❀幼女は緑 姉は紅❀   作:ゆーしゃKuro 

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 ( `ᾥ´ )クッ間に合わなかったか!
 ということでメブ誕生日おめでとう!!!

 そして三好夏凜の姉力、全開だァァァァッ!!!


第四話【それには確かに愛情が詰まっていた】

「芽吹〜、そろそろ……ってどこをどうしたらそう着るのよ! あ〜もう仕方ないわね!」

 

 

 夏凜は慌てて、パーカーをゴチャゴチャに着ていた芽吹を脱がして着せ直す。幼い頃の服を残しておいて良かったと思う。芽吹が小さくなったことでサイズの合う服がなかったので、とりあえず銀の体操服を借りていたのだが、さすがにいつまでも借りる訳にもいかないので今日、買いに行くことにしたのだ。

 

 

「『今から出るわ』っと……さ、行くわよ芽吹!」

 

 

「どこ行くの……?」

 

 

「イネスよ、昨日須美ちゃん達と約束したから……あんたの服とかいろいろ買い揃えるの。何が欲しいのか考えときなさい」

 

 

「わかった!」

 

 

 夏凜自身、一体どういう服を選べばいいのかわからない。だから応援を頼んだのだ。待ち合わせ場所兼目的地であるイネスへ、夏凜と芽吹は向かった。

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

「いえーーい!! イネスっ!!」

 

 

「これから〜? 芽吹ちゃん先輩の〜? コーディネートをしちゃうんだぜ〜!」

 

 

「もう2人とも、芽吹さ……ちゃんに、挨拶しなきゃダメよ」

 

 

「あぁそっか。今日はよろしくな芽吹! って、こんな感じでいいのかな?」

 

 

「ん〜、親しみやすいほうがいいと思うんよ〜。芽吹ちゃん先輩、よろしくね〜♪」

 

 

「ええ、きっと似合う服を見つけてみせるから期待していて!」

 

 

 銀、園子、須美の3人は芽吹を安心させるため、くだけた感じで接する。芽吹もそれを見て心を開いてくれたのか、3人の輪の中に入っていった。

 

 

「大丈夫そうね」

 

 

「さすが勇者ですね! 夏凜さん♪」

 

 

「揃いも揃ってお人好しというか……って杏!? いつからそこに!?」

 

 

「まぁまぁ、そんなことより早く行きましょう! 芽吹ちゃんの服……あ〜♪ どんなのにしようかなぁ〜♪」

 

 

「な、なんか1人だけ目的が違うような……」

 

 

 何故かそこに居た杏のことはとりあえず置いておき、夏凜達は早速イネスへ突入した。

 

 

「──きゃあ〜〜! すっごい可愛いよ芽吹ちゃん♪」

 

 

「わ〜そんな鼻血の出し方する人久しぶりに見た〜」

 

 

「そう……これはもう芽ではなく花よ!」

 

 

「何言ってんのか全然わかんねぇよ! あーもう夏凜さん! って夏凜さん!?」

 

 

「お茶碗もお客さん用のじゃアレよね……布団はさすがに自転車には乗らないし……カバーにして、それから……」

 

 

「す、すっごい主婦っぽくなってる……なんだかんだ言って心配だったんすね」

 

 

「そっ、そんなことないわよ! ほら、銀もどれがいいか意見を頂戴!」

 

 

 杏の着せ替え人形と化した芽吹はされるがままで、夏凜も芽吹の使う食器等を選ぶのに夢中になっていた。

 

 

「ふぅ〜いい服見つかってよかったね!」

 

 

「ありがとう杏お姉ちゃん」

 

 

「くはっ! ど、どういたしましてぇ♪」

 

 

 恐らく“お姉ちゃん”と呼ばれるために来たのであろう杏は、成し遂げたような顔で撃沈した。芽吹の服は三着ほど選んだので、とりあえずこれで一安心だ。

 

 

「……うん、よしっ! 買い忘れはなさそうね。それじゃあお会計に───」

 

 

 買い物カゴを見て最終確認をした夏凜がそう言った瞬間……警報が鳴り響いた。その音に驚いたのか、芽吹はビクッと身体を震わせて夏凜にしがみつく。

 

 

「あ、大丈夫よ芽吹。園子ちゃん達は芽吹をひなた達のところに送って! 杏、私達で先攻するわよ!」

 

 

「……夏凜お姉ちゃん、また行くの?」

 

 

「安心しなさい。こんなこと、この三好夏凜にかかれば造作もない。一瞬で殲滅してくるわ!」

 

 

「……う、うん」

 

 

 不安そうに頷いた芽吹に向けて笑みを浮かべ、夏凜は杏と共に敵地へ向かう。

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 樹海──敵は星屑数百、中型が5体に大型が2体。かなり大規模だ。

 

 

「杏、援護任せた!」

 

 

「了解です!」

 

 

 杏は矢を放ち、周りの星屑から殲滅していく。杏が作った中型への道を夏凜は進み、刀を投擲する。

 

 

「早く戻らないといけないんだから、退きなさいバーテックス共ッ! ヤァァァァッ!!!」

 

 

 夏凜がそうして中型を1体討ち、次の標的へ向かう頃、勇者達が集結していた。

 

 

「へくちっ! おかしいわね……誰か噂してるのかしら? はっ! まさか私の女子力に気付いた男子が……!?」

 

 

「風先輩! 風邪なら無理しないで下がっていてくださいね!」

 

 

「あっ大丈夫ですはい。大丈夫だから友奈! 押さないで……って、あひゅぅ!!?」

 

 

「へ? あっ!? わーー!! 風先輩がふにゃふにゃにー!?」

 

 

 結城のゴッドハンドによるツボ押しが発動したのか、風はその場に溶けるように倒れ込む。顔はどこか幸せそうだ。

 

 

「……多いな……」

 

 

「ノープログレム! いつも通り、手早く終わらせましょう!」

 

 

「そこのお二人さん、我らの部長が大変なことになってるのに冷静ね……」

 

 

「風なら……大丈夫だ……」

 

 

「信頼高っ! んじゃあ早く終わらせて駆けつけるためにも、こっちも行きますかにゃ〜」

 

 

「レッツゴー!」

 

 

 棗、そして歌野と雪花が夏凜に続き、中型へ突撃する。杏と合流した遠距離組の東郷と須美は、他の勇者達が戦いやすいよう、邪魔になる星屑を確実に仕留めていった。大型バーテックス……ドリフォロスとスコーピオン・バーテックスも難なく撃破。全く問題なく戦闘を終えるのだった──。

 

 

「あ"ーーー怖かったよぉぉぉ!!!! やっぱりメブが居ないと私死んじゃうって!!!!」

 

 

「……加賀城、うるさい」

 

 

「えーー守ってよしずくぅーー!!!」

 

 

「あ?」

 

 

「あっ、シズク!? すみませんすみません……でも守ってよぉぉぉぉお!!!!」

 

 

「どわっ!? だからうるっせぇよ!!!」

 

 

 しずくがシズクへ変わった瞬間、ペコペコと頭を下げる雀だが、尚もシズクに泣きつく。それほどまでに芽吹が戦えないという状況に危機感を覚えているのだろう。

 

 

「私、先戻ってるわ」

 

 

「あ、夏凜〜! 今夜アタシが夕御飯作りにいこっか〜?」

 

 

「遠慮しとくわー!」

 

 

「え、遠慮された……!?」

 

 

「お姉ちゃん! ごにょごにょ……」

 

 

「あ、あーなるほど。頑張んなさいよー!!」

 

 

 風の応援に、夏凜は手を振って返した。一昨日、芽吹に料理を頑張ってみると言っておいて、実は昨日、何度かバーテックスの襲来があったこともあり、完全に忘れて買い物をし忘れてしまったのだ。芽吹の機嫌を損ねてしまったので、今日は服などの買い物もして、子供が好きそうなハンバーグでも作ろうかと思っている。

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 一方、勇者達が戦闘中……勇者達の帰還を待つ巫女達と共に居た芽吹は───。

 

 

「よろしくお願いします。楠芽吹です」

 

 

「よ、よろしく」

 

 

 きちんとお辞儀をして自己紹介をした芽吹に、水都は困惑気味に答える。

 

 

「…………」

 

 

「ど、どないすんねん。今日もえらいピシーッと静かに座ってるで……?」

 

 

「そ、そんなこと言われても……! あーそうだ! 花本ちゃんに任せよう!」

 

 

「はぁ!? あ、こほん。無理ですよ、この状況で楠さ…芽吹ちゃん……を、笑わせるなんて」

 

 

 コソコソと小声で話し合うのは静、真鈴、美佳だ。毎回緊張がほぐれないのかずっと椅子に座っている芽吹を笑わせようとしているのだが……とてもふざけていい雰囲気じゃない。

 

 

「ですが硬くなりすぎても困りますし……」

 

 

「で、ですよね……いつもお茶しながらみんなを待ってる自分が恥ずかしくなってきます……」

 

 

「ぐぬぬ……あかん! こんな静かな空間耐えられんっ! 桐生静、名前とは真逆に行くでーー!!!」

 

 

 そう言って、静は芽吹の前に仁王立つ。息を大きく吸い込み、渾身のギャグを放つ。

 

 

「布団がッ! ふっっっ飛んだぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

「風お姉ちゃんが居ないのに……?」

 

 

「ぶはっ!! ま、まさかの返し!?」

 

 

 と、まさかの返り討ちにあった静は必死に笑いを堪えるが、耐えきれなかったのか数秒で吹き出した。

 

 

「め、芽吹せんぱ……ちゃん!」

 

 

「亜弥お姉ちゃん……?」

 

 

「ひゃっ、はい! あ、じゃなくて……何か食べる? お菓子いっぱいあるから遠慮しないで食べていいんだよ?」

 

 

 そう言って亜弥は、芽吹が幼くなってどう接すればいいのかわからなかったが勇気を振り絞ってお菓子を差し出す。しかし、それを見た芽吹は椅子から降りて、頭を深く下げる。

 

 

「今日は夏凜お姉ちゃんがご飯作ってくれるから、ごめんなさい」

 

 

(((あっ、ご馳走様です──)))

 

 

 巫女一同、微笑みながら心の中でそう思うのだった。

 

 

「今度は、お菓子食べるね!」

 

 

「う、うん! みんなでお茶しようね!」

 

 

 こうして、芽吹と巫女達との距離が縮まってすぐに夏凜が戻ってきて、途中だった買い物も無事済ませて、小学生組ともお礼を言って、夏凜と芽吹は我が家へ帰ってきた。

 

 

「ふぅ……さぁ完成よ! 名付けて、“完成型勇者ハンバーグ”よっ!」

 

 

「いただきますっ!」

 

 

 完成したのは大きめのまんまるハンバーグだ。芽吹がナイフを入れると、肉汁がソースと混ざり合って滴る。グーで握ったフォークで刺し、芽吹はそれを口に運んだ。

 

 

「んむ〜♪」

 

 

「ほら、口にソース付いてるわよ」

 

 

 口の中で肉汁が溢れ、玉ねぎのシャキシャキとした食感と共に肉の味がじんわりと広がる。頬張った時に付いたソースを夏凜が拭うと、芽吹は嬉しそうに笑った。

 

 

「その笑顔が見られたなら大成功ね」

 

 

 夏凜はそう言いながら釣られて笑みをこぼし、少し焦げた自分のハンバーグを食べるのだった。


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