意識が薄れて、倒れた。

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

4日続いた水没林での死闘。

 

 

嵐が静まったそのど真ん中で、俺は倒れる。

 

 

静かになった事で水没林は騒ぎ出す。

 

 

次々とモンスターの声が聞こえてきた。

 

 

とても危険な状況。

 

 

けど、もう、動けない。

 

 

何もできない。

 

 

このまま食われて死のだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__ヒヒーン!!

 

 

 

 

 

 

 

「……ぇ…」

 

 

 

 

 

幻想的な白い姿を捉える。

 

 

嵐は収まったのに、雷が落ちている。

 

 

 

しかし、それだけではない。

 

 

誰かが、もう一人だけそこにいた。

 

 

 

 

 

_兄ちゃん! まだや! まだあかんって!!

 

_そんなところで死ぬんじゃないで!!!

 

 

 

 

 

 

 

少女の声も聞こえる。

 

 

あれは、誰だろうか?

 

 

ハンターか?

 

 

いや、そんな雰囲気はしない。

 

 

けど(いかずち)のように鉢巻を靡かせた少女だ。

 

 

 

 

 

「ぉ、ま……ぇ、は……」

 

 

 

 

 

 

__もう語ったらあかん! 声出すと死ぬで!

 

 

 

 

 

しかし、語らずとも死ぬだろう

 

 

だんだんと……呼吸が小さくなる。

 

 

だめだ、このまま死ぬのだろうな…

 

 

 

 

 

 

__そんなことはウチがさせんわ!!

 

__気をしっかりもたしいや!!

 

 

 

 

 

彼女は俺の死を否定する。

 

 

すると白い獣と、俺に近づく。

 

 

いや、これは獣と言える存在なのだろうか?

 

 

感じたことない威圧感が俺の頬を撫でた。

 

 

いつのまにか他のモンスターの気配が無くっていた。

 

 

 

 

これは……竜?

 

いや、龍?

 

いや、どれも違う…

 

 

………これは……もしかたら……幻獣??

 

 

 

 

 

 

__さぁ、飲み込むんや…

 

__飲んで、生きて、(きた)るべきことのために…

 

__あんたは必要なんや、だから頼むわ…

 

 

 

 

 

何かが喉に通る。

 

 

薬を欲して痙攣していた体が治る。

 

 

呼吸が元に戻り始めた。

 

 

 

 

「あな…た…は…だれ…です……か?」

 

 

 

 

問いかける。

 

すると案外感情をコロコロさせるようだ。

 

困ったように首をかしげる。

 

 

 

 

__うーん、それは堪忍してほしいわ。

 

__でもまた会える時が来ると思うから…

 

__そのために(あん)ちゃんは生きるんやで……

 

 

 

 

 

 

 

その言葉を最後に聞いて、雷が落ちた。

 

 

水没林は白色に光る。

 

 

その少女も背を向けて雷に走り出す。

 

 

 

 

「!」

 

 

 

 

よく見たら、耳と、尻尾が、生えている。

 

 

いったい、あの子はなんなのか?

 

 

 

 

 

だが、言葉に表すなら…

 

 

それはまるで "白いイナズマ" の如くだった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ははっ」

 

 

 

 

走馬灯ってあるんだな。

 

 

でも、痺れるような雷が体を走った気がする。

 

 

それが俺の命を食い繋いでくれた…気がした。

 

 

 

 

「グルルル!」

 

 

「ッ!」

 

 

 

謎の爆発にて打ち上げられ、そのまま地面に衝突する瞬間に意識を取り戻す。

 

体を捻って辛うじて地面に着地した。

 

すると意識がある俺に気づいた紫色の獣はトドメを刺そうと鋭い尻尾を伸ばしてきた。

 

右手から離さなかったオデッセイブレイドを斜めに向けるとそれを弾き、体を捻りながら爆破投げナイフを飛ばして紫色の獣に直撃すると火薬と共に強烈な色で弾けた。

 

 

 

「!」

 

 

いつのまにか紫色の煙が着地する場所を漂う。

 

これは初見殺しの爆発の正体か!!

 

 

 

「すぅっ…!!」

 

 

俺は体を1回転させながら大股一歩分を引いて攻撃を回避する。

 

すると先程いた場所にフヨフヨと浮く紫色の煙は爆発した。

 

 

 

「ッ!」

 

 

一気に踏み込んで煙を払うように一閃する。

 

しかし片手剣では間合いが足りない。

 

 

 

「グルルル……グォォ!!」

 

 

 

紫色の獣は一閃を回避すると俺を睨むが、突然その場をジャンプすると壁を走って俺を飛び越えた。

 

 

「!」

 

 

まずい! あのまま翡葉の砦に向かうつもりだ。

 

俺は追いかけようと思い体を動かすが負ったダメージにて跪いてしまう。 だめだ、こんな体では追いつけないな。 まずこの痛みをなんとかしないと。 あと仲間のハンター達も心配だ。 懐から生命の粉塵を取り出してそれを周りに振り撒く。 すると傷口に粉塵が纏わり付き出血などを抑えてダメージを回復してくれる。 ひとまずこれで大丈夫だろう…が、早く起き上がって移動しなければ百竜夜行のモンスター達に巻き込まれてしまう。 俺はランスのハンターを叩き起こして避難するように呼びかけて、俺は関門の方に向かう。

 

 

「っ」

 

 

 

俺よりもウマ娘が心配だ。

 

 

そして無事だろうか!?

 

 

どうか声が届いてくれ!

 

 

返事をしてくれ!

 

 

 

「セイウンスカイッッ!!」

 

 

「なーに?」

 

 

「ふぁ!?」

 

 

 

間抜けな声が飛び出して、それを聞いた彼女は一度目を丸くするが、でも俺の様子を悟った彼女はニンマリと笑って無事を教えてくれる。

 

 

 

「っ、無事で良かった!」

 

 

「にゃはは、アマグモも無事で良かっ…うわっ!!?」

 

 

無事である彼女をもっと知りたい。

 

その可憐な両方を掴んで抱き寄せる。

 

 

 

「ああもう! あんなのが来たものだからすごく心配だったぞ! はぁぁぁ、良かったぁ…本当に無事で…」

 

「!、!? ぁぁ、ええと…その…ぶ、無事なのは、嬉しいけど…ええと……その…ぅぅ…ぅ」

 

 

 

 

 

「アマグモさん」

 

 

 

「「!」」

 

 

仄かなオレンジ色の髪を靡かせるウマ娘、サイレンススズカが姿を表す。 他にも百竜夜行をマラソンで惹きつけてくれたウマ娘達が無事な姿を見せる。 あと関門のグルグル回れるところからは騒ぎは聞こえない。 もしや百竜夜行のモンスター達は去ったのか? だとしたらここに留まる理由もないな。

 

それと…

 

 

 

「はい、アマグモさんも接敵したと思いますがあの見たことないモンスターが百竜夜行のモンスター達を蹴散らしました。 それで来た道を逃げるモンスターに巻き込まれないようわたし達は岩陰や地下に隠れてやり過ごした、そんな流れです」

 

 

「そうか。 スズカ達も無事で良かった。 とりあえず移動だ。 まだ足が動くものは翡葉の砦に向かう」

 

 

動けるウマ娘達を連れて翡葉の砦で戦うウツシ教官やフゲンさん達のところに向かう。

 

この百竜夜行……何かがおかしい。

 

翔蟲を使ってショートカットを行い、一足早く翡葉の砦まで向かう。

 

 

 

「ところでセイウンスカイさん」

 

「へ? ええと…な、なにかな…スズカさん」

 

 

勘の良いセイウンスカイだからこそ嫌な予感は気のせいだと思いながら声をかけるサイレンススズカに首を向ける。

 

 

「アマグモさんとなかなかに、お熱い…ね?」

 

「ッッ〜!!」

 

 

 

「?」

 

 

 

セイウンスカイ頬を染めながら耳を畳む。

 

そして俺と顔を合わせるとセイウンスカイは慌てたように速度をあげて走って行った。

 

ちょっと!? せっかくウマ娘よりも先にショートカットしてるのにそれよりも先に行ってどうする!?

 

あー、まったく……翔蟲足りるかなぁ??

 

やれやれ、人間の身でウマ娘を追いかけるって大変なんだよ。

 

 

それから本戦となる翡葉の砦の近くに到着した。

 

ウマ娘達は隠れ道に入ってもらい、カムラの里の最終関門まで進んでもらう。

 

その先にシンボリルドルフがエアグルーヴがいるはずだ。

 

指示を貰い受けて次に備えるはずだろう。

 

 

 

だが…

 

あの紫色の獣は最後のモンスターを食いちぎると去って行ったらしい。

 

どこかに隠れている?

 

いや、そんなことはない。

 

匂いが遠くに向かって行った。

 

 

 

「わかるのですか?」

 

 

「わかるよ。 さっきアレと交戦した時に爆破投げナイフをぶつけてやったんだが、爆発の中に"ペイントの実"を混ぜている。 強力な着色と独特な匂いを付与する代物だが、グラスワンダーもロンディーネのところで見たことあるだろ?」

 

 

「ええ、珍しいものでした」

 

 

「ここではフクズクを使って位置を確認したりできるからペイントの実は出番ないけど、俺の生まれた村ではペイントの実を使ったペイントボールが手放せなくてな。 万が一のためにペイント系は用意してる」

 

 

「なるほど、たしかに…匂いが独特ですわね」

 

 

 

独特な少しだけ匂いは残っているが、でも遠くに流れている。 あの紫色の獣はここを離れてくれたようだ。 ちなみにケシキが一太刀浴びせて牽制したらしい。 俺なんていきなり吹き飛ばされて、それで攻撃は簡単にいなされたのに、良くやる奴だよ。

 

 

ともかく、こうして百竜夜行は乗り越える事に成功した。

 

しかし不安要素を残しつつ戦線の状況を整理する。

 

フゲンさんと共に付き添うシンボリルドルフもまだ緊張感を残して今後の話を広げている。

 

まだ解決したわけでもなく、また一つだけ宴を乗り越えた、ただそれだけなんだ。

 

 

 

「なんだったんだ、アレは…」

 

 

ジンオウガのような四足歩行だが、圧倒的にこれまでとは違うモンスターだ。

 

アレが百竜夜行の原因なのか?

 

 

……いや、そう決めるのは早い。

 

例えばユクモ村でも近辺の災害や環境の変化はジンオウガのせいだと思ってたが実の正体はアマツマガツチと言われる嵐龍だった。

 

ならばあのモンスターは百竜夜行の一部だと考えて身構えた方が良いだろう。

 

たしかにあの紫色の獣はかなり強そうなモンスターだったが……けど、それだけだ。

 

こんな異常事態が起きているのだ。

 

もっと何か、とんでもない何かがあって、カムラの里は脅かされようとしている。

 

そう思ってならない。

 

 

 

「……ともかく、帰って休みたい」

 

 

 

百竜夜行を乗り越えた朝日を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「いただきます」」」

 

 

 

パクッ

 

パリパリ、もっきゅ、もっきゅ…

 

 

!!

 

 

 

「なにこれすごい!」

 

「おお〜、外カリカリで中身もっちり!」

 

「うむ、おかわり」

 

 

「あははオグリさん。 それあくまで試作品だからおかわり無いんだよね。 普通のうさ団子で良いならあるけど?」

 

 

「うん、それがあるなら是非いただきたいヨモギちゃん」

 

 

 

相変わらずオグリキャップはよく食べる。

 

さて、あの百竜夜行から3日が経過した。 紫色の獣に関しては"マガイマガド"と呼ばれるモンスターであり、今よりも若くて現役だったフゲンさんとハモンさんは奴と交戦経験があったことが明かされる。 討伐には至らずハモンさんが大怪我を負っただけで生きて帰ってきたらしい。 それが引き金でだんだんと武器が持てなくなり、ハンターを辞めて加工屋になったとか?

 

百竜夜行も合わさって不安が膨らむ中、それでもヨモギちゃんが元気を振る舞ってカムラの里に活気を呼び寄せる。 その過程でデルクスを使ったうさ団子を開発すると俺とセイウンスカイを呼び寄せ、そして試作品のこの団子を頂いている。 試食に関しては素材を手に入れてきた俺とセイウンスカイに任せたいと思ってたら…

 

オグリキャップが差してきた。

 

うん、知ってた。

 

 

「きな粉と混ぜて更に水分を吸い上げたのか。 それで表面は硬くて噛み応えを作ったんだな? 良いアイデアだ」

 

「うんうん、とてもおいしいよ〜」

 

 

「えっへへ〜、ありがとう二人とも!」

 

 

名前は何になるだろうか?

 

そんな事を考えていたが…

 

 

 

「でもね、それは無しにしようかなって思う」

 

 

「え? そうなのか?」

 

 

「うん。 お団子はやっぱりもちもちしてた方が美味しいから。 パリパリなのは焼き海苔とかで良いかな?って考えたんだ。 ごめんね、せっかく遠い砂漠までデルクスを狩猟してくれたのに…」

 

 

「いやいや、別に良いさ。 美味しいお団子をありがとう」

 

「にゃはは〜、また試作品ができたら味見させてね〜」

 

 

「うん! その時はよろしくね!」

 

 

ヨモギちゃんは次のお客さんを見つけると元気よく迎える。

 

俺は残りの試作品を味わいながら緑茶を楽しみ、セイウンスカイもポワ〜と空を見て眠りそうになっている。

 

とりあえず今は平和なんだな。

 

 

 

「セイウンスカイ」

 

 

「ん〜? な〜に〜?」

 

 

「明日さ、少し戻ろうと思う」

 

 

「?」

 

 

 

緑茶を飲みながら一息つく。

 

集会所の入り口から聞こえる太鼓を環境音にしながらセイウンスカイは耳をピクピクと動かす。

 

俺は緑茶を飲み込みながは紅葉を眺め、あの場所も同じ光景だったな……と、懐かしみながらセイウンスカイに答えた。

 

 

 

「戻るってどこに?」

 

 

「ユクモ村」

 

 

「え?」

 

 

「そこに一度帰ろうと思う。 "アレ"を回収するために」

 

 

 

 

 

アレに握れば、その時を思い出す。

 

 

水没林で味わった5日間の地獄を…

 

 

でも、いつかどこかで役に立つだろう。

 

 

そう予感する。

 

 

何故、急にアレ思い出したのか。

 

 

間違いなく走馬灯が原因だと。

 

 

 

「セイウンスカイ、着いてくるか?」

 

 

「ユクモ村に?」

 

 

「ああ」

 

 

「にゃはは、当然行くよ。 仮に一人で勝手に行っても、逃げられると思わないでね?」

 

 

 

 

 

逃げが得意な彼女よりも先に進めるわけがない。

 

 

そう笑ってユクモ村に帰るための準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

つづく

 





走馬灯??
アレは一体なにクロスなんだ??

「モンハンのダブルクロスやで」

なるほど!!



さて、良くある主人公の過去がヤベー事があったテンプレパターン。
まぁでも好きですよ?

あとしれっとマガイマガドくん相手に戦ったアマグモくんもなかなかですね。
こいつはもしかしたらエースって奴だな!


あと次回はユクモ村編です。
もちろんユクモ村にもウマ娘もいます。

誰が出てくるかな?


ではまた
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