火埜翔織という異物によるHEROACADEMYだ 作:完全怠惰宣言
組み合わせ抽選とレクリエーションを終え、お昼休憩を挟ん後控え室に近い観客席にクラス毎に集められた1年生たち。
最終種目の準備を固唾を飲んで見守っていた。
「ヨシっ!完成」
『Thank You!セメントス!!Hey MEN'S !!Are You Ready?』
マイクのレスポンスに多少の声が会場に木霊する。
『声が小せえぞ!!魂から声挙げてけ!!Are You Ready?』
「「「「Yahaaaa!!!」」」」
2回目のレスポンスに満足したのか、マイクは席へと着いた。
『OKOK、 色々やってきたが! 結局これだよな!最後はやっぱりガチンコタイマン勝負!!頼れるのは己だけ! 心・技・体だけじゃ足りねぇぞ!知恵・知識・時の運!! 出し惜しみなんかしてないでてめえが出せるもの総動員していきやがれ!!』
セメントスの“個性”でフィールドが整備され、実況のプレゼント・マイクの実況が響き渡る事で、観客席のボルテージはどんどん高まっていく。
『極々一部で甚大な被害が出たようだが、自業自得で片付けるぜ!!待たせたな野郎共、雄英体育祭1年の部本選トーナメントの開始だぜぇ!!』
マイクの声に反応するかのように会場が更なる歓声に包まれる。
見学者だけでなく、クラス毎にまとまった箇所に座らされている1年生達も、歓声を挙げていた。
『それじゃ、第一試合まずはこいつだ。一撃の破壊力なら1年随一!!別の意味でも破壊力抜群なDangerGiRL!!ヒーロー科“緑谷静空”!!』
呼び込みアナウンスと共に東ゲートから現れたのは、胸を張り堂々とした姿で入場してきた緑谷。
『VS、今回の台風の目!!虎視眈々と下克上を狙う普通科期待の星!!頑張れよ普通科“心操人使”!!』
西ゲートから姿を表した心操は緊張しているのか動きがガチガチだった。
『ルールはシンプル!!
・相手を場外に落とす
・行動不能にする
・敗けを宣言させる
基本的にはこの3つだ!!』
『怪我なんざ恐れるんじゃねぇぞ!何があろうと復活させる我らがリカバリーガールが待機してっからな!! 』
『しかぁし、命に関わるような行為は禁止だ!!ヒーローは敵を殺すために力を使うんじゃない!!敵を捕まえるために力を振るうのだ!』
フィールドに立つ二人は同時に深呼吸をして、互いに目を合わせた。
『それじゃ、いくぜカウント“3”』
「緑谷」
「何、心操くん」
突如、心操が緑谷に話し掛けた。
心操の個性に関しては火埜も教えてくれなかったため、警戒心を高めて試合に臨もうとしていた緑谷。
『“2”』
「試合前に言うもんじゃないけど」
「うん」
しかし、その時点で心操の計略に、緑谷は嵌まっていた。
『“1”』
「だけど、あえて言わせてくれ」
「何を?」
警戒するあまり、その計略にまんまと嵌まってしまったのだった。
『START!!』
「お前、可愛いな」
「ふぁ!?」
そのやり取りから緑谷は意識を失った。
『おぉぉぉぉう、実際に見るとすげぇな心操の個性』
『個性“洗脳”、心操が 洗脳する意志を持ってした問いかけに返事をした者に対して簡単な動作を命令することができる、というものだが“生物”にしか効果がないことから機械を相手にする入試では効果を発揮することが出来ない。やはりあの入試は合理的でないな』
『おまけに解除は心操の意思かなんらかの刺激を受けることでしか解除されない、緑谷の奴はこれで敗退か』
解説席で教師3人の解説がなされる中、フィールドでは心操が緑谷に指示を出していた。
「緑谷、そのまま歩いて場外まで行け」
心操の言葉に従い後を振り向くとゆっくりと場外へと歩き始めた。
あと一歩で場外に踏み出そうとした次の瞬間、緑谷のすぐ側に雷が落ちたかのような音が鳴り響いた。
【(あれ、ここはどこ?)】
緑谷は周囲を漆黒に覆われた場所に立っていた。
【おや?なんで君がここに居るんだい?】
緑谷の目の前に一人の女性が立っていた。
【(この人!オールマイトの見せてくれた写真の人!)】
【可笑しいな?確かに君の成長速度は異常だけど、まだ“ここ”に立ち入れられる程馴染んでいないはずなのに?】
困ったような顔をして緑谷に視線を会わせてくる女性。
【あれ、何かに縛れてるね?しょうがないな、今回は特別だよ。ちょっと痛いだろうけど、ごめんね】
その会話を最後、右手の中指に物凄い痛みが走り、緑谷は意識を覚醒させた。
『おぅっと、なんだ?何が起きた?』
『!!緑谷の中指が折れているぞ』
『個性を暴走させて洗脳状態から抜け出したのか?相変わらず無茶するな』
右手を庇うような体勢になりながら、心操を睨み付ける緑谷。
その目に、心操は火埜から言われた言葉を思い出していた。
「シズ、緑谷静空と対戦することになったら絶対に油断しないこと」
「はぁ?どういうことだ」
遡ること抽選終了後、心操チームとして騎馬を組んだ縁でか火埜は心操に話し掛けていた。
「あの子の個性は15歳になって発現した遅効型個性だからか、まだ謎な部分が多くてね」
遠回しな言い方に多少イラつきを見せる心操。
そんな心操に笑顔で話し掛ける火埜。
「心操の個性がいくら一撃必殺であろうと油断しない方がいいよ、てだけ」
「そんだけか?いくらヒーロー科でも、オレの個性に掛かれば余程のことがない限り、1人で解除は出来ねえよ」
「くふふふふ。まぁ、あまりなめて掛からない方がいいぞ」
ほんの少し前、たまたま組んだだけの“仲間”の提言を受け止めていなかったこと、自分の個性に対する傲慢な自信が仇となって、心操の思考に空白が生まれた。
「(今だ!!)」
その隙を緑谷が逃すことなく、左肩からのタックルで心操を押し出してきた。
「ぐ、おおおおおお(なんつう突進力だ!しかもタックルのせいで呼吸が出来ねぇから喋れねぇ)」
問いかけ、返答されることで発動する心操の個性に対抗するなら一番簡単な方法は喋らせないことである。
超パワーで加速した緑谷のタックルがモロに決まり、呻き声を挙げることしか出来ない心操。
更に、緑谷は心操を逃がさないようにタックルした際に、心操の体操着を掴んで逃がさないようにしていた。
その結果。
「心操君場外!!勝者緑谷さん!!」
ミッドナイトが勝敗のコールを上げる。
それに呼応するように歓声が上がる場内。
「(あぁ、負けたのかオレ)」
フィールドの外に座り込み、空を見上げる心操。
「大丈夫?心操君」
其処には先程までの対戦相手だった緑谷が心配そうに心操に手をさしのべていた。
その顔には相手を見下すような感情は一切なく、相手に対するリスペクトの感情しかなかった。
「あ、あぁ大丈夫だ。それより、緑谷の方こそ指大丈夫か?」
「あぁ~、これは叱られるなぁ。あ、それよりも心操君!」
突如真剣な顔をした緑谷は心操の顔に指を突き刺した。
「いくら個性に掛けるためだからって、女の子に“あんなウソ”ついちゃダメだよ」
「“あんなウソ”とは?」
心底解らなそうな顔をしている心操に、顔を真っ赤にして緑谷は答えた。
「だ、だから、その、ボクみたいな子が、えっと、か、“可愛い”だなんてウソついちゃダメだよ」
その答えに納得したような顔をする心操だったが。
「いや、本心だけど?」
「ふふぇ!?」
なにも間違ったこと言ってません、というような顔で答えた心操の一言。
予想外の答えに緑谷の顔は更に真っ赤になっていった。
「いゃーーーーん、ア・オ・ハ・ル。アオハルよ!!」
「ふふふふ、二人とも取り敢えず退場してください」
好物のアオハル現場に体をくねらせて喜びに悶えるミッドナイト、自分にもこんな時期があったなと回想し退場を促すセメントス。
『蓋を開ければ短期決戦、ヒーロー科緑谷静空の勝利!!てか最後のあれマジか?』
『幼馴染み“その②”情報だと中学時代はアイツの番犬が爆発しすぎてそういった対象がアイツに近づけなかったらしい。おかげで緑谷の奴自分は可愛くないと思ってるんだとか』
『いや、傍目から見ても十分に愛らしい部類になると思うんだが』
『だそうだ、やり過ぎ注意だったな“番犬”』
解説室の相澤が目線を送った先には自分の受け持つクラスの一団がいた。
「AJTGAJMEJTJGAJLDJTNJALELOKGSVEANK!!」
「うわぁ、人間の顔じゃねぇぞ“爆豪”」
「まさに悪鬼」
今にもフィールドへと飛び出しそうになっている爆豪は、雄叫びを挙げた瞬間に霧の焔による高次元で構築された有幻覚の鎖により捕縛され、人語として聞き取れないレベルの雄叫びを上げながら鎖を引きちぎらんばかりの勢いで爆発し続けていた。
「いやぁ、これでシズクちゃんの可愛らしさが全国に知れ渡ってもうたなぁ。爆豪君も苦労するんとちゃうん?」
「何でそんなに嬉しそうなのお茶子ちゃん?」
謎のマウントをとる麗日に不思議がる蛙吹。
「ほら、勝己。オレの言った通りになったじゃん」
「嬉しそうにしてんじゃねぇぞ翔織コラァ!!」
爆豪にとっての諸悪の根元(完全な言い掛かり)である火埜は目の前で悠々と寛いでいた。
「だから言ったじゃん、シズは
「ざけんなゃ、コラァ!!オレの苦節10年重みが違うんだよ!!」
「ケロ、爆豪ちゃんそういうのはちゃんと言葉にしないとダメよ」
「解ってんだよ!!わかってんだけど」
蛙吹の正論に鎮火させられる爆豪。
彼には珍しくモゴモゴと言い淀んでいる。
「は、はずいんです」
「純情かよ!?」
「てか、爆豪が敬語だと!?」
1Aブースが狂乱に陥っている中。
「あうぅ、た、ただいまぁ」
顔を真っ赤にしモジモジとしながら緑谷が戻ってきた。
「緑谷」
「あ、な、なに、轟君?」
そんな緑谷を出迎えるよう前に立ちはだかる轟。
「オレも、お前可愛いと思ってたぞ」
「あぁわぁふぁ、わぁーーーーーー!!」
轟の一言が止めとなり気絶した緑谷。
「?オレなんか変なこと言ったか」
そして、変な方向に進化し始めた轟。
「あぐぁが、クソがーーーーーー!!」
過去最大に爆発している爆豪。
『お前ら煩いぞ、上鳴はさっさと控え室に行け』
なんともしまらない第一試合となった。