火埜翔織という異物によるHEROACADEMYだ 作:完全怠惰宣言
キャッシュ、クレジット、電子マネー、免許、金全て失くす。
急いで止めて泣く。
再発行手続きで2日消える。
仕事先で海に落ちる。
なんて月だ!!
『それじゃ、3回戦いくぞ』
『マイクの奴、どうした?』
『校長にガチ説教受けたらしい、あと2日喉は大丈夫かと』
『うっせぇ!今年1年生がエンタメしてんのが悪い!!』
大人3人のコントが終わるのと同時に東ゲートにライトが灯る。
『地味個性と誰が言った?固めるだけの個性じゃねぇ!最硬の盾にオレはなる!1A切島鋭児郎』
「うぉーーーーーーーー!!」
東ゲートから現れた切島は自身を鼓舞する意味も込めて叫ぶ。
そして、いつもの如く硬化した両腕を打ち付け、金属のような独特の音を会場に響かせる。
それに感化されたように、観客席でも声援が飛んでくる。
そんな歓声の切れ目を合図に西ゲートにもライトが灯った。
『敵向き個性?笑わせるな!万物切り裂く刃を持った最強の剣にオレはなる!1B鎌切尖』
「シャーーーーーーー!!」
西ゲートからゆっくりと現れた鎌切はライトに照らされるのと同時に、両手の指の間から爪のように刃を作り出すと切島に負けない勢いで叫ぶ。
その際、作り出した刃同士を打ち合わせて火花を発していた。
『“盾”対“矛”どちらに軍配が上がるのか、カウント“3”』
選手両名がフィールド中央で向かい合うのを確認してカウントが始まる。
『“2”』
互いに視線を逸らさず、寧ろ互いにメンチ切りあう近さまで近づいていく。
先ほどまで個性を発現させていた互いの両腕は個性の影響を感じさせない状態に戻っていた。
『“1”』
カウントが終わるその瞬間、互いに不敵な笑みを浮かべる。
早く戦いたくてウズウズしているように見えるその様は、先に行われた2戦とは違う雰囲気を醸し出していた。
『Ready,Go!!』
「シャァ!!」
マイクの開始の声とともに、鎌切の腕から高速で刃が伸びる。
瞬間、両腕を硬化させて鎌切の刃自体を防ぐことに成功した切島だったが、彼にとって一つ誤算があった。
『切島の奴、鎌切の“刃鋭”の勢いを殺しきれずに徐々に押し込まれているぞ』
『その場で留まる“硬化”と、刃を出す“刃鋭”じゃ発射される“刃鋭”のほうが勢いがつく。その分、切島は押されるからな』
『真正面からいくあいつの姿勢は評価するが、これでは場外に押し出されて負けるな(ま、ウチの頭脳労働組が何も考えずに送り出すことは考えづらいがな)』
鎌切は予選を利用してA組の個性を把握しようという物間の考えに賛同した一人である。
しかし、それは純粋に自分“達”がA組に比べて劣るところが多いと思っていたからであった。
その中で、クラスメートの鉄哲と似た個性の切島がなぜか印象深く残っていた。
「シャシャシャ、吹き飛べ切島!!」
鎌切も考えなしに刃の発射をし続けているわけでない。
片腕から交互に発射させることで断続的に勢いを殺さずに、切島にぶつけているのであった。
そうすることで、威力こそ劣るが発射の勢いを衰えさせることなく場外を狙うことができると考えたからである。
その勢いにより切島は砂煙を上げながら後退させられていた。
立ち上がる砂煙によって切島の姿が見え難くなっていく。
あと数回、勢いを維持したまま発射すればフィールドの端へと追いやり、最後に両腕から発射させればその勢いで切島を場外に落とせる位置まで進んだ時だった。
ガキンと今までにない金属音が響いたの同時に、鎌切が発射した刃が戻せなくなってしまった。
「な、なんだその姿は?」
砂煙が晴れ、姿を現した切島の上半身は、まるでワニの鱗に覆われたかのような姿になっていた。
「斧留亜武怒(フルアームド)」
放課後訓練にて、最高硬度の維持する実験で両手を硬化した際、指先が爪と一体化して鍵爪のような形状で硬化したことがあった。
その時の光景を目撃され、悪どい笑顔を浮かべ目を付けた鬼畜軍師火埜により始まったのがイメージ訓練であった。
肉体を変化させるタイプの個性において“イメージ”とは重要なものであった。
実際、火の鳥に変化できる鬼畜軍師本人がそうであったため拒否する隙も与えられず切島は知識の蓄積量により選ばれた八百万と、個性の関係上動物の生態に詳しい口田により徹底して鱗や甲羅を持つ生物の知識を叩き込まれていった。
夜は夜で口田が貸してくれた動物の百科事典を読んでから就寝が義務付けられた。
その結果、巨大で嫌にリアルな鰐に追いかけられる夢を見るまでになり、その結果5分間であれば上半身を、10分間であれば両腕を鱗状に硬化させられるようになったのであった。
「相手が鎌切!お前で良かったよ!」
「んだと、どういうことだ」
「“この姿”は相手の攻撃が鋭ければ鋭いほどに、オレに有利になるかな!!」
鎌切が発射する刃、先ほどまでであれば受け止めることで防御してきた切島であったが、刃に対して腕を伸ばした。
するとどうだろう、切島の腕に当たった刃は鱗を滑る様に発射の威力を受け流されてしまった。
「どっちが先にぶっ倒れるか、我慢比べといこうぜ!鎌切尖!!」
「面白いじゃないか、漢してんなオイ!切島鋭児郎!!」
どちらからともなく走り出した二人は、互いに殴り合いができる距離まで詰めるとノーガードの殴り合いになった。
最速発射で今まで以上に切島を削りにきている鎌切。
鱗状に硬化したことで刃を流すように耐える切島。
フィールドの中央で巻き起こる矛と盾の攻防。
次第に切島と鎌切は個性を使うのを辞めてしまった。
とある肉体強化型の個性持ちの男性がこんなことを言っていた。
『男という生き物は個性という異能が発現される前、有志以前から不治の病に冒されている』
『武器がどんなに進化しても、ボタン一つで何万人も殺せる兵器が誕生しても馬鹿な男達は結局そこに行き着いてしまう』
そう呟くと男はタバコを吸うと煙を吐き出し、ニヤリと笑みを浮かべた。
『“ステゴロ最強”という不合理極まりない馬鹿な病気にな』
その男性は数年後にヒーローとしての道を歩き始めた。
「若き日のデステゴロ回顧録より」
「何言ってんの、トーリ?」
ステゴロ勝負になってからは興味を失くしたように、意識を休息に割いていた火埜、気が付くと芦戸のしなやかであり確りと奥に筋肉を感じる太股を枕にしていた。
「あれ?いつのまに?」
「なんか、眠そうにフラフラしてたからアタシの膝枕に強制着地させたの」
「それはそれは、どうもご迷惑をっと」
すくっと起き上がる火埜であったが、そんな彼の頭を名残惜しそうに手櫛て掬う芦戸。
その光景に複数の嫉妬の視線が突き刺さるのだが、そんなこと気にしてはいなかった。
「2人とも熱くなっちゃって」
フィールドでは今まさに男と男の維持の張り合いが起きていた。
そして、大方の予想通り鎌切が息切れを起こしていた。
「オラ、まだ行けんだろ!!」
「うるせぇ、耐久力馬鹿!!」
鎌切とは正反対に生き生きとしている切島。
個性抜きでも素の耐久力が飛び抜けて高い彼は終わりを感じ始めたこの試合に寂しさを覚えていた。
だからといって、手を抜くようなことはせず、鎌切が倒れぬ限り全力で殴りあっていた。
「あぁ、くっそぉ。マジで化け物だな“
息も絶え絶え、腕を上げる力も尽きてなおその瞳は勝負を捨てることなくギラつかせる鎌切。
そんな鎌切からでた言葉に本日一番の笑顔を見せる切島。
「おう!!うちには3人の鬼教師がいるからな!!気抜いた瞬間に置いてかれちまうんだわ」
「くそがぁ、次は負けねぇからな」
その言葉と共に前のめりで倒れていく鎌切。
そんな鎌切を確りと支えるように抱き止める切島。
「鎌切君、意識喪失を確認!!勝者切島君!!」
最後には意地の張り合いで幕を閉じた試合であったが、心にくる試合となった。
「「誰が“鬼教師”だ切島!!」」
『
来月は良い月でありますように(切実)