『反転』が術式の高専先生   作:揚げ物・鉄火

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前話の続きです。
今回は、初デート後で東京校に帰る前の任務の話です。

では、どうぞ。ごゆっくり!


第四話

歌姫さんとの初デートから一夜が経った。

これから悟くんに言われた特級呪具、『酒吞童子の盃』を回収するために大江山に向かう。

 

そのつもりだったのだが…

「遠いな…」

少し遠い。

補助監督の人に送って貰っても少し掛かる距離にある大江山の位置をスマホで確認しながら一人愚痴る。

 

「今日に限って他の補助監督の人達も出払っているしな…う~ん」

どうしたものか?と考えているとスマホに通知が入る。

 

「京都観光か…大江山登山ツアー…ルートも良い」

通知の内容を確認し終えると同時にある名案が思い付く。

 

「よし…実家行くか!」

実家に行くと決めてタクシーを適当に拾って目的地を告げて送って貰う。

 

 

 

 

~禪院家にて~

 

禪院家とは、呪術界御三家と呼ばれる名家の一つである。

名家と呼ばれるが、その実態は「禪院家に非ずんば呪術師に非ず 呪術師に非ずんば人に非ず」と呼ばれるほど封建的な家系。

相伝の術式を受け継がずに生まれると落伍者として人生をスタートさせられる。その中でも女性はスタートラインにすら立たせて貰えない程である。

その封建的体質を除いてもクズだらけとしか形用出来ない一族である。

 

この一族から禪院 甚爾、改め伏黒 甚爾。本作の主人公である禪院 転弥などの強者。

禪院 真衣や禪院 真希などの呪術校高専生を輩出している。

 

今代の当主である禪院 直毘人や次期当主と言われている禪院 直哉などの相伝の術式持ちも生まれている。

そして後に判明するが原作キャラである伏黒 恵もこの禪院家の人間であり相伝の術式である『十種影法術(とくさのかげぼうじゅつ)』を持って生まれている。

 

そんな禪院家の屋敷の門が突如爆発した事で禪院家は、嘗てない喧騒に包まれた。

禪院家の宗家、分家が一堂に会し重要な話し合いが行われる当日に正門が派手に吹っ飛んだのだ。

正門が吹き飛ばされた時の爆発音と圧倒的な呪力量に誰もが禪院家を襲撃に来たと考え、若い衆や男共が呪具を持ち出して襲撃者の下に急いだ。

 

しかし、いざ正門前に着いてみるとそこには黒髪赤目の男が立っていた。

腰には特級呪具である遊雲を付けており左手に老舗の和菓子店のマークが入った紙袋をぶら下げて、右手には最高級の和紙に達人直筆のサインが入ったラベル付きの純米吟醸酒の酒瓶を持っている。

 

「たのもー!!クソ爺は…居るか?」

禪院家の異端児である禪院 転弥が凶悪な笑みを浮かべて呪具を持った男達に問いかける。

 

 

~数分後~

 

 

それから数分が経ち、転弥は当主である直毘人の命により本館の和室に案内された。

案内された一室に禪院家26代目当主である禪院 直毘人が待ち構えていた。

 

「なんの用だ?クソガキ」

「お前に用はねぇよ。クソ爺」

入室すると同時に直毘人が忌避そうな表情を浮かべて言うが転弥も同じように返す。

 

「なら何のようだ?」

直毘人が酒の入った瓢箪を傾け酒を飲みながら再び問う。

 

「この家は客人に茶の一つも出さないのか?全く程度が知れるな!」

その問いに答えず座布団に座ったまま声を上げる。

 

「チッ!クソガキが…おい!誰かこ奴に茶を出せ!」

転弥の言葉に直毘人が舌打ちを一つしてから障子の外で待機している者に声を掛けると一分もしない内にお茶が運ばれて来た。

 

「では、再度問う。何の用だ?」

直毘人が転弥に三度(みたび)と問うと転弥がお茶を一口飲んでから口を開く。

 

「報告一つ。頼み一つ。そして質問一つだ。どれから聞きたい?」

「それと手土産二つだ。代金はいらん」

手土産として持って来た酒瓶と和菓子の入った紙袋を近くの使用人に渡し直毘人に聞き返した。

 

「ハンッ!どれでも良い。さっさと言え!」

使用人に酒瓶を持って来させながら興味なさげに返す。

 

「んじゃあ、まず…婚約者(?)が出来た」

「ほほう?」

転弥の言葉に直毘人が始めて興味を示した。

それと同時に部屋の外で『あの異端児に!?』とか『何処のどいつだ!』やら『相当な物好きも居たものだ』とか聞こえたが二人共聞こえないふりを決め込んだ。

 

「婚約者か…ふむ、まあ良いだろう。で、頼みとは?」

転弥の婚約者の予想しながら転弥の頼みを聞く。

 

「帳を降ろせて車を運転出来る人間を誰か一人貸して欲しい」

「なぜだ?」

転弥の頼みに直毘人が質問する。

 

「補助監督の人が全員出払っている。それにこの後、一つ任務がある」

「ふむ…なら、適当に誰かやる」

直毘人がそう言って酒瓶の蓋を開ける。

 

「んで最後に質問だが…真希と真衣の妨害をしてるはお前らか?」

「はて?何のことやら?」

転弥の質問に直毘人が首を傾げてわざとらしく恍けてみせる。

 

「ケッ!クソ爺が…」

予想通りの反応を返した直毘人に対し転弥が忌々しく吐き捨てて茶を飲んだ。

 

 

「ふぅ…」

「用はそれだけか?」

お茶を飲んで一息ついた転弥に対し直毘人が質問する。

 

「俺からは、これだけだ。そっちはどうだ?」

「なら一つ聞かせろ」

転弥がそう答えると直毘人が一つ質問する。

 

「モノによる」

「相変わらず可愛げのない…禪院家に帰って来る気は無いか?」

「は?」

直毘人の言葉に転弥が思わずそんな声を漏らした。

 

「なぜ今更?」

「なぜか?それは貴様が一番良く分かっておるだろ?」

「……」

直毘人の言葉に一瞬考え込むがすぐに答えを導き出す。

 

「反転呪法が欲しいのか?」

「その通りだ」

転弥が導き出した答えに直毘人が一瞬の躊躇いも無く答えた。

 

「断る」

当然の如くそれを断った。

 

「なら次期当主の座をやると言ったらどうだ?」

「冗談だろ?」

「今ここで誓約書を書いてやる。それと遺言状にも書いといてやるぞ?」

そこまで言い切る直毘人に転弥は、ただ純粋に驚いた。

 

「マジ?」

「マジだ」

封建的体質を持つ現・禪院家の当主が実家を飛び出した一人の異端児の術式一つの為に次期当主の座を明け渡すと言っている。

普通に考えればこの上なく異常な事だ。

しかし、この異端児の術式に次期当主の座を賭けるだけの価値がある。

禪院 直毘人は、そう判断した上でこの取引を持ちかけた。

 

「まだ足りんか?なら貴様の言う婚約者を母子共々、禪院家総出で保護すると言ったらどうだ?」

「……」

自分の恋人をクズとは言え御三家と呼ばれる名家の実家が保護すると言われ転弥の心が少し揺らぐ。

 

「なら、真希と真衣の術師としての未来を約束する。これでどうだ?もうこれ以上は出せんぞ」

「真希と真衣を?」

自分の妹達の未来を保証すると言われた瞬間、転弥を纏う呪力の流れが変わった。

その呪力の変化を見た直毘人が勝利を確信した。

しかしそれは、転弥にとって最大の地雷だった。

転弥の術師としてのモットーは、『強さは努力で手に入れる。コネで強さは手に入らない』だ。

つまり直毘人の最後の提案は、揺らいでいた転弥の心を元に戻すのに十分な物であった。

 

「俺が禪院家に戻れば次期当主の座を俺に譲り、婚約者(?)といつか生まれるであろう子供を禪院家総出で保護する。その上で真希と真衣の術師としての未来を保証するのか?」

「その通りだ。悪くない提案だと思うぞ?」

「………」

直毘人の提案全て復唱し確認を取った転弥が少し目を閉じて考えるふりをしてから口を開く。

 

「だが断る!」

そして断った。

「なにっ!?」

断った理由が理解出来ない直毘人が驚愕の声を上げる。

それに合わせて転弥が理由を述べる。(この時、なぜか劇画タッチの画だった)

 

「この禪院 転弥のもっとも好きな事の一つは、自分で強いと思ってるやつに『NO』と断ってやる事だ!」

自分の大好きな漫画の登場人物の名セリフを華麗に言い切った転弥は、天にも昇る快感を得た。

ずーっと自分を見下して来た相手に対し、この台詞を使うと、まるで見下していた相手が実は途轍もない大物でそれに気が付き媚を売ってきた相手をクビに出来るようなスーッとした気分になる。

 

「クソガキが…後悔するぞ?」

「好きに言ってろ、クソ爺」

直毘人の言葉に転弥が中指を立てて答えた。

 

「じゃあな!」

「ケッ!二度と帰って来るな!」

そのまま会話を終わらせて別れた。

 

「見世物じゃないぞ?」

その様子をずっと見ていた禪院家の人間に対しそう言い放ち、その場を後にした。

 

 

「転弥様。今回の任務は、私が同行するよう直毘人様から仰せつかりました」

(わたくし)、禪院家の分家にて当主の娘をやっております。禪院 恵果(けいか)と申します。どうかお手柔らかにお願いします」

派手に吹き飛ばされた正門から出ると階段下に車が待機しており、運転手兼帳を降ろす任を与えられた若さの残る女性が立っていた。

 

「うん、よろしく。早速で悪いけど大江山に向かってくれる?」

「はい、かしこまりました。大江山ですね…大江山!?」

転弥に行き先を聞いた女性は、驚愕のあまり思わず叫ぶ。

 

それもそうだ。

呪術界において大江山は、もっとも呪力の集まりやすい場所の一つとして認識されている。

その理由は、日本三大妖怪の一体、酒吞童子が討伐された場所でその怨念が未だに色濃く残されているからだ。

そんな場所に率先して向かう者は、よほどの阿呆と言われている。

 

そんな場所に迎えと言われたこの女性の心境は、弾丸の飛び交う戦争地帯に装備も作戦の無しに突っ込むも同然である。

しかし禪院家当主である直毘人に協力しろと言われたため断る事が出来ない。

 

「か、かしこまりました。ただいま、向かいます…」

青ざめた顔で車のナビを起動させて目的地までのルートを入力する。

 

『目的地マデノルートヲ検索中…目的地マデ案内シマス。実際ノ交通標識ニ従ッテ運転シテ下サイ』

カーナビの音声が車内に響きエンジンを点けて目的地である大江山へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

「暇だし、しりとりしよう?」

「良いですよ?」

「んじゃ俺から、菅原道真」

「ね…寝巻」

「き…鬼女」

「じょ…常勝無敗」

「い…一騎打ち」

「ち…血眼」

「こ…小鬼」

「人間道」

「有象無象」

「う返し…宇宙」

「打ち合わせ」

「正門破壊」

「陰湿」

「罪深い」

「異常者」

「釈迦」

「雷」

「六道」

「打敷き」

「鬼道」

「ウルク」

「俱会一処」

「処罰」

「罪と罰」

「月読」

「宮大工」

「供物」

「美人局」

「蝉丸」

「累」

「陰陽」

「馬」

「摩睺羅伽」

「観無量寿経」

「有漏」

「雲皷」

「鳩摩羅什」

 

何故か車内で謎のしりとり大会が始まり、両者共に真顔で次から次へと淡々と言葉を発して行く為、空気が最悪のモノと成っている。

この状態は、目的地である大江山に到着するまで約3時間続いた。




解説.

禪院家.
呪術界御三家の一つにしてクズの巣窟。
転弥の実家でもあるが既に縁を切ってる。


追加解説.
前話の感想でどうして特級術師じゃないの?と聞かれたので理由を説明します。

簡単に言うと、
呪術師より一般人みたいな思考回路をしているから上層部の命令を聞かない。
実家の禪院家が全力で邪魔してる。
特級に上がれるだけの偉業を成し遂げていない(既に特級呪霊を20体以上祓ってるし特級呪物も幾つか回収してる)。
上層部が上げようとしない。
等の理由から特級呪術師に上がってません。

では、また次回!
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