火埜翔織という異物によるHEROACADEMYだ 作:完全怠惰宣言
緑谷対上鳴の試合の熱が冷めることなく行われている2回戦第2試合。
先手を取ったのは意外な男だった。
ミッドナイトの試合開始の合図と共に両腕を撃ち合わせる“切島”。
その姿に寒気を覚えた“火埜”が瞬時に両腕を翼に変え、瞬時に加速すると切島に飛び蹴りを放った。
焔のような蹴りの衝撃が“フィールド”へと伝わりフィールドが裂け、砂煙が上がり切島の姿が見えなくなった。
会場では火埜の瞬殺劇に残念そうな声が上がるが、誰1人気が付く者は居なかった。
「おいおい、なんだよその姿は」
煙の中から飛び出しフィールドの端へと“避難”した火埜。
その脚は何か“固い物”を蹴り着けたかのように痺れているように見えた。
「お前らも知ってる通り、オレの個性は身体が固くなるっていうシンプルなもんだ」
煙の中から切島の声が静まり返った会場に響き渡る。
「だから、常に全身を硬化させることが当たり前だと思ってた。けどよお前を見ていて思ったんだよ」
煙が晴れていく。
そこには普段と変わらない顔をした切島が立っていた。
「オレも“部分的な硬化”が出きるんじやないがって」
「それで試して、諦めないで試して、か。本当に切島は頑固だな」
火埜の言葉を合図にしてか、硬化した腕を振るい煙を飛ばす切島。
「その答えが“それ”?」
「
「参ったぜ。
「おうよ、いずれ全身で
「でも、オレの攻撃を耐えきる硬度、それに尾白に教わった武術の衝撃流しを地味に併用してるあたり流石だね」
「へっ、クラス内模擬戦上位のお前に勝ちたいんでね。オレも“漢”だから!!」
「熱っ苦しいね!!嫌いじゃないけど、さっ!!」
そこから始まったのは弓矢対剣盾の戦いだった。
常時維持するわけでなく、火埜が間合いから外れたら硬化を解き、以外と速い脚で接近し自身の間合いに詰めたら硬化して殴り付ける切島。
それを嫌がり上空に逃げるが鳳凰印を使用できるまでの炎圧上昇を切島に妨害されるので速さにもノを言わせた多角攻撃で切島のスタミナを削りにいってる火埜。
『うぉぉぉぉぉぉぉ、見てるかオーディエンス?これだろ!お前らが求めてたのはこういう熱いバトルだろ!』
『一撃の威力でいえば火埜は確かにクラス内でも上位だ。しかし、単純な防御力とそれを維持するスタミナに関していえば切島は雄英生徒という括りの中でも高い位置に存在できるだろう』
『火埜が勝つためにはその防御を突破するか自分以上のスタミナを使いきらせるかしか道はないな』
解説席で交わされる言葉は会場内に響くのと同時に歓声が爆発する。
火埜だけが攻撃をしているように見えるが所々で切島も殴る蹴るといった攻撃を繰り出していた。
火埜もクリーンヒットこそしていないが何発かヒヤリとする攻撃があったようで、今は肩で息をしながらフィールドの端で休憩をしていた。
「うぉぉぉぉぉ!!オレも、オレもあんなバトルがしたかったぜ!!」
AB混同閲覧席では鉄哲が悔し涙を流しながら、それでも目の前のバトルを糧にするためにしっかりと見続けていた。
「でも、相澤先生がいつか言っていたこと、切島が一番実践できてるかもね」
芦戸がフィールド上の戦いから目を剃らすことなく呟いた言葉。
放課後訓練において勉強時間が組み込まれることになった際、相澤から苦言があった。
「いいかお前ら。正直“馬鹿”でもヒーローにはなれる」
突然の発言にクラスメート全員がその意味を理解できていなかった。
「だがな、“馬鹿”じゃ誰も救えねぇんだよ」
そう言い放った相澤の目には悲しみの感情が宿っていた。
いつもと違う雰囲気にA組生徒は引きずり込まれていった。
「自分で考えて考えて考えて、練習して練習して練習して、その繰り返しが現場で行動できるかどうかに関わってくる。常に考え続けろとは言わない。限られた時間の中で自分が何が“出来て”何が“出来ない”か、そしてその“出来ない”何かをどうするか考えろ。何かあった時、それで後悔するのは自分自身なんだ」
その言葉はA組生徒に深く刺さったのだろう。
放課後訓練も毎日ではなく休日も作り、身体だけでなく頭も鍛えるように全員で考えた。
その結果が今、現れていた。
「のこぉ、A組との差が如実に現れてしまっているノコ」
「勘違いしないで欲しいんだけど、うちら毎日居残ってる訳じゃないよ。メリハリつけてヤってるだけ」
「ケロ、休む時は休むし遊ぶ時は遊ぶわ。だから、“その時”は皆で頑張るって決めたのよ」
その思考自体が既に現れてしまった差であることは明白であった。
その結果、トーナメント1回戦の勝者は全員A組であり、“今”自分が出きることを最大限のパフォーマンスを持って実行出来た、その結果であった。
「っだぁぁぁぁぁぁぁぁ、こんのスタミナ馬鹿!!自分が出きることを突き詰めていくのって、うちのクラスだと切島が一番だったか」
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、この鬼畜軍師が!!頭の回転が良すぎなんだよ!!もちっと付け入る隙残しておけよな」
フィールドに響く互いに互いの貶してるのか誉めてるのか解らない言葉の応酬。
互いに決定打に欠けているようで戦術プランの組み直しをしているようだった。
「いい加減に息切れぐらいしろや、こんの体力お化け!!」
「緩急つける余裕まだあんのかよ、この腹黒もやし!!」
スタミナ的に余裕のない火埜がカポエラのように流れるような蹴り技に切り替えた。
切島の安無嶺過武瑠スタイルは副次作用で硬化した先が鋭利な刃物のように尖る。
オーラ化している脚も蹴りが入る瞬間は実体のある脚に切り替えなければならないので火埜の脚は所々傷だらけになっていた。
一方の切島もスタミナこそまだ余裕があるが決定打に欠けていた。
元々、猪突猛進タイプなためか周囲への警戒を常にし続けていたからか、集中力が切れかかっていた。
「おい、切島」
相当きているのか既に猫を被ることを辞めた、好戦的な笑みを浮かべた火埜が切島に声をかける。
「チマチマやってても無駄に時間を使うだけだ、ここは一発本気でぶつかろうぜ」
そう言うと火埜の両腕は緑色の雷と黄色の焔を帯びた翼に変化し、両足は藍色の霧状のオーラを発する鳥類の足へと変化していた。
「それが挑発だって解ってるんだけどな、猫が剥がれたお前からの挑戦状、答えてやらなきゃ“漢”じゃねえよな」
火埜のあからさまな挑発に対して、切島もまた挑発的な笑顔を浮かべる。
両手足の硬化が解けていき、身体の見える範囲は完全に硬化が解けた状態になっていた。
肩で息をしていた火埜の呼吸が徐々に落ち着いていき、静寂が辺りを覆っていった。
火埜と切島、互いの視線が交差したその時だった。
「
「
瞬間的に真横に加速し切島に突き刺さるような蹴りを繰り出す火埜。
それにタイミングを合わせたように全身を最高硬度で硬化させた切島。
切島の最高硬度かつ全身硬化による完全防御により、試合は幕を閉じる。
そう誰もが予想しただろう光景は、裏切られる形となった。
「るぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
オーラの推進力に身体の捻りによる回転が加わり、弾丸のように切島を押し出していく火埜。
切島も負けじと、足を掴もうとして違和感に気がついた。
『火埜の幻覚には“有幻覚”と言うものが存在する』
『突然どうしたイレイザー』
『この有幻覚の厄介なところは“幻”でありながら“実体”があると言うところだ』
相澤の突然の呟きに会場がザワついていく。
『通常の“幻覚”が各個人の認識能力に働きかけてその個人を騙すのに対して、“有幻覚”は複数の存在の認識能力に働きかけることで、そこに存在していると言う認識を“世界”に一時的に上書きすることなんだと』
『つまり?』
『今、火埜はオーラに変異させた脚で物理的に攻撃が可能であり、さらにあいつ自身へのダメージは無視した状態に有ると言うことだ』
フィールド中央で拮抗していた
「踏ん張れ!!切島君」
「ここまできたら、耐えきれ!!」
会場から響く切島への応援。
「いったれ、火埜君!!」
「後もう少しだよ!!」
そして、同じく火埜にも応援が送られていた。
「「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
フィールドで2人の声が響くのと同時に、閃光が走った。
次の瞬間、2人を中心に爆発が起き砂煙が立ち上がりフィールドだけでなく、周囲も砂煙で包まれた。
『どうなった!?』
『火埜が蹴り抜いたか、切島が防ぎきったか』
『砂煙が晴れてくぞ!?』
徐々に晴れていく砂煙。
フィールドが姿を表すと、フィールドの端ギリギリで耐える2人の姿があった。
火埜は限界間近なのかフラフラといつ倒れたもおかしくなく、反対に切島は動くことなく視線を下に向けていた。
「・・・・・、火埜」
切島から声が漏れる。
その声に反応して顔を上げるのが精一杯の火埜に周囲は切島の勝ちを確信した。
「次はオレが勝つ」
そう告げると、切島は後ろ向きに倒れ、フィールドの外へと落ちていった。
フラフラの火埜とミッドナイトが視線を合わせることで意識の有無を確認し、切島の状態を確認しに来たミッドナイトが見たのは、満面の笑顔で気絶した切島だった。
「切島君の気絶を確認、勝者火埜君!!」
ミッドナイト宣言に会場は万感の拍手と声援が包み込んだ。
「もう、二度とお前とはヤりたくないな」
ギリギリで意識を保っていたであろう火埜もまたそう呟くと気絶し、フィールドへと倒れこんだ。
2人の健闘を讃えるように拍手は数分間なりやまなかった。
『これ、両者KO?』
『次の試合開始までに火埜が目を覚ませば、問題ない』