火埜翔織という異物によるHEROACADEMYだ 作:完全怠惰宣言
『さて2回戦、例年で言えば騎馬“戦”なのだが』
『A組の奴らが準備しまくり過ぎのせいで“こいつら組ませたらダメだな”と言う判断のもと騎馬“レース”を行うことになったぜ!!』
『ルールは1回戦で走ったルートを騎馬を組んで走ると言うものだ。無論、騎手が巻くハチマキをとられた騎馬はその場で失格となる。後は騎馬への“直接”的な攻撃はノットヒーローリアクションとして減点の対象とする』
『なお、組み合わせに関してはくじ引きとさせてもらうからな!2回戦出場の40名は電光掲示板を見てくれ』
MC席の3人の説明で2回戦に進出する生徒達は電光掲示板を見る。
そして、数分後。
「ども、ヒーロー科A組の火埜翔織です」
「B組、柳レイ子」
「普通科、心操人使」
「サポート科の発目明です」
選出されたメンバーで固まり作戦を練っていた。
「その前に火埜、柳」
そしていざ作戦を練ろうとした時、心操が手を上げて遮った。
「この前は、悪かった」
そして、深々と頭を下げたのだった。
「あの時のオレは、努力しなかった自分を正当化したくて食って掛かっただけだとあの後考え直した」
「で、なに?許せとでも?」
そんな心操に冷やかな視線を向ける火埜。
「いや、許してもらおうとは・・・正直考えている。でも、それも結局オレが楽になりたいからだと思ってる。許してもらえなくて構わない、だけどオレ、ヒーローになりたいんだ。そのチャンスをオレにくれ」
そう言ってまた深々と頭を下げる心操。
「あ、それならあたしも」
その姿を見てか柳が火埜に向き直る。
「あの時、
柳もまた頭を下げる。
放課後の一件以来、B組内でも冷静さを取り戻した面々が非常にやるせなさを覚えていた。
騒ぎの発端である物間ですら言われた内容を考え、反省しているようであった。
B組のA組に対する態度は担任であるヴラッド・キングの反骨精神を鍛えようとする教えと、物間のような一部生徒のぶっ飛んでしまった思考の悪い方向への化学反応のようなものだった。
元々、そこまで深入りしていなかった拳藤筆頭の穏健派だった柳。
しかし、あの日言われた言葉が彼女達に突き刺さっていた。
「“そんなこと”どうでも良いです!一番の人、あなたに是非お話があります」
そんな二人の態度など自分には関係無いと、別の意味で目を輝かせた発目は火埜に顔を近づけた。
「おい、サポート科!オレ等のことがどうでも良いってどう言うことだ」
発目の放った言葉に対して、心操は掴みかかろうと腕を伸ばした。
「落ち着け、心操」
しかし、その腕は火埜に抑えられてしまった。
「発目、君のことはパワーロダー先生から聞いている。自分の言いたいことをちゃんと伝えられないと君のカワイイベイビーたちも真面に扱ってもらえないぞ」
火埜の言葉に少し考える素振りを見せる発目。
そして数秒後、彼女の口から改めて言葉が紡がれた。
「あなた方が許されたいとか、ヒーローになりたいとか、私にはどうでもいいことです。私は私のドっカワイイベイビー達を少しでも企業さんにアピール出来るならあなた方の状況状態、そんなことどうでもいいです!」
えっへんと胸を張る発目。
「(言いよったなぁ)まぁ、発目の言うことも一理あります。所詮ライバル、一時の共闘、次の晴れ舞台に立つために嫌でも手を結ぶしかない」
そんな発目に多少引き気味になりながらも火埜は心操と柳に話しかける。
「お互いの利害のために手を結ぶのに、仲良しこよしである必要はないと思いますよ。まぁ、あの時のことは許す気無いから結果で示してください」
火埜の言葉に俯く二人。
「あ、ミッドナイト先生に質問あったんだ。ちょっと行ってきますね」
そんな二人に興味ないと言わんばかりにミッドナイトへと歩いていく火埜、その後ろ姿を見ながら少女にしては珍しく思いが声に出ていた。
「彼は、優しいですね」
発目のその言葉に心操と柳、二人は同時に顔を上げて発目を驚いた顔で見ていた。
「彼を見ていて思ったのですが、そこまで他人・・・という表現は間違いですね。いうなれば心理的な線の外側にいる存在に興味は薄いのでしょう。
ですが、そんな彼があなた方が浸っている罪悪感に対して理解を示した上で、あなた方がこの競技で自分のパフォーマンスをベストに出せるように取り計らってくれたのですよ。そんな彼が優しくない筈ないじゃないですか」
発目明という少女は自分と自分の
そんな彼女だからこそ、火埜翔織という歪な存在のあり方に気が付いてしまったのかもしれない。
「おまたせ。ん?どうしたの?」
「何でもありません!それで一番の人、どうするつもりですか?」
「間違えても良いから名前で呼ぼうね。取り敢えず互いの個性の把握から始めましょう」
発目の言葉に言い返すことも出来ず、かといってその言葉が間違っていると言うことが出来ない。
「心操、手から血が出てるけど怪我してたのなら言いなよ」
そんな中、火埜にかけられた言葉で心操は自分の手を見る。
強く握り混んだからか、爪により傷ついた手が発目の発言を肯定しているように見えてならなかった。
「いや、競技前に疲れさせるわけには」
「その怪我のせいで負けた、何て言われたくないんだよ。君“以外”の人のために治させてもらうよ」
綺麗に黄色く輝く炎に照らされ傷が治っていく光景に一番目を輝かせたのは発目だった。
「これが噂に聞く“天候の焔”ですか!実物は噂以上に綺麗なんですね!」
「見世物じゃねえぞ」
「うらめしぃ」
なんやかんや和気藹々としてきたチームに意を決したかのように心操が話しかけた。
「俺の個性は・・・・」
後日、この4人が仲良く歩く姿が目撃されるのだが、この時は誰もそうなるとは思っていなかった。
『さぁ、EVERYBUDDY待たせたな!第2回戦騎馬レース各チーム騎馬が組上がったようだな』
『今回はあくまでレースだが、騎手のハチマキを狙うのか、走り抜いて順当に順位で本選出場を目指すのかそこも見所だな』
『騎馬各々の作戦がどう機能するかと言うことだな』
スタート地点には各々のスタイルで騎馬を形成するチームがスタート遅しと並んでいた。
スタンダードな形の騎馬もあれば、それアリ?と言われそうな形の騎馬もある。
『なお、スタートラインに立っている騎馬は審判のミッドナイト先生が許可したモノばかりだ』
『事前に聞きに行く奴らが多かったな』
『どんなことでも情報収集は大事ということだ』
『Hey!!Men's!!準備は良いか?良くなくても開始の時間だ!!』
『会場のAUDIENCEも上げてきな!!そんじゃ、いくぞ』
『3』
『2』
『1』
「ヨーイ、ドン」
ミッドナイトの掛け声と振り下ろされた鞭の音に反応してブザーの音が鳴った。
そのブザーの音と同時に頭一個抜きでた騎馬があった。
『おっ、初っぱなから翔ばしているのは飯田たちか!!』
飯田天哉を先頭に両脇にB組の回原旋が脚を旋回させ、鎌切尖が足裏から生やした刃物でスケートのように地面を滑る。
その上には。
「いけぇ葉隠号、1位でゴールじゃあ」
A組ではお馴染みになった見えるようになった美少女葉隠透が身体でリアクションをとっていた。
しかしその姿は顔以外の上半身が完全に透明化しており何かやらかすき満々であった。
「後続よ喰らえ、“葉隠フラァーーーーシュ”!!」
上半身の透明化を利用してレンズのように集光させた光を後続に向けて放つ葉隠。
後続が光に目が眩んでいるようだが。
『おい、トラックの一部焼き切れてないか?』
『やり過ぎだあのバカが』
『個性の応用が上手いな』
飯田組改め葉隠組が一歩先んじたレースで最後尾につく騎馬があった。
「おい、火埜本当に大丈夫なんだろうな」
心操が不安げに騎手として跨がる。
「大丈夫ダイジョーブ、オレの性格把握してる勝己とシズ以外はこれでいけるし、その二人も騎手やってるから直接対応できないし」
クケケケケケケケとあの日放課後に浮かべていた悪どい笑顔を浮かべる火埜。
「柳さんは大丈夫?」
火埜の右後方にいる柳に視線を向ける火埜。
「うん、心操思ったより軽いし私は発目さんのサポートアイテムのお陰で問題ない」
「私のドッカワイイベイビーにお任せください。鳥くんこそ問題ないですか」
柳のとなりに位置する発目、彼女の持ち込んだアイテム郡は奇抜な物が多かったが、火埜・柳・心操の提案により上手く効果を発揮したことにより今回の作戦を決行することになったのだった。
「兎に角、半周ぐらいに仕掛けるからその時は全員よろしく。あと発目はゴメン」
「クッ、第48子の勇姿。私は忘れません」
「発目さんドンマイ」
「しかし、飯田とか言う奴速いな。インゲニウムみたいだ」
「実弟らしいよ」
後続にありながら余裕そうに走り続ける心操組。
その姿に火埜という存在を何となく把握しているA組メンバーは奇妙さを覚えていた。
そして、幼馴染みの爆豪と緑谷は。
「「(絶対になんか仕掛けてくるな)」」
その底意地の悪さを知っているからこそ、未だに静かに戦局を後ろから眺めているという事実に、不気味さを感じることになった。
しかし、その不気味さを頭を振るい外に追い出し、自分達の状況を再確認することで忘れ去ることにした。
「さてと、一発目そろそろかな?」
火埜の視線の先には右腕の調子を確認する轟がいた。
「悪いな、オレ達は本選にいかせてもらうぜ」
轟はそう呟くと右腕を振るいトラックと騎馬を凍らせにきた。
「はいドンピシャ!!」
その予備動作で轟のアクションを察知した火埜も、最後尾からトラックを凍りつかせ始めた。
「チッ、火埜の野郎」
「予備動作が分かりやすいんだよ轟は」
互いにトラックを凍らせたことで騎馬が動けなくなった。
『おい、騎馬への直接攻撃はルール違反じゃないのか?』
『ヴラド、轟と心操の行動を見てみろ』
『あ、アイツ等近くのハチマキを奪いやがった』
『ハチマキを取るための妨害行動だと言いたいんだろう。氷もさほど厚く作ってなさそうだしな』
ルールの過大解釈はA組では常套手段なところがあるしなとマイクに拾われることのない程に小さな相澤の呟きは何故だか誇らしげだった。