もしも「Fate」が大人気eスポーツだったら   作:ゼラチン@甘煮

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 本日二話目です。


3話/はじめての戦闘

 

「よし、これで全員ね。もう一人の部員ももうすぐくるはずだからそれまで軽い説明をするわ」

 

 変わらずFVWをプレイ中であるが、部長の見た目が気になる。服はさすがに変わっているがそれ以外は現実のままなのだ。俺と夏はそもそもの容姿が変わっているのにもかかわらず。

 

「まずは大会のことよ。二人が関係のある大会は3つ、5月にある新人戦、7月最初の夏大会、そしてメインとなる10月の秋大会ね」

 

 大会か、そうなると一気に部活って感じがするな。

 

「大会には個人戦とチーム戦があって個人戦は1人から5人まで、チーム戦は3人から5人まで出場可能なんだけど、高校から必ずどっちも出場しなきゃいけないのよね。一応両方に出ることは可能なんだけど、それでも2人しか部員がいなかったから危なかったのよ」

「部長、でもこのままだと新入生は俺たちしかいないから新人戦はできないんじゃないですか」

「新人戦は個人戦だけなのよ、場合によっては同じ高校内で戦うこともあるわ」

 

 新人戦、特に何もなければ俺たちが出ることになるであろう大会。5月ということはあと1ヶ月か、それまでにこのステータスをなんとかしなければいけないんだよな。夏レベルまで追いつければいいんだが。

 

「衛宮くんはステータスの見方はわかったかしら?」

「まあある程度他のゲームはやっていたので、大丈夫だと思います」

 

 多分パッシブスキルっていうのは常時発動型、普通のスキルは自分でタイミングを考えて発動する感じだろう。宝具ってのがおそらく必殺技みたいなものだと思う。

 

「そのスキルとか宝具はやっていけば出てくるもんなのか?」

「そうね、基本はそのサーヴァントに対応したものが出てくるわ」

 

 だから夏はエクスカリバーか、確かにアーサー王といったらエクスカリバーだもんな。だがそれだと余計にわからなくなる。エミヤってどんな宝具を持ってるんだ?

 

「じゃ、行きましょう」

「行くってどこに?」

 

 突然後ろを向き歩き始める部長を慌てて呼び止める。

 

「どこって...衛宮くんの戦闘訓練ができる場所よ」

 


 

 

 

「えーと...どういうことだ?」

 

 連れてこられたというか指示のままメニューから移動された場所は街よりも人が多く賑わっていた。

 

「ここはアリーナ、主にオンライン対戦をするための場所よ」

「げっ」

 

 戦闘訓練をする場所と聞いてまさかとは思ったがやっぱりかあ...。今の状態で対戦なんかしても大丈夫なのだろうか、瞬殺される未来しか見えない。

 

「安心して、まずは私とやりましょう」

「あの、僕はどうしたらいいですか」

「天海さんの実力も見たいし衛宮くんと同じグループに入って」

 

 おお、1人じゃないのならまだ安心感がある。

 

 

 

 

 変型チーム戦:開始

 

 

 ロードの後に移動した先はまた街中、ただし人がいたさっきの街とは違い人気のない夜中の街になっている。

 

「さ、まずは衛宮くんからね。いつでも来てくれていいわ」

 

 両手を広げる部長。攻撃とかどうすればいいんだ?

 

「念じれば武器が出るはずだよ、エミヤは遠距離でも近距離でも戦えるサーヴァントで弓も剣もどちらでも戦えるはずだよ」

 

 幼馴染のありがたい助言に従いステータスを出した時のように手に力を込めてみる。

 気づいたら両手に短剣が握られていた。片方とも似たような形で色がそれぞれ黒と白になっていてまるで2本で1つとでもいうかのようだった。

 

「うおっ。これがエミヤの武器か?」

 

 中々カッコイイな。ゲームの仕様かはわからないが空気のように軽いところが良い、夏が持っている剣とかものすごく重そうだし。

 

「──干将・莫耶......」

「え?」

 

 夏がキラキラと輝いた目で俺の持っている剣を見つめていた。かんしょう・ばくや、それがこの剣の名前なのか?カッコいいじゃないか。

 

「じゃあ、行きます。部長」

「ええ、肉体的な疲労はないから遠慮なく来なさい」

 

 見定めるように笑う部長。ゲームとはいえ戦うなんていまいち実感がわかなかったけど、今はちょっとワクワクしている。勝つことは無理だろうけど少しでもあの余裕の表情を崩せれば嬉しい。

 部長に向かって走り出す。おっ、確かに疲れる感じはしない。こういう感覚が現実の体にいかないのなら確かに攻撃も遠慮しなくてもよさそうだな。

 

 

 ...攻撃する?どうやって?この剣を振り下ろせばいいのか?俺は今まで生きてきてそういう経験など一切ない、加えてFBWはゲームとはいえ体を動かしている感覚は現実と変わらない。そんな俺が部長に攻撃するとして本当にできるのか?

 

 

「公人!」

 

 夏の声で我に返る。前を見るとそこに部長の姿はない・

 

「──去年の秋大会で決勝まで行けたのもね、偶然みたいなものなのよ。新人戦なんて初戦で負けちゃったしね」

 

 耳元で囁き声が聞こえる。

 

「それでも誇れるものはあるのよ?私の敏捷ステータスはA、敏捷だけならプロでも充分に通用するレベルよ」

「ぐっ...!?」

 

 背中に強い衝撃が走る。見ると部長の手によって奇妙な形をした短剣が俺の背中に突き刺されていた。

 悲鳴を上げる間もなく剣が背中から強引に抜かれ同時に強く蹴り飛ばされる。

 

「き、公人...!大丈夫?」

「くそ...肉体的な影響はないはずじゃ」

 

 背中が強く痛む、傷口から血が流れていく感覚だってある。

 

「安心して、現実の体には何も影響がないから。その痛みはあまりのリアルさに脳が錯覚を起こしている状態よ」

「できるわけ...ないだろ......」

 

「何か気づいた?このゲームは具体的なHPゲージはないわ。戦闘の終了条件は降参、もしくは脳が本当に死ぬと感じたダメージを受けた時だけ。つまり脳がまだ死なないと感じているかぎり、どれだけ血が流れようが四肢が吹き飛ばされようが負けることはないわ。安心でしょ?」

 

 あくまでも笑顔のままそう説明をする部長。まるで悪魔のようなその笑顔に冷や汗が流れる。

 背中を押さえながらゆっくり立ちあがる。

 

「...大丈夫?私が言うのもなんだけどほとんどの初心者は攻撃を受けたら1回プレイするのをやめるものよ?」

「──やめたくはなったよ。ただ、このまま終わるのは...ダサいだろ」

 

 いつの間にか落としていた剣を拾い上げもう一度握りしめる。

 

「私が思ったより根性があるのね。...先輩として、部長として、見本を見せてあげる」

 

 こっちに向き直る部長、と同時に凄まじい速さでこっちに突っ込んでくる。

 くそ、さすがに速いな。目で追おうにも速すぎて追いきれない。あの短剣はガードしなければ、とっさに体をかがめる。

 

「基本的な体のスペックや使える技はそのままステータスに依存するわ、だけどそのスペックをどう活用して戦うかは自分のセンス次第よ」

 

 またも後ろから声をかけられる。いつの間に回り込んだんだよ、まったく見えなかったぞ。

 

「たとえ筋力や魔力の値が低くても、いくらでも戦えるの」

 

 振り下ろされる短剣、間違いなくその軌道は俺の首に向かってきている。

 ヤバい、避けないと、もう少し戦いた──

 

 

 

 

 

 パッシブスキル『心眼(真):E+ランク』を解放しました。

 

 

 

 

「──避けられるような攻撃じゃないと思ったんだけど、少なくとも今の衛宮くんじゃ」

 

 部長の一撃は空を切るのみに終わった。少しではあるが部長の顔に動揺が見られる。

 ...今の表示はなんだ?あの表示が出た後、部長の攻撃が妙にゆっくり見えた。パッシブスキルが解放されたって、つまりそういうことだよな。

 

 

「ずいぶん驚いているようですけど、そんな時はどうすればいいですか?部長として見本を見せてくださいよ」

「...言われなくても」

 

 笑顔は消え、その代わりに飲み込まれそうな殺気が発せられる。

 これが先輩の実力か...存分に吸収させてもらいます。

 

 

「少し本気を出すわ、ついてきなさい」

 

 スキル『死滅願望(A)』発動、パッシブスキル『復讐者』発動

 

 そんな表示が一瞬部長の近くで見えたと思ったら、部長の姿が消えた。

 

「なっ...!?」

「ごめんね。大人げないところ見せちゃって...それより、これがFVWよ、どう?」

 

「ああ、とてつもなく楽しいよ」

 

 最後に見えたのは、冷たい刃だった、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────これはチーム戦ですよね、部長」

 

 部長の一撃を、夏がその長剣で受け止めていた。

 

「天海、さん...!?この一撃が見えていたの...?」

「見えるわけないですよ、ただの『直感』です」

 

「さすが、アーサー王ね...。最弱とはほど遠い、最優の存在...。でも、あなたが相手でも新入生相手に負けるつもりはないわ」

「そうですね、僕じゃきっと勝てない」

 

 

 その通りだ。部長は強い、このゲームのことを何も知らない俺ですらわかるくらいだ。その部長を相手にしたら、俺でも、夏でも勝てないだろう。でも、

 

「二人なら、()()()は勝てるかもしれません」

「...ッ!衛宮くんは!」

 

 

 サーヴァントってのは凄いな、夏。最低のEランクの敏捷でも、今の間に後ろに回るくらいは簡単にできた。

 

「その隙だらけの背中、もらいます」

 

 攻撃の仕方は、もう知っている──!

 

 

 

 

 

 

「──干将・莫耶ッ!」

 

 俺の二撃が、確実に部長に当たった。

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