火埜翔織という異物によるHEROACADEMYだ 作:完全怠惰宣言
ミスター普通。
クラスでは余り目立てていないが普通に凄い。
実は放課後、爆豪と火埜に頼み込み自身の個性についての理解力を深める勉強会を週一で行う切欠を作った普通に凄い子。
空手をベースにした格闘術を習っていたが、現在は爆豪の考えを踏襲し受け流す動きを取り入れた尾を主体にしたオリジナル体術の構成に奮闘している。
教師及びクラスメートからの評価は高い。
薄暗く、陰湿な雰囲気を漂わせるバー。
「おいおい、どう言うことだ?」
身体中に“手”を張り付けた男、死柄木弔は苛立ちの余り癖の首筋を掻き毟る所作が悪化し、血が出ていることすら気にせずにいた。
「どうやら校舎を破壊したあの一撃の際に、一部の書類も余波を受けていたようですね。生徒の個性に関する書類は一切使い物になりません」
身体が靄のようなものに覆われた、言動は紳士的な黒霧と呼ばれた男はバーカウンターに乱雑に並べられた書類の一部、穴だらけで使い物にならなくなってしまった書類を手にしていた。
「くそ、クソクソクソクソクソクソクソクソ。あのクソ餓鬼か!」
死柄木の脳裏には喉を潰したにも関わらず、自身に臆することなく馬鹿にしたような笑みを浮かべた生徒の顔が思い出された。
『ハッハハ、なかなか面白い子じゃないか』
突然、バーカウンターに置かれていた古いテレビから男性の声が漏れだした。
「“先生”!?笑い事じゃねぇよ、あのクソ餓鬼のせいで今回の計画が完全に見直しじゃないか!!」
『いやいや、落ち着くんだ弔。今回はアレの精度実験の方が主目的だろ?オールマイトがどれだけ弱ったのかを見極めるために一番出来の悪いアレを動かすんだ』
『後の事は僕と黒霧に任せて少し休んできな』
「クソが」
声に促され、死柄木はバーの奥へと消えていった。
『ところで黒霧、本当にその少年は“君”を見て顔色を変えたんだね?』
「はい。私、というよりも私に付随する何かを見てしまい気分を害したように見えました」
『うぅん、解った。その少年の事は取り敢えず後回しにしよう』
『今は僕の愛しい宿敵、オールマイトに焦点を当てて計画を整えよう』
「はい、ご主人様」
週が明けて、月曜日早朝
「わぁーかぁー、何かあったら必ず“かぁなぁらぁずぅ”連絡くださいよぉ」
「まったくもぉ、朝から騒がしいんだから」
校門前、ピンク色のド派手な装甲車の前で火埜を前後に揺さぶるマスクを被ったスーツの男性。
その男性の声に迷惑そうな顔をするたらこ唇がセクシーなスーツ姿の漢女。
「でもね若、今回の件はあたし達本当に心配したんだから。ちゃんと気を付けてよね」
「解ったから、早くトゥさんを止めてマグねぇ」
火埜の護衛を勝手に勤めるのは仕事の依頼で雄英に来たクィーン・キャマバッカ事務所所属のヒーローの2人。
「倍々ヒーロー・トゥワイス」と「磁界ヒーロー・マグネティア」だった。
火埜と出会い、運命が変わったと自称するキャマバッカ事務所に所属するトーリファンクラブのメンバーでもある。
「あら、遅いと思って迎えに来てみたらマグに仁じゃない」
「あら、睡。ごめんね、あぁたの旦那が過保護発動しちゃってて」
「まだ入籍しかしてないわよ。式は翔織が高校卒業したらって話し合ったのよ」
「ねぇーむぅーりぃー、若をわぁかぁを頼んだぞぉ」
「もう、2人とも。コス着てる時はちゃんとミッドナイトって呼んでよね」
トゥワイスは事務所に所属する前、不幸が重なり自棄になり銀行を襲うとしていた。
そんな時、偶々公園のベンチに座る子供に声を掛けた。
それが火埜との出会いであり、彼の人生のターニングポイントとなった。
その後、何回か挫折をしたが火埜の存在と気が合い現在入籍したミッドナイトの精神的な援助があり、遅咲きのヒーローとしてデビュー。
そんな過程を経ているため、事務所ないでも1・2を争う火埜の過保護者となったのだった。
マグネティアも似たようなものだった。
もっとも、彼女の場合はキャマバッカ事務所で事務員をしている親友の誘いがあったのが大きいかもしれない。
「2人共、仕事頑張って」
ミッドナイトの後を着いていく火埜の言葉。
2人は今日の依頼を達成するための心の燃料として心に留めたのだった。
「内包するオーラの色と言うのはどう言うことだい」
火埜の体調を考慮しつつ行われた緊急職員会議。
事前に作成された相澤による聞き取りリポートにも黒霧を見て気分を害した理由が掲載されていた。
「内包するオーラの色が滅茶苦茶だったと」
「僕自身の個性に関係するのでしょうが、意識を集中させると僕の目には相手が内包するオーラが色として認識できます」
「根津校長なら頭というか脳が最も色が濃くて、綺麗なオパールホワイトに相澤先生なら両目に青色のオーラが濃く見えます」
名前を挙げられた両名に視線が向く。
そして、自分たちの個性の象徴的な部位に目を向ける教師陣。
「基本的にオーラは単色なんですが、特殊型に分類される個性持ちは体の中心に向けて色が混色していく傾向にあります」
「1-Aですと緑谷さんが綺麗な混色であることから個性を複数内包している可能性があります。また轟君に関しても左右で色が違い、中心で色が綺麗に混ざり合っていることから複合型であると僕は考えております」
そう言うと机に置かれていたお茶を一口含むと深呼吸をする火埜。
「しかし、黒霧と呼ばれていた敵は違っていました。複数の色が混ざることなく、無理やり一つの器に色が存在しているような感じでした」
「とにかく気持ち悪かったんです。混色していた個所もありましたが、全体的にはそれを色として認識したくないと体が拒絶したのが昏睡の原因かと思われます」
「火埜の発言から、恐らく敵は複数の個性を1人に人工的に集め、一つの個性として成り立たせている可能性があります」
相澤が火埜の言葉を引き継ように立ち上がり話し始めた。
その言葉に、教師陣はある1人の存在を思い出した。
「相澤君、それじゃまるで」
「そうですオールマイト。かつて貴方と貴方の仲間、多くの犠牲を払って打倒した今世紀最大の敵の影が見えてきます」
「確かに、私も死亡を確りと確認できたわけじゃなかったが」
「そして、黒霧と呼ばれた敵は私の仮定が正しければ何らかの実験体であることが予想されます」
一同に黙る教師陣。
「火埜君」
根津が今回ただ一人の被害者火埜に話しかける。
「黒霧と呼ばれた男、確かに混色していた個所があったんだね」
「はい、それでも全体的に見ても少ない割合でしたが」
「そうか、解ったありがとう。それじゃ君は教室に行くがいいさ」
「それでは、失礼いたします」
火埜が退室すると会議室は一切の音が無くなった。
「
早朝緊急職員会議の影響で1時限目は自習となっていた。
それは無論、1-Aも同じなのだが皆が時計を気にしていてそれどころではなかった。
すると、ガラガラと前のドアが開けられる音が響き、全員が一斉に音のする方へと視線を向けた。
「え、なに?なんか、怖いんだけど」
「火埜てめ「ひのーー」
最初に反応したのは峰田だった。
物凄い形相で峰田は真っ直ぐに火埜へと飛び掛かった。
しかし火埜へと辿り着く前に、横から物凄い勢いで吹き飛ばされ壁にめり込んだ。
犯人はドアの前の座席に座る芦戸だった。
「ねぇ大丈夫?なんで火埜だけ呼ばれたの?やっぱり何かあったの?」
矢継早に繰り出される質問に苦笑いを浮かべる火埜は、頭を掻いていた右手をそのまま芦戸の頭にのせると“あの時”のように壊れ物を扱うように丁寧に撫でた。
「大丈夫ですよ、ちょっと書面では報告しにくいことを口頭で説明しただけですから。安心して、ね」
頭を撫でられている芦戸の顔は、徐々に落ち着きを取り戻していった。
そして、一切の違和感を感じさせることなく芦戸は自然に火埜へと抱きつくのだった。
「火埜君、身体は大丈夫なのかい、あの日のノートは後で渡すから心配しないでくれたまえ、いやその前になんて無茶をしたんだ。オレは学級委員長として君に注意しなければ」
「飯田君も、というか皆に心配かけだようで申し訳ない。一応先生達から説明があるまでは僕も喋れないからさ」
「ていうか、翔織君はいつまで三奈ちゃんの頭を撫でているのかな?」
「ウチ達も心配したんだぞ、てか芦戸はいつまで抱きついてるつもりなんだい」
「ノートでしたら私の物をお使いください」
飯田の小言爆速ターボがかかったタイミングで目から光が消失した葉隠と耳郎、そしてフンスフンスと息巻いた八百万が火埜の傍に着ていた。
「あれ、緑谷は混ざらないのか?」
砂藤が何時もなら率先して嫉妬にくれる緑谷が朗らかにその光景を見ている状況に不信感を抱いていた。
「ケロ、日曜日の女子会の成果ね」
「うん、やっぱりボクにとってとーくんはお兄ちゃん枠だっみたい。だって今ちょっと誇らしいもん」
「だって良かったね爆豪くん。まぁ、ウチは認めないけど」
「アホらし、そんなもん知ってたわ。なんでお前に認めれなきゃいけないんだよ」
緑谷の後ろでメンチきりあう麗日と爆豪。
教室前と窓際で起きた混沌。
なんとなくいつもの1-Aの風景だった。
「時間が押しているため今日のHRは連絡事項だけにする」
その日は何事もなく無事に過ぎていった。
休み時間の度に火埜の取り合いが起こったこと、その仲裁をしていたのが何故か蛙吹と瀬呂だった事に気が付いた飯田が終始煩わしかったことを除けば。
放課後、相澤が相も変わらず不機嫌そうに教室に現れた。
「明日のヒーロー基礎学だが、予定どおり執り行う」
「そして、これから1週間放課後の全ての施設の点検にはいるため施設の貸し出しが出来なくなる」
「そして、当分の間だが登下校の際に校門ではプロヒーローによる警護が行われることになった」
「以上で本日のHRを終了とする」
1-Aは飯田の号令をもって終了となった。
「翔織、お疲れさん」
下駄箱で靴を履きかえていた火埜の背を叩いたのは爆豪だった。
「シズの件なら麗日さんがやってくれたことだよ」
「ちっ、あの丸顔が。なんでオレに敵意剥き出しなんだよ」
「オレもよう知らんけど、「なんか、こうわたしの魂がシズクちゃんに爆豪くんを近付けたらアカンていってる」らしいぜ」
「ふざけんなあの丸顔が!!」
「まぁ、今年で片想い歴二桁に突入した勝己には同情するけど」
靴を履きかえ、外に出た2人。
校門ではクラスメート達が本日最後の談笑を行っていた。
「今回の件、オールマイトが言っていた件に関係あると思うか」
爆豪の呟きに対して火埜は返答に困った顔をしていた。
「師弟でただ一つ情報共有をしていない、オレらが任された事情と“AFO”。聞いた性格だと後継者というかもう一人の自分を作っていても不思議じゃないな」
「やめてよね、勝己が言うと実現しそうじゃん」
「あぁ、誰が全自動旗回収機だコラ」
「誰もそこまで言ってねぇよ」
前を見ると騒がしい部類にはいる何人かが手を振っていた。
「ま、なるようにしかならないさ」
「取り敢えず近々でカッ翔び爺に連絡だな」
校門につく頃には話を終えていた爆豪と火埜。
「ねぇねぇ、二人でなに話してたの?」
最近では誰もツッコミすらしなくなった葉隠から火埜へのハグ。
爆豪が目で追うと、耳郎が制服の裾をちょこんと握り、八百万がかなり近づいていて、芦戸がそこにどう加わろうか様子を伺っていた。
「何でもないですよ、明日は久々のコス有り授業ですね、て話ですよ」
火埜のその一言が燃料となりまた騒ぎ始める1-Aメンバー。
最近では余り喋らない轟や常闇も一緒にいることが増え、クラス単位での仲は学校でも上位に位置するらしい。
そんな、クラスメート同士の雑談はその光景を相澤に目撃され怒号が聞こえるまで続いた。
砂藤力道(さとうりきどう)
糖分イズパワー。
素の筋力も高く、個性抜きの男子腕相撲選手権では堂々の1位となった。
この世界線では尾白主催の勉強会の効果で接種する砂糖の厳選を日夜しており、その結果毎日クラスメートにお菓子の差し入れをしてくれるようになった。
現在、自身のシュガードープは顆粒、固形、液体で強化されるまでの時間が差違がでることが判明し、状況に応じて使い分けるためにコス改良を最初に申請した生徒として教師陣からの評価が高い。