狂心者 作:no w here
この作品は独自路線をたどる予定しかありませんが、其れでも見てくれる方はこれからもよろしくお願いします。
地面に血の跡を残しながら、彼女へついて行く。歩いてきた先を微かに見やると、やはりというか先程のように銀色のホログラムとなって足跡が霧散していた。…この様子なら、我が来たという痕跡は見つからずに済むだろう―――アリアドネの糸を伝手に端から端まで歩こうと思う人が居なければ、だが。
再度彼女―――初音ミクの方を見やる。彼女が歩いて行くと、微かな光が避けるように道を開けていった。その様子を彼女は見慣れているのかもしれない―――それを見て特に反応を示す様子が無いのだ。
右眼に力を集める。
―――…成、程
込めた力を霧散させ、彼女に追随する。
お互いに話すことは無い以上、会話が発生する事も無い。"まふゆの想いのセカイ"
―――救えと、脳裏で
どれほど進んだだろうか。
ふとした時に彼女が立ち止まり、此方を見る。
「…ごめん、彼女達が来た」
―――このまま歩き続ければいいのか?
「…いや、此処で待ってほしい。…いるよね」
…相手からしたら我は"セカイの不純物"だろうから、監視の目を置きたいのは当然か。
彼女が呼びかけると同時、微かな光の奥から
"えぇ、いるけれど"
「彼を、見ていてほしい」
"彼、ね…えぇ、分かったわ"
女性の形をした光がミクへ頷く。それを見た後、ミクはホログラムとなってその場から姿を消し、2つの人影―――光と血染めが残された。
"初めまして、かしら"
―――初めまして、だな。名乗ろうにも、セカイが赦すかは分からないが…自己紹介でもするか?
会釈をされ、そして返す。
"そうね。念のため頼んでもいいかしら"
―――…―――という。
"―――よ"
お互い、正しい名前を知る手立てはないらしい。
だが、彼女の
―――よろしく頼みたい、―――。
"よろしくとは言えないけれど、お互いに害がない内は此方からもお願いするわ"
此方としてはそうありたいのだが…相手としてはやはりというか警戒は解かれない。…敵意を向けられないだけ御の字だろう。
"一つ、聞きたいことがあるのだけど"
構わない。その意図をもって頷く。
"あなたには、
―――
"成程、
―――ならば
そうね、と彼女が言葉を返す。
あくまでセカイは
共感を求めていない見知らぬ誰かに、分かっているように言われる事程不快な事も無いだろうから*1。
授業も終わり、放課後。
昇降口で青柳後輩から課題とノートの入った袋を受け取り、瑞希の家へと向かう。瑞希の家へ最短距離へ向かうなら、宮益坂女子学園の前を通るのが一番早い。だが道中に住宅街や公園等の建造物が多く、整備された路面を用いると迷いやすく遠回りになる。
故に、周囲に目を見やる。スクランブル交差点は人の目がある。その為裏路地へ歩き、人目のない場所へと向かっていく。
暫くして人目を無くした後。
―――跳ぶか。
自身を挟む壁を交互に蹴るようにして、上へと駆け上がる。ブロック塀が見えたところで其方へと跳び、その上を走っていく。境に狭い道が見えるが―――跳び越える。文字通り
視界の端に、転びそうになった居る少女。
―――、ッ!
踏みしめ、其方へと跳ぶ。その音で傍にいた少女が此方に意識を向けたが、関係ない。黒髪を後ろに纏めた少女が倒れ込む先へ左腕を遮るように置き―――、微かな重量感。
―――大丈夫か?
「えぇ、大丈夫よ。助けてくれてありがとう」
「朝比奈さん、大丈夫!?」
「この人が助けてくれたから、大丈夫」
…幸運にも、この2人しか見ていないらしい。
―――できれば、この事は話さないでほしい。友人へ課題を届ける途中で、偶然見かけただけだ。
「え、見かけたって…此処、周りは住宅街の筈―――」
薄い水色の髪を伸ばした少女が言葉をつづける前に、小さく一度屈伸し。
―――こういう事だ。
再度ブロック塀の上へ飛び乗り、走っていく。背中から微かに話し声が聞こえるが、走り続けてしまえばそれも聞こえなくなった。
瑞希の家の屋根が見えるあたりでブロック塀から飛び降り、玄関へ向かう。見えるチャイムを鳴らし、しばらくすると「はーい」と瑞希の声が聞こえた。…どうやら今回は行き違いとはならなかったようだ。
「…あ、照己先輩。おはよー」
―――おはよう、青柳後輩から頼まれた課題と、ノートだ。
時間錯誤な挨拶を交わした後に課題及びノートを渡す。それを見て瑞希は少し嫌そうな顔をした。
「…補講でどうにか―――」
―――分からないから判断は任せる。あぁ、ノートについてはロッカーに入れておいてくれればいいらしい。
「…冬弥くんもまめだなぁ…ありがと、取り敢えず明日友達と映画を見に行くついでに課題とノートを返しておくよ」
―――そうしてくれると助かる。
それだけ返して帰ろうとし―――
「照己先輩、折角来たんだしお茶でも飲まない?」
―――本音は?
「可愛いかどうか、服のコーデを見てほしいなって。気兼ねなく頼めるのって先輩しかいないからねー」
溜息を吐く。素直に言えばいいのに、この後輩は何処かひねくれている。
―――…あまり可愛い等の意見は言えないかもしれないが、それでも良ければ。ちなみに今の服装はどちらかと言えば清楚の方が強いぞ、強い青よりも水色や桃色等の淡い色合いの方が此方としては可愛いという印象を持ちやすい*2。
「ん、やっぱりそっかー。そうなると…あ、玄関で話し込む内容じゃないね。あがってあがってー」