もしも「Fate」が大人気eスポーツだったら 作:ゼラチン@甘煮
「──ごめんなさい。まさか新入生が来てくれるなんて思わなかったから」
感激したからといってあそこまで取り乱しはしないと思うのだが。
「これでも去年の秋大会では地区大会準決勝まで行ったのよ?......決勝戦で完敗したけど」
「地区大会決勝というと、相手はあの荒耶高校ですか!?」
部長が気まずそうに発した一言に夏が食いつく。荒耶高校ってたしか市内でも中々の進学校だったな、厳しい筆記試験と面接の代わりに安定した進学と就職が約束されるだかで毎年すごい出願倍率だったはずだ。
そんなエリートたちが通う高校にもFVW部があるなんて少し意外だった。そこまでFVWが人気ということか。
「もう、知らないの?荒耶高校は去年の秋大会全国優勝校だよ」
「同じ地区の高校から優勝校が出るのは嬉しいけどやっぱり複雑なのよね」
まじか、そういえば去年クラスメイトと夏が騒いでた気がする。それはこのことだったのか。
ただ...それとは別にさっきからある一点が引っかかる。
「...部長、完敗したとはいえこの高校は地区2位なんですよね。なんでこんなに部員がいないんですか。FVWにかけては異様な情熱がある夏ですらこのことを知らなかったみたいですし」
全世界で人気ならば、地区2位というのは部活としてかなりのアピールポイントになるはずだ。3年生がいないってのも気になる。
「......」
「ぶ、部長?」
急に黙ってうつむいてしまった。ヤバい、地雷踏んだかもしれない。
「と、とりあえず二人とももう部員なんだからさっそく春の新人戦に向けてFVWやりましょう?」
何かを飲み込んだような表情で、部長は笑顔で使っていないであろう機材を指差した。
頭にVR機器をつけて椅子に座る。しばらく真っ暗だったがやがてぼんやりとした光と共にタイトル画面らしきものが目の前に現れた。
『聞こえてる?衛宮くんは初心者ってことで私が最初のところだけ教えるわ』
「わかりました。えーと、どうしたらいいですか?」
画面には『Fate/モード』と『オリジナルモード』の二つの選択肢が出ている。
『オリジナルモードってのがいわゆる競技モードよ、大会だとそれがメインになるからそれを選んで』
言われるがままに右手をかざす。
ゲームは好きだがVRは初めてやる。まさかコントローラーも必要ないとは思わなかった、どこまで発展してるんだ。正直なんで現実の体が動かないのかもよくわからない。
『オリジナルモードはあなたに一番合うサーヴァントをゲームが選んでくれてそのサーヴァントを最弱の状態から色んな対戦を通して強くなっていくモードよ』
自分に合うサーヴァントが選ばれるって、なにそれこわい。まさかこの機器に脳を解析とかされてるんじゃないだろうな。
アナタの、アナタだけのサーヴァントを選びます。
「なんか出てきたぞ」
『そのままじっとして、ちょっとビックリするかもだけど我慢ね』
「え」
その直後、目の前が光に包まれる。
「ちょっ、大丈夫なのかこれ!?」
『衛宮くんの脳とリンクさせてサーヴァントを選んでいる最中よ、暴れないで』
「本当に解析してた!」
さらに光が強くなり、思わず目をつぶる。今度は頭の奥からズキズキと痛みがくる。
「頭痛って...この、ゲーム...欠陥だろ......」
目をつぶったまま頭を抱える。頭痛が無視できないレベルまで強くなってきた。
「部長...まだか」
『もう大丈夫よ、目を開けて」
恐る恐る目を開ける。
視界に広がるのはゲームの画面ではなく荒れ果てた荒野だった。
「...え?」
焦って機器を外そうとしても手は空振るだけだった。ゆっくり触ってもそこには俺の頭があるだけで機器らしきものは感じない。
『どう?ビックリしたかしら?』
「ビックリというか......」
これはゲームとかそういうレベルじゃない。マジで現実と見分けがつかない。肌をくすぐる風の感触も足から伝わる地面の固さも本物としか思えない。
『ちなみにもうサーヴァントになってるわよ』
そう言われて自分の腕を見る。最初は動揺していて気づかなかったが確かに服も制服とはまったく違うし腕も筋肉質な浅黒い肌になっている。
「これが俺に合うサーヴァントか...部長、そっちから見えるんだったらこのサーヴァントが誰なのかわかりますよね」
『私が言うより自分で確認した方がいいんじゃないかしら。ステータスって頭の中で念じてみて』
念じる...?こうか?
頭に指をあてて思い切り念じる。ピコンという小気味いい音と同時に空中に何か出てくる。
【サーヴァント】エミヤ
【クラス】アーチャー
【属性】中立・中庸・人
【筋力】E【魔力】E
【耐久】E【幸運】E
【敏捷】E【宝具】-
【パッシブスキル】
・なし
【スキル】
・なし
【宝具】
・なし
『確認した?それが衛宮くんの今のステータスよ』
「このエミヤってサーヴァントの名前か?サーヴァントって過去の偉人を元にしてるんだろ?俺と同じ名字なんて偶然だな」
『あー...そうね、話すと長くなるんだけど合ってるわ』
昔夏が話してたのってこいつのことか。それにしてもステータスらしき数値が全部Eなんだがこれは最初だからか?これで強いってことはさすがにないだろう。
『最初は皆同じステータスよ、そこから経験を通して強くなるの』
「なるほど────」
再び光に包まれる。今度はそこまで強くなく頭痛もしない
『ようこそ衛宮くん、FVWの世界へ』
視界が開けると街中に出た。人の姿もちらほら見かけるがその見た目からしておそらく俺と同じサーヴァントなのだろう。
『オンラインサーバーよ。オリジナルモードでは基本的にオープンワールドの世界で遊んでいく感じね。天海さんもそこにいるはずよ』
「なら早く夏を見つけたいな」
それにしても凄いなこのゲーム、異世界転生でもしたんじゃないかってくらい違和感がない。さっきからこのゲームの技術に驚かされてばっかだな。
「あっ、そこにいるのは公人かい?無事なようで何よりだよ」
夏が探す前に向こうから来てくれたのだが......俺もこう見えてるのか。
あの黒髪は綺麗な金髪に変わっておりどこか気品のある青のドレスの上に白銀色の甲冑を身につけていた。
「やっぱり公人のサーヴァントはエミヤだと思ってたよ。それ以外に考えられないし」
「名前だけだろ...」
その見た目に最初はちょっと驚いたが話すとやっぱり変わらないな。
「夏のサーヴァントはなんだ?俺でも知ってる人か?」
「うーんと、今僕のステータス見せるね」
そう言って手を空中にかざす夏。なんかこいつ手慣れてないか?
【サーヴァント】アルトリア・ペンドラゴン
【クラス】セイバー
【属性】秩序・善・地
【筋力】C【魔力】C
【耐久】C【幸運】C
【敏捷】C【宝具】A++
【パッシブスキル】
・対魔力(C)
・騎乗(C)
・直観(D+)
【スキル】
・魔力放出(B-)
・カリスマ(B)
【宝具】
『
「...なんか俺のと違くないか?」
「実は僕このゲーム前からちょくちょくやってたんだよね」
『天海さんには自分のアカウントを使ってもらったわ、大会出場規定にも引っかからないし経験者は大歓迎よ』
えぇ...。こういうのって二人で一緒に成長していく感じじゃないのか、俺より数段階上のステータスだしよくわからないスキルたくさんもってるし宝具のランクに至っては凄まじいし。
「どう?このゲームは凄いでしょ!一緒に頑張っていこう」
ああ、うん...。大丈夫かな、これから。
どうやら二人はうまく合流したようね。天海さんはともかく衛宮くんも早くFVWに慣れてほしいわね。初めてなりによく動けていると思うけどこれで対戦になるとどうなるかしら。
「何このステータス...」
天海さん...経験者だとは言っていたけどこれちょっと異常ね。こんなステータスは全国出場校でもおかしくない、地区大会程度なら問題なく突破できるレベルだわ。
FVWはそのリアルさと激しさから高校生未満がやるには厳しい審査を通らなければプレイできないはずなんだけど...。
「──まあ、面白くなりそうね?」
なんでもいいか。せっかく入って来てくれた後輩だもん、気合い入れて指導しなきゃ。
「二人とも!私も今からログインするから待ってて!」
いつもよりワクワクしながら、頭に機器をつけた。
ステータスNo.3
【サーヴァント】アンリマユ
【クラス】アベンジャー
【属性】混沌・悪・人
【筋力】?【魔力】?
【耐久】?【幸運】?
【敏捷】A【宝具】E+
【パッシブスキル】
・復讐者
・不明
・不明
【スキル】
・不明
【宝具】
・不明