大海原を行く白銀 〜Arpeggio of Blue Steel〜   作:Many56

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第2話です!
リメイク前よりやっぱり大分上手く書けてる気がする。


Depth.02 シナノ発進

 

 

 

突如現れた“霧”の大型艦を前に、俺は茫然として、開いた口が塞がらなかった。

 

「君は、“霧”……なのか?」

 

「元、ね」

 

「元?」

 

「抜け出して来たの」

 

一体どういう事なんだ?

超海域強襲制圧艦ともなれば、“霧の艦隊”の中でもトップクラスの戦闘力を持つ。

それが直接動くなんて普通はあり得ない。

それに、本当に抜け出して来たのだとしたら、何故“霧”は彼女を放置しているんだ?

疑問が尽きず湧き出てくる。

 

「どうして⁉︎」

 

俺の質問にシナノは一度俯いた。

そして、海の方へと向いて再び話し始めた。

 

「私は“霧”を止めたい、止めなければならない。でも、私1人だけではどうしようもできない」

 

「どういう事なんだ? その、君が止めなければならない理由は一体……?」

 

「貴方が言った通り、人類は衰退している。このままでは、人類のみが生み出しうる文明や文化まで失われてしまう。だから、それを止めたい。それに、“霧の艦隊”は“アドミラリティ・コードに基づいて行動しているけど、私はそれの存在に疑問を覚えたの。そもそも、アドミラリティ・コードは一体何なのか。存在の確認すら出来ない物に、何故私達は従っているのかって」

 

シナノの発言にはどこか違和感を感じたが、概ね本心であると思えた。

 

「なるほどな。だから“霧”を止めたい、と」

 

こちらへと振り向いて、その言葉にシナノはコクリと頷いた。

 

「私が、貴方の力になる。だから、私に乗って」

 

「分かった。シナノ、俺の(ふね)になってくれ」

 

「うん、ありがとう」

 

シナノはそう言って微笑んだ。

 

それから俺達は艦の習熟訓練を始めた。

何度も繰り返し、連携を高めていく。

その時の俺は、性でもないのに思わず心躍っていた。

そして、シナノ   ひいては“霧”という存在に理解が深まっていった。

 

そんな毎日が2週間程続いたある日の事だった。

いつも通り、食堂で大介達と一緒に昼食を食べている時だった。

 

「そういえば最近のお前、ちょっと変わったよな。何というか、どこか嬉しそうに見えるんだが」

 

大介が振ってきた。

確かに嬉しい事はあったが、話すわけにはいかない。

っていうか、顔に出てたのか?

 

「そうか? 別にそんな事無いと思うが」

 

「変わったといえば、何だか最近の進さんって帰るのが早くなってますよね」

 

おっと、みほまでもか。

確かに、訓練の時間を少しでも取るために早めに下校しているし、気をつけないとな。

そして、いつも通りの思考回路で沙織が的外れな事を言い出した。

 

「ま、まさか、すすむんに彼女が出来たとか⁉︎」

 

「そんな訳ねえよ」

 

断じて彼女とかでは無い。

そして、否定した瞬間つまらなさそうな顔をするな。

そして、横から疑わしそうな視線を感じる。

ジト目でこちらを見てくる大介だ。

 

「おい、何だよ大介。そんな目で見るな。まさか、俺が変なこと考えているとか思ってんのか?」

 

「そうだな。お前は突っ走りやすい性格だからな。まさか、群像を追いかけようとしているんじゃ……」

 

「それが出来たらとっくの昔に実行しているさ。それと、最近早く帰れているのはたまたま偶然だから」

 

「……そりゃそうだろうけどさ」

 

「いやいや、島さん。白銀さんに限ってそんな事無いですって」

 

「第一、追いかけるにしてもどうやってやるんです?」

 

南部と太一がフォローしてくれている。

それに乗じさせてもらおう。

 

「2人の言う通りだよ、大介。全てお前の勘違い。変な勘ぐりはやめてくれ」

 

「悪かったよ」

 

一応、形としては引いてくれた。

だが、納得しているかは定かではない。

一応しばらく警戒してみるか。

 

今日の授業も全て終了し、放課後になった。

夕方、いつも通りの丘へと向かう。

その道中、携帯に一通のメールが届いた。

やっぱりというか何というか、()()()()()()()()()()()()()()()()()みたいだ。

 

 

 

■■■

 

 

 

島 大介は、とある人物を尾行していた。

相手は自身の幼馴染である、白銀 進だ。

 

(アイツはいつも通り、群像達を見届けたという丘に向かっている。やはり、あそこで何かしているのか?)

 

そんな事を考えながら、進が毎日来ているという横須賀近郊の丘へとやって来た。

だが、進は不自然な様子をする事はなく、ただボーッと海の方を眺めているだけだ。

そして突然、振り向いた。

 

「おい、大介。ついて来ているんだろ? そろそろ姿を見せたらどうだ?」

 

大介はその言葉に思わずギョッとした。

気付かれないように注意したはずだが、バレていたのだ。

 

「よく分かったな……。バレないように気をつけていたんだが。いつから気付いていたんだ?」

 

「大分最初の時から。ロードミラーに写っていたぞ?」

 

「ああ、なるほど」

 

直後、進は明らかな嫌悪感を示した。

 

「やっぱりまだ疑ってたな。だから言っただろ? お前の勘違いだって」

 

「うん、すまんかった。本当に悪かったから」

 

「分かってくれたならいいよ」

 

「それでさ、ここから群像を見届けたんだよな」

 

「ああ。あの辺りからイ401が外洋に出て行った。今でも、あのもどかしかった思いは鮮明に思い出せる」

 

そう言って、進は海上を指差す。

 

「そうだな。あの悔しさをバネに俺達も出来る事をしないと」

 

「ああ」

 

太平洋と横須賀の軍港を眺めながら、進と大介はそう語り合った。

 

「それじゃあ、俺は帰るわ。お前も帰るか?」

 

「いや、俺はもう少し海を眺めてから行くよ」

 

「そうか」

 

そう言うと、大介は踵を返して丘を下った。

 

 

 

■■■

 

 

 

「行った?」

 

「ああ、何とか上手くいったよ。しかし、肝を冷やしたな。アイツが知ったら絶対止めるだろうから」

 

大介がこの場を去ってしばらく、シナノが来た。

やはり、疑いは晴れていなかった。

そこで、俺はアイツを騙すために一芝居打ったのだ。

因みに、シナノには道中で待ち構えてもらい、大介が来たら連絡するよう学校を出る前に伝えていた。

上手くいって良かった。

これでアイツも信じてくれるだろう。

 

そんな馬鹿げた勘違いをしていた時期が俺にもありました。

 

大介を騙せたと思った翌日、今日も例の丘でシナノと訓練である。

そして、(ふね)に乗り込んで始めようとした時に声がした。

それも、毎日会っている幼馴染の声だ。

 

「なるほどな、そういう事だったんだな」

 

大介が現れた。

そしてその後ろには、みほや沙織、南部に太一までいた。

何で気付かれたんだ⁉︎ 確実に騙せたはずである。

なのに、昨日より悪化していた。

大介の奴、他の4人まで連れてきたのだ。

そしてそれ以上に、バレた事の方が重要だ。

 

「やだもー! すすむん、何やってんのよ⁉︎」

 

いつも通りの軽い口調で叱責してくる沙織。

 

「まさか、“霧”と接触していたなんて……」

 

と、衝撃を受けているみほ。

 

「本当に行動に移しているとは思いもしませんでした」

 

半ば呆れている南部。

 

「しかも、千早くんと同じように霧の力を借りるとはね」

 

感心さえしている太一。

4人はそれぞれの反応で、言葉を口にしていた。

 

「何でわかったんだって顔しているな。俺とお前は何年の付き合いだと思ってんだ? ここ最近おかしかったのもそうだが、お前は何かと突っ走りやすい性格だ。それで幼い頃に、何度か叱られていた。だから、こういう事をする際には実行前までバレないようにする方法を考えるようになってきていた。そして何より、昨日の発言だ」

 

「昨日の?」

 

「ああ、昨日『俺達も出来る事をしないと』って言っただろ? そして、お前の返答は同意するものだった。今までのお前なら『今の俺達にやれる事なんて無いに等しい』とでも言ったはずだろ?」

 

ニヤニヤとした顔で、大介が俺を見てくる。

クソッ!

昨日の俺をぶん殴ってやりたい。

たったの一言で気付かれるとは計算外だった……。

しかし、バレてしまったのであれば仕方がない。

 

「やれやれ、バレたか……。悪いけど、止めないで欲しい。もう決めた事なんだ」

 

「そう言うと思った。でも、いいのか? そいつは、お前の家族を殺した奴と同じ“霧”なんだぞ?」

 

大介の言葉に思い出されるのは、幼い頃の記憶。

豪華客席による船旅を楽しんでいた時、その船が“霧”の攻撃に晒されて沈没した。

その際、家族の殆どは行方不明になった。

まあ、間違いなくその時に溺死したんだろう。

家族で生き残ったのは俺と、歳の離れた兄だけだった。

そしてその兄も……。

 

「ああ、知ってるよ。でも、コイツと   シナノと出会えて分かったんだ。俺達は分かり合えるって。そしてきっと、群像もそうだったんだろう」

 

あの時は“霧”への怒りと憎悪に染まっていたが、今は違う。

互いに理解し合い、争いを無くす事で、俺のような犠牲者を無くす事が出来る。

後は、それに向かって突き進むだけ。

だから、こんな所で止まる訳にはいかないのだ。

 

「という訳だ。だから……」

 

止めないでくれ、と言おうとした。

しかし、俺が言い切る前に大介が驚きの発言をした。

 

「止める訳ないだろ。むしろ逆だ。俺達も乗せろよ」

 

「えっ?」

 

「何言っているんですか、進さん? 皆、同じ思いをしていたんですからね!」

 

「そうだよ、すすむん! 抜け駆けなんてずるい」

 

「僕も、この状況て何もできない父さんや父さんの会社に対して思う所がありましたしね。協力させて下さいよ、白銀さん」

 

「うんうん!」

 

「お前ら……、分かってるのか? 最悪死ぬかもしれないし、そうでなくてもお尋ね者になるのは確定なんだぞ!」

 

「「「どの口がそれを言う!」」」

 

全員からお叱りの言葉だ。

 

「2年前にそうなった親友を追いかけるために、同じ手法を取った奴の言葉じゃあないな。それに、見ての通り指を加えて見ているのが悔しいのはお前だけじゃない。あと、お前は熱くなりすぎてすぐ突っ走るんだから、気が気でないんだよ。だから、水臭い事は言わないでくれ」

 

大介が最後にそう締めくくった。

それを聞いて、シナノが笑い出した。

 

「フフフ、アハハ。進の友達って面白いんだね! それでどうするの、艦長?」

 

「……ここまで言ってくれたんだ。それじゃあ皆、力を貸してくれ!」

 

「「「おう!」」」

 

 

 

1ヶ月後

シナノ艦内

 

大介達5人を新たな仲間に加え、さらなる訓練を積んだ。

普通はこんな短期間ではできないが、チームを組んでの戦術シュミレーターの経験もあったおかげか、凄まじく短期間で物になった。

シナノがハッキングした情報によれば、1週間後に佐賀宇宙センターにてSSTOが発射される。

そして、その防衛戦力としてイ401   群像達が呼ばれている。

ならば、やる事は一つである。

 

「必要な物資は既に積み込み完了しています」

 

「火器管制装置及び武器システム異常ありません」

 

「各種センサー類、問題無いよ!」

 

「重力子エンジン、問題無し」

 

「さてと、進。全ての準備が完了した。指示を」

 

「ああ。これより本艦は、佐賀宇宙センターにてイ401と合流し、その後世界に風穴を開けに向かう!」

 

「「「了解‼︎」」」

 

「機関始動! シナノ、発進‼︎」

 

 

 

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