火埜翔織という異物によるHEROACADEMYだ 作:完全怠惰宣言
「な、なな、なんなんじゃこりゃーーーーー!?」
キャマバッカ事務所訓練所に響く少女の悲鳴。
話は襲撃事件の3日後、火埜が顔を真っ赤に染めて通学した日まで遡る。
「お、火埜おはよう。もうヒヨコじゃないんだな」
「中々に可愛かったなトーリちゃんよ」
「「なぁっはははははは」」
「(上鳴に峰田め調子にのりやがって)」
休み時間の度にヒヨコトーリの画像を見せにくる上鳴と峰田。
悪意増々なのは誰しもが感じ取っているのだが、実際にA組では皆が待受にするなどプチブームになっていた。
「いや、オレらも久々だったから思わず撮っちまったぜ」
爆豪も止めるわけでなく面白そうに加わるため、上鳴と峰田を調子にのせる原因になっていた。
なお、ヒヨコトーリの存在を知っていた両親にも写真をシェアした爆豪のお財布事情はとても余裕が出来たことを明記しておく。
「お前ら、いい加減に席に着け。それから火埜教員内でも情報共有が必要だから写真は削除しないぞ」
授業のため現れた相澤からも裏か透けて見える言い訳を聞かされた火埜。
机に頭を強く打ち付けて絶望を味わっていた。
「トーリ君、ごめんね。でも本当に可愛いよ?」
「あたしも。ごめんとしか言えないけど、朝“コレ”見ないと起きれなくなってきててさ」
「誠に申し訳ありません。しかし、許していただけるのであればせめて2ヵ月この待受にさせてくださいまし」
「トーリには世話になってるけどさ、あたしもお願いしたいな」
「火埜君、引子さんからも毎日のお弁当と交換で1ヵ月許して欲しいって言われてるの」
「ケロケロ、うちの家族もヒヨコちゃんのファンなの。だから、せめて削除だけは許してちょうだい」
「ほら、皆こう言ってるんだから。男の子なら覚悟しなよトーくん」
女子からの上目懇願という兵器まで持ち出された火埜。
仕方なく本当に仕方なく嫌々ながら条件付きで保存を許したのだった。
でも、それで腹の虫が治まるような良い子ではない火埜翔織。
「(報復じゃ、復讐じゃぁ、目に物見せちゃるけぇなぁ)」
死柄木葬が好みと言った濁った目をしながら、クケケケケケケケケケとそれはそれは不気味に笑いながらに帰宅する火埜が目撃されたのはそんな日の放課後だった。
その日以降、普段通りに過ごしながら峰田と上鳴からの冷やかしも右から左に受け流しつつ、いつもの笑顔で過ごしていた火埜。
そんな火埜に少しだけ違和感を覚える担任の相澤だったが、後に彼はこの時に行動を起こさなかったことを文字通り死ぬ気で後悔することになるのであったが、この時の彼が知るはずもなかった。
そして週末、キャマバッカ事務所訓練所には1A生徒フルメンバーに加え監視役として相澤とプレゼント・マイクがいた。
「今回は戦闘に長けたプロというのがどれだけ凄いのか皆に体験してもらおうと思ってね。イワさんと1A全員それに相澤先生とマイク先生にも参加してもらう運びになりました」
まだ戦闘許可が出されていない火埜と轟以外の面子が動きやすい服装に着替え、訓練所に集合していた。
「Hey!!!それじゃまずは男共から逝ってこい」
何故か準備されていた解説ブースにマイクが座り解説を始めていた。
「それじゃキャンディボーイズ、ヴァターシもちょっと本気出しちゃぶるから、遠慮無く掛かってらっしゃい」
そう言うとイワさんは独特の構えを取り出した。
「あ、あれは!?」
「知ってるのか翔織」
「あれは、イワさんが自身のスタイルに会わせて作り上げたニューキャマー拳法44のエステ奥義の1つ“無駄毛処理拳”の構え」
「なに!?全身の無駄毛を綺麗に処理するかの如く滑らかな腕の動きで相手に突きを食らわすあの“無駄毛処理拳”だと」
「
「「いじけるなよぉ、轟君」」
フィールド場外で行われている茶番劇に全員が気を取られた瞬間だった。
「すぅきぃ、ありゃぁぁぁぁぁぁぁ。エンポリオーーーーーー“女”ホルモン
その声が訓練所にひびくのと同時にイワさんの両手の指が尖り、フィールドにいた男全員に尖った指を打ち込んでいく。
「え、特に何もおきなぁぁぁぁぁぁぁぁ」
指された尻尾を撫でながら尾白が自分の身体に異変を探す。
数秒立たずに、その声が悲鳴に変わった。
指された全員の身体から「メキャ、ベキョ、ブァキャバキ」という骨格を無理矢理変える音が響き渡る。
「普段なら痛み無く終わらせるっちゃぶるけど、今回はオイタが過ぎたわね!連帯責任よ」
「あが、ほ、骨が軋む」
「痛い痛いイタイ」
「あれ、声が高くなっててて」
「「「「いってぇーーーー!!」」」」
数十秒後。
「な、なな、なんなんじゃこりゃーーーーー!?」
上鳴によく似た少女の叫びが訓練所に響いた。
「あ、あんた上鳴か?」
耳郎が指さす少女。
元から愛らしい顔つきをしていたためか顔自体には変化はないが、髪が伸び、バストとヒップも大きく膨らみ、男の劣情を滾らせるボーイッシュな美少女がそこにいた。
「あぁ、やっぱこうなったか」
ボサボサの髪が潤いを持ち腰まで伸びた黒髪、黄金律を思わせる崇めるレベルの美ボディ。
野暮ったかった服装でも隠せない色気を放つ相澤(女)。
「ヘイヘイヘイ、やっぱりおばさん似なんだね勝己は」
子供がイタズラに成功した時のような笑顔を張り付けた火埜が女座りしている爆豪の肩を叩く。
「トーリてめぇ」
「ぶは、また一段と女の子らしい体つきになったね。そうなると本当におばさんのクローンみたい」
「ぐぁ、乳が重い。ば、母さんにそっくりとか言うな!!」
「あっははは、皆ザマァみろケケケケケケケケケ」
実は火埜、ヒヨコ写真が消えないのであれば男全員捲き込んだれと今回の特訓を利用して全員の女子化企画をマイクとイワさん更にはクラスの女子に相談。
最初こそ難色を示すものもいたが、色欲魔神の鎮魂も兼ねていることが知れ渡るととたんに協力的になった。
「何自分は関係ナッシブルなポジションだと思ってるのかしら」
「え?」
「轟ボーイにひざしボーイもいくわよエンポリオー女ホルモン」
「「巻添え反たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」
そんなことがあってから数分後。
「おぉ、火埜はカッコイイ系になるんだ」
「くっ、ヒヨコに次ぐ醜態を晒すことになるなんて」
女子による着せかえ人形劇が続く中、馴れている面子から着替え始めており、かつて男だった面影は見えなくなっていた。
当然、下着も変えられている。
「・・・・、姉さんそっくりだオレ」
鏡の前で実姉と瓜二つの姿となった轟。
葉隠コーデにより白いワイシャツの上からサマーセーターを羽織り、梅雨の時期にも寒くないロングスカートという姿は轟の記憶の中にいる姉とそっくりだった。
「マイク先生とっても美人さんねケロケロ」
「かぁー、油断してたぁ」
その場にいた生物学上「男」に分類される存在が全員女になった訓練所。
そんな中、1人隅っこにていじけている少女がいた。
「なんでだよぉ」
少女はその大粒の瞳に涙を溜め、世の理不尽を呪うかのように怨念が篭った声を静かに吐き出していた。
「なんでオイラだけ変わらねぇんだよおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
少女もとい峰田(女)は見える範囲で外見に変化がなかった。
母親にそっくりに成った口田と爆豪、もとから中性よりの顔付きだった上鳴という例外もいたが、その3人ですら誰が見ても女の子な体型になっていた。
しかし、峰田のみパッと見変化が無かった。
「峰田ガール、ちゃんと“無くなってる”ちゃぶるから変化がなかった訳ではナッシングよ?」
「確かにオイラのLittle峰田が居なくなってるけど、周りが変わりすぎだろ!!てかお前ら誰だよ!!」
峰田が勢いに任せて指差した方には嘗ての面影を無くし、美少女にしか見えないクラスメートたちがいた。
「しかし、女性陣は普段峰田君の視線をこう感じていたのか」
それ程育っていない胸部装甲、しかし見事な美脚を黒のハイソックスで被い、黒いシックなワンピースを着た眼鏡をかけたザ・委員長な少女(飯田)が落ち着かない感じで休憩ように用意された椅子に座っていた。
「しかし、飯田が女子になるとこうなるのか。あんなにムキムキだったのに全体的に細身なんだな」
ぷっくり膨らんだ唇、世の女性も羨みそうな破壊力のバデェ。
大人になりかけの時期特有の色気を放つブカブカのTシャツにホットパンツという出で立ちの少女(砂藤)が持参したクッキーやらフィナンシェやらを机に並べながら感想をのべていた。
「さっきイワさんに聞いたんだけど、個性因子の影響で姿が激変しちゃうことの方が普通なんだって」
深窓の令嬢を思わせる儚さを携えつつ、自分の個性で持ち上がってしまうロングスカートを必死になって押さえる少女(尾白)。
「しかし、皆化けたなぁ。正体知らなかったら尚良かったのに」
女性にしては長身、しかも出るとこは確り出ている健康的な美少女(瀬呂)の言葉に何人かの少女(元男)が首を縦にふっていた。
「ひざっさん、やっぱ女化すると若干静かになるんすね」
「イワさんの教育の賜物よ、自分が女であることに違和感がなくなっていく恐怖とその恐怖すらなくなる瞬間。あんな経験させられたら必然こうなるわ」
全体的に細身、どちらかと言うとカッコイイと評価されそうな美少女(火埜)が休憩用の飲み物(緑茶、ほうじ茶)の準備をする傍ら。
普段着として着てきたジャケットの前を全て開け、中のワイシャツも第3ボタンまで外した八百万を越える胸部装甲を窮屈そうにしながら完全に女性と化した元男プレゼント・マイク)が火埜の手伝いをしていた。
「山田、ボタン外すなら着替えてこい」
その後ろから黒のパーティードレス(スリットが太股まである)を着て白いカーディガンを肩に羽織った色気が凄い女性(相澤)がやって来た。
「何よイレイザー、別に女子だけなんだから良いでしょ?」
「いや、あそこの阿保がな」
そう言って相澤が指差した先には床でビクンビクンと痙攣している峰田がいた。
「あぁ、なんだこれ?新しい快感?なんだかアタシ開けてはダメな扉を全力で開けてしまいそう!!」
傍目に見ても気持ち悪い状態に陥っていた。
「オッケー、着替えてくるわ」
なお、帰宅時には全員男に戻れたが、数人は感性が引っ張られていた。
そして、以降峰田のエロスが幾分か緩和され似非紳士のようなキャラとして1週間が過ぎたのだった。
「そんじゃま、今年も予定どおり開催するとするのさ」
物語は新たな幕を上げる。