ママは花の錬金術師で私はホムンクルスでした!?  ~母と娘が紡ぐ親子百合神話錬金術ファンタジー~   作:Lilium Anthems

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 Ⅳ 磔刑のマリア

「お母さん!」

「あぁ……アイ……リス……ご……挨拶して……樹木の神『エス』よ……」

「っ! お母さんを離せ!」

「ならん。元凶よ。身の程を知れ。しかし『木の』は何をやっておる。あやつの不肖でろうに」

「ふ……ふふ……花隧道の……中におられます……あすこの……」

「弟子に絆されおってからに」

 やれやれと、ため息をつくその人は、私でも分かるくらいに大きな存在だった。身体が、大きいとかではなくて。もう、存在そのものが本能的に従わなくてはいけない。そんな気がする。最初は、それこそお母さんの状態を見てなにも考えていなかった。けど、理解してしまった。私は、この神様が怖くて、嫌い。

「お……かあさん……を……離して……」

「ほう。我を見て、まだ口が開けるか。さすがの忌み子。肝が据わっとるのぅ」

 手が、震える。怖い、怖い、怖い。

 でも、お母さんは、もっと怖いはず。だって目の前のお母さんは、ずっと身体の花びらをちぎられ続けていて。戻しては、枝で貫かれて、溶かされて。それを繰り返している。お母さんの中に、時々、宝石みたいなのが見える。それが……。

「これが【母なる自然】よ。アイリス」

「っ……こんな、ものの……ために……」

「いいえ。大事な……」

「そうだ。お前達がトロイアルと呼ぶ世界線と世界樹の世界線。そのすべて、存在する木々の元となるものである。それを、たかだがひとつのホムンクルスのために二度も奪おうとしたお前を赦す道理はない」

「ふ……ふふふ……一度ならず二度までも……奪われたのはあなたの失態ではありませ……んっ……!」

「お母さん!」

「減らず口はもう良い。無駄じゃ。我々木の元素に属す者として『花の』お前を屠らん。可哀想に。悲願である錬金術師となりて齢数千。赤子のようなもの。あの時見逃してやったのは、お前を可愛く思ったからだったのだぞ」

「ふふ……非動物的存在達の尺度でものを言わないで……くださいまし……元人間にとって……数千はあまりに長いのです……それに……誰が錬金術師なんかになりたくて……」

「ふむ。つくづく不孝者よ。もうよい」

 なんの興味もない。そう言おうとするかのように、エスと呼ばれた神様はお母さんの首元に木の刃を振りかざす。

 

 そして、その刃は首を落とした。

 

「ひっ!!」

「ふむ……。あっけないのぅ」

 私が、ゴンドラから飛び降りようとするとクライミングローズが絡まって動けない。

「はなして!! 私が、私がお母さんを助けないと!」

「忌み子よ。お前になにが、できる」

「ひっ!!」

「震える身体、小さな力、覚醒もままならぬ。権能の理解もない。虹の女神よ。早う自覚せねば。我々も不便しておるのだ。のう、小鳥ちゃん(ナイチンゲール)」

「な、なに言ってるの!?」

「叡智も捨てたのかえ。もう良い。お前をヘーラーに還さん」

 エスの樹刃は私の首めがけて角度を変える。私は、目をつむる。それはお母さんと同じところへ行く、覚悟だった……。

 

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