火埜翔織という異物によるHEROACADEMYだ 作:完全怠惰宣言
ヒロアカに限らずヒーローという存在は夢であり支えでした。
世間は未だに落ち着く事はありませんが、心身疲弊しながらも奔走してくださってる医療関係、消防関係者の方々には感謝しか有りません。
自分に出きることを見極め、早く少し前の日常に戻れるようになれば良いなと思っています。
後に“雄英USJ事件”と呼ばれることになる敵の雄英施設への襲撃事件。
周到に練られたその計画は瓦礫のごとく崩壊するのだった。
大半の敵は引率を担当した教師陣の奮闘と、当時まだ1年生だった彼らによって撃退されることになったのだった。
第二次超常暗黒期の開始とも言われるこの事件は後に伝説となる多くのヒーロー達の原点となり、若きヒーロー候補達が目指すべき指針として今なお語り継がれ続けている。
そう、これは。
「アホなモノローグ語ってないで無心で正座してろ
捕縛布でガッチリ固められた上に瀬呂のテープでコーティングされ、背中葉隠、正面芦戸、右側耳郎、左側八百万にガッチリ抱き付かれ逃げ出すことのできない火埜に軽めの拳骨を落とす相澤。
「いや、でも今回オレ悪くない」
「お前だったなら、あの時13号のところまで翔んで逃げれたろ。なのに戦闘に参加した点は厳重注意物だ」
「その原因の1つは撃沈してますしね」
すっと顔を芦戸の頭から横にそらすように前を見る。
そこには。
「おい、俊典。お前教師嘗めてるだろ、じゃなきゃただのバカだよなおい」
「ゴフッ、お、お師匠出会い頭の鳩尾への高速頭突きは勘弁してくださいと」
「お前弁明できる立場か、あぁん!!」
小柄の老人の登場と共に鳩尾に綺麗に決まった頭突きとトラウマの再発で全身がガクブルしていた。
「既にグラントリノを呼んでいたとは。兎に角、お前らは絶対に動き回るな、大人しくしてろ、あと火埜はいい加減に大空と雨の焔を解け」
「解いたら発狂するかもしれないので嫌です」
「そうならないための処置だ。ミッドナイト先輩がここにいらしている時点でお前なら察するもんだと思っていたがな。しかし、相変わらずらしいなお前のその甘えたがりな生粋の弟属性とやらは」
「ネムねぇだろそれ喋ったの!!幼少期にそういう風になれと育てた張本人がなに言ってくれて」
「トーリうるさい」
一向に精神安定を解こうとしない火埜の口を頭部を思いきり抱き締めることで塞ぐ芦戸。
意識してなのか、胸に抱え込むように頭を抱き抱えられた火埜の顔は芦戸の歳不相応に育ってきた胸に埋められる形になっていた。
精神が落ち着いているからか視覚・嗅覚・触覚にて芦戸の身体を認識し、背中の葉隠と右腕を挟み込んだ耳郎に左腕を挟み込んでいる八百万の心音を感じ取ったことで状況を正確に理解したのか顔を真っ赤に染めて火埜は気絶した。
「ありゃ?気絶しちゃった?」
「まぁ、コイツはそうあれと育てられたからな。素が出てる状態で“可愛い”と思ってる女子に抱き付かれたらこうなるわな」
「「「「そんな、可愛いだなんて(照)」」」」
普段から緑谷とは別ベクトルで心配の種の幼馴染みへの仕返しにと情報を小出しにしていく爆豪。
完全に自分の事棚に上げているが、火埜が起きた時の復讐が恐いので途中で留めた。
「フゴー、フゴフゴフゴフゴフグー!!」
「峰田の奴、全身拘束されてんのに全然ブレねえなぁ」
「あの失血量だと動いたら貧血で倒れかねないからって、興奮しないようにあんな感じで拘束されてるんだよな」
「峰田ちゃん、今回は頭から血が出るまで頑張ってくれたけどやっぱり最低ね」
「色欲の化身故に」
『コイツ本当ニ大丈夫ナノカ?』
火埜と峰田。
片や上半身を丁寧に捕縛され、逃げ出せないようにと有志による肉体接触で良い思いしながらユル~く拘束されている。
オーラを放出して逃げ出そうと思えば逃げられるはずなのだが、火埜性格上、仲間に害を与えることは無いだろうと判断したイレイザー・ヘッドによる処置であった。
片や敵が来ないことを確認したと同時に女子の膝枕(当初は胸枕)を希望し、全身ガッチガチに捕縛された上で地面に転がされてその上で更に瀬呂のテープ(クラス内通称“瀬呂テープ”)で地面に完全拘束されている峰田。
ダークシャドーにすら心配されているという意味を深く考えて欲しいところだ。
流石にそろそろいい加減にしとけ、という意味も多分に籠められているそちらの方向で普段から頭を悩まされている担任相澤消太の判断だった。
後日、ヒーローとしてイレイザー・ヘッドとして判断するなら拘束後に去勢だなと真顔で言われた峰田は数時間ではあったが態度を改め、非常に紳士的に振る舞うのだった。
そうとは知らず現在の拘束された2人の状態は、誰が見ても日頃の行いが反映され、還ってきている光景だった。
そんな、いつもの日常の光景に全員の気が緩んでいた。
「それにしても、トーリくんいつもよりなんだか温いね」
「!おい、全員離れろ」
葉隠の言葉に何かに気が付いた爆豪が声を上げた。
そして、反射的に火埜の傍にいた全員が離れる。
次の瞬間、火埜を中心に人体発火のように膨大な熱量を持ってオーラが燃え盛った。
まるで死に瀕した不死鳥が転生するかのように燃え盛る光景に生徒だけでなく教員ですら動けずにいる中、ミッドナイトだけが悠然とオーラの前に歩み寄っていく。
ミッドナイトがオーラに手を伸ばすと同時にオーラが霧散し火埜の姿が消えていた。
「え、火埜は?」
「おい、まさか」
「安心なさい、あの子ならここにいるから」
パニックになりそうな状況で燃えなかったコスチュームを漁るミッドナイト。
「全く、オーラの燃焼限界越えなんて久しぶりじゃない。頑張ったのね翔織」
その言葉と共にコスチュームの中から真っ白なバスケットボール大の毛玉を取り出す。
「「「「「「え、ナニコレ?」」」」」」」
「この真っ白でフワモコなおっきなヒヨコちゃんが翔織よ」
「「「「「「はぁ!?」」」」」
「(キョロキョロ)ピィ?」
ズキューーーーーーン。
突如そんな音が聞こえたかのように胸を抑える女性陣。
「おうおうおう、久しぶりじゃねえか。この姿」
「ピッピィ、ピッピ」
爆豪は慣れた手つきでミッドナイトに抱かれるフワモコなヒヨコを撫でる。
「うわぁ、ヒヨコモードのとーくんだぁ。かぁいいいよ」
「ピィ」
緑谷も頬を染めて愛くるしいその珍妙な生物を撫でまわしている。
「ミッドナイト先生、説明プリーズ」
飯田によって呼ばれた来た戦闘の出来る教員の中で校長が代表して声を掛けてきた。
声をかけられたミッドナイトは別の意味でみてはいけない顔をしていた。
「んん、失礼。火埜君の個性にはオーラの燃焼限界というものが存在するみたいで、オーラを限界まで消費すると個性因子が勝手に最もオーラを使用しない姿に体を変えてしまうんです」
「それが、“あの姿”かい」
校長が目線を動かすと。
「おぉぉぉ、これが火埜か?」
「ピィ?」
上鳴に持ち上げられ目線をがっつり合わせた状態で上鳴の真似をして頭を傾けるヒヨコトーリ。
「コラ上鳴、乱暴に扱うな」
そう言われ耳郎に強奪されるヒヨコトーリ。
「ピィピッ、ピィピィ」
何やら嬉しそうに鳴き声を上げる姿に抱っこしている耳郎も含め全員骨抜きになっていた。
「耳郎さん、次は私に」
「いやいや、この透ちゃんに」
「またまた、三奈ちゃんが代わるよ」
「みんな邪念が凄いから私が代わるよ」
「ケロケロ、響香ちゃん私に代わって」
そんな最中、リレーの如く代わる代わる生徒達に抱き締められ撫でられている上機嫌なヒヨコトーリ。
「いつ戻るのコレ」
「最短は2日でしたね、今日はイワさんに連絡とって迎えに来てもらいましょう。あの状態のあの子頭がとてもゆるいので」
「すでに来てるわよぅ、ヒーーーーーーーーーーハーーーーーーーーーー」
「ピィ!!」
イワさんの声に反応して良く飛べるなそれでというサイズの翼をパタパタさせて飛んでいくヒヨコトーリ。
「んもう、心配したっちゃぶる。大丈夫キャンディーズ」
ヒヨコトーリを髪の毛の中に収納すると生徒のケアに回るあたり流石プロヒーローである。
「にしても、大胆なキャンディーズ」
「どうゆうことですの?」
全員の状態を確認して自身の個性は必要ないと判断したイワさんに言われたなぞの言葉。
「だっとぅえ、ヒヨコトーリ状態だった頃にされたことはトーリボーイに戻ってもちゃんと記憶として残っちゃぶる」
「「「「えっ?」」」」
「だから、さっきキャンディガール達が胸元で抱き締めてたその感触も、口田ボーイがプロの手並みで撫で回してた感触も全部ぜんぶぜーーーーーーーーんぶ覚えちゃぶるよ」
数秒後、施設内に木霊する絶叫。
事情を理解していた幼馴染み2人は遠巻きに笑っているだけだった。
こうして、雄英襲撃事件は一旦幕引きとなるのだった。
「いや、事情聴取するからね。まだ帰らないでね」
塚内警部のそんな声が何故かしっかりと聞こえたのだった。
「ただいま」
とあるバーに少女の声が木霊する。
「姉ちゃんお帰り。黒霧、姉ちゃんに傷一つもついてないよな」
「えぇ、身体的には問題ないはずです」
「あぁん、どういうことだオイ」
葬は戻ってきたからと体中に着けていた手を外しては投げ捨て、服の中でサラシを外し一息つく。
黒霧に出された紅茶を飲みながら物思いに耽っている葬。
そんな彼女の思考、その大半を占めているのは最後に見た真っ白で綺麗な翼とその持ち主のほんの一瞬だけ見ることが出来た黒く淀んだ瞳だった。
「あ、ねぇ先生」
すると突如、電源の落ちたブラウン管テレビに話をふる葬。
ブラウン管テレビにノイズがはしり、数秒後。
そこには、顔は確認できないが男性と解る体つきをした存在が映し出されていた。
『お帰り、葬。何だかとっても機嫌がいいじゃないか?』
「ふふふ、ねぇ先生」
『なんだい』
「わたしね、欲しいモノが出来たの」
『へぇ、
2人はまるで家族のように、なんの含みもなく会話を楽しんでいた。
「ちょっと待って、姉ちゃん好きな奴なんかできたの!!」
その話に手を付け終えた弔が割り込んできた。
「そうだよ、あの子なら弔とも仲良くなれそうだし」
「いったいどんな奴なんだよ」
「あんなに歪で心の奥底を凍らせえた存在なんて初めてだったの」
『いいね、とんでもなく歪んでいて僕の好みそうじゃないか。それは一体誰なんだい』
「火埜翔織君だよ先生」
『へぇ、“ヒノトオリ”か』