もしも「Fate」が大人気eスポーツだったら 作:ゼラチン@甘煮
「はぁ...はぁ...」
浅い呼吸音が漏れる。汗が止まらない。
──切った、部長を。このゲームでは珍しく物を切った感触が現実をかけ離れていたのが唯一の救いだ。これで攻撃した感覚もリアルだったら...考えたくないな。
「心配しないで、過度の痛みは全てゲームがカットしてくれるわ」
その場に倒れた部長が力のない声で話す。
「...今の俺は、たった一発攻撃を放っただけでもういっぱいいっぱいだ。これから来月の新人戦まで、本当にどうにかなると思う......思いますか」
「どうにもなるわよ。私だって、天海さんだって、皆同じところからスタートしたのだもの」
夏を見る。夏は俺の視線に気づくと満面の笑みでうなづいた。
「なら...いいんだけどな」
変型チーム戦:アナタのチームの勝利です。
以下のパッシブスキルを獲得しました。
『心眼(真)(E+)』効果:窮地において超低確率で活路を切り開く。
一部能力値が成長しました。【耐久】E→E+
「改めてどうだったかしら。FVWは」
ゲームを終了しいったん現実に戻ってきた。
「...凄かった」
「だよね公人!FVWは凄くて楽しいんだよ!」
俺の興奮を代弁してくれるようにはしゃぐ夏。本当にその通りだ、凄いしなにより楽しかった。
耐久も上がったみたいだしはやく大会に出ても恥ずかしくないくらいまでにしたい。
「こんにちは。廊下にも声が聞こえていましたよ、何やってるんですか」
部室の扉が開かれる。目を向けると少し不機嫌そうな顔をした女子生徒が立っていた。
「新入生よ涼音、これで大会に出れるわ。ほら、挨拶して」
「......2年、
礼儀正しく頭を下げた。松下先輩は落ち着いていてなんとなくクールな印象を受ける。
「どうしたの涼音?新入生が来て緊張してるの?可愛い子めー!」
わしゃわしゃと松下先輩の髪を撫でる部長、それを鬱陶しそうにあしらってる先輩。たった2人の部員なんだからそりゃ仲は良いよな。
「そうじゃなくて...!4人だとしてもチーム戦だと厳しいじゃないですか。どうせ他の高校は5人フルで出してくるでしょうし」
確かに、3人から5人で出場するんだったらよっぽどのことがない限り5人で出場するはずだ。チーム戦がどういう方式なのかまだわからないけど人数的有利はおそらく大切だろうし。
「まあいいじゃない。誰も入らずに大会に出れなかったらどうしようって悩んでたのは涼音じゃない」
「言ってないです」
「ねえ公人」
「ん、どうした?」
「明日からさ、クラスでもFVW部に入ってくれそうな人を探さないかい?今の聞いてたらやっぱりまだ足りないよ」
「そうだな...。頑張ってみる」
クラスでFVWに興味がある人か...。中学で一緒だった人もいないし厳しくないか?
「あー、ごめん。俺バスケ部にするんだ」
「ごめんなさい、FVWは好きだけど見る専門が良いかなって」
「FVWってなんか怖くて、見る分にはアニメみたくて面白いんだけどね」
やっとの思いで話しかけたものも3回連続で断られてしまう。衝撃の事実だがFVWは人気はあるが実際にやるには敷居が高いらしい。もっと食いつくかと思ったが、たとえ興味がなくても俺みたく楽しめると思うし体験だけでもやってほしいんだがな。
「誰かいないもんか...」
「それ、何の話」
「うわっ!」
気づかぬ間に声に出てたらしい。そうだとしても死角から話しかけないでほしい、意外と俺は小心者なんだぞ。
「えーと、確か後ろの席の」
「上野、
そう言いながらグイグイと詰め寄る上野。昨日と今日でなんとなくおとなしそうな印象だったんだが意外とそうでもないのかもしれない。
「入ろうとしている部活の部員数が足りなくて、誰か入ってくれる人はいないか探していたんだ」
「その部活って?」
おお、どんどん食いついてくるな、これはもしかしたらチャンスか?
「FVW部って部活なんだけど、あ、FVWってのは」
「大丈夫、知ってる。姉が別な高校だけどその部活に入ってる」
しかも姉が同じ部活だと!こんなチャンスないだろ...!
「入ってほしいと言うのなら、別にそれは構わない」
「まじか!助かる!...でも良いのか?入りたい部活とかあったんじゃ」
「このままだと帰宅部の予定だった。特に断る理由もない」
本当に良かった。3連続脈なしでちょっと心が折れかけていたんだ、上野が女神に見える。
「家族に経験者がいるってことは上野もやったことがあるのか?」
「やったことはない。姉が練習しているのを見てただけ」
それだけでも充分だ。どんなゲームか知っているだけで感じる敷居は低いだろう。
これでとりあえず5人目は確保、夏はいったいどれくらい連れてくるんだろうか。
「ごめん公人!全部断られちゃった!」
「そんな気はしたよ、あんま気にすんな」
まあ仕方ない。元々の部員が2人ってことからある程度予想はできた。
「上野さんだっけ、僕は天海夏、公人の幼馴染だよ」
「わかった。幼馴染さん、よろしく」
どうでもいいが幼馴染という自己紹介はどうなんだろうか、心なしかどや顔だし。
「でも他の高校だと部員が足りないなんて話は聞かないのになんで僕たちの高校だけFVWに興味がある人が少ないんだろう」
「それは私が説明するわ!!」
「部室くらい静かに入ってください」
勢いよく扉を開けて先輩方が入ってくる。
「説明って、なんか理由があるんですか」
この高校だけがFVWの人気が少ないなんて、どんな理由なんだ。
「んーとね、この高校がというより他の高校のせいなのよ」
「他の高校?」
「ここらへんの高校は中々FVWの強豪校が揃ってて、FVWをやりたい人も好きな人も他の強豪校に流れていっちゃうのよね」
そういえば去年の全国優勝校もこの地区だったし、他にも強い高校があるならそっちに行きたいと思うのは自然か。それでもこの高校は準優勝で強豪校のはずなんだが。
「しかも去年のこの高校の主力は3年生で卒業と同時に部員が大量減少、残ってた人たちもそのせいで辞めちゃったのよ。多分その噂が広まって来るはずだった新入生も来なかったのね」
ああ、だから2年生のはずなのに部長をやっているのか。
「でも今年は期待の1年生が3人も入ってくれたんだもん、きっと大丈夫よ。ね、涼音」
「まあ...そうですね。しっかり教えて大会に臨みましょう」
「このツンデレめー!」
「髪はやめて...!」
楽しそうに笑い合う2人とも。昨日まで何も知らなかった俺だけど、なんとなく俺もその期待に応えようと思った。
「来月の新人戦、どうなりますかね。見たかんじ誰を出すか迷ってるみたいですけど」
「そうだなあ、今年は優秀な1年が多いみたいだし今の段階では全然わからんよ」
「ねーねー部長!新人戦はもちろんワタシが出るんでしょ!!他の高校はどんな戦い方なの!?」
2人が話していると、どこから入ってきたのかこぢんまりとした少女が出てきて話しかける。
「遠坂、まだわからないと言っているだろ。サボってると足元をすくわれるぞ」
「練習もちゃんとするから大丈夫、ワタシに勝てる1年なんているわけないじゃん。じゃあまた後の部活でね!」
誰かに追われているのか全速力で走り去っていく遠坂と呼ばれた少女。残された2人は顔を見合わせてため息を吐く。
「...また補修サボったんですかね?」
「だろうな......入学1週間で補修常連なんて聞いたことないぞ、まったく」
頭を押さえてもう一度大きなため息を吐いた。
「仕方ないですよ。彼女は唯一の『FVW推薦者』なんですから、勉強がからっきしでも当然です」
「それでも少しは勉強するだろう...。まあ、悔しいが実力は認める。わからないとは言ったがこのままだと間違いなく出場者になるだろう」
「ですね」
「ああああああああ!!ごめんね先生。もう逃げないからああああ!!」
「...はぁ」
ステータスNO.4
【サーヴァント】ガウェイン
【クラス】セイバー
【属性】秩序・善・地
【筋力】C+【魔力】E
【耐久】D 【幸運】D
【敏捷】E+【宝具】B
【パッシブスキル】
・対魔力(C)
・騎乗(B)
・聖者の数字(EX)
【スキル】
・不明
・不明
【宝具】
『