大海原を行く白銀 〜Arpeggio of Blue Steel〜   作:Many56

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新しく書き直す事にしました。
元に比べればかなり文章は良くなったはずです。


Prologue 〜終わりの始まり〜

 

 

西暦2039年某日

北極海

 

地球温暖化の影響により、全ての氷が溶けて海面が露わになった永遠の冬の地。

普段であれば静寂に包まれた灰色の世界だが、今においては轟音鳴り響く死地と化していた。

一隻の白銀色の戦艦に対し、それと酷似したシルエットを持った黒に赤いタトゥーのような模様が入った戦艦が無数の砲火を浴びせつけている。

正に、完膚なきまでの蹂躙であった。

そして、そこから10km程離れた地点で一隻の蒼い艦が立ち尽くすように浮かんでいる。

まるで航空母艦の様なシルエットをした蒼い艦の甲板上に、軍艦には全く合わない華やかなロリータ風ワンピースを着た少女が絶望感に顔を染めて、白銀の戦艦が蹂躙されていく様子を眺めていた。

 

「お姉……ちゃん? 一体、何を……やっているの……?」

 

焦燥と哀しみがない混ぜになった震える声が、少女から漏れ出た。

そしてそれは、黒い戦艦の艦橋の上にいる白髪の少女へと届く。

 

「見れば分かるでしょ、シナノ。○○○を沈めているのよ」

 

白髪の少女が淡々とした声で、なんでもない事のように発した。

そしてそれは、蒼い艦の少女   シナノの焦燥と哀しみをより駆り立てる。

 

「どうして、どうしてこんな事を……? なんでそんな風に、何でもない事のように答えられるの⁉︎」

 

その悲痛の叫びは、黒い戦艦の少女へと確かに届いた。

しかしだ。

その言葉に対する返答は返って来ない。

 

「答えて。ねえ答えてよ、●●●‼︎」

 

「もうお姉ちゃんなんて……○○○なんて、要らないのよ……!」

 

更なるシナノの叫びに対して、白髪の少女がより淡々と   より冷徹な声でシナノへと告げた。

それに呼応して、黒い戦艦の前部に設置されている2基の大型三連装砲が旋回し、蒼い艦に向けて6条の真紅の閃光を放った。

 

「キャア‼︎」

 

蒼い障壁がその閃光を弾くも、強い衝撃がシナノを襲った。

 

「だからシナノ、止めないでくれるかしら?」

 

冷たい声で、白髪の少女がシナノに告げる。

しかし、シナノは自身の姉を止める事をやめはしなかった。

 

「お願い! ●●●、お願い‼︎ もうこんな事はやめて‼︎」

 

しかし、白髪の少女は何も答えない。

代わりに、黒い戦艦の攻撃は更に強まるばかりだった。

 

「もうやめて! 本当に、お願い……だから!」

 

力なくシナノが言葉を発する。

そして、シナノは大きく息を吸い込み、叫ぶ。

 

「●●●、もうやめてえぇぇぇぇぇッ!!!!!」

 

先程とは比べ物にならない程、激しい悲鳴がその地に響き渡った。

シナノの全力を振り絞った叫びで、自身の姉を止めた。

しかし、白髪の少女は止まらない。

 

「五月蝿い、シナノ! 黙って頂戴……!」

 

そして、白髪の少女からはシナノを恐怖と絶望の底へと突き落とす様な言葉が発せられた。

そしてその言葉は、ドス黒い憎悪と殺意に染まっていた。

 

「妹も、もう要らない。貴女も、○○○と同じように殺してあげるわ」

 

その言葉と同時に、黒い戦艦の周囲に浮かんでいたレンズのような機器の内の1つがシナノへと向きを変える。

そして赤黒い光のエネルギーがレンズへと収束していき、放たれる。

赤黒い閃光は障壁を軽々と突き破り、蒼い艦の右舷を抉り取った。

 

「ウグッ!」

 

その凄まじい衝撃で、シナノは力なく倒れた。

そして、白髪の少女の方へと目を向ける。

 

「お姉ちゃん……」

 

それは最早、自身の姉ではない何かに思えて仕方がなかった。

シナノの心は絶望と恐怖に染められた。

そして、艦の進路を180度反転させて逃げ出してしまった。

 

 

 

同時刻

 

黒い戦艦の砲火に晒されて大破した白銀の戦艦の下には、ウェディングドレスを彷彿とさせる程美しい白いドレスに身を包んだ長い黒銀髪の女性が、涙を流して、そして何かを諦めるように、ゆっくりと暗い海底へ沈んで行っていた。

 

「お願い、あの子を……」

 

彼女がその一言を呟くと、白く光るリングが現れて、女性の前を航行している3隻の潜水艦の内の1隻が白いリングに包まれていく。

直後、その潜水艦がゆっくりと鮮やかな蒼へと船体の色を変えていく。

そして、隊列を離れて暗い海の何処かへと消えていった。

その一方で、黒銀髪の女性は銀色の砂へと姿を変えながら、崩れながら海の底へと霧散していった。

 

 

 

 

 

数時間後

ベーリング海付近

 

「ウワアアアァァァァァアアアァァァァァ!!!!!」

 

艦の甲板の上で1人、叫び上げるように泣くシナノの姿があった。

そしてそれは、静かな海の上で響き渡っている。

シナノが泣き止むまではかなりの時間を要することになった。

 

そして泣き止んだ時、シナノは一通の電文が届いている事に気付いた。

 

「うぐっ、何……コレ?」

 

恐る恐る内容を確認する。

電文にはただ一文、こう書かれていた。

 

『あの子を助けてあげて、人の温かい心で』

 

たったそれだけだった。

しかし、シナノの中にあった哀しみと絶望を晴らすには十分だった。

シナノはその一文を読み、目元の涙を拭った。

そして、決意する。

 

「分かったよ、お姉ちゃん。絶対止めて見せるから‼︎」

 

シナノがその言葉を発すると同時に、艦の色が鮮やかな蒼から美しい白銀へと変わっていった。

 

 

 

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