火埜翔織という異物によるHEROACADEMYだ 作:完全怠惰宣言
世界個性機関(WORLD KOSAY ORGANIZATIONS)の略称。
個性学先進国である日本にて「“個性”の母」と呼ばれる女性の活躍により「異能力=“個性”」という認識が根付き、それが諸外国に浸透したことにより生まれた世界的機関。
個性使用が免許制になっている国は大体加盟している。
本来、個性はローマ字表記だと「kosei」なのだか、誤植がそのまま広まった結果、異能力を指し示す“個性”の表記は「kosay」で定着した。
週が明け眠そうに歩く一人の生徒がいた。
火埜翔織である。
フラフラと歩くその姿は週が明けた1日目とはとても思えなかった。
世界と自分を隔てるようにオリジナルチューニングのヘッドホンをして音楽を聴きながら登校するその姿、幼馴染みの2人が見たら一目でわかっただろう。
今、火埜は頗る機嫌が悪いと。それはもう原作の爆豪(夏休み前Ver.)がかわいく見えるほどである。
ぱっと見はいつも通りだが、所々の仕草に荒さが出ている。
そんな火埜の目の前には、彼の機嫌を更に悪化させる要因があった。
「HEY!!イレイザー!!なんか落ち着きないなどした?」
(自称)心友で同期、席も隣のプレゼント・マイクがテンション上げ上げで話しかけたのは珍しく落ち着きのない相澤だった。
「マイク、いや校門の前そろそろどうにかしないとと考えていてな」
「オイオイ、マスメディア共はほっといてもUAバリアがあるから校内侵入はNGだろ」
おちゃらけるのを辞め淹れたてのコーヒーを相澤へと渡し、自分も授業の準備を始めるマイク。
「実は火埜がまだ登校してないんだ」
雄英高校の校門にはとあるセンサーが取り付けられており、その一つに生徒の登校確認が取れる機能があった。
これは、各自が所持する生徒手帳に内蔵されたチップにセンサーが反応し、担任のヒーローに登校の有無を知らせるものであった。
「おぅい、それはちょっと拙くないか」
「校門の前のマスコミがトリガーになる可能性もある。マイク手伝ってくれるか」
「OKOK、心友の頼みとあらば仕方ねえな。ハウンドドッグもそろそろ限界ぽいしな」
No.1ヒーロー、オールマイトの事実上の引退宣言・後進育成のために直々に教鞭を執るというニュースは、「WKO(WORLD KOSAY ORGANIZATIONS)」に加盟する各国に衝撃を与え、現地日本でも未だに連日ニュースで取り上げられない日はなかった。
そんな彼が母校である雄英高校で教えることになったと解れば当然、毎日のごとくマスコミが押し寄せる騒ぎになるのは明白だった。
いち速くスクープを物にしたい、そんなマスコミの思惑は当然渦中の生徒たちにも向けられるわけで。
ーオールマイトの授業はどんな感じ?ー
「まだ新人さんだからかしら?カンペ読みながらだけど自分の言葉で伝えられるように努力されているわケロ」
ー"平和の象徴"が教壇に立っている様子など聞かせて!!ー
「もう、あれっすわ。根本的に何て言うか、画風が違う感じっすね!!」
ー教師オールマイトについてどう思ってます?ー
「世界でも有数、日本最高峰の教育機関に自分は、自分達は在籍することができているという事実を意識させられました。威厳や風格はもちろんですが他にもユーモラスな部分等は我々学生は常にその姿を拝見できるわけですからトップヒーローとは如何なる者か、そして我々学生が目指すべき高い頂の極一部でも学びとり、成長の糧とすることこそが、事実上の引退宣言ともされるオールマイトの意思を受け継ぎ、新たな時代のヒーローになるべく日々精進し(ウンタラカンタラ)」
新学期が始まってから学校が開いている日だけでなく、休校日すらも押し寄せるマスコミの行動は加熱していた。
既に登校妨害ともとれる行動も目立ち、行政が動きかねない事態に発展していた。
「かっちゃん、とーくん見なかった?」
「あ、翔織の奴ならまだ来てないんじゃねぇか」
窓際の席、運良く幼馴染みが固まれた席順で1番前に座る件の幼馴染みの姿が教室に見当たらなかった。
「昨日は“あの日”だったからナーバスになってないか心配だなぁ」
「ちっ、少しはオレ達を頼れっつうんだよ」
そう言って勝己が窓の外を見る。
そこからはちょうど校門が見え、未だに退く気配のないマスコミに爆豪は苛立ちを覚えていた。
「お、今度は火埜の奴が捕まるっぽいぞ」
上鳴の暢気な声に事情を知る2人は校門を凝視してしまった。
そこには、確かにヘッドホンをしている幼馴染みの姿があった。
「ねえ君、何年生?オールマイトの授業はどうなの?」
1人の女性アナウンサーが火埜にこえをかけた。
火埜はヘッドホンを指で叩くと足早にその場から離れようとした。
「あ、待ってちょっとでいいから話聞かせて」
ヘッドホンを叩く、つまり周りの音は聞こえませんというジェスチャーをしたにも関わらず詰め寄ってくるアナウンサー。
他局のカメラも火埜に集中し、抜け出せない状況になっていた。
「邪魔だな」
そんな火埜の呟きを運悪く拾われることは無かった。
火埜の瞳が氷のように冷たくなっていることに気付かない周囲は無遠慮にマイクを突き立てる。
誰にも気が付かれないほどにうっすらとしかし確実に相手を殺傷できるオーラを両手に纏い始めた火埜。
校門へと歩いていた相澤とマイクはその最悪の光景に走りだしていた。
「邪魔だって言ってるだ」
「おっはよう、ひーの君」
「おはよう、火埜。土曜はありがとな」
そんなマスコミの群れを掻き分けて、火埜の両手に葉隠と耳郎が抱き付いた。カメラに写らない絶妙な位置取りで火埜の手を握り混むように。
「HEYHEYHEY、遅刻ギリギリたぁ珍しいじゃねぇかリスナー諸君」
「お前らいい加減にしろよ、登校妨害で訴えるぞ」
その直後、相澤とマイクが校門に到着し、3人を校内に招き入れた。
「ちょっとなんですか、てか汚。え、学校の先生ですか?」
「入校証があるなら入ってもらって構わないがどこか持ってるところはあるのか。ないならいい加減に退散してくれ」
「それじゃぁな、マスメディア共。ちゃんと手順踏んでから来るんだな」
相澤とマイクが校門へと戻ると瞬く間に巨大なバリケードが出来上がった。
「ハッハッハー、見たか雄英名物“UAバリアー”」
「葉隠、耳郎訳は知らんだろうが良くやった。火埜、お前はミッドナイト先生ところ行ってから授業に出ろ。さっさと行け」
「はーい、それじゃ下駄箱まで行こうか火埜君」
「どうした、なんか辛そうだな。ウチのお気に入り聴くか?」
女子2人に手を引かれ歩く火埜。
少し立ち止まり大きく深呼吸をした。
「ゴメン、2人ともありがとう。相澤先生の申し付け通り、ミッドナイト先生のところ寄ってから教室行くから」
そう言うと火埜は足早にその場から走っていった。
「火埜君大丈夫かな?」
「なんか無理してるっぽかったな」
「ところでジロさんや」
「なんだい、トールさんや」
「「火埜(くん)と近過ぎないかな??」」
下駄箱にて乙女の戦いが静かに始まっていた。
「ムゥーーーーーーーーーー」
「静空、ステイだぞ」
「でも、葉隠さんも耳郎さんもとーくんと近過ぎるよね」
「はぁ(これで恋愛感情ゼロだって言いきるんだからなぁ、女って解らねぇ)」
教室では番犬が小型犬を窘めていた。
「あぁ、やっちゃったよ」
ソファーに蹲り、終始「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」と唸っていた火埜の復帰一言目がそれだった。
「あら、翔織復活かしら」
「ねむネェ、ありがとう」
ミッドナイト、
火埜の父、ビーストアーツこと火埜
そして、何の因果か火埜を初めて抱き上げた人物こそミッドナイトであった(父は仕事で、母は気絶中で無理だった)。
2人が殉職した時も、何かと世話を焼いていた。
イワさんが養子縁組を進めなかったら未婚の義母になっていたかもしれない、そう思うほど繋がりが深かった。
「彩命さんにはいろいろなことを教わったし、私の個性が進化したのもお二人のお陰だもの、気にするんじゃないわよ」
「ほら、復活したならサッサと行きな、それともおねえちゃんのおっぱいが恋しいの?」
ミッドナイトの豊満な胸を腕を組んで持ち上げてわざと揺らしている。
「セクハラ禁止、“オレ”がそういうのに弱いのって絶対ねむネェが原因だ」
「ほぉら、猫が脱げてるわよ。安心なさい、あんたの子供抱っこするまでおねえちゃんは死なないから」
セクハラモードとは打って変わって可愛い弟分を抱きしめるその姿は衣装に関係なく、慈愛に満ちていた。
「ほんと、“僕”は恵まれてるよ。それじゃ行ってきます」
「はいはい、行ってきな」
進路指導室を後にする火埜の背中を見ながらミッドナイトは溜息をついてしまった。
「私らじゃダメなのよね、誰か早くあの子の安心できる場所になってくれないかしら」
それは、姉として心からの願いだった。
「遅なりました」
教室に入って来た火埜に視線が向く。
その中でも相澤の視線は特に鋭かった。
「事情が事情だ、次は自分で制御できるように努力しろ」
「ういっす」
「さっさと席につけ」
火埜が自分の席に着くと相澤は再び話し始めた。
「遅くなったが、今から学級委員を決めてもらう。時間もないからさっさと決めろ」
「はいはいはーい、あたしやる」
「組織の長、漢として燃えるぜ」
「おいらのマニュフェストは女子は膝上7cm」
「静粛にしたまえ!!」
各々が思い思いの発言をしていく中で、手を上げ垂直に立ち上がるという器用なことをやってのけた飯田の声が響いた。
「『多』と『他』を牽引する責任重大な職務、『やりたい者』がやれるモノではないはずだろう!!」
「周囲からの信頼あってこそ務まる聖務!! 民主主義に則り、真のリーダーを皆で決めるというのならば、これは投票で決めるべき議案ではないか!!」
「だったら、直下立つなや」
「飯田ちゃん、会って1ヶ月経ってない私たちじゃ明確なルールがなきゃ投票だってゴチャゴチャになっちゃうんじゃないかしら?」
「くっ、確かにそうだ!!」
爆豪のツッコミと蛙吹の冷静な疑問に、机に手を叩きつけ悲壮感を漂わせる飯田。
「だったらスピーチと投票でいいでしょう。ルール事態も簡単なものにすれば時間も掛からないだろうし」
「あれ、火埜は飯田に賛成?」
「耳郎さん、そっと後ろ見て。相澤先生がキレそう」
「うわぉ、本当だ」
火埜が賛成を示したことに、目を輝かせる飯田。
「賛成した手前、簡易的な選管するからさっさと決めようよ」
「あたしも賛成、そしてあたしも選管しまーす」
火埜の意見に乗っかるように葉隠も選挙管理担当に名のりを上げる。
その時、耳郎と葉隠の間に火花のようななにかが散ったような気がした。
「それでいいから、さっさと決めろ」
相澤の一言で1A学級委員総選挙が幕を開けた。
1A学級委員長投票ルール
①今回に限り、クラス全員が候補者且つ投票者である。
②スピーチの順番はランダム(やるかどうかは自己判断)。
管理人どちらかが終了宣言をするまでスピーチを行える。
誰にも迷惑にならなければ何をしても良い。
※迷惑の判定は相澤先生及び管理人に一任される。
※判定の最高決定権は相澤先生にある。
③希望者全員のスピーチの後に投票用紙に以下を明記する。
1)投票人の名前
2)学級委員長に推薦したい者の名前
※同じ用紙に同名が記入された用紙は無効とする。
④選考中、管理人に話し掛けてはならない。
⑤管理人は全員が投票用紙を管理人に渡し終えた時点で終了
とする。
⑥管理人には投票権は無いモノとする。
ミッドナイト / 香山睡(かやま ねむり)
雄英高校教師。
「18禁ヒーロー」とも呼ばれる過激なコスチュームが特徴だが、本人は社会派コメンテーターを努めたり、半グレ集団の公正の一役を担っている等、世間的に言う立派な大人。
「アオハル」が好み。
火埜が生まれ落ちたその時からの付き合いで、火埜の人間性の構築において重要な部分に関わっている。
某事務所勤務のサイドキックと清く正しいお付き合い中。
作者的に老衰であの世に逝って欲しかったキャラクター上位。