狂心者   作:no w here

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独自設定、独自解釈多数注意です

これにおいては非公式設定であり、この小説内のみ適用されます。


3:変化/離

「…そう言えば、このセカイに来てからそれなりに時間が立ったね」

 

 オッドアイの無表情なバーチャル・シンガー「ミク」がわたし達を見ながら呟いた。わたしはそれに言葉を返す。

 

「そうだね…何か、伝えたい事があるの?」

 

「うん。…これは、セカイについての話。片耳に挟む程度で良いから、聞いてくれるかな?」

 

 ミクからの「まふゆが関わらない」初めての頼み。…余程の事なのだろう、光を映さない瞳の奥から真剣みが微かながらも伺えた。

 

「わたしは構わない」

 

 答えた後にまふゆを見る。…特に反応はないが、もしも拒否するようであれば即座にセカイから出ていくだろう。これは、恐らくだが「いいよ」という事だろうか。

 

「ボクも大丈夫だよ、MVの方結構進んでて余裕あるし!」

 

「…絵の方が詰まっちゃってるし、気分転換程度になるから私も聞いて行くわよ」

 

「素直に"聞く"って言えばいいのにー」

 

 絵名の反応に瑞希が揶揄う。絵名がそれに反応して騒ぎが大きくなるのは一連の流れだが、静かすぎるこのセカイには丁度いいのかもしれない。

 

 …だって、ほら。まふゆも、ミクもほんの少し笑ってるから。

 

「うん、ありがとう。…セカイについて改めて説明すると、"人々の本当の想いを映し出す世界"で"想いの数だけ存在"する。そして"想いに応じて姿形を変える"性質を持っている。これが、皆のセカイに対する認識だと思う」

 

 全員が頷く。

 

「そして"セカイへ向かう、及びセカイから戻るにはuntitled或いはuntitledだった曲の再生及び停止が必要"。…でも本当の想いは誰もが持っているのに、untitledが贈られる人はほんの一部なのには理由がある」

 

「…理由?」

 

 「そう、理由」とミクが頷き、わたし達を見る。…推測を答えてほしい、という事なのだろうか?

 

「…確かにこういうのって都市伝説とかでも語られそうなのに、特に何も言われてないよね?"無題の音楽を流すと光に包まれて消える"なんて」

 

「確かに。少なくとも私のクラスからはそういう噂話を聞いたことは無いわ」

 

「…まふゆは?」

 

 わたしがそれらを確認する環境が無い為、まふゆへと話を振る。

 

「…特には。でも…少なくとも、此処にいる皆は正負に関わらず"強い想い"があると思う」

 

 沈黙する。

 …わたしで言うのであれば「皆を救える曲を作りたい」…だろうか。

 

「そうだねー…バーチャル・シンガーは"想いの持ち主が本当の想いを見つけ出すサポートをする"っていう所から、"強い本当の想いを見つけていない"人が該当者、なのかな?」

 

 瑞希が確認するようにミクへと目を向ける。

 …驚くことに、彼女は首を横に振った。

 

「ううん。バーチャル・シンガーは"untitledを歌で表現する人"にしか現れない。でも、untitledとセカイについては"強い想いさえあれば、現れる"」

 

「え、それなら誰でも―――あ、いや」

 

「何かわかったの?瑞希」

 

 瑞希が頷き、恐る恐るながらも推論を告げる。

 

「"強い想い"が抑えられない人、或いは折り合いが付けられない人にuntitledが贈られる…?」

 

 沈黙と共に、ミクが小さく首肯した。

 

「…どういう事?」

 

 理解しきれず、疑問の声を上げる。それに対してまふゆが答えを返してくれた。

 

「たぶん、本質的には"防衛機構"が近い。untitledとセカイはセットで、"強い想いに潰されないようにする"性質が強いんじゃないかな。少なくとも、私は静かだとは思うけど。それ以上も、それ以下も無いし」

 

「セカイは"その人の強い想いをセカイ内に出力する"事で"現実世界のその人が自身の想いに潰されない"ようにする。untitledは"セカイと現実世界を繋ぐ鍵"で、untitledだった曲はuntitledに加えて"歌う事でバーチャル・シンガーと共に強い想いを放出"する。…まふゆはセカイに"色を無くした強い想い"を留められない程に押し込んだ結果、前のようなことになった」

 

「…え、それじゃあまた"ああ"なる可能性があるの?」

 

 絵名の言葉に、わたしが小さく首を横に振る。

 

「多分大丈夫。untitledだった曲―――"悔やむと書いてミライ"が放出のシステムを担ってる。前までは吸収するだけだったから、飽和したけど…そういう事、でいいんだよね?」

 

 ミクが頷く事で、まふゆを除く皆の間に走った緊張がほどけた。

 でも、唐突になんでこんな話をしたのだろう。…まふゆの事についてひと段落したから改めて説明したのかもしれない。

 

 でも、何か。それ以上に言いたいことがある。そんな気がする。

 それに反して、彼女は「聞いてくれてありがとう」と、話を切り上げてしまった。

 

 …片隅に、記憶しておこう。

 

 役に立つ時がいつか来るかもしれないし。

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