火埜翔織という異物によるHEROACADEMYだ   作:完全怠惰宣言

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23th

雄英体育祭。

日本最難関のヒーロー科を抱える国立雄英高校にて行われる、個性ありの体育祭。

TVでも放送され、高視聴率をキープ中な日本のビッグイベント。

スポーツの祭典と呼ばれた「旧時代のオリンピック」に代わり、全国を熱狂させており、近年では全世界でも中継されるようになった。

なお、今回はとある事情から各局の偉い方々が資金援助を申し込みに連日校長室に顔を見せに来るという珍事が起きたが、その事には触れないでおく。

主にヒーロー科の生徒が活躍する為、現役プロヒーローもスカウト目的で大勢観戦に来ており、活躍または注目を集めた生徒は今後の進路で有利となるため、業界への個性アピールには最適の行事となっている。また、雄英高校にはヒーロー科受験に落ちて普通科に入った生徒もおり、成績次第ではヒーロー科生徒の枠を取れる可能性もあり、やる気のある生徒は下克上を狙っている。

会場は雄英の敷地内にある専用の施設『体育祭会場』。

収容可能人数12万人。

通常雄英はセキュリティがあって入れないが、開催中はゲートから会場までを一般にも開放される。

都合3日間行われる体育祭、初日は1年生が主役になる。

そして、現在クラス毎にあてがわれた控え室に1A生徒達は集合していた。

 

「さぁ、いよいよだ。皆、落ち着いて冷静に落ち着いて行動しよう」

「飯田ちゃん。まずは深呼吸しましょう」

 

左右の手足が同時に動いてしまい、さらに動きがぎこちなさ過ぎて誰が見ても緊張しているのが丸解りな飯田を落ち着かせるのはクラス皆のお姉ちゃんと化してきた蛙吹であった。

 

「うぁ、緊張するなぁ。お父ちゃんもお母ちゃんも見とるし」

「てか、八百万家凄すぎだろ」

「いえ、両親も同じクラスの保護者の方とご一緒出来ると聞いて張り切ってましたし」

 

現在、1A生徒の保護者は八百万家の大広間にてこの体育祭を観戦している。

まぁ、集めたのはイワさんとそのネームバリューなのだが。

 

「火埜」

「ん?なんだ」

 

上鳴と入念にストレッチをしていた火埜に話しかけた轟。

入学当初の棘が多少薄れてきたのも関係してか、クラス内評価は「ナチュラル末弟」となっていた。

 

「兄さんと姉さんを保護者として誘ってくれてありがとう」

 

そう言って頭を下げる轟。

前日、実家にて自身の部屋に姉が突撃してきて凄い富豪に招待されたけど何着てけばいいか聞かれ、数分後兄から住んでるマンションの前で忘れることが出来なさそうなオカマにパーティに誘われたと連絡がきた時は驚いたそうだ。

もしかしたらまともに兄姉と会話したのは初めてだったかもしれない、そんなことで嬉しくなれる自分がいることに轟自身驚いていた。

 

「なははは、深く考えるなよ。今は目の前の事に集中しようぜ」

「そうだぜ轟。悪いけど今日はオレも負ける気はないからな」

 

クラスのムードメーカーとしてかっこたる地位を築いた上鳴からは普段のおちゃらけた雰囲気はなく、かといって今回の体育祭を楽しもうとする感じは伝わってきた。

 

「皆、聞いてくれ」

 

だからこそ、轟は友人達に伝える決心をつけた。

 

「オレは何があっても左の力(こっち)は使いたくない。だけどそれは皆を嘗めてる訳じゃない。事情を話さないのにムシが良すぎるだろうけど今のオレの全力で皆に挑ませてもらう!!」

 

轟の宣言に静まり返る控え室。

 

「はん」

 

切島とアップしていた爆豪が不敵な笑みをうかべる。

 

「安心しろよ、“そんなこと”考えてる余裕なんて無くしてやるから」

「おう、よく解んねえけどオレ達と当たった時はそんなこと考える余裕なんかやらねえからな」

 

切島もその宣言に対して両腕を硬化して打ち付け、特有の鈍い音をたてる。

 

「おいおい轟君よぉ、オイラ達のこと侮りすぎじゃねぇ?」

「然り、ココにいる誰もが己こそ最強と信じているぞ」

「踏陰ノ言ウ通リ、オレタチ最強」

 

峰田がいつもの通りに煽り、常闇とダークシャドウがそれすら肯定するように強く語りかける。

 

「うちらを嘗めんなよ轟」

「状況次第だなんて言ってられないように圧勝しちゃうんだから」

 

耳郎が不敵に胸元で腕を組みカッコ良く宣言し、その背中に飛び付いた葉隠がその人懐っこい笑顔で強気に宣言する。

 

「轟君」

 

轟の背後から緑谷が何かを決心したような眼差しで見つめてくる。

 

「君がどんな理由があるにせよ、僕らも全力で挑むんだ。

 その時、本当の君と僕は戦いたい」

 

その瞳に灯る焔を見て轟は思った。

 

ーこのクラスになれて良かったー

 

と。

 

『マイクテストマイクテスト、うん繋がってるね。

 1年生の皆、オールマイトだ』

 

控え室にオールマイトのアナウンスが流れ始めた。

 

『この体育祭、ヒーロー科だけのお祭りだと思っている子達もいるかもしれない。だけど、それは違う!』

 

スピーカー越しであるにも関わらず、その声の圧力に生徒達は思わず背が伸びた。

 

『この体育祭は、これからの時代を担う君たちのための舞台だ!!』

『普通科の諸君』

 

突如名指しされざわつく普通科控え室。

 

『君たちの原点を思い出せ!!』

 

その言葉に強く拳を握り締める生徒がいた。

 

『経営科の諸君』

 

参加そのものに消極的だった経営科の控え室に歓声が木霊した。

 

『君達がプロモーションするための素材を生かすために少しでも現場で動くことを知ってほしい』

 

その言葉に一段と歓声が大きくなっていく。

 

『サポート科の諸君』

 

其々が持ち込むアイテムの調整をしていたにも関わらず、全員の手が止まった。

 

『君達の生み出す作品達がヒーローを生かすことを見せつけてやれ』

 

工具を握る手に力が入り、気が付くと全員が自作のアイテムと更に向き合う形になっていた。

 

『ヒーロー科の諸君』

 

静まり返る控え室、自分達が目指す頂の声を聞き逃さんと誰しもが耳を傾けたいた。

 

『次世代のヒーロー達よ、観衆に魅せてやれ。そして、宣言してやれ“私が来た”と』

 

その声に触発されてか全員が不敵に笑みをうかべた。

 

『今日というこの場は“君”が主役だ、さぁ魅せてくれ次世代の雛鳥達』

『更にその向こうへ“Plus Ultra”!!』

 

全ての控え室から漏れ出す歓声。

No.1ヒーロー(生きた伝説)からの激励が全ての生徒に火をつけたのだった。

 

『今年もやってきたぜこの日が!お前ら準備は出来てるか?』

『進行は勿論このオ・レ、プレゼント・ムァーーーーーーイク!!』

『さぁ、初日はこいつらの登場だ。卵から孵りたての雛鳥と侮るんじゃねぇぞ、今年は初っぱなからトップギアだ!!』

『うるせぇ、マイク少し静かにしてくれ』

『おうっと、忘れるとこだった。今年の解説もコイツ、オレのマブダチのイレイザーヘッド、アァーーーンドゥ今年はもう1人、ヒーロー科B組担当ヴラッドキングだぜぃ!!』

『宜しく頼む』

『それじゃ、呼び込んでくぞ。まずはコイツら入試で落ちた負け組?そんな奴はココにはいねえぞ、ヒーロー科への編入を目指す野心溢れるリベンジャー、普通科1年生!!』

 

「「「おぉーーーー!!」」」

 

毎年、普通科の生徒の登場は静かなものだった。

編入を諦め、静かに静かに目立たないようにとしている印象だった。

しかし、今年は入場からして違っていた。

普通科の全生徒に活気が満ちており、自分達こそが主役だと言わんばかりの大声と共に入場してきた。

 

『続くのはコイツら!頭デッカっちとは呼ばせない。実技も出来るオールラウンダーに僕らはなる!!経営科1年生!!』

 

先程の普通科の入場とはうって変わり、一糸乱れぬ動きを見せる経営科。旧時代にあった某大学の集団行動を思わせる見事なシンクロ率だった。

 

『コイツらを忘れちゃいけねぇなぁ。コイツらがいなきゃヒーロー出来ない奴は山程だ!奇抜な発想、生かす構想、産み出し実装!サポート科1年生!!』

 

入場ゲートから現れたのは多種多様なアイテムを身に付けた生徒達。

その姿に企業関係者は様々な考察をしながら活躍を楽しみに待つ。

 

『お次はコイツら。地道に努力、直向きに研鑽、日々それ精進。暴れ狂う若いリビドー!ヒーロー科にはオレ達もいるんだぜ!ヒーロー科1年B組!!』

 

オレンジの髪をサイドに垂らした女子生徒を先頭に続々と入場してくるB組生徒、その瞳には覚悟の焔が灯っていた。

 

『すぅあぁーーーーーー、最後はコイツらだ!喜べマスメディア共、ついに来るぜ!1年生ながら敵と会敵し無事に全員生還してきたコイツら!運も実力のウチだと?コイツらの実力は本物だ!!』

 

「さぁ、皆行くぞ」

 

マイクのアナウンスこそアドリブだが尺内で終わらせるある意味プロ魂に笑いを堪えていた全員が、飯田の声に反応してゲートを潜っていく。

 

『今年一番の注目株、野郎共テンション上げてけ!!ヒーロー科1年A組!!』

 

「「「「うぉーーーーーーーーーー!!」」」」

 

悠然とゲートから出てくるA組生徒。

その姿を確認するやいな、会場からは割れんばかりの歓声が轟いた。

そんな中を悠然と歩く生徒達の姿に連鎖して再び歓声が上がる。

その声に圧倒され、動きがぎこちなくなるものも何人かいだが、いつも通り歩み続けるものも何人かいた。

A組が所定の位置に着くのと同時に歓声は小さくなっていき、当たりは静寂に包まれた。

 

「選手宣誓!!」

 

2段ほど高く設営された台の上に1人のヒーローが姿を見せる。

 

「アダルティックヒーロー、ミッドナイトだ!!」

「“18禁ヒーロー”じゃなかったっけ?」

「多方面からの苦情で通り名が変わったんだよ」

「それでも、あんなエロティカルでアダルティな先生がいて良いのかよ?」

「「「良いんです!!」」」

 

今年の体育祭一年部担当のミッドナイトがコスチュームを纏って姿を現すと、生徒や観客に限らず多くの男性が彼女の美貌とその過激な装いに魅了されてだらしない顔をする。

会場がざわめく中、手にした鞭を振るいバシンッという音と共に注目を集めるミッドナイト。

 

『1年A組、爆豪勝己!!』

 

「か、母さん。勝己が選手宣誓だよ!?」

「ぷ、あの子ったらいっちょ前に緊張しちゃって」

 

八百万家大客間にはA組の保護者が我が子達の応援のために集まっていた。

無論その中には爆豪の両親もいた。

 

「ヒーハー!勝己ボーイも成長したわねぃ」

「きゃー、麗日さんお茶子ちゃんと静空が映っちゃったわ」

「えぇ、緑谷さん。ウチの子達も全国デビューよ!」

「うぉー、お茶子ぉぉぉぉぉ!!」

 

各生徒の保護者が一喜一憂する中。

 

「姉貴、スゲェ場違いなんだけど」

「あんた、1人で逃げるんじゃないわよ」

 

轟兄姉は、場の雰囲気に飲み込まれてしまっていた。

 

『宣誓』

 

爆豪は面倒くさそうに壇上で宣誓を始めた。

現在彼は自分の闘志を無理矢理納めさせられたような状態だった。

 

「(無難に終わらせよ)」

 

そう考え、何気なくA組(もっと言うと緑谷)を見る。

そこには、自分を見つめる仲間達(爆豪には自分に対して目を輝かせている緑谷がズームアップされてます)。

その憧れるような視線に爆豪の着いてはいけない何かに火が着いた。

 

「別に見下してる訳でも、嘗めてる訳でもねぇ」

 

渡してある台本と違う宣誓に少し驚く教師陣。

 

「ただ、オレ達は負ける気でココにいる訳じゃねぇ。

 自分が負けると思ってココにいる奴はいねぇ筈だ。

 だから、全員全力で掛かってこいや!

 それでも、オレがNo.1だ!!

 せいぜい頑張れや“"準”優勝争い」

 

そう言いきると頭を下げ静まり返る会場を気にすること無く、自分の位置に戻る爆豪。

徐々に爆豪が放った言葉の意味を理解した者から怒声が放たれ始めた。

 

「何が“準”優勝争いだ」

「嘗めんなクソガキ」

「優勝はオレだ」

 

周囲から降り注ぐ怒号を意に介さず頭を掻く爆豪。

 

「ヘイト集めすぎ」

 

隣にいた火埜が笑いながら話しかける。

 

「これでやる気にならない奴は問題外だ」

 

不敵な笑みをうかべそう火埜に返す爆豪。

雄英教師陣も、どうなることかと頭を抱えていたが、会場も盛り上がり、生徒達にも激励にもなったようだと安堵の息を漏らしていた。

 

『さて盛り上がってるところ悪いけど早速、第一種目の発表に移るわよ!毎年ここで多くの生徒が落選&涙を流すいわば、振るい掻け!!今年の第一種目は』

 

イヤホンマイクを着けたミッドナイトが右手に握る鞭を上に掲げて、生徒たちの視線を彼女の背後にそびえる巨大スクリーンはと集める。

ミッドナイトが鞭を掲げるのを合図にスクリーンに巨大なルーレットが映り出され、第一種目がルーレット方式で目にも止まらない速度で瞬時に切り替わっていく。誰もが第一種目の内容を待ち望み固唾を飲んで見守る中、ルーレットが止まった。

 

「「『「「『はぁ!?』」」』」」

 

果たして、第一種目は何に決まったのだろうか。

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