もしも「Fate」が大人気eスポーツだったら   作:ゼラチン@甘煮

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 遅れてすみません。リアルでのごたごたが済んだので投稿再開します。


8話/宝具

「夏、相手はどんな動きをしてくるんだ?」

 

 藤宮も強いと思うがそれでも夏に勝てるかと言えば微妙だ。それほどまでに夏の実力は俺たち新入生の中では別格だと思っていた。だが、その夏がここまでやられているということはこいつはそれ以上の実力者ということなのだろう。

 

「どんな動きって...わからないよ、あんなの」

「わからない?それってどういうこと────」

 

 

 

「じゃあ行きますわ!ワタクシの『宝具』!」

 

 そう声を張り上げていつのまにか手に持っていた杖を掲げた。

 

「ホウグ?」

「宝具だよ公人!あの人、宝具を連発してくるんだ。戦い方もあったもんじゃないよ」

 

 話している合間にも、その杖が仰々しい音を立てて光り輝いている。どんどん強くなるその光は、今まで何度も経験した意識が遠くなるような光とはまた違う光で、それでも直視することができずに目を背けてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふと気づいたら、暗くなっていた。何かで太陽が遮られているのだろうか、少なくともこのゲームはこんな急激な時間経過はないはずだ。

 

 

 

「────まじかよ」

 

 暗くなっていたんじゃない、陰になっていたんだ。巨大な()()によって、太陽が遮られてしまっただけだった。

 

 

「おーっほっほっほ!どうしましたの?もしや可愛い可愛いこの子に見惚れてしまいましたの?」

 

 鋭い角と牙、そして体のほとんどを占める巨大な甲羅を持った怪物が、そこに顕現していた。

 

「...逃げるぞ、夏!」

 

 あの怪物相手だと話は別だ。3人合流して向かっても一蹴されるだけな気がする。

 

「ダメだよ、公人」

「え?」

 

 肩を貸して夏を立ち上がらせようとしたら、夏が必死の表情で俺の腕にしがみついてくる。

 

 

()()は、逃げちゃダメなんだよ」

 

 逃げちゃダメってどういうことだ。あの化け物が高速で追ってくるとでもいうのか?

 

 

 

「タラスク!最初から飛ばしますわよ!」

 

 そう合図のようなものを言うと、化け物の手足と顔がその甲羅に篭った。

 甲羅に篭った巨大な化け物...逃げてはダメ...まさか。

 

「愛を知らぬ哀しき竜──ここに」

 

 詠唱しながら飛び上がり化け物の後ろへと移動していく、その杖の先が再び光り力が込められている。

 どうやら予想通りになりそうだが、これは避けられねえぞ。

 

「夏ッ!」

 

 それでもなんとか避けたい。夏を抱えて急いで離れる準備をする。

 

 

 

 

 

 

 背を向ける直前、杖を振り上げて笑うのを見た。

 

「星のように!『愛知らぬ哀しき竜よ(タラスク)』!!!」

 

 耳をつんざく衝突音と共に、甲羅が高速で吹き飛んできた。なんとか、夏だけは──

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 宝具は使わない。スキルも使わない。それが僕が僕に課した条件、経験者である僕ができるだけ公平に戦うためのハンデ。それでも負ける気なんてなかった、大会前の1年生なんてきっと楽勝に勝てる。だから今回の試合は上野さんと公人に慣れてもらうための試合にするつもりだった。

 

 

 

 

 

「夏ッ!」

 

 

 情けない。

 

 

 

 

 

 相手が思ったより強かったなんて、そんな言い訳は意味ない。僕が弱かったからだ。

 僕が見誤った。公人を守ってサポートするつもりが、逆に守られている。考えれば考えるほど後悔が襲ってくる。

 変なこだわりや縛りをしなければ、こんなことにはならなかった。結局、そのせいで2人が危険な状態だ。

 

 

 

 

 

 ──でも、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『愛知らぬ哀しき竜よ(タラスク)』!!!」

 

 公人(僕の)に手を出すのは、ダメだよ。

 

 

 

 スキル『魔力放出(B-)』発動

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「ごめんね、公人。これは試合なんだから、()()()()やるよ」

 

 

 もうダメだと思った時、夏が前に出て甲羅を剣で受け止めた。

 

「な、夏...?」

「あの宝具は連発してくるけどその分魔力消費量が少なく威力もないんだ。もし普通の宝具と同じくらいの威力なら僕はとっくのとうに消滅してるよ」

 

 

 見た目の痛々しさは変わらないものも、さっきとは違う元気な姿、体の震えも止まっている。

 

 

「ワタクシのタラスクをそんな簡単に...ッ!?」

「とどめのつもりなら、もうちょっと強くするべきだったね。少なくとも僕相手では」

 

 

 

 

「...ならッ!もう一度行くまでですわ!」

 

 悔しそうに歯を噛みしめ杖を構えた。まずい、次はきっと向こうも本気の一撃を放つはずだ。そうなったら、この状態の夏だと今度こそ厳しいぞ。

 

 

 

「──次はないよ」

 

 夏が持っている剣が相手の杖と同じように光り輝きだした。さっき相手がやった時とは比べ物にならないくらいの力が剣に溜まっていくのを感じる。

 

 

「そ、それはまさか...」

「束ねるは星の息吹、輝ける命の奔流──」

 

 相手の反応などお構いなしとでも言うかのように詠唱を続ける。なんかちょっと怖いぞ。

 

 

「ま、まずいですわ!あれは絶対無理!無理ですわッ!」

 

 逃げようとする相手、だけど。

 

 

 

 

 

「俺もいるんだ。忘れてただろうけどな」

 

 背を向けた相手の背中に武器を突きつけた。

 

「ッ!いつのまに」

「これはチーム戦なんだ。仲間の宝具のサポートくらいはしなきゃな、夏」

 

 

 

「────受けるが良い」

 

 その言葉と同時に剣を振り上げる夏。

 夏のサーヴァント、そしてその宝具、それは俺でもわかるくらい有名なものだ。現代日本人なら、どれほど世間知らずでも名前くらいは絶対聞いたことはある。

 

 

「待って!こんな最初から宝具なんて良いんですの!?」

「『約束された(エクス)...」

 

 色々言っても夏はもう止まらないぞ。そもそも俺が見逃さないけどな。

 

 

 

「だ、大体なんなんですの!?絶対初心者じゃないですわよあの人!こっちもかなりズルだと思ったのになんでそれ以上のズルが相手なんですのおおおおおお!!?」

「運が悪かったとしか」

 

 巻き込まれないように離れよう。多分もう逃げないだろうし。

 

 

「さあ、ぶちかませ。世界一有名な一撃を」

「『勝利の剣(カリバー)』ァァァッ!!!」

 

 

 そこに、光の柱が顕現した。

 


 

 

 

 

「...多分倒したと思う。公人、巻き込まれなかった?」

「大丈夫だ。そっちこそ大丈夫か?」

 

 さっきの宝具で力を使い果たしたのかその場に倒れている。結局俺は何もしなかったな。

 

「今部長から連絡があった。敵チームはあと一人、このまま3人揃って勝つぞ」

「うん、少し休んでからね」

 

 あと残ってるのはおそらくは藤宮だろう。あいつは何故か俺のことを嫌っている。上野の所へ俺よりも前に行くのは想像できない。

 

「...!公人、来るよ」

 

 俺の後ろを見て目を見開く夏。わかってる、このタイミングしかないと思ったよ。

 

 

 

 

「そちらのチームで注意すべきことと言えば経験者であろう天海さんでした。...2人も削られたのは予想外ではありましたが、天海さんがその状態なのを見るに、懸念点はないでしょう」

 

 堂々と歩いてくる藤宮、既に剣は抜かれている。

 

「先ほどはすみませんでした。少し用がありましたので......今度は遠慮なく、叩き潰す」

「公人。あの人、強いよ」

 

 知ってるよ。あの甲羅の前にこいつにやられそうだったんだ。

 

 

 

「ゆっくり追い詰めたいですが......お仲間に来られると少しだけ面倒なので」

 

 スキル『プレラーティの激励(B)』発動

 パッシブスキル『狂化(C)』発動

 

「行くぞ」

 

 こいつを倒す以外にも夏をなんとかして守らないとな。

 

 俺は最悪どうなっても良い。これからするのは、上野が来るまでの時間稼ぎだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『正義の味方』解放条件を満たしました。『投影魔術』並びに『投影宝具』を解放します。

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