ストックも切れたしゆっくりと集中して次話を書きたいので少し掛ると思いますがご了承ください。
今回は割りと本気の戦闘シーンです。
結構頑張りました。
では、どうぞ。ごゆっくり!
あの、えと…その…ゲージが赤くなってて心底ビックリしました。
本当にありがとうございます!
「盛者必衰」
「い、い…い、参りました」
目的地である大江山に向かう車内で運転手の女性がネタ切れとなり降参した事で転弥に軍配が上がる。
「はぁ、やっと終わった…」
長時間に及ぶしりとりバトルが遂に幕を閉じた事で転弥は、一つ息を吐く。
「あとどのくらい?」
「5分ほどで着きます。貴方こそ準備出来てますか?」
転弥の質問に運転手の女性が淡々と答えて質問する。
「ハハッ、微妙」
「大丈夫なんですか?」
それに対して転弥が両肩を解しながら答えると女性が呆れる。
「呪力量MAX、遊雲も装備中、呪力の流れも最高潮。後は、相手によるかな?」
自分の状態を一つずつ口にして行きコンディションを確認して行く。
「相手は…特級ですよね?」
「そうだよ」
「勝てるんですか?」
「知らん」
運転手の女性が震えた声で質問するも転弥は、ただ無関心に適当に返事を返す。
「負けちゃいますか?」
「分からないよ」
「死んじゃいますか?」
「死ねないよ…」
「怖くないんですか?」
「怖いよ」
「逃げようと思わないんですか?」
「思わないかな」
運転手の女性の質問に次々と答えていき上着を羽織る。
「着きました。あの…頑張って下さい」
「はい。お任せを!」
遂に任務地である大江山に到着した転弥は、車を出て大江山に向かって歩いて行く。
「帳を降ろします…」
「闇より出でて闇より黒く、その汚れを禊ぎ祓え」
運転手の女性が呪文を詠唱すると大江山を丸ごと包み込むように結界術の一種である帳が降ろされ非術師には大江山の呪霊を認識する事が出来ない状態になる。
「大江山…酒吞童子の伝説。大丈夫でしょうか?」
大江山に入って行った転弥の事を考えながら運転手の女性は、無事を祈る事しか出来なかった。
◆
「大江山に来たは良いけど…困ったなぁ」
大江山に入山した転弥は、溢れ出る呪力量の多さに困ったように呟いた。
「見た感じ雑魚が数体。準2級以上がゴロゴロ居る。予想通りだな」
近くの呪霊の等級を計算しながら山の中枢へと進んで行く。
「後は、2級が20体。準1級が9体。1級が7体」
山の中枢へ近く付けば近づくほど濃くなる呪力量に呪霊達の等級が上がって行く事を確認できる。
「そして本命のボス格。特級呪霊が4体」
山の中枢へ着くと同時に見えた5メートル級の鬼の姿をした四体の特級呪霊。その奥にある呪力を放つ巨大な盃。
特級呪物、酒吞童子の盃。
恐らく人々の畏怖によって誕生した特級仮想怨霊、『酒吞童子』だろう。
「特級に分類されるな…あれは」
目撃した呪霊の数と等級。そして己の強さを客観的に見て、闘ったら勝てるかを考える。
「……………はぁ」
少し考え込んでから答えを導き出す。
「領域展開の使用を視野に入れた本気でやるか…」
久々の本気を出すために上着を脱ぎ、腰に着けている特級呪具 遊雲を手に取って近くの特級呪霊に飛び掛かる。
「どうも、こんにちは!!」
「ウボォッ!!?」
挨拶がてら呪力を込めた拳で鬼の頬を殴り続けざまに遊雲で別の鬼の頭を殴る。
「ふっ!」
着地と同時に踏み込み右手に呪力を込めて呆然としている鬼の左目に拳を叩き込んで潰し、拳を引き抜きざまに動きだした鬼の元に移動し術式を発動させる。
「反転!」
「ウヴォ!?」
金棒の振り下ろし攻撃が返された事でバランスを崩した鬼の腕を掴み、引き寄せてから眉間を殴る。
「四体殴った。酒吞童子は…動いてない?」
自分の部下の鬼(特級呪霊)が全員殴り倒されたにも関わらず酒吞童子は、一切動く気配を見せない。
それどころか盃に酒を注いでこの闘いを酒の肴に飲んでいる。
「ウォォオオオ!!」
「チッ!」
復活した一体目の鬼が振り下ろした金棒を回転しながら躱し金棒の上に乗る。
「セイッ!」
金棒の上を走り顔面に蹴りを叩き込み、その反動で後ろに跳ぶ。
後ろに跳んだ直後、復活した二体目の鬼の振った金棒が先程まで自分の居た一体目の顔面に当たる。
「おりゃあ!!」
すかさず鬼の角を掴み呪力を込めた膝蹴りを喰らわせ角を折って、その場から飛び退く。
「ぐぉおお!!」
「ぐるぁあああ!!」
角を折られた鬼と目を潰された鬼が同時に迫って来る。
それを確認して眉間を殴られた影響でまだ立てない状態の鬼の背に移動する。
「ふぅ…」
息を整え呪力の流れ整える。
「術式反転…」
左手に呪力を流し壁にしている鬼越しに迫り来る二体の鬼を殴るイメージで拳を放つ。
「『貫』!」
壁にしている鬼の背中を『術式反転・貫』で殴り、その一撃が鬼の体を貫通する。
貫通した一撃の勢いも威力も一切落ちずに迫り来る二体の鬼の腕を一本ずつ抉り取る。
「成功した?珍しい事もあるもんだ」
痛みに藻掻く二体の鬼を風穴が開いた鬼越しに見ながら呟く。
『術式反転・貫』
これは、反転呪法に於いて呪力を乗せて貫通力を上げた一撃で相手を殴るだけの技。
それだけだが相手を貫通する事に特化した一撃。生半可な呪力で防御しても防御を貫通し、その上でダメージを与える。
呪力による防御無しで受けた場合、衝撃が対象の肉体を貫通し軌道上にある全てを抉ろうと進み続ける。
大抵の場合、呪力を溜める為に1秒の無防備な時間を作り出し、攻撃が当たって貫通しても直線状にしか進まないため簡単に躱される。
特級呪霊との戦闘で滅多に使わない一撃だが此度は成功した。
滅多に成功しない一撃が成功した事に軽く驚きながら遊雲を振り、風穴の開いた鬼の頭を吹き飛ばして祓う。
「一体撃破…後三体。おっと!」
後方より迫り来る金棒の攻撃を前方に跳んで躱し振り向きざまに遊雲で金棒を振り下ろした鬼の腕を殴る。
「おおおおおおお!!」
遊雲で殴られた腕を抑えて雄叫びを上げる鬼に近づき両脚に力と呪力を込める。
「コォーッ!竜巻旋風脚!!」
ストリー〇ファイターよろしくに鬼の腹から頭にかけて連続で蹴りを叩き込み最後は、脳天にかかと落としを決める。
「セイヤァッ!!」
「二体目撃破?いや、まだか…」
何とか立ち上がろうとしている鬼を見ながら遊雲を構えるが腕を抉られた鬼達が勢いよく迫り残った腕を振り下ろして来た。
「術式は間に合わない…なら!」
反転呪法が間に合わないと判断し迫り来る鬼の拳を合気で受け流すべく両腕に呪力を流し構えを取る。
「ぐっ!」
しかし人間一人の力では流しきる事も敵わず少なからずダメージを負って後方へと吹っ飛ばされしまう。
「ウォオオオオ!!」
「しまっ…!」
雄叫びが聞こえてそちらを振り向くと先程までふらついていた鬼が金棒を横に振りかぶっていた。
なんとか全身に呪力を回せたが、まともにガードする暇も無く攻撃を受けた。
「ガッ!!?」
金棒による一撃を喰らい右腕が折れる。
続いて肋骨が数本、折れた骨が内蔵に刺さり出血、次に右足の骨が折れる。
折れた右足が変な方向を向く。当然痛みがある。
少しの浮遊感と共に景色が横移動する。
直後に近くの木々に衝突。衝突の威力でまた数本の骨を折る。
「カハッ!」
喉の奥から込み上げる鉄生臭い液体を口から吐き出す。
夥しい量の血が口から吐き出される。
全身くまなく痛い。
肺が潰れた。
内臓が破裂した。
目が少し霞む。
右目が潰れたようだ。
右腕が機能しない。
頭蓋骨も陥没した。
なんなら首の骨も折れた。
普通なら死んでいるだろう。
しかし死なない。
死にたくても死ねない。
ここ数年感じ無かった感覚だ。
久し振りの感覚だ。
ああ…本当に久しい感覚だ。
あの
今まで何度も経験したがやはり慣れない。
こうしている間にも鬼達が近づいて来ている。
それを見てすぐさま反転呪法を発動し肉体の状態を反転させる。
状態反転.瀕死⇔完治
「コフッ!コホッ!はぁ…また服がボロボロだ」
傷や骨折を全て直し口元の血を拭いボロボロになった服を見る。
昨日歌姫さんに選んで貰った大事な服だ。
それがもうこんなにボロボロになっている。
呪術師の仕事上仕方ないとは言え、こんなに早く使い物にならなくなるとは思わなかった。
「はぁ…今からやるのは、ただの八つ当たりだ。悪く思え」
迫り来る片目の潰された隻腕の鬼に向かってそう言ってから右拳を構える。
「『術式順転・反』」
振り下ろされた金棒に合わせて金棒に拳を叩き込む。
『術式順転・反』
これは、反転呪法の基本的な能力である反転のみを特化させたカウンター技。
『反』を纏いカウンターをすると相手の攻撃と同等の攻撃が相手にそのまま返る。
この技の一番の利点は、発動時間の短さ。
0.1秒程度の時間で発動可能で場合によっては、黒閃と同時に発動することもある。
「グルォオオオ!!?」
すると鬼の持つ金棒に振った時と同等の力が加わり金棒に引っ張られ無防備なる。
「『術式応用・乱』」
続いて無防備の鬼の腹に『乱』を纏った左拳を叩き込む。
『術式応用・乱』
反転呪法の基本である反転を応用し相手の呪力を乱す技。
呪術師や呪詛師相手に使えば相手の術式を強制的に乱し、防御を突破した上で呪力の籠った攻撃を叩き込める。
尚、呪霊相手に使用すれば呪霊を構成する呪力を強制的に乱すため大抵の呪霊は、跡形も無く消し飛ぶ。
『術式順転・反』と一緒に使う事が多い。
「ぐ、ぉおおお…お…!!」
『乱』で殴られた鬼は、己を形成する呪力を散々かき乱されて姿を滅茶苦茶に変化させながら爆発する。
「ふぅ…次」
「「うぉおおおお!!」」
金棒を持った鬼と隻腕の鬼が勢いよく迫る。
「ふっ!」
金棒による攻撃と拳の振り下ろし攻撃を流れるように躱して隻腕の鬼の脛に遊雲を勢いよく叩き込む。
「おおおおおおおお!!!!?」
途轍もない絶叫を上げて片膝を突いた鬼の頭に乗り再び遊雲を構える。
「グルォオオオオ!!」
案の定、金棒を振り下ろして来た鬼の攻撃を躱し空中に跳び上がる。
鬼の振り降ろした金棒が脛を抑えている隻腕の鬼の頭にクリーンヒットし勢いよく地面に叩き付けられる。
「反転呪法…奥義!」
先程まで使った『術式順転・反』、『術式反転・貫』、『術式応用・乱』の三つを右足に集中させる。
左足で近くの木を蹴り空中で体を捻る。
そして三つの術式を集中させた右足を二体の鬼に向けた。
この時狙わずとも、いわゆるライダーキックの形になる。
「
三種類の呪力を片足に込めた結果、呪力が赤い稲妻のように迸り二体の鬼に直撃する。
奥義.閃蹴
『反・乱・貫』の三つの特性を併せ持った究極の一撃。
『反』であらゆる攻撃を反射し『乱』で相手の術式を乱し『貫』で相手のあらゆる呪力ガードを貫く。
直線状にしか進まない攻撃だがその代わり威力は絶大。
『玄武』と名乗る亀の特級呪霊が本気で張ったガードを対象の玄武ごと易々と貫通し爆発させて祓った事のある文字通りの必殺技。
黒閃!!
それほどの一撃に合わせて黒閃が発動し、元々の威力の2.5乗を超えた威力の一撃が決まる。
同時に閃蹴と共に発動した黒閃の軌跡も合わさり赤黒い稲妻が二体の鬼を貫いた。
「が、がぁああ…ああ!」
「ぐが…ぁああ!」
二体の鬼を貫通し地面を抉りながら数メートル移動してからスピードが落ちて始めて止まる。
「ふぅ…黒・閃蹴かな?」
「がぁあああああ!!!?」
「ぐぁあああああ!!!?」
偶然決まった黒閃と閃蹴の合わせ技を即興で名付けて立ち上がると後ろで『閃蹴』の影響により肉体を構成する呪力を乱された二体の鬼達が特撮番組の怪人さながらの大爆発を起こす。
パチ…パチ…パチ…パチ…
突然聞こえて来た拍手に振り向くと酒吞童子が心底嬉しそうな笑みを浮かべて手を叩いていた。
「酒吞童子…!」
「クハッ…クハハ…クハハハハ!」
その名を呼ぶと酒吞童子が笑い声を漏らして言葉を紡ぐ。
「いやー、幾ら呪術師とは言っても所詮、ただの人間だしのぅ。正直に言えば全く期待しておらんかったのだが…」
そこまで言った酒吞童子がゆっくりと立ち上がる。
立ち上がった酒吞童子の体長は、およそ15メートル級。
その上、纏う呪力量も先程の鬼達の比では無い。
先程まで闘っていた鬼達が小さく見える大きさと赤子に見える呪力量だ。
「やはり、うつし世は良いなぁ…こんなに愉快な玩具に出会えたのだから」
楽しそうに喋る酒吞童子の目は、悦に染まっていた。
「小僧、殺す前に名を聞いてやる。名を名乗れ」
「一級呪術師、禪院 転弥だ。呪術規定に従い今から貴様を祓う!」
楽しそうに余裕すら感じさせる笑みを浮かべる酒吞童子の言葉に従い、名乗ってから遊雲を構える。
「そうか、転弥か…良い名だ。では、儂も名乗ろう。大江山の鬼の首魁、酒吞童子。覚えなくて良いぞ?今、殺してやるからな!」
「なにっ!?」
酒吞童子が名乗り終えると同時に姿を消した。
「カ……………ッハ!!!!!!!」
次の瞬間には腹と胸に激痛が走り何十本もの木々を薙ぎ倒しながら遥か後方へと吹っ飛ばされた。
「ハハッ!まずは準備運動と行こうか、小僧!!」
視界の端に満面の笑みを浮かべたまま迫り来る酒吞童子の姿を納め、口から大量の血を吐き出す。
転弥が特級呪術師に成れない理由を説明します。
前話の後書きに書いた事と単純に実力不足です。
転弥も十分ヤバいですが特級呪術師に比べるとどうしても一歩どころか二歩三歩及びません。
やっぱり特級呪術師ってヤバいんだね…と思いました。
キャラ解説.
酒吞童子.
呪術が一般に知られなくなった現代でも知られているヤベー鬼達の首魁。
玉藻の前、大獄丸と共に日本三大妖怪の一体に数えられる。
どう考えても一級呪術師に任せる案件じゃない。
尚、五条 悟なら余裕勝ちする。理不尽。
追加解説.
禪院 転弥が死なない理由。
封印に特化した反転呪法.極ノ番『鏡』で封印しているにも関わらず溢れ出る特級呪霊の術式と呪力の影響で死にたくても死ねない。
『特級呪霊.■■』
反転呪法.極ノ番『鏡』の中に封印されている両面宿儺(完全体)クラスの化け物。
ガチでヤベー奴。とにかくヤバい。マジでヤバい。
五条先生でも勝てるか怪しいから封印した本当にヤバい奴。
次話は、出来次第投稿しします。
転弥の領域展開も登場させます。
では、また次回!