無表情だったり男の娘だったり、無口だったり嘘がわかったりする奴らの小説   作:しっけた乾パン

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 ということで、感謝のゆる百合を喰らうがいい。
 


蒴波つばき(3)

 

 

 

 例の幼馴染さんが復学してから、一週間ほどが経ち……

 

 

「……ママ、デートしよう」

「誰のこと?」

「穂波、デート」

「…………いいよ。買い物?」

「服、無くなった」

「そんなことあるのかな?」

 

 

 なんて会話から数日経った。

 そして今日が、その約束の日。

 つばきと穂波は二人で、都内のショッピングモールへと買い物をする予定を立てていたのだが……

 

 

「……なぁ、嬢ちゃん一人かい?」

「おいおい、リーダー! 嬢ちゃんとか、顔に似合わなすぎっしょ!」

「うるせっ! 茶々入れんなや、アホ!」

 

 現在、キチンとおめかしをしてきたつばきの目の前には四人ほどの男が立っていた。

 

 コワモテにチャラ男に爽やか風味にスキンヘッド……キャラが濃い。

 簡潔に言ってナンパだろうか?

 デート気分でモールの最寄り駅に待ち合わせをしよう、と決めていたのが完全に裏目に出た。

 つばきは思考を回しながら、男達を傍観してから一言。

 

「…………穂波がいなくて、よかった」

 

 ボソッと呟けば、大声を上げていた主犯格らしき男性、コワモテが慣れない笑みを浮かべて近づいてくる。

 ゾクっと鳥肌が立つ感覚に、小さく身震いすると、どうやら怯えているのだと勘違いされたようで、周りの男性達から笑い声が上がる。

 

「なんか言ったかい、嬢ちゃん? まあ、いいや。お兄さん達とお茶でも——」

「しない」

 

 即答。

 次の瞬間、空気が凍った。

 そして、爆発したかのように笑い声が周りから立ち上がった。

 

「な、な……っ!」

「リーダー、振られんの早すぎてウケるわ」

「ホントそれな、君も度胸あるねぇ」

 

 ポフポフと周りにいた男性、爽やか風味勘違いフツ面男に頭を撫でられる。

 勝手に触らないで頂きたい……思ったより、悪い奴らではなさそうだが。

 

「触るな」

「ありゃ、手厳しい。俺も振られちゃった〜」

 

 テシッと、頭に載せられた手を払い落とす。

 つばきが不機嫌さを隠すことなく、男を睨むと、相手は飄々とした様子で受け流し、深追いはしてこなかった。

 

「リーダーはともかく、俺はそこそこ得意なんだけどね……ナンパ」

「論外。触れるな。汚れる」

「ははは……言うね」

 

 自称ナンパマスターやらとつばきが話を進めている場所から、少しだけ離れて残りの男達は小声で相談を行なっていた。

 

「……おい、あの子一般人だよな!?」

「メンタル強ぇ……今どきの子って、あんななんすね」

「俺たちも三、四歳しか離れてねぇだろ!?」

「……………………!」

「「なるほど、確かに!」」

 

 

 喋れよ、スキンヘッド。なぜ伝わる、その意思疎通……そんなツッコミを脳内でかましつつ、つばきはアホな男どもに手招きをした。

 周りを再び四人の男が囲んだことを確認してから、結論を簡潔に下す。

 

 

「ナンパは断る。男に、興味ない」

 

「「「「え?」」」」

 

 つばきの暴露に、男どもの驚きようといえば、まあ見事なシンクロ率であった。

 揃って目を点にした彼らに向かって、ひらひらと手を振ったつばきが追い討ちをかけるように言う。

 

「彼女がくる。消えろ」

「えぇ……」

 

 不躾な物言いにツッコミをいれる気にもならずに、男どもは困惑するのみ。

 余りにも想定外の重なった獲物の対処法に困り、男どもがナンパを諦めようとしたそのときだった。

 

「つ、つばきちゃんから、離れてください!」

「わぁ……穂波、大胆」

 

 つばきの腕を抱え込むようにして、割り込んできた穂波が、いつになく強い口調で言い放った。

 

 

 

✳︎

 

 

 

「うぅ……恥ずかしい」

「穂波、かっこよかった」

「やめて……」

「嬉しかった」

「やめて……」

「大好き」

「やめてってば!」

 

 

 珍しく、満面の笑みを浮かべるつばきと、顔を紅潮させた穂波の二人は、現在、手を繋いだ状態で買い物デートをスタートさせたところであった。

 

 手を繋いでいるのは、つばきの迷子防止対策である。

 完全に保護者と子供の関係であったのだが、そこには触れない方が身のためだ。

 

「褒めてる、のに?」

「勘違いだったけどね……」

「最初は、ナンパだった」

「え!? そうだったの?」

「ん。彼女を待ってる……って言ったら、諦めた」

「……すぐまた、そういうことを言う」

「嫌?」

「ノーコメント!」

 

 ナンパ男達へと啖呵を切った穂波だったが、彼女が乱入してきた際に彼らはあっさりと引き下がったのである。

 少し道を聞いていただけで、なんて言葉を強面のリーダーとやらが弁解する様子は見ていて面白かったのだが、一連の行動の理由については、いまいちわかっていない。

 何やら、これは壊してはいけない……なんて言葉をブツブツと呟いていた気がするのだが、どうしたのだろうか?

 

 返事と同時に少しだけ歩調が速くなった穂波に、必死についていこうとして足が絡まる。

 

「あぅ……」

 

 地面へと近づく顔面。

 あ、これ失神コースかな。

 なんとか、せめて手を先につければ……

 

 いくつかの思考が瞬間的に脳を過り、結局怖くて目を閉じる。

 しかし、つばきの想像していた衝撃はいつになってもやってこない。

 一瞬の浮遊感を覚えたのちに、ぐるりと身体の向きが変化する。

 

「あ、あぶなかったぁ……」

「……! 穂波、ありがと」

 

 少し待ってから、瞼を上げるとつばきの目の前にはふくよかな双丘。

 つまり、つばきは穂波の腕の中に収まっていた。

 先の瞬間、つばきが倒れそうになったことに前を歩いていた穂波が気がつき、つばきと繋いでいた手を彼女は全力で引き寄せた。

 その後、地面へと傾いていくつばきの身体を回して、勢いを殺すようにキャッチしたのだ。

 

 超軽量級のつばきと、穂波の神がかった対応力により成された危険回避に、周囲の人々がギョッと目をむいたのは言うまでもない。 

 

 余談だが、あまりにも脆弱なつばきと生活する内に、穂波の身体的スペックが徐々に引き上げられることになる。

 その事に穂波自身が気づくのは、秋の体力テスト頃になるのだが。

 

 

 

「やっぱ、頼りになる」

「そういいながら、胸に顔を押しつけないの……街中じゃ、流石に恥ずかしいから!」

「家なら良いと」

「違います!」

 

 

 顔を赤くした穂波は、つばきの首元を掴んであっさりと自分の身体から引き剥がす。

 不服そうな顔をしている目の前の少女に、ため息を吐きたいのは私の方だよ、と嘆息する穂波だった。

 

 

「穂波が、速度を上げるから」

「揶揄ってくるつばきちゃんが悪いよ」

「……反論、ないな」

 

 

 ごめんなさいして、和解した。

 

 

「どこに行く?」

「つばきちゃんからのお誘いだったと思うんだけど……?」

「私が、自力で服を選べると思うか?」

「あ、うん。わかった」

 

 コテンと首を傾げて即答するつばき。

 私がいなくなったら、どうするのだろうかと穂波は真面目に心配でしょうがなかった。

 

「それじゃ、今度こそ転ばずについてきてね。まずは、最初の目的の服を揃えるよ?」

「ん、了解」

 

 真剣な顔で足を運ぶつばき。

 健気で小さなその歩幅にくすりと微笑みスピードダウン、穏やかに微笑む穂波の横顔は幸せの色に染まりきっていた。

 

 

「……穂波?」

 

 

 よって、小さなその声を聞き逃してしまったことは、仕方のないことだったのだろう。

 

 

 

 

 

✳︎

 

 

 

 

「……次はこれと、これかな」

「穂波……」

「えっと、どうかした?」

「疲れた」

 

 

 買い物開始から、約二時間ほどが経過した。

 服選びは全面的に任せると公言してしまったことで、完全なる着せ替え人形へと相成ったつばきの体力が限界を迎えた。

 精神的にもだが、それよりも先に肉体的にアウトだった。

 

「足、がくがく」

「ご、ごめんね? 私、ちょっと夢中になっちゃって」

「穂波に褒められるのは、悪くない」

 

 着る服を変えるたびに、目を輝かせてくれる彼女のおかげで、なんだかんだ楽しかったのはつばきも同じだ。

 ただ、如何せん立っている時間が長すぎた……当然ながら『つばきにとっては』という前置きが先にくるが。

 

「そ、それじゃあ、今まで来た中から私が幾つか選ぶけど……つばきちゃん、今日は何円ぐらい持ってきてる?」

「財布分は、好きにしていい」

 

 そういって、ひょいと穂波に財布を放るつばき。因みに飛距離が短く、飾り気のない長財布は床へと叩きつけられた。

 

「物を粗末に扱っちゃダメ」

「ごめん」

 

 もうっ、と叱ってくる穂波が可愛くて仕方がないつばきである。

 

「それと、あんまり簡単に他人へ財布を預けちゃダメだよ?」

「わかってる」

「ホントに? 盗まれてからじゃ遅いんだからね」

「穂波はそんなことしない」

 

 真っ直ぐなその瞳に、気圧されたように穂波はたじろいだ。

 黙ってしまった穂波に向かって、追い討ちをかけるようにつばきは言う。

 

「私は、それを知っている」

「……………………うん、ならいいよ」

 

 敵わない。

 そう感じることは、実は少なくなかった。

 

「気を取り直して、予算の確認だけど…………え?」

「どうした?」

「つ、つばきちゃん?」

「なんだ?」

「このお金、どこから持ってきたの!?」

 

 諭吉を十枚ほど入れてきたはず……なんてことを思い出しつつ、つばきは返答する。

 

「家」

「そうだけど、そうじゃない!?」

 

 

 危うく店員に店を追い出されるところであった。

 

 

 

 遠慮なく散財してくれ、との言葉通りに四つほど上下セットで服を見繕ってもらって店を出る。

 空いていた休憩用のベンチに腰掛け、つばきの体力回復を待っている間に、穂波が尋ねた。

 

 

「軍資金の出どころ、か」

「え、いや……プライベートなことだから、教えてくれなくても、全然大丈夫なんだけどね?」

「全然大丈夫って、日本語面白いな」

「それは誤魔化したいってことでオッケーなのかな?」

「そういうわけじゃない」

 

 無表情で会話を横道へ逸らそうとするつばきに、穂波は苦笑する。

 

「ただ、少し話したくない」

「……そっか」

 

 目を伏せ、自分の意思を明確にしたつばきに対して驚きながらも、穂波はどこか嬉しさを感じていた。

 下手に誤魔化されるよりも、こちらの方が心地いいと感じるのは当然のことである。

 

「一つ、言うなら」

「……?」

「私が、稼いだものだ」

「——え?」

「だから、安心して使え」

 

 前言撤回。

 やっぱり、ちょっと不安になってきた。

 いつか、聞こう。

 そう心に決めた穂波だった。

 

 

 

 体力を回復した後に、穂波の好物なのだというアップルパイを売っている店へと向かった。

 少しだけ距離があったが、穂波のためにも頑張り、見事に完走したつばきは再びテーブルに突っ伏している。

 これまた当然ながら、走ったわけではない。

 

「……美味しそうだな?」

「うん! つばきちゃんも一緒に食べよっ!」

「ああ」

 

 テンション上昇中である穂波を見ていれば、アドレナリン的な何かで身体は動きそうなので問題ない。

 無理矢理、結論づけて上半身を起こす。

 視点の高さが大きく変わり、夢中になってアップルパイを頬張る穂波の頰に、アップルパイのかけらが付いていたことに気がつく。

 

 つばきの瞳がこれでもかと輝いた。 

 

 気力だけで身体を動かして、穂波の正面に近づく。

 

「……ん? むぐっ……どうかしたの、つばきちゃん?」

 

 つばきの挙動に何か違和感を覚えたのか、首を傾げた穂波の頰へと手を添えた。

 そして……

 

「…………っと、ご馳走様」

「つばき、ちゃん……?」

 

 ぺろりと、一舐め。

 妖しげにその菫色の瞳を光らせる少女の姿に、穂波の心拍数が跳ね上がる。

 顔が火照り、手から大好きなはずのアップルパイまでもが零れ落ちる。

 まつ毛を数えられそうな距離感で、見つめ合う。

 

「美味しかったよ」

「…………っ!?」

 

 誰だ、この子を無表情だとほざいたのは。

 なんだ、この妖艶な微笑みは。

 

 思考力が低下する。

 考えがまとまらず、視界が狭まり、耳には目の前の少女の声しか届かない。

 

 そして……

 

 

「ちょ、ちょっと待ったあああああ!!」

「うひゃっ!?」

「ぐぇ……」

 

 

 突如として横から割り込んできた金色の何かに、つばきが突き飛ばされた。

 聞き覚えしかないその声と、見覚えしかない金のツインテール。

 漸く思考が現実へと浮上する。

 

「こ、こんなところで、き、キスなんて! だ、だめだよ、二人とも!」

「咲希ちゃん!?」

 

 天馬咲希、彼女の乱入に心底救われたと穂波は息を吐く。

 少し離れた場所で目を回し、ダウンしている彼女を見て、穂波は心に刻み込む。

 

 …………この子は、危険だ。

 主に私の理性的観点で。

 

 

✳︎

 

 

 

「軽い、悪戯だった」

「悪戯!? 私には、二人がキスしてるように見えたよ!?」

「穂波のお弁当を舐めただけ」

「だけ、なんて軽いものじゃなかったよ! もうやっちゃダメです!」

「わかった……」

「あははは……蒴波さん、穂波の言うことには素直なんだね」

「ママだから」

「違います!」

 

 ダウン後のつばきは穂波に背負われ、咲希、そして先に連れられていたという例の幼馴染——星野一歌が合流したことで、二人のデートの時間は終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜 転章 〜

 

 

 

 

 

 

 

 それからも女子高生らしく、きゃっきゃと騒がしく買い物を続けていく彼女らを、遠くから見ていた人物が一人。

 

 

 

「そっか……もう、笑えるんだね」

 

 

 

 短い銀の髪を持つその少女——日野森志歩は、嬉しそうに……そして少し寂しそうにそう呟いて、四人に背を向ける。

 

 少し前にモール内で見かけたときは、穂波と少女が二人で手を繋いでいただけのようだったが、今は一歌と咲希も加わり"昔と同じような"笑顔を見せている。

 何故だか居た堪れない気持ちを覚えた志歩は、見つからない内に移動をしたいと路地へと入っていった。

 

 

 

 

 

 しかしそれが、間違いだった。

 

 

 物思いに耽り、志歩は自分の想像よりもずっと路地裏の奥深くへと足を踏み入れてしまっていた。

 

 

「…………あ? なんでこんなところにガキが居んだよ」

「…………別に、私がどこを通ろうと関係ないでしょ」

 

 たまたま入ったその路地で見たのは、屈強でガラの悪い男達が何かを囲むようにして集まっている様子。

 

 

「なぁ、テメェら……一人追加だ」

「……え」

 

 

 その時に、志歩はやっと気づいた。

 

 ()()()()

 何かで口を塞がれているようで、くぐもった音しか聞こえないが、それでも確かに誰かの嗚咽が聞こえる。

 

「……まさか」

 

 背筋が凍る感覚。

 あり得ない、あるはずがないと信じたくないその現実が目の前にあった。

 

 男達が、何を囲んでいたのか……わかってしまった。

 

「……っ! 誰か、たす——」

 

 叫ぼうとして口を抑えられる。

 足掻こうと手を振り回すも、一人の女子高生でしかない志歩はすぐに制圧されてしまい、身体の自由は奪われてしまう。

 

 恐怖で、涙が溢れ出る。

 

 そのときに……

 

 

 

「…………ったく、どこもかしこもギャーギャー、ギャーギャー騒ぎやがって……猿かよ、テメェら」

 

 

 

 そんな暴言と共に路地の奥から、小さな人影が近づいてきた。

 

 

 

「ああ、いや……猿よりひでぇな。後で動物園にでも行って謝って来ないと、猿に悪いか…………まあ、何でもいい。今すぐに、俺の前から消え失せろ、屑共」

 

 

 フードを深く被り、顔を見せずに現れたのは、自分よりも背の低い男性であった。

 

 男性にしては、随分と声の高い人だなと、つい場違いな考えを浮かべてしまってから、志歩は自分の置かれている状況を思い出した。

 

 男の数は優に十を超えている。

 それも、フードの少年よりずっと頑強な人ばかりだ。

 

 最寄りの男性が、躊躇うことなく少年へと殴りかかっていく。

 次の瞬間には盛大に喧嘩を売った少年が、滅多打ちにされてしまうことを想像して、思わず目を閉じてしまい……

 

 

 僅か"3秒"後。

 志歩を拘束していた幾つもの力が消えた。

 

 

「はい、おしまい。アンタら大丈夫か?」

 

 

 パンパンと手を打つ音に目を開くと、死屍累々とした光景が広がっており、その場に立っていたのは目の前の少年のみ。

 志歩の前に囚われてしまっていた女性も、自身の抵抗によって衣服が乱れてしまっていただけであり、()()大丈夫であったようだ。

 

「だい、じょうぶ……です」

「そう? ならよかった」

 

 問いかけられ、呆然としたまま、志歩がそう呟いたのを聞くと少年は放心状態であるもう一人の女性の元へと向かっていく。

 噛まされていた猿轡を解き、少しの間、少年は女性と会話をする。

 少しすると、女性は服の乱れを直し、何度も頭を下げてから、大通りへと戻っていった。

 

 女性を見送った少年がその場で大きく伸びをする……そのときに、少年の死角になる位置で倒れていた男性の一人が起き上がったことに志歩は気がついた。

 

 

「後ろっ!」

「……ガキがあああ!」

 

 反射的に声を上げる。

 男の手には、ギラリと光を反射する鋭いナイフ。

 どうしてそんなものを、と志歩が思う間もなく男は少年へと接近し……

 

 

「うるせぇっ!!」

「……は?」

 

 

 右足を軸に左回転、背後を向いた状態からの後ろ回し蹴りがナイフの脇腹を強打し、男の手からその凶器を弾きとばす。

 

「さっさと、黙れ」

 

 目にも留まらぬ、とはこのことを意味するのだろう。

 振り抜いた左足を地面へと下ろす。

 下ろした左足を今度は軸足として、高々と掲げられた右足。

 放たれた踵落としが、男の脳天を襲った。

 

 その言葉通り、男を黙らせた少年。

 深く被っていたフードが、今の激しい動きで外れる。

 そのとき志歩は、人生の中で一番と言ってもいいほどに驚愕を覚えた。

 

 

「……………………女の子?」

「いや、男…………なんだけどなぁ」

 

 

 肩にかかるほどの長さの純白の髪。

 目の前の人は、美しくそして何よりも。

 

 

「可愛い……」

「やめろ、そんな目で俺を見ないでくれ……」

 

 

 とびきり可愛らしい顔をしていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 






 二人目、登場。
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