狂心者 作:no w here
自身の通う神山高校に徒歩で向かっていく。
この背丈で和服という世間一般では考えられない服装である以上、悪い意味で浮いていた。神山高校は公立高校であり、制服*1の着用義務はだいたい特別な行事―――入学式や卒業式のみである。ただ、私服というのは組み合わせなどを考えると面倒なのか、全員揃って中学時代の制服を用いているようだ。
とはいえ―――
「おはよう、今回は和服だな!」
―――おはよう、朝から元気だな司。後声のトーンは落としてくれ、頭に響く。
「ふむ?体調が悪いのを無理してきたのか?」
首を横に振る。金髪の青年の隣にいる、紫に水色のメッシュを入れた青年が「あぁ」と小さく声を上げた。
「その感覚は分かるよ。器材の開発とかに凝るとそうなるよね」
―――そうだな、類。寝る間も惜しんだ結果の自業自得ではあるが、司の声は良くも悪くも頭に響く。
「良くも悪くもってなんだ、良くも悪くもって」
―――通りやすい大きな声だからな。
「彼だけマイク無しでステージをやっても、何の問題もないからね」
―――それは凄いな…
「そりゃ、声っていうのは姿が見えなくても主張できるからな!肺活量のトレーニングとボイストレーニングは並行してるぞ!」
―――3変人に数えられるのは甚だ不本意なのだが。
神山高校の3変人であり照己の高校で出来た3人の友の内の2人、天馬司と神代類を見ながらそう思う。学校でだいたいやらかすのは類で、司においてはその被害者という立ち位置が定番なのだが…2人揃って目立つ髪色と整った容姿なので嫌でも目立ってしまう。
その中に何故居るのかが未だ分からない。基本的には2人がやらかしている時傍観に徹したはずだが…。
「と、そろそろ始業になるね。また昼休みに屋上で」
類に言われて学校の大時計を見る。始業まであと10分、確かに教室へ向かったほうがいいかもしれない。
「そうだな、準備もあるだろうし…授業中に寝るんじゃないぞ、
司からの言葉に頷き、下駄箱へ向かう2人を見送りながら自身も下駄箱へと移動し、靴を履く。内容が分かり切っている授業等聞く必要もないが、教師方から覚えが悪いより良いに越したことはない。
昼休み、屋上へ向かう途中。
神山高校では学年が上がる毎に下の階に移行する。その性質上、保健室や校長室・事務所といった設備は第一校舎1階、3年教室及び3年職員室は第一校舎2階…となる。屋上は最上階、1年の教室を経由する必要がある。
「あ、照己先輩じゃん」
桃色の髪の
尚そのことを対面時に言った結果喧嘩に発展し、さらにはそれを原因として神山高校から苛めという
―――おはよう、でいいのか?瑞希。
「うん、おはよー。3変人の2人組はもう屋上に行ってたよー」
―――その言い方はやめろ、あの2人程問題は起こしてない筈だ。
「流石に私服で和服を選ぶのはレベル高いと思うよ?でも似合ってるね、なんていうか…様になってる?着させられてる感が全くないや」
―――まあ、着込んで長いからな。瑞希も似合ってるぞ、リボンを変えたのは気分か?
普段つけている赤いリボンの中に白いフリルが目についたので聞いてみる。
「あ、そこに気付くのは流石だねー。うん、模様の付いた可愛いリボンがあったからつい」
―――その”つい”で前よりも可愛くなってるのは流石だと思う。と、2人を待たせてるし、また時間があう時に。
「ありがと。あー…照己ってナイトコード使ってる?」
首を傾げながらも頷く。…それがどうしたのだろうか?
「持ってるなら丁度いいや、アドレス渡しとくねー」
―――基本作業しているが、片手間でいいのであれば。
…作業というには、色々とおかしいが。多分近いものは其れだろう。
「うん、よろしくー。それじゃあねー」
瑞希が離れていくのを見送り。
「そう言えば左手使ってる様子ないけど、大丈夫?」
一瞬詰まったが、頷く。それを見て一瞬考えるようにした後、そのまま歩いて行った。
…流石に、人をよく見ている。
否、見られ続けたからこそ見方が分かる…か。
そう考えながらも屋上へ向かい―――4人の姿が伺えた。
―――取り敢えず確認だ、何故よりによって宮女の生徒がいる?また3変人に余計な尾びれがついたうえで奔走することになるのか?
「うん、まあそういうことになるんだろうね。いつも世話になってるよ」
「…、えっと…類の友達…って…」
溜息を吐く。
この様子だと色素の薄い少女は喧嘩の事についてある程度事情を知っているらしい。
だが…瑞希よりも濃い桃色の髪の宮女制服を着た少女についてはなぜか此方を見て顔を青ざめさせていた。…照己は特に何もしていないはずだが…?
―――照己 縁。司と類の友人だ。
「…草薙寧々、です…えむ?」
草薙の言葉に反応せず、そのまま司の背に彼女は隠れた。全員が困惑したような表情を浮かべる。…このままでは照己が原因で楽しめなさそうだ、もう一度溜息を吐く。
―――司、類。今回は教室に戻る。
「あ、あぁ。分かった」
「でも珍しいね…初対面であれば笑顔を浮かべているえむくんが、此処まで怯えるのは初めて見たよ」
―――深淵でも見たんじゃないか?
適当に返しつつ、軽く手を振りながら屋上から降りていく。…恐らくえむと呼ばれた少女には"
―――似た存在を、知っているか…か。
その後、取り敢えず午後の授業を受け続けた。