今回はご飯食べてお風呂入ります(意味浅)
日も暮れ……というより、中立神の力によりこの時間帯は既に夜なのだが。月が海を煌めかせる。幼くなった芽吹の手を引き、夏凜は帰宅した。途中、買い物も済ませたのでレジ袋にはコンビニ弁当が夏凜と芽吹、二人分入っている。ちなみに焼き鮭だ。
「ふぅ、ただいま〜っと」
「……! ただいま」
夏凜の真似をして芽吹は部屋に入る。
「今日はコンビニ弁当で我慢しなさいよ」
「かりん、りょうりできないの?」
「でっ! でで、出来るわよそれくらいっ!! 今日はその、急にこんなことになるなんて思ってなかったから! あれよ、食材がないの!」
「さっき……かいものいったのに?」
「ぐっ、鋭いわね……とにかく今日はこれ。明日は……頑張ってみるから」
「うん!」
満面の笑みで頷いた芽吹は、弁当の蓋を開けて割り箸を割る。少々歪に割れたが、それを気にすることなく握って焼き鮭をつついた。
「こら、食べる時はちゃんと“いただきます”って言うのよ」
「あ、いただきますっ!」
「全く……いただきます」
勢いよく食べ始めた芽吹を見て夏凜は微笑み、自分も焼き鮭弁当を食べる。しかし、内心は不安でいっぱいだった。
(見たところ記憶がない……のよね。かろうじて名前は覚えてるみたいだけど……)
元気そうに見えるが、以前の記憶が無くなっているということは、最初、全く知らない場所で、全く知らない人に囲まれて、芽吹は相当不安だったはずだ。だがそんな中で、まず自分に懐いてくれたのだ。なら、出来ることをしていこうと、夏凜は強く思う。
「──じゃあ改めて。あんたの名前は楠芽吹、私の名前は三好夏凜。これからいろいろ決めていくわ!」
夕飯を食べ終え、テーブルに紙を広げた夏凜が真剣な眼差しで言った。
「なにするの……?」
「芽吹、こんなにちっこくなった以上、樹海化しても戦わせる訳にはいかない。だから巫女と……えっと、ひなたお姉ちゃん達と、一緒にお留守番をするの」
幼女化以降、変身者である芽吹に異常が発生したためか、勇者専用端末も何らかの不具合が見つかり、起動不能となっていた。今は恐らく、ひなたが預かって大赦に届けてくれたので修復中だろう。
「それで、お留守番中は巫女のお姉ちゃん達と仲良くね」
「どうすればなかよくなれる?」
「そうね……じゃあとりあえず──」
夏凜は教えた。自身が持つあらゆる知識を。子供がそんなにいっぺん覚えられるのかとも思ったが、芽吹はすんなり覚えてしまった。
* * *
風呂場にて、夏凜は芽吹をバスチェアに座らせて髪をしっかり泡立たせる。小さな身体は弱々しく、鍛錬で付いた傷痕なんかひとつもない、綺麗な白い肌だ。
「少し我慢してなさいよ。シャンプーハットなんてないんだから」
「ん」
ギュッと強めに目を瞑った芽吹は、身体を強ばらせて洗い終わるのを待つ。
「わしゃわしゃ……痒いところはない?」
夏凜がそう聞くと、芽吹がこくこくと頷くのでシャワーを手に取り、お湯で泡を流す。
「明日は──って金曜日か。なら明後日ね、イネスに行けばいろいろ揃えられるはず……ったく、なんで私がこんなこと。東郷辺りに頼めばだいじょ……いや、幼少期に国防教えこまれたら困るか、戻った時どうなるかわかったもんじゃないわ」
「……ありがとう、かりんお姉ちゃん」
「……そ。じゃあほら、流し終えたんだからお風呂に浸かってなさい。私も身体洗いたいんだから」
「うん!」
幼女となってしまったが、見た目に芽吹の面影を感じる。だが、少し素直すぎる芽吹に、夏凜はもどかしくも思う。
(でもまぁ、たまにはこういうのも悪くないか)
お湯でバシャバシャと遊ぶ芽吹を見て、夏凜はフッと静かに微笑んだ。
(修正報告:きらめきの章において樹海は夜だが、現実世界(神樹ワールドだけど)で夕方の背景を確認。どうやら夜が長いってだけで太陽は健在のようなので冒頭部分を修正しました。)