火埜翔織という異物によるHEROACADEMYだ   作:完全怠惰宣言

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切島 鋭児郎(きりしま えいじろう)
中学まで黒髪だったが、高校デビューで赤い髪色のスパイキーヘアに。
熱血漢で「男らしさ」という言葉を多用し、結果的に皆で協力して実力以上の成果を出すことに貢献する。
当小説でも“漢”を前に出してくスタイルは維持。
更に、紳士要素を加味させて本人が気づいていない間にモテルスタイルで行こうと思っている。
目指せ最硬の盾、絶対に倒れない守りのヒーロー。


15th

「うーん、体力落ちたな」

 

雄英高校最寄駅にてウォーキング(時速15km)で疾走するオールマイト。

ナチュラルボーンヒーローは今朝のやらかしを自己反省しながら周囲に気を配って歩いていた。

 

「まぁ、“個性”の恩恵を無駄遣いしていたから東京大阪間ジャンプして5分とかやっちゃってたんだし、今それやったら私本当にピンチだしな」

 

方々に迷惑をかけていることに気づいているが、既に師と仰ぐ男性と先生であった現雄英校長のスケジュールを合わせたお説教とお仕置きが決定していることには気が付いていなかった。

すると、彼のスマホに緊急着信が届いた。

それは、雄英教師に一斉配信される緊急事態連絡だった。

 

 

USJ施設内中央西にある広場に死柄木を中心に突如として黒い霧が湧き出し、そして埋め尽くしていく。

そこから徐々に、一人二人と、明らかに堅気に見えない荒々しい雰囲気を纏う者達が続々と姿を現した。

その人数は瞬く間にA組の人数も超えて30人、40人と増えていく。

そして、誰もいなかったはずの広場は数多の敵で埋め尽くされてしまった。

広場を敵で埋め尽くすと黒い霧は範囲を狭めていくと、最後に中央最後尾に位置する死柄木の横に黒霧が姿を現して、完全に消えた。

広場と出入口付近まではだいぶ距離がある。

普通ならば、視線など感じるはずもない。

その筈なのに。

 

ーゾクリー

 

誰かなのか、それとも全員だったのか。

生徒達の背筋は、怖気に震えた。

 

 

「な、なんだよあれ。本当に授業じゃないのか?」

「峰田、落ち着け。先生方が既に臨戦態勢に入っている。いくら虚言癖のある相澤先生でも、生命がかかった状況で合理的虚偽はやらないだろう」

 

峰田の今にも泣き出しそうな声に、流れる様に毒素にまみれた言葉を返すのは爆豪。

苦々しい顔はそのまま、奥歯が軋むほどに、強く噛み締め、距離が離れている敵を睨みつける様な鋭い目で見た。 

 

「(クソが!!)」

 

自身の理解者、大切な幼馴染みである火埜が一時的に昏睡させられた原因が目の前に現れた。

その事に、自身が気付かぬうちに恐怖を感じている事実に苛立ちを覚える爆豪だった。

 

「外見特徴、完全一致。火埜君から報告が上がった死柄木弔と黒霧ですね」

「前回は偵察、今回が本命なんだろう。13号、生徒達を引率して出入り口付近まで後退しろ。そこで防御陣形をとって、その後の指揮は任せる」

「なぜ、後退ですか!?校舎まで避難した方がいいんじゃないですか?」

「そうしたいのは山々なんだが、あの霧が完全に消えた。報告のあった黒霧がいなくなったんだろう。恐らく、俺の個性を警戒してるんだろうな。外に出られると俺の目が届かんし、生徒達を人質に取られでもしたら、それこそ拙い」

 

相澤はゴーグルの下で右目を開けたり閉じたりを繰り返す。

教師から、ヒーローへ。

その意識を切り替えるためのルーティンを行った。

 

「俺が突っ込んで時間を稼ぐ。13号は生徒達を頼む」

「まっ、待って下さい相澤先生! あの人数を相手に一人で時間稼ぎなんて無理です!」

 

緊張のせいだろうか、飯田の声はどこか悲鳴のようでいて、微かに震えてすらいた。

その声に、相澤は苦笑を浮かべる。

自身をアングラと称する相澤=イレイザー・ヘッドは、ヒーローとしての世間認知度は極めて低い。

その為、とあるお節介焼きが勝手に梃入れするまでは情報の少なさから敵には嘗められ、市民には不安がられることは日常茶飯事だった。

その頃のような、雰囲気を感じ懐かしさを覚える自分に対して相澤は苦笑しそうになるが。

 

「飯田、減点だ。お前らよく覚えておけ。

 “ヒーローは一芸だけじゃ務まらん”、“苦手だからできません”

 そんな甘ったれた考えは捨てろ」

 

声に緊張感はない。

姿勢も自然体。

気負いは一切感じられず。

口許には笑みを浮かべ。

冗談すら交えている。

相澤は生徒に視線を向ける。

 

お前達(・・・)も一端のヒーロー候補だ。期待しているぞ」

 

そう言って、既に目付きの違う3人の生徒を目で追ってしまった。

相澤はクラスを振り分けた日のことを思い出した。

 

 

「やぁ、相澤くん。相変わらずのようだね」

 

新入生のクラス振り分けが行われたその日、廊下を歩いていた相澤に声を掛けたのは骸骨もどきと呼ばれていたその人ではなく、一般人並みに肉体が鍛え上げられたオールマイトだった。

 

「オールマイト、どうしたんですか出勤は明後日からでは」

「ちょっと近くまで来てね、懐かしい母校を探検していたんだ」

 

ある日を境に相澤の目の前に立つ現役No.1ヒーローは変わった。

今でもこの国(日本)の平和の象徴でありながら、多くのヒーローとチームアップし、専門性の高い案件では進んで指揮下に入る。

1人の大黒柱でありながら周囲のヒーローたちと共に平和を維持しようとする姿勢に相澤は少なくない好感を抱いていた。

 

「今日はクラスの振り分けがあったんだってね。私も参加したかったんだが、明日の記者会見の準備もあってね」

「存じています、事実上の現役引退宣言。今後はセミプロ、サイドキック(相棒)のような立ち回りで事件に向き合い、後進の育成を第一にされるとか」

 

相澤の言葉にどこか哀愁を漂わせるオールマイト。

 

「そういえば、相澤君はどんな子たちの担当になったんだい?」

「簡単な資料で良ければどうぞ」

 

脇に抱えた生徒たちの簡単なプロフィールをオールマイトに渡すと相澤は壁に背を預け、その様子を見守った。

 

数分後、ファイルを読み終えたオールマイトの顔には笑顔が浮かんでいた。

 

「彼らの選出は相澤君が?」

「はい、今回はB組を担当するブラドと多少のすり合わせだけで概ねオレの希望通りになりました」

 

昨年度、一クラス全員を退学処分にした相澤。

その教育の方向性から、本来であれば今年は担任を外されるはずだったが、多くの在校生の嘆願により担任を任されることになった。

 

「相澤君、“この3人(爆豪・火埜・緑谷)”には気を付けたほうがいいよ」

 

そう言うとファイルに掲載された生徒一覧の3人の生徒の名前に赤丸を付けたオールマイト。

 

「なぜです。確かに3人ともそれぞれ問題がありますが、要注意生徒というわけではなかったはずですが」

 

相澤は赤丸の付いた3人の生徒の情報を思い出していた。

 

爆豪勝己

強力な“個性”に加え、その応用力に長け、際立った戦闘センスの持ち主。

上昇志向と自尊心が強く粗暴で攻撃的に見られがちな性格。

友人想いの側面も持ち合わせており、行き過ぎた報道をする報道関係者への悪感情を持つ。

 

火埜翔織

『“ビーストアーツ”火埜獣造』並びに『“カラフルパレット”火埜彩命』実子。

“(記載不可事項)”ただ一人の生存者。

当時の体験により人と壁を作る傾向にあるが、幾分か治っている。

 

緑谷静空

中学3年で個性が発現した希少ケース。

個性に振り回されがちだが、制御範囲内に収めている。

勉学・体力共に優秀だが、過去に苛められていた時期があり、自分に近しい人間に軽度の依存傾向をみせる。

 

「この3人がどうかしたんですか」

「キャマバッカと親しい君なら“私の秘密”を知っているだろう」

「あぁ、この間のあれはやっぱりイワさんの妄言ではなかったんですね」

 

数日前、火埜の高校合格祝いに強制連行された相澤はその場でイワさんからオールマイトに関するある事情を伝えられていた。

 

「受け継がれる個性“ONE FOR ALL”。にわかに信じがたいですが、それが3人とどう関係してくるんですか」

「3人とも私の“後継者”なんだ」

 

後継者。それも平和の象徴(オールマイト)、No.1ヒーローの認めた存在。

 

「爆豪少年は私の意志を継いでくれた。少しでも長くこの世界が平和である様にNo.1を目指すと言ってくれた」

「火埜少年は私の精神を継いでくれた。例え怒りに駆られようとも、誰かのために事を成すと言ってくれた」

「緑谷少女はこの個性を継いでくれた。この先どうなるか解らないが、この個性で多くを助けると言ってくれた」

 

成人男性と変わらぬ体格となったNo.1ヒーロー。

それが意味することを相澤は悟れぬほど愚かではなかった。

 

「キャマバッカと火埜少年、デヴィッドの協力により、私は成人男性としての健康な肉体を取り戻せた。おかげで“残り火”に影響された私の個性が生まれた」

「そんな弟子たちは戦闘という面で既にそこいらのヒーローを凌駕できるレベルまで到達している」

「だから、相澤君には彼らがちゃんとヒーローになれるように心構えを作ってあげてほしい」

 

そう言うと深々と頭を下げるオールマイト。

 

「(安心してくださいオールマイト。貴方の弟子達は貴方が思っている以上にヒーローですよ)」

「お前たちは13号の指示に従え、不測の事態でも冷静に対処しろ。お前たちなら出来るはずだ」

 

 

中央広場では死柄木がガリガリと首を掻き毟る音が響いていた。

 

「んだよ、オールマイトいないじゃん、早くも計画ご破産?対象討伐でクリアなイージーゲームなのにそもそもその対象いないとか、ふざけてるよなおい」

 

死柄木は、ギョロリと隣にただ立つ大男を苛立ちを隠すことなく蹴りつける。

異常なまでに発達した全身の筋肉。

頭部は剥き出しの脳味噌。

感情はおろか意思さえほとんど感じさせない。

この計画のために寄せ集めたチンピラ全員が束になっても、足元にも届かない最強戦力。

 

「さぁて、どうするかねぇ」

 

死柄木が崩壊したプランの立て直しを模索している間に戦闘音が聞こえ始めた。

 

 

「おいおい、考える間もなく始められてるし。すっごいなぁ、不利な戦場でも迷わず突っ込んでくるよ」

「カッコいいなぁ、さっすがヒーロー」

 

そんな言葉とは裏腹にその顔にはただ一人戦場に走ってくる相澤、“イレーザーヘッド”を馬鹿にしたような顔をしていた。

 

「でもバカだよねぇ、調べてあるに決まってんじゃん。個性消すチート野郎には、個性じゃない遠距離武器」

「お前なんてその個性が無きゃ、ただの運動神経の良いオッサンなんだよ」

 

嘲笑いながら、手配したチンピラたちに予め伝えていた指示を出す。

嗜虐的な笑みを浮かべたチンピラは、大まかな狙いをつけるだけでいい『ばら撒くタイプ』の銃火器を構え、銃口をただ突っ込んでくるイレイザー・ヘッドに向けてトリガーに手を掛けた。

 

 

「あぁ?」

 

しかし銃声は、一つとして響くことはなかった。その代わりに響いたのは、破砕音と打撃音と手駒として準備したチンピラたちの汚い悲鳴だった。

突っ込んでくるイレイザー・ヘッドが突然消えた。

そう錯覚してしまうほどの急激な超加速で距離を詰めるイレイザー・ヘッド。

銃器を持った連中を体術と自身の武器である特殊繊維製の捕縛布で打ち飛ばしたのだ。

全ての武器を破壊して。

イレイザー・ヘッドの個性は“抹消”。

それは視認した相手の個性を使用できなくする個性。

個性社会では反則級の代物だが、逆を言ってしまえば個性を消すだけの代物であり、身体能力は常人の域を出ず戦闘能力は決して高いとは言えない。

世間のイレイザー・ヘッドへの評価とはそういったものだった。 

 

「なんだよクソガキが情報と違うじゃねえか!おい、お前ら囲め!そいつはイレイザー・ヘッドじゃない!個性でボコしちまえ!」

「お、おう!って、なんだ個性が使えねえ!?」

 

慌てふためくチンピラを前に不敵な笑みを浮かべるイレイザー・ヘッド。

 

「残念、俺は間違いなく“イレイザー・ヘッド”だ。だがまぁ、そう判断してもおかしくはないか」

 

淡々と。

逆立つ黒髪が自身の怒りに呼応するかのように怪しく揺れ。

黄色いゴーグルの向こうから、赤い眼光が地獄の焔のように妖しく光る。

苛烈に。

捕縛布が伸び、個性が使えずに棒立ちになった的でしかない敵を容易く拘束、一塊にして別の一団にハンマーの如く叩きつける。

チンピラ達は早くも脱落・脱走者を出し、数の利で勝ち誇っていた敵勢が動揺するには、十分すぎる戦果だった。

飛び上がり、捕縛布に捕らわれた大柄の異形型を蹴り飛ばす。

発動型の個性を相手には、胴体への打撃で悶絶させる。

仲間だった周囲のチンピラがやられる一方で一部のチンピラは様子を窺っていた。

無闇矢鱈に攻めず、事前情報にあったイレイザー・ヘッドの個性が切れるまで若干距離をおいて囲み出した。

しかし、目を閉じることで解除されるその効果は事前の情報の時間を大幅に超えてもなお、消える気配を見せなかった。

 

 

「相澤先生、少々よろしいでしょうか」

 

反省会の数日後、緑谷が職員室に訪ねてきた際には何か問題が起きたのではないかと心配になったことを思い出す相澤。

 

「どうした緑谷、何か用事か」

「あ、スイマセン。もしお時間がありましたら少しお付き合いいただきたいのですが」

 

そうして連れてこられた先には既に同僚のプレゼント・マイクがサポートアイテムの指向性スピーカーを外され喉と胸部にに薄っすらと青く光る焔を纏ったタオルを掛けられだらしのない顔を晒していた。

 

「あぁ~、ひぃ~のぉ~。こぉ~れぇ~てぇ~いぃ~きぃ~でぇ~たぁ~のぉ~むぅ」

「ひざっさんは声帯もそうだけど肺に負担掛け過ぎ。次からは金取るよ」

「とまぁ、こんな感じで僕のオーラによる治療も可能だから皆勝己に絞られてきてね」

「オラ、いくぞ野郎ども」

 

その日、自分の受け持つ生徒たちが体育館で基礎トレーニングをするからと施設の使用届を持ってきていたことを思い出したが、自分が連れて来られた意味が理解できない相澤。

 

「どうしたこの状況」

「とーくん相澤先生連れて来たよ」

「あんがとシズ。それじゃシズも走り込み行ってらっしゃい」

「はーい、いってきます」

 

マイクのだらしない顔を見ながら状況を見守っていると空いているベッドを見つけそこに寝転がる相澤。

すると、手足と顔が拘束され動けなくなってしまった。

 

「おい、火埜どういうことだ」

「先生、イワさんが目の心配してましたよ。てなわけで“火埜式オーラ温熱マッサージ”」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ、気持ちい」

 

目に青い焔を纏ったタオルを載せられる。

個性の使用もあってかドライアイだけでなく疲れがひどくなりつつあった相澤の目は瞼越しとはいえとてつもなく気持ちいい感覚に襲われていた。

 

「先生方には僕の個性出力調整訓練に付き合ってもらいますから、よろしくお願いします。ヒーローなんだから自己管理大事ですよ」

 

ヒーロー活動も行っている教員を対象に火埜の個性出力調整訓練の名目で保存治療を行っているらしい。

そういえば、今日の根津は妙に毛並みも色艶も良かったなと思った相澤の記憶はココで途切れた。

 

「(あれ以来、個性使用中の瞬きの回数が極端に減った。おかげで今まで以上に個性を発揮できる)」

「(それだけは感謝してやる)」

 

頻回に瞬きというインタバールが必要だった以前と違い、今のイレイザー・ヘッドであれば数分単位で瞬きすることなく戦闘を行える。

情報の食い違いという隙を見逃さず、抹消ヒーロー“イレイザー・ヘッド”の蹂躙劇は続く。

 

 




障子 目蔵(しょうじ めぞう)
マスクしているのに割とおしゃべりなミニマリスト。
とても優秀な諜報役でもあり、そういったキャラでありながら格闘戦もこなせるオールマイティキャラ。
見た目が怖いらしいがそんなこと気にしない女性と結婚できそうな気がする。
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