火埜翔織という異物によるHEROACADEMYだ 作:完全怠惰宣言
蛙吹・緑谷・峰田の3人は広場に来ていた。
無傷とは言いがたいが、全員が負傷らしい負傷をしておらず、無事であった。
そんな彼らの目の前では。
「ふざけんなよ、この根暗コラァ」
「お、落ち着いてください“葬”。今回はその姿で来ることが条件だったんですから」
「オレは普段はもっとちゃんとしてるわ」
黒霧に羽交締めにされながら罵倒をしている恐らく死柄木であろう少女。
「先生、流石に“コレ”は謝りましょう」
「いや、お前以外で初見で解る奴なんていないだろう」
「峰田くんはどうですか?」
「・・・・、アイツなら解りそうな気がする」
深く溜め息をつくイレイザー・ヘッドと火埜。
「胸か?お前ら男は所詮胸なのか?サラシで潰してるけど寄せて上げればDはいくんだぞコラァ!!」
「お願いですから落ち着いてください」
「ほら、そこだけ謝っときましょうよ。因みに僕は形に拘る美乳派です」
「“葬”、身体的なことで不快な思いをさせてしまい申し訳ない。後、オレはそういうの特に拘らないな美脚派だから」
「そんなこと聞いてねぇわ!!」
コントかよ、という心のツッコミが聞こえてきそうな状況が出来上がっていた。
ー数分後ー
ゼェハァと肩で息をする葬。
何故か対面に座らされ落ち着かせている緑谷。
命令を停止され止まってしまった脳無。
欲望カウンターで葬の正確な胸部装甲値を計算中の峰田。
家事得情報(流し場)のメモを渡す黒霧。
黒霧からメモを渡され、変わりに簡単ガッツリ系のおかずにもなるツマミレシピのメモを渡す火埜と蛙吹。
戦闘の雰囲気でなくなり目薬を注すイレイザー・ヘッド。
「私が来た!!」
出入口のドアを蹴破り颯爽と現れる
「「「「「遅いよ!!」」」」」
「何してたんだコラァ!!」(葬)
「今回はボクも擁護できません」(緑谷)
「(ボーーー?)」(脳無)
「オイラでさえ今回は不味いと思う」(峰田)
「貴方教師の自覚あるんですか?」(黒霧)
「案件確定ですね」(火埜)
「ケロ、今回は流石にどうかと思うわ」(蛙吹)
「取り敢えず、教師の仕事嘗めんなよ」(イレイザー)
「えぇ、私フルボッコ?というより君ら仲良くなりすぎじゃない?」
オールマイトの一言で互いに挨拶し、其々が離れた位置に着く。
「さてと、仕切り直しといきたいところだが」
葬が両手で拍手する形で音を出し仕切り直しの合図としたが。
「正直、生徒嘗めてた。優秀過ぎるだろ」
「目視範囲に生徒の増援を確認しました」
「だから」
葬がもう一度手を叩くと同時に黒霧がワープの触媒である黒い霧を広範囲に放出させる。
すると、中からふた回りほど小さく細い脳無が3体現れた。
「皆もコイツらで遊んでってよ」
先ほど以上に恐怖を煽る笑みを浮かべた葬が“胸”を張ってあたかも指揮者のように立っていた。
「で、どういうことだコラァ!!」
「オレも、詳しく聞きたいんだけど」
「トーリくんトーリくん、貴方が心配でダッシュで来た可愛い可愛い葉隠ちゃんにはなにか無いのかなカナカナカナ?」
「うぉ、葉隠の目から光が消えてる」
「んー、Chaosだね」
「取り敢えず、さっき説明したとおりだからそれで納得してよ勝己。轟君も詳しくと言われてもね、何か共通の悪口先が居たからってだけだし」
「火埜少年、それって私のことかい?」
「透は無事に終わったらハグで許して。切島君、有史以来男は女に負けるものだよハハハ」
葉隠が天空に向けて全力のガッツポーズをしてる姿を横目に、作戦タイムの許可が降りたので輪になり作戦会議中の雄英側。
「取り敢えず、あの“オールマイト用”と呼ばれていた奴は
イレイザー・ヘッド主導で始まった作戦会議。
「うむ、遅れた分は挽回させてもらうよ」
「マジで本当に頼みますよ。結果次第では弁護しますから」
次いで生徒達を見る。
涙目の峰田を含め全員が覚悟を決めた良い目をしていた。
「他の3体をオレ達で相手するが作戦は何かあるか」
対面にて作戦会議中のオールマイト達を観察する葬と黒霧。
「黒霧さん、どうなると思うよ?」
「素が出てきてますよ葬。そうですね、十中八九我々が負けるでしょう」
なんの気概もなく自分達の敗退を告げる黒霧。
質問した葬も同意するように頷いていた。
「まず、生徒達の成長速度がこちらの予想を遥かに上回っています。散らした生徒達も今の段階で誰も負けておりませんし、今ここにいる生徒達も市井に溢れる
「だよね、オールマイトも何か疲れてはいるけど、弱体化してるようには見えないしね」
「確かに、全盛期に比べて細く見えますがあの筋肉を維持する必要性が無いと判断されているのであれば、あれが今の彼のベストな状態なのでしょう」
「あぁーあ、今回の収穫は火埜君だけか」
「葬さーーーーん」
作戦会議が終了したのか、手を振り意識を自分達に向ける火埜。
これから命のやり取りをするのになんとも言えない緊張感の無さ。
「やっぱ火埜君、欲しいわぁ」
「それじゃ、フェアに始まりはこの弾丸が地面に落ちたらにしよう」
火埜のサポートアイテムである匣から弾丸を一つ取り出すと上空へと投げ飛ばす。
脳無達も弾丸を目で追い、地面に触れるその瞬間まで動く気配はない。
そして、弾丸が地面に落ちてキンッという金属特有の音を鳴らした。
その瞬間。
最初から出ていた巨漢の脳無と広場の中心でがっしりと組み合うオールマイト。
がっちりと組み合った脳無とオールマイトの足元を凍り付かせ固定する轟。
捕縛布で高速で向かっきた3体の細身の脳無をけん制し動きを止めさせたイレイザー・ヘッド。
爆豪に捕縛布で固定され上空へと涙目で連れていかれる峰田といつも以上の速度で飛ぶ爆豪。
爆豪の背に張り付き共に上空へと飛ぶ蛙吹。
両腕を翼に変化させ上空へ飛び立つ火埜とその背中に抱き着く葉隠。
火埜の足に捕まり空へ向かう緑谷と切島。
その構図が瞬時に出来上がった。
「まず、あの細身の3体ですが個性を一つしか持ち合わせていません」
個性の有無をオーラという不可視の物で判断できる火埜の発言。
相手の情報を如何にして把握するかが重要である局面においてこれ程助かる存在はいないだろう。
「3体とも両腕が特に色が濃かったので個性は両腕が起点になる発動型ではないかと考えられます」
「というか、翔織気分はどうなんだ」
「慣れた、というか大空の焔で精神安定させてる」
「“調和”による精神安定かよ」
「おしゃべりは後にしろ爆豪、それで火埜作戦は」
「まずは・・・・」
-対オールマイト用というアレの動きをオールマイトが組み付く形で止めてもらいます-
がっちりと組み合っていた巨漢の脳無とオールマイト。
脳無が弾きそこから殴り合いの応酬が始まった。
しかし。
―“対オールマイト”というくらいですから同等の筋力を持っていると考えられます―
―攻撃の余波だけで僕らは吹き飛ばされかねないので轟君には足元を凍らせ続けて動きを拘束してもらいます―
凍り付かせた端から氷を砕いていく2人。
その都度、轟が足元を凍らせていくが足場をしっかり固めているオールマイトとただ踏ん張るだけの脳無では次第に力の入り方に差が出て来た。
―勝己と峰田君には3体の足止めをお願いします、峰田君の個性なら可能ですよね―
「おい、解ってんな葡萄頭」
「畜生、人の笑顔があんなに怖いなんてオイラ知らなかったぜ」
「受けろ、オイラの八つ当たり。【
放課後訓練で提案された峰田強化案はモギモギの捥ぎり取れる回数の増加だった。
峰田以外にはくっ付いて離れないという特性は敵の無効化と捕縛を同時に行える優良個性なのだが、限界を迎えると峰田曰く
「ミチミチいって剥がれるような感じになるんだよ」
とのことだった。
ならば、限界のその先に行こうということで、火埜による晴の焔照射による強制無限モギモギが始まったのだった。
因みに同様の地獄を味わった男がいるのだが、今回は省く。
その結果、今までの5倍の量を捥ぎれるようになった峰田のモギモギ爆弾が上空から3体の脳無に降り注ぐ。
性質がわからないにも関わらず、手振るってガードしようとするためくっ付き、そのモギモギに新たなモギモギがくっつくことで簡易的な拘束具になっていった。
峰田の技が決まり、火埜の背から体だけ乗り出し腕を透明化する葉隠。
放課後訓練での成果が著しい彼女は部分透明化のみならず、自身を利用しての光の屈折率をいじれるようになっていた。
「いっくよ、葉隠フラーッシュ!!」
腕が拘束された3体の脳無の目と思われる器官への閃光の照射。
どうやら視力を頼りにしていたらしくその場で目を抑え動きを止めてしまう。
そして、上空から3人分の影が襲い掛かる。
「“OPERATION OFA”」
『YES,MyDONNA。ターゲットロック』
地面に降り立ち右脚を後ろに引く緑谷。
上空で発動させたサポートシステムも活用する。
『出力3%、脚部サポートアイテム硬質化確認』
「ストライクシュート」
蹴りつけられた脳無は拘束され逃げ場がなくすべての蹴りの威力をその身に受け沈黙。
「(もっと、もっともっともっともっともっともっともっともっと“固めろ”)」
緑谷から僅かに遅れ切島も飛び降りた。
空中で自身を硬化していく。
もっともっともっともっと、と心の底から願う切島。
放課後訓練では尾白や砂藤、障子に緑谷といった格闘戦が主流となるクラスメートを相手に設定範囲から外に出ないで硬化し続ける訓練を行ってきた。
今ではわずか数秒、更に動かなければという条件になるがパワーローダーからお墨付きが出るほどに硬度をあげれるようになっていた。
「
最高硬度まで高まった切島のラリアットをむき出しの脳に受けた2体目の脳無。
頭を押さえながら耳障りな悲鳴を上げて沈黙した。
爆豪の背から跳躍した蛙吹は自身の舌で最後の脳無を縛り上げる。
実は放課後訓練では教える側に回ることが多い蛙吹。
自身の個性に対する理解度で言えばクラスで一番の彼女。
家族思いで友達想いな彼女は元来イジメの対象になりやすい異形型の個性を発現した後も、一時期避けられることこそあったがそれでも周りの友達と家族が支えとなり、ヒーローを志す中で個性の理解度を深めていった。
そんな彼女だからこそ、個性に対する思考能力はクラスで一番と言われ自分の個性を用いて実演する形で教えるのでアホの子達からも人気だった。
自身の舌で捕縛した脳無、舌の収縮を利用して蛙の脚力で蹴りつける。
「フロッピースタンプ」
逃げ場のない衝撃が脳無を駆け巡り意識を奪い取った。
そんな姿を上空にて確認した火埜が叫ぶ。
「イレイザー・ヘッド捕縛してください、峰田は捕縛布をモギモギで留めろ」
そして、自身が纏い翼となっているオーラが真っ白に変化する。
「透、寒いなら勝己のとこ移れ」
「トーリ君が温かいから大丈夫」
「たく、強情なお姫様だッ」
その姿は獲物を刈取る隼のようであった。
急降下と共に火埜の周囲にダイヤモンドダストが舞う。
『オーラ熱量マイナス値ヲ測定、ドウゾ』
そして急降下のまま地面へと突き刺さる様に火埜の蹴りがさく裂した。
「オーバード・ゼロ」
火埜を中心に吹雪が巻き起こり瞬時に凍結していく広場。
爆豪に葉隠以外はしがみ付き、イレイザー・ヘッドも捕縛布を利用して空中に留まる。
吹雪が晴れるとそこには分厚い氷に閉ざされた3体の脳無が存在していた。
「おい、葉隠さっさと降りろ。お前らもだ」
爆豪の声で動きを止めていた全員の意識が覚醒し、宙を飛べる火埜と爆豪がオールマイトの下に駆け付けるように飛んで行った。
「(早く来てくれ、もう限界だ)」
今回の作戦で最も疲労を強いられたのは轟だった。
人外の2人が振るう暴力という台風のすぐ近くで2人を足だけ凍らせ続ける。
砕かれては凍らせまた砕かれては凍らせ、轟の右側は所々凍り付いていた。
「(意識が、飛、ぶ)」
僅かに飛ぶ意識、しかしそれは致命的なミスであった。
砕かれた氷を再び凍らせるのに出来てしまったタイムラグ。
「轟少年!!」
轟を信じていたからこそ再び凍り付くオールマイトの両脚。
反対に機械的に判断するからこそ凍り付くことを逃れた脳無。
形成は脳無に有利となり移動しながら全方面から殴りつける脳無
それをガードしてやり過ごそうとするオールマイト。
轟の思考に絶望と失望が現れた時だった。
「OPERATION EXPLOSION」
『YES,Sir』
『標的ヲ確認、非殺傷熱量設定、発射スタンバイ』
「悪ぃオールマイト、クソ熱いぜ」
「ヒート・エア・エクスプロージョン」
手榴弾を模した籠手から発射されるのは爆発ではなくそれを制御された熱風だった。
勢いはすさまじく、脳無は耐えるのに精いっぱいのようであった。
「轟君ゴメン、遅くなった」
轟の傍に火埜が降り立つと大空の焔でコーティングした晴の焔を轟に当て氷を溶かしていく。
「悪い、助かった」
「あとはオールマイトだけですね」
熱風が止み脳無が意識をオールマイトに向ける。
しかし、オールマイトはそこにはいなかった。
「敵諸君、我々ヒーローは常に100%の意気込みで活動している。君らの敗因は唯一つ、彼らを生徒と侮ったことだ」
その声は、脳無の上から聞こえた。
オールマイトは上空へと飛びあがると降下の勢いも利用して脳無へと蹴りを決める。
脳無は地面にめり込むがそれに留まることなくオールマイトの連撃が脳無を沈めていく。
地面にめり込んだ脳無の足を持ち引っ張り出し空中に放り投げると再びのラッシュ。
「この一撃一撃が100%否120%の私の本気」
「そして、こんな言葉を知っているかい、更に向こうへ“Plus Ultra”!!」
その言葉と共にくり出されたパンチは暴風となり脳無を吹き飛ばし、USJの天井を突き破ってしまった。
後に残ったのは天高く拳を突き上げるNo.1ヒーローの雄姿だけであった。