火埜翔織という異物によるHEROACADEMYだ   作:完全怠惰宣言

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轟と火埜による凍結妨害が起きた一方で、スタート地点でも問題が起きていた。

スタート地点で一つのチームがスタートと同時に騎馬が崩壊し、早々と戦線離脱していたのだった。

そのチームはスタートの合図と同時に騎馬が離散し、騎手を落とすという行為に及んだ。

そして、そこから一切組み直そうとせず、レースの状況を見ているだけだった。

 

「おやおやおや、どういうことかな?説明してくれないかい“尾白君”」

 

トラックに落とされた騎手である物間を冷たい目で見るのは名指しされた尾白だった。

 

「別に、オレはお前が本選に行けなくなるなら、オレが本選に行けなくなっても構わないだけだ」

 

普段の朗らかでクラス内でも潤滑油のように人間関係を円滑に進めようとする、緑谷曰く『お日様の様な人』である尾白からは想像できないほどに冷酷で、容赦の欠片の無い言葉だった。

 

「物間、お前“あの日”以降今日までにオレ達のクラスに謝罪なりなんなりしに来なかったよな」

「それが何だい?僕は“あの日”のことを恥じてはいない!実際調子に乗っていたじゃないか」

 

物間と尾白の言い争いを眺めているのは尾白同様に物間に対して冷たい視線を向ける砂藤と、顔を青くし視線を下にし俯く泡瀬。

 

「USJで火埜たちが居なかったらオレは死んでたかもしれない。USJ事件の後、何もできなかったオレは自分を責め続けた。そんなオレをクラスの皆は何も言わないでくれた、そして“あの日”オレはお前を言い負かしてくれた火埜に救われた。アイツにそんな気は無かったとしても救われたんだ。だから、“あの日”オレの恩人を馬鹿にしてくれたお前を許す気はない。火埜が言ってた通り、お前はただ自分の我儘が通らないと喚いているだけの子供だ。そんな奴を本選に行かせるくらいなら、オレは喜んで巻き添えで失格になってやる」

 

その瞳には確かな覚悟の焔が灯っていた。

尾白は入学当初から火埜や爆豪、八百万に蛙吹といったクラス内でも比較的に出来た生徒に助けられてきた自覚がある。

放課後訓練も断らずに自分の時間を割いてくれる、そんな良い奴の足を引っ張ってしまったにも関わらず、その良い奴は笑顔で自分の成長を喜んでくれていた。

尾白は無意識のうちにクラスメートを守る、ヒーローを守れるヒーローを目指すようになっていった。

目をつぶれば思い出される。

 

クラスのムードメーカーであり、最近誰が見ても内面から変わった芦戸。

クラスでも裏方のようにクラスメートを見守る皆のお姉ちゃんと化してきた蛙吹。

実直に真っすぐに時々暴走するが誰よりも正しくあろうとする飯田。

名前に反して野心家で、それでいて誰かのために人一倍力を振るえる麗日。

恐らく入学から一番伸びた一番勤勉で仲間想いな上鳴。

漢漢煩いが自分の信念を一切曲げず只管目標へ向かう切島。

照れ屋だが、最近は頑張ってクラスメートと喋ろうと自分の殻を破ろうとしている口田。

自分のしょうもないプライドに付き合って失格になる道を選んでくれた砂藤。

クラス内でも精神年齢が高く、成熟した思考を持った障子。

本人は自覚ないだろうが、一番女の子しているのに誰よりもヒーローであろうとしている耳郎。

歳相応にバカ騒ぎを共にしながら、多角的に物事を捕らえることのできる瀬呂。

ダークシャドウ(相棒)の影響か、言い方がいちいち仰々しいが、誰よりも誠実な常闇。

最近クラス内で弟キャラが定着してきた努力を惜しまない天才の轟。

入学以降一番変わった見えるようになったことでさらに明るくなったもう一人のムードメーカー葉隠。

嫌そうな顔をしながら事細かに体の使い方と認識のズレを教えてくれる爆豪。

噓くさい笑顔が少なくなり、自分たちのために自分の財産を惜しげなく提供してくれる火埜。

一緒に走りながら最後まで完走したら自分のことのように喜んでくれる緑谷。

苦手な教科の宿題で何処が解らないか悩んでいるとそんな自分に30分も付き合ってくれた八百万。

エロいことに目が行きがちだが、意外と周りを見て行動している峰田。

 

尾白は自分が気が付かないうちに誰よりも今のクラスが好きになっていた。

そんな自分の好きなクラスメートを目の前の男は馬鹿にしてくれた。

恐らく人生で初めて他者に対してここまで怒りを覚えたことのない尾白は初めて制御しきれない怒りを身に滾らせていた。

そんな尾白に話しかけようとした物間の顔の真横をものすごいスピードで何かが通り過ぎ、トラックに突き刺さる。

それは放課後特訓とイワさんのエンポリオの影響で長く柔らかくより強くなった尾白の尻尾だった。

 

「これは純然たる八つ当たりだ。だけど、今回はオレの八つ当たりに付き合ってもらおう。一歩でも動こうとすれば、一言でも喋ろうとすれば、容赦なく気絶させる」

 

尾白猿夫、蛙吹梅雨と対をなすA組の良心にしてストッパー。

そんな彼のマグマのような怒りに触れてしまった物間、彼はこの時初めて顔色を青く染めていた。

 

「お、尾白の奴怖!?」

「“あれ”は明らかにオレの伝え方に問題があった、教師として面目ない」

「それに関してウチの奴らは受け取って曲解した奴が悪い、ということで落ち着いている。どんなヒーローにもアンチが出るのは仕方ないが、自分の発言に責任を持てないなら喧嘩売るなと言わせてもらおう」

『さて、あんだけ派手に妨害した心操チームが未だに最下位を走ってるのが不気味だな』

『他のチームもそれに感づいているからか、そこまでスピード出してないな』

『さて、そろそろ駆け引きが始まる頃合いだな』

 

「そこどけそこどけオイラが通る!!」

 

突如トラックに響く峰田の声。

しかし、どの騎馬にも彼の姿は確認できなかった。

ただ一点、一人トラックを走る障子の姿が異様に見えた。

 

『おうっと、1A障子の奴騎馬組んでねえけどあれいいのか?』

『マイクよく見ろ、アイツの複製腕で覆われた背中を』

『まさか、1人騎馬で3人も運んでいるのか!?』

 

「ノコノコノコ、出来たよ大きな椎茸」

「そこにオイラのモギモギをトッピング」

「任されよ、“ツインインパクト”」

 

障子の複製腕による装甲から各騎馬に向けて放たれる妨害アイテムと化したモギモギ付き巨大椎茸。

B組の小森の個性“キノコ”により産み出された巨大椎茸(実食実験済)に拘束妨害という意味では最大の武器となる峰田のモギモギがトッピングされている。

しかも、投げる際に同じくB組の庄田の個性“ツインインパクト”を受けてることで思わぬところで加速する。

これにより何組かの騎馬は靴を脱ぎ素足で走っている。

 

「うっしゃ、思った通り峰田の妨害が始まった」

「なんか怖くなってきたんだけど、この予測的中率」

「火埜の思考速度がうらめしぃ」

「第14子の実装実験が出来るなんて夢のようです」

「と言うわけで、皆には霧幻(むげん)の世界で遊んでもらおうか」

 

心操チーム騎馬の火埜はそう呟くとおもいっきりトラックを踏みつけた。

その踏みつけた足から藍色の霧状の焔が放出され、トラックを覆い尽くす。

 

『おうっと、また最後尾の心操チームが何か仕掛けてきたぞ!』

『トラック全体を藍色の焔が覆っていくな』

『しかし、何やらすぐに晴れちまったぞ!』

『ん、おい小森たちのあのトラップあんなに撒かれてたか?』

 

藍色の焔が消えたトラックにはおびただしい量のモギモギ地雷が設置されていた。

 

「おかしいぞ!?オイラたちあんなに準備してないぞ!?」

「のこ!?どういうこと?」

「まさに奇々怪々、霧に包まれたようだ」

「・・・・!やられた、火埜か!」

 

放課後訓練において火埜の教導役になることの多い障子はクラスでは数少ない天候の焔の特性を全て知る存在であった。

 

『火埜曰く「霧は幻、その目に写る全てが真実とは限らない」つまり、突如増えたトラップは火埜の作り出した幻影ということだ』

『でもよイレイザー、あれじゃ心操チームの騎馬も巻き添え食うぞ』

『火埜は自身の焔をオーラとして感知できる。したがってどれが本物でどれが幻か判断がついている』

『なるほど、最後尾に位置すればこういった妨害に対しても手が打ちやすいということか』

『それに加え、ランダムになるようにばらまかれたトラップの位置を峰田チームが把握する前に決行したからな。誰も見分けがつかない上に騎馬の障子にはトラップはくっ付くからな。見分けがつかないならゆっくりと進む以外にアイツ等には方法がない』

『さらに付け加えるなら、小森のキノコは時間がたつと消滅する。つまり、峰田のモギモギが直接トラックと触れてしまうとトラックにくっついて動けなくなってしまう。他のチームも条件は似ているが、既に靴をさらにひどいと靴下まで脱いでいる騎馬が存在している。そのチームは次踏めば確実に動けなくなってしまうからより慎重に先に進まねばならない』

『かぁー、相変わらず頭の回転が早いな』

 

レース中盤、各チームが恐る恐る進む中、ジワジワと差を縮め始める心操チーム。

 

『まぁ、手がないわけではないんだがな』

 

相澤の呟きを合図にしたかのようにトラックで爆発音が聞こえた。

 

「オレは鉄の漢。これしきの爆発じゃへこたれねぇぞ、どんどんやれ爆豪!!」

「お前に言われなくてもガンガン逝くぜ」

 

騎手の爆豪の爆撃で進行ルートのモギモギトラップを全て吹き飛ばしていく爆豪チーム。

 

騎馬の先頭にはB組の鉄哲が個性を発動して金属化し、爆豪の爆破をもろともせず突き進んでいた。

 

「いいぞ鉄哲、それでこそ漢だ!!」

 

個性により硬化した切島も騎馬の右後ろから声を挙げている。

 

「もうやだ、こいつら怖いよ」

「ビビってんじゃねぇぞバリア野郎。死にたくなかったら気張ってバリア張れや」

 

1人だけその爆破地域にて泣き言を呟く円場。

耳聡く爆豪がその弱音を叩き潰していた。

 

「あぁ、クソ。走りながらだとやっぱ疲れるなッ!」

 

爆豪が爆破をの兆候を見せると瞬時に息を吐き、自分を守る壁を造る円場。

 

『まぁ、あれだ。どれが本物でどれが偽物か解らないなら極論全部ぶっ壊して進めばいいだけだ。どうせ邪魔なトラップなんだからな』

『HEY!相変わらずCrazyな漢だな爆豪』

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