大海原を行く白銀 〜Arpeggio of Blue Steel〜 作:Many56
しばらくは1週間以内ごとに投稿する予定です。
(そこから先は転スラ二次メインになるかと)
西暦2046年
横須賀市近郊
横須賀の軍港全体が見渡せる小高い丘に、1人の少年
そして、進の視線の先には大海原へと旅立ってゆく旧日本海軍の伊400型潜水艦に酷似した鮮やかな蒼き鋼を纏いし霧の
「群像、何でだよ……。何で、俺を置いて行ったんだよ……。何でだよ、群像ぉ!!!!!」
進は胸が張り裂けんばかりに叫ぶも、それはただただ虚しく、夜空の下に響くだけだった……。
2048年
横須賀市
海洋技術総合学院
アイツらが旅立ってもう2年か。
早いものだな。
それに引き換え、俺は未だにただの一学院生。
この学院で、ただのーんびりと虚しく学ぶ事しか出来ない学生。
一緒に
そんな事を考えながら講義を受けていると、横からデコピンが飛んできた。
「痛ッ」
「おい、進。何ボサッとしてるんだ?」
横に目をやると、呆れ顔で俺を見てくる色黒の幼馴染で同級生
「おい、大介。何するんだ?」
「お前がボケーっと虚空を見ていたからデコピン食らわしたんだよ。もしかして、またアイツの事考えていたのか?」
「お前には関係ないだろ? でもまあ、俺達はここで何をしてんのかなって、考えてはいたかな」
「やっぱり群像の事を考えていたんだな。アイツらは海に出て、どこかで“霧の艦隊”相手に戦っているのにか?」
「ああ……」
「やれやれ、いい加減切り替えろよ」
そんな会話をしていると、黒板の前にいる担当講師がこちらを向いた。
「おい、お前達! コソコソと何をしている!」
「「す、すみません……」」
そして、そこから間もなくチャイムが鳴った。
昼休みになったので、俺と大介はそのまま食堂に向かった。
「日替わりで」
「俺も日替わりで」
「あいよ」
いつも通り、注文してすぐに定食メニューの乗ったトレーが渡された。
そして、いつも通りのメンバーを探す。
「おーい、2人共! こっちこっちー!」
「ここの席、取っておきましたよー!」
食堂の奥にあるテーブルには4人の男女がいる。
そして、俺達2人を呼んでいるのはその内の2人
「ありがとう、みほ、沙織」
俺は2人に礼を言った。
「全く、少し遅すぎるんじゃないですか?」
「はは。悪いな」
そう言って、俺は
確かに、普段より流石に来るのが遅かったからな。
そして、康雄の前に座っている太っちょ
「お前、少しはその食い意地を控えたらどうだ? ちょっと太り過ぎだ」
と、大介が太一をからかっている。
「お腹空いてたんですから、仕方ないじゃないですか」
それに対し、太一が反論した。
全く、真面目に食欲を表に出すなって。
「それじゃあ、俺達も食べるか」
「「「いただきます」」」
そう言って、俺達は昼食を取り始めた。
「そういやコイツ、またボケーっとしてたんだぜ」
俺の話題を大介が皆に振り始めた。
「すすむん、またなんだね。もしかして、BL? 恋愛感情とか抱いてたり……」
「んな訳あるか。逆に聞くけど、どうして何でもかんでも恋愛に結びつけたがるんだよ?」
「え〜、だって〜」
やれやれ、沙織はいつもこんなノリだ。
恋に恋する乙女で、少なくとも5割……いや、7割は恋愛の事しか考えていないのではなかろうか?
しかし、この発言を聞く限りBLに手を出し始めたのか?
となると、違う意味でヤバい気がする。
「あはは……。でも、気持ちは分かります。進さんの親友だった訳ですしね」
「今頃、何やってるんですかねー?」
みほに続いて、太一も加わる。
そして、太一の疑問に悪い顔をして発言する男が1人。
「今頃、海の底でくたばってたり……」
「おい、大介! 冗談でもそんな事言うな」
「悪い悪い、流石にちょっとまずかったよ」
「そうですよ。まあ、かつてここで首席だった千早さんに限ってそんな事は無いでしょうけど」
「まあ、南部の言う通りだな。しかし、2年か……」
俺はそう言って天を仰いだ。
いつも思う。
昼休みに日替わり定食を注文して、友人と一緒に昼食を食べる。
いつも通りの変わらない、ささやかな日常だ。
今のご時世、この変わらない日常が、小さな幸せが大切だと考える奴は多いだろう。
だが、俺の心は満たされない。
寧ろ、飢えていくばかりだ。
確かに、日常を大切にするのは当たり前だと思う。
しかし、脅威がすぐそこの海にいる。
絶大な力を持った“霧の艦隊”が世界中の海に蔓延ったせいで、このいつも通りの日常をギリギリのところで保てているという状況だ。
スラムの方では、コレが出来ずに荒れ果てている。
俺の親友は
“霧”の潜水艦であるイ401と他のクルーと共に。
そして、俺はそれを見届ける事しか出来なかった。
それ以来、なんだか毎日が味気なくなった。
群像とは共に、この閉塞した世界に風穴を開けようって誓い合った。
それなのに、アイツは先に行ってしまった。
どこか嬉しいようで、恨めしいような。この事を考える時は、常にそんな気分になる。
そして、午後の講義を終えて、帰宅の途についた。
帰る前に、俺は毎日
横須賀市近郊にある、小高い丘だ。
すぐそこは岸壁になっていて、そこから飛び降りればすぐ海という場所だ。
ここからなら、横須賀の軍港を一望できる。
そして俺は2年前に、ここから群像が出奔するのを見届けた。
ここでいつもアイツの事を考えて、そして帰宅する。
だが、今日はいつもと違った。
先客がいるのだ。それも、今日初めて出会った人物だ。
「君は……誰だ?」
思わず、俺はそう言った。
先客は身長140センチ弱の小学生か中学生くらいに見える少女で、ゴスロリ調の服装に髪はサイドテールになっている。
少女は振り向くと、徐ろに口を開いた。
「私は、シナノ……シナノっていうの」
シナノ、第二次世界大戦末期に建造された航空母艦を連装させる名前だ。
「そうか。俺の名前は進、代銀進だ。宜しく、シナノちゃん」
そう言うと、シナノちゃんはコクリと頷いた。
「ねえ、どうして進はここに来たの?」
よ、呼び捨て⁉︎
初めて会った人、それも年下に呼び捨てにされるなんて思ってもいなかったな……。
まあ、いいか。
「いつも、ここに来るからさ。ここに来るのが、日課になっているんだ」
「どうして?」
「うーん、そうだなあ。海が好きだから……かな」
まあ、これは本当の事だ。
けれどそれ以上の理由として、群像の事があるんだけどね。
何だか、切なくなってきたな。
群像達、元気にしているだろうか?
「シナノちゃんも、海が好きなのかい?」
「う、うん。私、遠くから引っ越して来たんだけど、私も毎日よく海を見てたから」
それ以来、俺はシナノちゃんとこの丘で会い、毎日話すようになった。
シナノちゃんはアニメ好きで、特にボコられグマのボコというアニメの大ファンなんだそうだ。
確か、みほも同じ作品のファンだったな。
一度見せてもらった事があるが、その作品の主人公であるボコは包帯でぐるぐる巻きにされていて、そこらじゅうがツギハギだらけだったりと俺にとっては全くの謎のキャラクターだった。
俺の方からは、学院の事について話した。
シナノはその話について興味津々のようだ。
それも、「入学してみたい」と言い出すほどにはね。
そんな毎日が始まって、1ヶ月が経った。
いつも通り、海を眺めながら和やかな会話をしていると、急にシナノちゃんがこう切り出した。
「ねえ、進。私と初めて出会った時に、海が好きだからって言っていたよね?」
「ああ。それがどうかしたのか?」
「それって違うでしょ。別で理由があるんじゃないの?」
「え?」
「あの時、海を目の前にしていたのに、楽しそうな顔じゃあなかったから。だから、別で理由があるんじゃないかなって思ったの」
急に図星を突かれて思わず反応してシナノを凝視してしまった。
「もしかして図星だった?」
「……やれやれ、鋭いんだな」
そう言って、俺は本当の事を話し始めた。
「海が好きだからっていうのは嘘ではないんだが、ここに来る理由は別のところにある」
そう言って、俺はその場に座り込んだ。
そして、彼女も同じように座った。
「俺の親友に千早 群像ってやつがいる。そいつとは、一緒にこの閉塞した世界に風穴を開けようって約束し合った仲なんだ」
「世界に風穴を……」
「ああ。今、人類は霧によって衰退の一途を辿っている。皆、苦しい生活を強いられている。そして何より、この世界はとても息苦しい。だから、この状況を何とかしたいんだ。けれど、一緒にやろうと決めた相手 群像が、先に行ってしまった。霧の艦に乗ってな。今、アイツは世界に風穴を開けようと奮闘しているのに俺は何も出来ない、してやれない……。それが、もどかしくて堪らない。何とかしたくて、どうにかしたくていつもアイツを見届けたここに来るんだ。どうあがいても何にもならないのに、来てしまう。バカだと思うだろう?」
「……それで、その群像って人と再会出来たらどうしたい?」
シナノが全てを見通すような目で、こちらを見てくる。
どこか、試されているような気分になるな。
この子は一体……?
「そうだなあ……。取り敢えず、何で置いていったのかとか、何やってたんだとか聞きたい事全部聞きたい。それで、溜まり溜まった物を全部言ってやりたい。お前と一緒に戦いたいって」
「そう……」
シナノはおもむろに立ち上がった。
そして、腕を横に大きく広げた。
すると、白く光るリングが大量に現れて、あっという間にドームを形成した。
突然の事に唖然としているのも束の間、地鳴りのような振動が訪れる。
「一体、何が……?」
そして、地鳴りの原因がすぐに分かった。
海中から、巨大な影が姿を見えた。
そして、ドッゴォォォンッ! という海を割るような音を響かせて、影の正体が海中から姿を現した。
それは、全長250メートルはあるであろう美しい白銀の船体を持った航空母艦だった。
「君は、一体……?」
「改めて、自己紹介するわ。私は、元“霧の艦隊”所属、超海域強襲制圧艦シナノ」
「霧の……
タイトル誤字ってたわ……(既に修正済み)