火埜翔織という異物によるHEROACADEMYだ   作:完全怠惰宣言

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「あ、夜目売テレビさんですか、なんか敵と組んで無断で公共の土地に侵入したそうじゃないですか(本体)」
「おい、聞いたぞ天下の無事TVが敵と組んで違法行為したそうじゃないか(複製)」
「なんか聞いた話なんすけどJAPANtvの報道陣が敵と組んで雄英襲撃かましたとかしてないとか(複製)」
「テレビ夕暮さんですか、おたくは敵と内通してるって噂がたってるんですけど(複製)」

「・・・ねぇん、しゃちよぉ。あれそろそろ止めないと恐喝罪で訴えられるわよ(磁石)」
「そうね、ヴァターシもなんかかわいそうになってきたわ(巖三)」

「「「「「無視すんじゃねぇよ、しっかり答えろやあぁん×365人(同一人物)」」」」」



12th

保健室に運び込まれた火埜。

既に8割方再生していた喉には“晴の焔”が灯っており、外見的には治療を必要とはしなかった。

リカバリーガール曰く、体は問題ないが、何かとてつもなくストレスを感じる事柄があったために精神的に疲弊し眠り続けている。

放課後までには目を覚ますだろう、というお達しで泣き疲れくっ付いて離れようとしない芦戸も同じベッドに放り込まれた。

教師も何とか冷静にある事を務め、会議を行っていた。

 

「取り合えず、騒ぎに乗じて校内に入ってきたマスコミは敵認定ってことでいいんじゃね」

 

いつものおちゃらけたキャラを一切消失したマイクの一言に何名かの教師は首を縦に振っていた。

 

「まぁ落ち着いてほしいのさ。僕らが率先してマスコミを叩いたら、それこそ今回の騒動の主犯格たちの思うつぼかもしれないのさ」

 

ネズミのような摩訶不思議な生き物、校長の根津は普段通りに会議を進めていた。

彼の持つお気に入りのティーカップが粉々に砕けている点を除けば。

 

「とにかく、僕らのカワイイ生徒に手を出したクズ共は見つけ次第確保という方向で行くのさ。ま、何やら危険な個性を持っているみたいだから“うっかり”重傷を負わせてしまっても仕方がないのさ」

 

左手で器用に回していた万年筆を握るとその瞬間、万年筆は砕け散りインクで机を汚してしまう根津。

実は教師陣の中で最も怒り狂っていたのは校長である根津であった。

 

「マスコミも今回ウチに押しかけてきてた局は向こう5年は出禁にして、それから直接乗り込んできた奴らはヒーロー科の戦闘訓練を受けてもらって生徒がいかに真剣にヒーローを目指しているか知ってもらうのも良いかもしれないね。ま、不慮の事故が起きても仕方ないけど」

「いい加減におし根津、火埜も目覚めてすぐにこの会議に参加しようとするなんて、担任に似てきちまったのかね?ついさっきまで昏睡状態だったのに、一体何を見たらあの子をあそこまで追いつめられるんだい」

 

こと訓練に関して一切手を抜かない師匠(イワさん)の下でそれこそ血反吐を吐かされる訓練を行ってきた火埜翔織は戦闘という分野における思考と見極めは下手なヒーローより優れていた。

事実、人一人庇いながら教員の個性等の情報から最も被害の出ない方法で教員を呼ぶ方法を躊躇なく実行した。

お陰で芦戸にケガらしいケガはなく、校舎も外壁が完全に消失したがセメントスが居れば問題ないレベルの損傷だったともいえる。

そんな火埜が精神的に摩耗するような相手とはどれほどの存在なのか。

泣き疲れて眠ってしまった芦戸は今なお火埜の制服を握ったままであり、無理やり離すことも躊躇されるとのことでそっとされていた。

 

「今回の件では情報が少なすぎる。兎に角紛失したモノがないか改めて各自チェックし、火埜の準備が整い次第再度会議を行えばいい」

 

割と冷静に見える相澤であったが、彼の手は握りしめ過ぎたのか血が流れていた。

しかし、それこそがこの場にいる教師陣の意思を表しているようだった。

 

 

真っ暗中、芦戸は歩いていた。

何時からこの場所にいるのか覚えていないが、ただひたすら歩いていた。

すると遠くの方に手を振る人影が見えた。

しかし、芦戸はなぜかその人影に近付きたくなかった。

なのに、自分の足は勝手に動いて前に進んでしまう。

眼も背けられない、足も止められない、そして気が付くと自分の顔の前に傷だらけの掌が映し出されていた。

次の瞬間、掌は自分をすり抜けると自分の後ろから悲鳴が上がった。

顔が削がれた中学時代の友達、体中が欠損した今のクラスメート、両親、近所の人々。

そして、遠くにいる人の手を張り付けた漆黒の悪魔が芦戸に触れようと化け物のような腕を近づけてきた。

身体を見るとドロリとした黒い亡者が自分を掴んで離そうとしない。

もう少しで手が届く。

そんな時、温かな“8色”の焔が自分を包み込んだ。

その焔は徐々に鳥の姿となり芦戸を慈しむように包み込むと悪魔に向けて威嚇するように一鳴きする。

気が付くと黒い亡者も悪魔も芦戸の周りから姿を消していた。

 

―安心して。必ずオレが君を守るから―

 

その声に安らぎを感じ芦戸は目を覚ました。

 

「あ、芦戸さんおはよう。大丈夫?」

 

制服の首元は赤黒く染まっているが傷らしい傷は見当たらず、いつも見せる距離をとるための笑顔とは別の、人を安心させる笑顔をした火埜が芦戸の頭を撫でながら起きていた。

 

瀬呂と尾白は保健室へと歩いていた。

切っ掛けは瀬呂が相澤に呼び止められた事だった。

 

「お前ら、放課後時間あるか」

 

多目的ルームで近代ヒーロー美術史の授業を受けた後、教室に帰る途中に忘れ物を思い出した尾白と昼に全校放送で通達された本日単独行動禁止により尾白に付き添った瀬呂に相澤が声を掛けた。

 

「はぁ、特に用事はないっすけど」

「悪いがコレを火埜に届けてやってくれないか」

 

そう言って相澤がどこからか取り出したのは紙袋だった。

 

「これは制服ですか?」

「ああ、今回の件で火埜の制服が血だらけになっちまってな。そのまま帰ったらまた“言論と報道の自由とかクソ抜かすゴミ共”が騒ぎ立てかねないからな、取り合えず上は全部取り換えることになった」

「オレはこれから“報道の自由を傘にしたクソ共”と今後のことで協議に行かなきゃならなくなてな。悪いが保健室まで届けてやってくれ」

 

瀬呂はこの時、相澤から漏れ出す殺意を敏感に感じ、この場から逃げたい衝動に駆られていた。

しかし、その殺意が自分に向いていないことは解っているので何とか耐えていた。

 

「解りました、それじゃお預かりします」

「すまんな、それじゃ頼んだ」

 

紙袋を渡され、スタスタといつも以上に足音を鳴らしながら歩いていく相澤は誰がどう見ても不機嫌だった。

 

「(そっか、火埜の奴起きたんだ)」

 

昼休憩が終わり、教室に戻ると相澤から芦戸と火埜が校内に侵入した敵に襲われたこと、火埜が負傷したことを聞かされた。

クラスメートが負傷したと聞いた時、実は瀬呂は何も感じなかった。

正確には現実として受け止めていなかったというのが正しい。

ヒーローになるために入学した、訓練での負傷は覚悟していたが敵との戦闘なんて大分先のように思っていた。

そのはずなのに、自分達がちょっとしたハプニングに対処してた時、クラスメートは死ぬかもしれない場面に出くわしていた。

回復系の力も持っていた火埜だからこそ生き残れたと言われてもピンと来なかったが、そんな奴ですら消耗で強制的に眠らせられてしまう。

改めて、ヒーローと言う職業の恐ろしさに考えさせられることだった。

 

「火埜、目が覚めて良かったな」

 

隣を歩く尾白に話しかけられ、現実に戻ってきた瀬呂。

 

「まったく、あいつは常識人だと思ってたんだけどなぁ」

「良い子って訳ではないよな」

 

火埜と話をしていると解ることだが。

どちらかと言うと楽したい人間である。

勉強も得意不得意分野がハッキリし過ぎている。

自分の価値基準に正直である。

年相応にエロに興味がある反面、以外に純情純真である。

大人のような感性が垣間見える一方で、子供染みたワガママと無邪気さを併せ持つ歪な存在。

そんな火埜を瀬呂は気に入っていた。

 

「速く保健室行って“非常口委員長”の話してやろうぜ」

「あぁ、あれは傑作だな」

 

2人は笑いながら歩いていた。

目的の保健室に近づいた。

 

ちょっ・ま・

・た、・・い・・るよ

 

保健室から何やら物音がする。

芦戸と火埜以外今は居ないはずの保健室から。

尾白と瀬呂の2人は最悪の想像が頭を過った。

 

「おい、大丈夫か!?」

「無事か、2人とも!!」

 

急いで保健室の扉を開けた2人が目にしたのは。

 

 

数分前

 

「あれ、ひの?」

「はい、貴女の火埜君ですよ」

 

赤黒く染まったワイシャツの第2ボタンまで外し、ネクタイも同様に弛められ、バレないように身に付けている翼を模したシルバーのペンダントトップ。

まだまだ男の子な指が壊れ物を扱うように撫でているのは芦戸の髪。

徐々に意識が覚醒していく芦戸。

そして、真っ先に見たのは自分を庇い負傷した筈の火埜の喉。

ズタボロだった其処は女子も羨むような綺麗な首筋があった。

思わず手を伸ばし、火埜の喉を撫でる芦戸。

 

「ちょつと、くすぐったいですよ」

 

本当にくすぐったいのだろう、笑い声が漏れてくる。

 

「良かったぁ、ひの」

 

気が付くと芦戸の瞳から涙が溢れ落ちそうになっていた。

しかし、その涙は火埜が掬い上げ、指で優しく拭った。

 

「ふぇ、ひぃのぉ(グスッ)」

「あれ、泣かしたい訳じゃないんですけとね?」

「だって、あんた、あたしのせいでぇ」

「気にしないでください、あれはオレのどうしても引けないばめんだったんです。それに言ったでしょ」

「「オレが君を守る」って」

 

そう笑う火埜は何時もの子供っぽい笑いでも、心の境界線を作るために浮かべる大人のような笑みでもなく、年相応に純粋な笑顔だった。

 

「あ、あぁ、ひぃのぉ」

 

元々自分の感情に素直な芦戸。

押し寄せる感情の波に抗うことをせず、思い切り火埜を抱き締めてしまった。

 

「よかった、よかったよぉ火埜」

 

しかし、彼女は大事なことを忘れていた。

泣き付かれ寝てしまった芦戸は一度目を覚ましていた。

隣を見ると傷がほぼ塞がった火埜。

夢でも見ているかのような感覚の中、寝苦しさを覚えた芦戸は何時ものようにネクタイを外し、制服であるワイシャツをお腹の辺りまで外す。

すると、再び唐突に眠気に襲われる芦戸。

芦戸自身、「あぁ、これは夢だ」と良く解らない納得をすると再び火埜の隣で眠りについたのだった。

そんな彼女が火埜の頭を抱きしめる。

そうなると必然的に火埜の顔は彼女の年相応に育った胸部に抱き抱えられてしまう。

そして現在、彼女はその胸部を下着一枚隔てて何も障害がない状態だった。

つまり、

 

「ちょつとまって落ち着いて芦戸さん」

「良かったぁ、火埜生きてた」

「あ、いい匂い、じゃなくて!!」

「ごめんね、ありがとう」

「うあ、柔らかい、て外れてるから落ち着いて!!」

 

いつの間にかズレてしまっていた下着に気付かず直に火埜の顔を胸に押し付けながらそれに気が付いていない芦戸。

頭がまだ整理しきれてないからか、猫が何匹か逃げ出した状態で所々で本音が漏れている火埜。

そんなカオスな状況が出来上がっていた。

 

「心配して損した」

「だな、取り敢えず火埜で芦戸の大事なところは写らなさそうだし」

 

「「極刑だな」」

 

オレ達の心配を返せこのラブコメ野郎。

そんな副音声が聞こえそうな虚無の表情で尾白と瀬呂はその喜劇をありのままに文章にするとクラスのグループラインに載せるのだった。

そのラインを見た怒りで思わず自室のお宝本を破り裂いてしまい、何かに覚醒しかけたブドウ頭の少年がいたとかいなかったとか。

 

「ヒノノヤロウ、オイラトソコカワリヤガレーーーーー




クイーン・キャマバッカ事務所ヒノトオリファンクラブ会則
一つ
若を泣かせるべからず
二つ
若に受けた恩義は一生を賭けて報いるべし
三つ
けして逸れるな人の道(若が泣くから)
四つ
けして殉職するな(若が泣くから)
五つ
若の敵は自分の敵

なお、以降86項目の会則が存在するらしい。
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