火埜翔織という異物によるHEROACADEMYだ 作:完全怠惰宣言
そうしないとダメそうな作者がここにいる。
車修理費クソ高い。
火埜翔織、名は体を表すというが個性は文字通り「火の鳥」
焔ようなオーラに体を変換し鳥の姿となるその姿はまさに火の鳥だった。
いかなる損傷を受けようとも瞬時に再生し音速に近い速度で飛行可能。
更にそのオーラには複数の属性が見られるが、「燃え広がる」といった通常の炎の特性はなかった。
しかし、本人曰く「0か100しかない個性」らしい。
オーラに変換された体は物体を通過させてしまい、自身の心理状況次第では要救護者にすら熱による負傷を与えかねない。
そんな個性であるためか、彼の人生の大半は個性の制御に向けられていた。
その結果。
「なんだ、火炎放射器じゃねぇか」
拳銃型のアイテムから放出される焔のようなオーラに吹き飛ばされた同胞を見て体が岩の様な鱗の様な何かに覆われたワニの様な外見の敵が姿を現した。
「その程度、オレ様の個性で防いでやるぜ」
そう言うと、敵は火埜目掛けて猛突進し始めた。
その様子を火埜だけでなく、プロであるイレイザー・ヘッドですら動こうとしなかった。
だが、2人の僅かな挙動に遠くから見ていた死柄木だけが気が付いた。
「(あのガキ、今“瞬時”にマガジンを変えやがった)」
突進してくる敵に慌てることなくいつの間にか握られていた青く輝くマガジンを装填すると敵に向けて引き金を引く火埜。
「はん、効かねえって言ってんだろ」
両腕でガードした敵が突進してくるが突如変化が現れた。
ビキビキと音を立ててワニの様な敵の鱗が破壊されたのだ。
その隙を見逃さず、イレイザー・ヘッド渾身の蹴りが鱗の剥がれた腕に突き刺さり悲鳴を上げてのたうち回る敵。
「火埜、やりすぎんなよ」
「だから、最後の一撃は先生にお願いしますよ」
そんな呑気な会話が聞こえる中、死柄木の近くにいた敵が口から何かを引っ張りだしていた。
「生徒共々、くたばれヒーロー!!」
それは俗にいう「対戦車砲」だった。
敵は躊躇なく引き金を引くと轟音とともに砲弾が2人を襲う。
着弾したため、煙で何も見えないが確実に着弾していることから2人の悲惨な末路を想像する敵だった。
「おい、オレの生徒を甘く見るな」
煙の中からイレイザー・ヘッドの声と共に彼自慢の捕縛布が対戦車砲を撃った敵に巻き付き捕らえ、上空へと持ち上げられる敵。
煙の中心には匣から黄色く輝きを放つ薬莢をガトリング砲の様に連ねたレーンを銃型アイテムに装填した火埜が狙いを定めていた。
引き金が引かれ、銃口から銃弾が発射される。
全ての銃弾を浴びた敵は意識を失う、それと同時に上空に両腕を翼に変化させた火埜が飛び上がると、直に右手を人間の腕に戻し銃型アイテムで周囲を撃ち始めた。
次々に倒れていく同胞を嘲笑いながらも避ける敵が火埜に狙いを定める。
「降りてきたところを狙ってぶっ殺してやる」
銃弾は徐々に激しさを増していき、“俊足”の個性を持った敵も徐々に違和感を持ち始めた。
「(なんだ、弾丸の速さが不規則に早くなって来やが)」
“俊足”の個性を持った敵が付いてこれたのはそこまでだった。
銃弾は不規則に加速し、対応が遅れた敵から気絶させていき、煙が晴れる頃には立っていたのは死柄木と黒い筋肉質な何かだけだった。
「あぁ、ココまでやられると逆に冷静になるわ」
死柄木はそう言うと広場に置かれていたであろう椅子に座りこむ。
「おい、“脳無”これ被ってろ」
黒い筋肉質な何か、脳無と呼ばれた存在は死柄木から渡された巨大な布を被ると大人しく座り込む。
「お前ら、何がしたいんだ」
油断なく周囲を警戒するイレイザー・ヘッド。
そんな彼の声に死柄木は悠然と構えてしゃべりだした。
「いや、今回は“
「はっ、
「相澤先生、嬉しそうっすね」
何故か和やかに話している3人だが、一定の距離を保ち臨戦態勢にあるのは間違いない。
「ていうかお前、ヒノって言うんだっけ?チートが過ぎんじゃねえか。お前のせいで今回のクソゲー以下だわ」
「いや、シガラキトムラさんでしたっけ、あんだけ事前に情報有れば対処するでしょ」
「だよなぁ、いや生徒と思って嘗め腐ってたわ」
「本当に何がしたいんだお前ら?」
たまらず声を掛けるイレイザー・ヘッド。
そんな彼の言葉に顎に手を当てると何やら考え込み始める死柄木。
「いやさ、生徒が凄すぎてグルっと思考が一周しちまって冷静になったわけよ。今回集めた適当なチンピラは相手にならなさそうだし、何か気が落ち着いたからオールマイトが来るまで一問一答してようぜ」
「ふざけR「質問、死柄木君は何がしたいんですか」オイ、火埜!!」
「いや、相澤先生。相手が嘘かもしれないけど情報をくれるっていてるんすからやりましょうよ」
「お前な」
「あと、正直もう限界っす。あの脳無って呼ばれてたやつ黒霧ってやつより気持ちわりいっす」
「・・・ち、ほら質問したんだから答えろ」
「なんだろ?この世界を終わらせたいみたいなこともないし、オールマイト殺すのも実際“先生”が言うからでオレ自身は、いやオールマイトが持ってた“アレ”のせいでオレはこんな目に当てるんだし、アイツの全部を救ってるみたいな顔が嫌いだし。取り合えず“個性”を失くして世界がどうなるか見てみたいなぁ」
火埜の言葉に死柄木は本人すら自覚していなかった気持ちをスラスラと喋っていた。
イレイザー・ヘッドからしか見えていないが、雨の焔を目視不能なギリギリまで薄めた濃度を放射して鎮静の効果で死柄木を落ち着かせることで、今まで考えて来ないようにしていたありとあらゆることに目を向けさせることが目的であった。
そうすれば、無意識に情報を整理しようとして漏らしてくれるからであった。
「(こいつの後ろに誰か師匠のような奴がいるのか?それにどうやらオールマイト自身のことをこいつ自身は憎いと思っているようには感じられないな)」
「で、ヒノは今の世の中どう思ってるんだよ?」
「え、オレ?」
「イレイザー・ヘッドに聞いたところで対して面白い話が聴けるとは思ってねぇしぃ~」
死柄木から指名され少し考え込む火埜。
「いや、正直クソだよね」
その一言に最も驚いたのは質問した死柄木本人だった。
「おいおいおいおい、ヒーローの卵が言って良い答えじゃないだろ?」
「だって、この“超常の力”を“個性”っていって何かオブラートに包んでるけど、実際なんかの拍子で今の世界の均衡を崩せたらそれこそ数年前の混沌とした世界が戻ってくるでしょ」
イレイザー・ヘッドにとって火埜の発言は安易に予想できた。
教師の中では関係性が濃いほうに分類されるイレイザー・ヘッドは火埜の早熟な思考回路に何度か助けられてきた。
それこそ、ヒーローやってたら見るような人間の後ろ暗いモノも見せてしまったこともある。
だからこそ、火埜翔織という少年がヒーローを目指した理由が解らなかった。
「人間なんて自分と違う何かを拒む、そんな性質を持って生まれてきた失敗作だよ。“個性”が無かった時代は肌の色、思想、人種、才能、感性、一つでも異質なものがあればそれを悪と論じて拒絶して自分が正しいと信じて疑わない馬鹿な生き物でしょ?」
「なぁ、火埜君よぉ。お前“こっち”来ねぇ?」
死柄木は火埜との話のなかに何かを感じ取ったのか、突如として火埜を勧誘し始めた。
「お前の両親のことも先生から聞いてる。そんな大衆に守る価値なんてあるのか?創成期にどれだけの屑ヒーローが生まれた?今世間でイレイザー・ヘッドみたいにガチでヒーローしてる奴がどれだけいる?こんなクソみたいな世の中は一度ぶち壊した方がいいんじゃないか?」
死柄木と火埜。
全く似ていない筈の2人。
なのに、何故か話があってしまった。
今の社会に対する不満、それを外に出しているか中にしまいこんでいるかの違いだが、イレイザー・ヘッドは2人が互いに共鳴しているように思えてしかたなかった。
「
「確かに、この世界はクソだし“勝手”に滅びるなら滅んでくれて構わない。だけど、僕はそんなクソみたいな世界でも一緒に居たいと思える人たちが出来た。その人たちに出会ってなければ君の手を喜んで握ってただろうね」
「まじかよ、折角親友になれると思ったのに」
「心配性な幼馴染みがいるからね」
広場に死柄木と火埜の笑い声が木霊する。
「やれ脳無」
死柄木の言葉に被ってた布を剥ぎ取り、火埜に豪腕から繰り出される右のストレートが打ち込まれた。
しかし、その豪腕は空を切る。
イレイザー・ヘッドの捕縛布にからめとられた火埜が宙をまいイレイザー・ヘッドの傍に着地する。
「火埜君は連れて帰る、先生に頼めばなんとかなるだろ」
「火埜、お前男にもモテるんだな」
その瞬間、イレイザー・ヘッドは今まで感じたことの無いだろ殺気を感じた。
その殺気は目の前の死柄木から発せられていた。
「オ、」
喉をかきむしり、殺意のこもった目でイレイザー・ヘッドを見る死柄木、その口から何やら言葉が漏れていた。
「オレは」
すると、死柄木の後ろに黒い霧が現れ、中からは黒霧が姿を表した。
「オレは“女”だーーーーー!!」
数秒程空気が死んだ。
錆びたブリキ人形のように首を火埜に向けるイレイザー・ヘッド。
「火埜」
「マジです、オーラ嘘つかない」
「いや、お前この間会ったのは男だったと」
「いやマジで背格好は似てますけど、よくよく見たら別人ですよ彼女」
怒りのあまり背筋が延びたことで確認できたが、死柄木の胸部には確かに膨らみがあった。
そして、そう言われれば声が子供っぽいというよりはハスキーな女性のそれに聞こえてくる。
「確かに、この間は“弟”が来たけど今日は火埜君を見たかったからオレが来たんだよ」
「イレイザー・ヘッド、あなたレディに対して少し失礼ではないですか」
保護者のように死柄木の両肩に手を置く黒霧。
その姿から
「うちの
と聞こえてくるようであった。
心なしか感情がない筈の脳無からも抗議の視線が突き刺さってくるようだった。