変幻自在のウマ娘   作:ジョイン君

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初投稿です。
まずは掛からせます。


変幻自在のメスガキ

 マヤノトップガン。

 

 現在トゥインクルシリーズを活躍中の俺の担当のウマ娘である。

 

 お転婆で飽き性な部分があり、本人の理解の速さも相まって極端な行動をとってしまうことはあるが、俺はそんな彼女とトレーナーとウマ娘としてお互いを信頼し支え合う相棒だ。

 

 俺たちはトレーナーとウマ娘として二人三脚で邁進した結果、いくつかの重賞を勝ち取れた。

 

 次の目標をURAファイナルズ優勝へと見据え、総仕上げのトレーニングの日々を過ごしている。

 過ごしているのだが……

 

 その日は練習後のチームルームにて、机に向かいURAファイナルへ向けての対策や作戦の資料などを処理していた。

 ひと段落して椅子の背もたれに寄りかかり天井を仰いで目頭を軽く揉んでクールダウン、ふと目を向けるとシャワーを浴び終えたにも関わらず寮にも戻らずソファでごろごろ転がっていたマヤノが妙に挑発的な笑顔を浮かべながら近づいてくる。

 

 するりと近づいてきたマヤノはこちらが反応を示す前に俺の手を取り指を絡めるようにつないでくる。

 俗にいう恋人繋ぎ、という奴だ。

 薄い椅子の背もたれを挟み後ろから抱きしめてくるような形で繋いだ手を俺と背にいるマヤノのお互いに見えるような位置に持ち上げてくる。見せつけるように。

 

 繋がれた手を解こうと試みたがマヤノは外すまいとグッと力を込めてくるのだからたまらない。

 ウマ娘がその気になればこの手は氷菓子のように脆く崩れ去るというのに。

 

「……トレーナーちゃん❤」

 

 そんな状況で耳元に吐息交じりに語り掛けてくるのだから参ってしまう。

 獲物ににらまれた蛙の気分とはこういうものなのだろうか。

 

「マヤノ。今日はこれ以降にミーティングもないし門限も近いだろう。早く寮に帰りなさい。」

 

 努めて冷静に、顔色を変えぬようマヤノへとそう促す。

 椅子の背もたれがあってよかった。

 背中に密着されていれば跳ねた鼓動を悟られてしまった事だろう。

 

「帰っちゃっていいの? ……こんなにドキドキしてるのに❤」

 

 なぜ悟られた!?

 思わず疑問が口から飛び出しそうになったが、繋がれ絡み合った手を目の前で動かされる。

 そりゃ手を握ってれば脈はバレバレですわ。

 

「あまり大人をからかうのは感心しないな。マヤノが普段から言っているキラキラした大人には遠い振る舞いではないか?」

 

 出来るだけ視界に繋いだ手が映らないよう、息を落ち着かせながらマヤノを嗜める。

 視界から外せば少しは落ち着くと思ったのに目を閉じたことによって耳元のすぐそばから妙に艶めかしい息遣いは続いていることに再度気づいてしまったのでどれだけ意味があるかは不明だが。

 

 ここ最近の彼女は、二人きりになるとこのような過度なスキンシップを取る傾向にある。

 元からデートをねだったり恋人のように振る舞うことを求める傾向にあったが、それらはどちらかというと憧れを再現しているような感じだったはずなのだが、どうも最近は何かこう、上手く言えないのだが何かが変わったように見受けられる。

 明るく天真爛漫な彼女が突然切り替わるこの空気感はゾクリ、と何かしらの危機感みたいなモノを感じずにはいられないのだ。

 なのでこの状況からの早期脱出のために敢えて彼女を煽るような言葉を選んだのだが、

 

「え~~~? ちょっと手を握られただけで心臓バックバクになっちゃう雑魚心臓のおこちゃまなトレーナーちゃんがそんなこと言っても説得力ないな~❤」

 

 

 

 

 ―――は?

 

「トレーナーちゃんはマヤに夢中だからちょ~っと触っちゃっただけですぐに心臓ウッキウキになっちゃうんだもんね~❤」

 

 は?

 

「いい大人なのに、マヤが勝負服の時におへそとか太ももとかつい見ちゃってるもんね~❤ ……マヤが勝って観客席に手を振ってる時、胸すっご~く見てるよね? 気づかれてないと思っちゃったかな~❤」

 

 は?

 見てないが?

 小振りだがきっちりと揺れる母性の象徴とかアウトオブ眼中なんだが?

 

「今だって必死に言い返すの我慢しちゃってるの、マヤは「わかっちゃってる」んだよ~❤ それにぃ……トレーナーちゃんこんな風にマヤみたいな子にいじめられるのが本当は好きだもんね?」

 

 は?

 やめろマヤノ。

 それ以上は、それ以上踏み込んだら……!

 

「ざぁこ❤ 雑魚トレーナーちゃん❤」

 

 

 

 

 

 繋がれていた手を振り解き椅子から立ち上がりマヤノの方へと振り向く。

 マヤノは相変わらずクソ生意気な笑みを浮かべているが、俺の怒りは感じているのか、先ほど自分が転がっていたソファへ少しづつ後ずさりしているのが見える。

 ガキが……大人を舐めるからだ。

 

「あれあれ~? 怒っちゃった? 沸点まで雑魚だなんてトレーナーちゃんがざこざこのざぁこって証明されました~❤ ゆーこぴー?」

 

 マヤノは完全にソファに追い込まれながら必死に虚勢を張っているがもはや逃げ場はない。

 逃げ場を与えぬよう両手に指を絡ませがっぶり手四つのまま大人の圧でソファへとその小さな矮躯を沈みこませる。

 マヤノは表情以外は取り繕えずソファに押し倒されるがままだ。

 大人を舐めるなよメスガキ。

 

「……大人を舐める生意気な子供には教育が必要だな? 今ならまだ引き返せるが?」

 

 出来るだけ平坦な声音で俺はそう告げる。

 最後通牒だ。

 いくらマヤノが大人を舐めた生意気なメスガキの本性を持っていたのだとしても俺と彼女は今までお互いを支え合って戦ってきたパートナーだ。

 ここで反省し謝るのなら大人として彼女を正しい道へ導くのも大人としての役目―――

 

「あ~~~直前で日和っちゃうかぁ~~~❤ よちよち❤ 雑魚トレーナーちゃんにしてはがんばりまちたね~❤ いいところまで行って垂れウマ一直線で負けちゃうかわいそうなよわよわトレーナーちゃん……今離せばマヤも大人の女性だから、負け犬なトレーナーちゃんでも見捨てないで飼ってあげてもいいよ~?」

 

 は?負けてないが?完全勝利まであと一歩でとどめてやったというのに生意気なメスガキが……!

 どうやら"理解らせ"が必要なようだな……!

 大人を味わえ、マヤノトップガン……!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただーいまー!!」

 

 栗東寮、マヤノトップガンの自室。門限を少々破ってしまったため寮長のフジキセキからお小言をもらってしまい結構遅い時間になってしまった。

 マヤノトップガンは機嫌がよさそうに同室のトウカイテイオーに帰宅の挨拶を向ける。

 

「おかえりー。 今日はずいぶん遅かったね?」

 

 門限ギリギリになることはあれど基本的にはきちんと帰ってくるマヤノトップガンにしては珍しいと思いトウカイテイオーは疑問をぶつける。

 

「えへーー……ひ・み・つ❤」

 

 首元の絆創膏を愛おしそうに擦りながら少し頬を染めてはにかむように微笑むマヤノトップガン。

 トウカイテイオーは同室の少女の普段の天真爛漫な様子からは想像しにくい仕草と答えに妙な艶かしさを覚え、なぜだか自分まで少しの気恥ずかしさを覚えるがいつもの笑顔に戻り微笑みかけてくるマヤノトップガンを見て軽くかぶりを振っていつもの調子を取り戻す。

 

「おやおやー? 門限破りをしたクセに、何かいいことがあったみたいだね?」

 

 不意打ちをかましてくれた同室の彼女への意趣返しも含めそんな風に水を向ければ

 

「ふふーん♪ マヤは大人のオンナだから秘密が増えると魅力が増して更にキラキラするの! テイオーちゃんにはまだ早かったかなぁ?」

 

 なんということか、向けた水をそのまま浴びせられたような答えが返ってくるではないか。

 

「何をぅ! マヤノだって見た目はまだまだ子供ーって感じのクセにー!!」

 

 マヤノトップガンはこうして妙に大人ぶった事を言ってくることがたまにあるが、こうして同じ土俵に引っ張り込んでやれば、ぷんすかという擬音が聞こえそうな怒り顔でお互いやいのやいのと言い合うのだ。

 なのでいつもの通りにトウカイテイオーは煽り返したのだが、

 

「ふふっ、そうだねー。 だからまだまだもっともーっとキラキラして夢中にさせないとだなぁ」

 

 部屋に入ってきた時のように妙に大人びた仕草で、大人みたいな顔をしてそんな事を呟くマヤノトップガンにまた驚き、そしてなんだか知らないうちに同室の彼女がとても大人になってしまったようで、寂しさのような、焦りのような何かをトウカイテイオーは感じるのであった。




「掛かってしまっているようですね。どこかで一息つけるわけもないのですが」
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