火埜翔織という異物によるHEROACADEMYだ   作:完全怠惰宣言

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38th

2回戦第3試合。

そこには戦場が広がっていた。

 

「くたばれや、八百万!!」

 

両手から発せられる爆発を駆使して縦横無尽に飛び回り、格闘術と爆発により場を制圧しようとする爆豪。

 

「言葉が過ぎますわよ、爆豪さん!!」

 

両手持ちできそうな竹刀のような長めの警棒を創造し、爆豪との距離を制圧した八百万。

 

『爆豪の奴は解ってたけど、八百万は何だ?なんで爆破された警棒が“再生”してんだよ?』

 

マイクの疑問は最もであった。

八百万の警棒は創造してから幾度と無く爆破され破損してきた。

それにも関わらず、八百万が攻撃をすると破壊された部分が再生しているのである。

これにより、八百万は爆豪とのこの試合において相手との間合いを制しているのであった。

 

『ほぅ、考えたな八百万の奴』

『ん?そういうことか!しかし、よく“あんなこと”教えたなイレイザー』

『違う、八百万が勝手に考え付いたんだろう。まぁ、いつも目で追ってる奴の個性が個性だからな。その思考に至ったのは必然だろう』

 

相澤のボヤキというか「“生徒(我子)”自慢」が炸裂した、それを合図にしてか注目度が増す八百万。

そんな八百万の“トリック”に気がついたのは同時だった。

 

「ちぃ、そういうことかよ」

「あぁ、そういうことかな」

「うわ、そういう発想かぁ」

 

フィールドでは爆豪が観客席では復活した火埜と緑谷がそう呟いたのは完全に偶然だろう。

天性の鋭さを持つ爆豪。

自由な発想と思考をする火埜。

無個性だったからこそ得た異常な観察力を持つ緑谷。

そんな3人だったからこそ八百万の行っていることに気がつけたのであった。

 

「八百万、てめぇの“それ”まだ“創造中”だな」

 

フィールドでニタリと好戦的な笑みを浮かべる爆豪。

それは、彼のギアがもう一段階上がる合図でもあった。

 

「はぁ、やはり爆豪さんは気付かれてしまいましたか」

 

そう言いながらも笑みを深める八百万。

彼女の右手に握られた半ばから破壊された警棒の柄、八百万が握っている右手からは、彼女の個性である「創造」の過程で発せられる微量な光が出ていた。

 

「私と繋がっている“この状態”であれば、爆豪さんのおっしゃるとおり“創造中”となります。ですから、いくら壊されてもまた“創り直し”てしまえますのよ」

「かっ!面白えこと考えるじゃねえか」

「えぇ、だって私はあなた“方”に負けっぱなしではいられませんもの」

「しつこい女は苦手だぞ、あいつ」

「まぁ、失礼な!純愛ですわよ!!」

 

フンスフンスと聞こえてきそうな顔をする八百万。

その顔に既視感を覚える爆豪の頭には自身が恋する少女の顔が浮かんでいた。

 

「ですけど、こんな小細工で爆豪さんに勝てるとは私微塵も思っておりませんわ」

 

八百万の漏らした言葉に会場一同「え?」という顔になっていた。

 

「万全のあなたに勝って初めて、私は胸を張って翔織様の”初期(ファースト)”幼馴染を名乗らせていただきますわ!」

 

フンスと息巻き、その高校級に実った西瓜をぶるんと震わせ胸を張る八百万。

 

「あ゛あ゛あ゛?まだそんな寝ぼけたこと言ってんのか?あいつの“初期(ファースト)”幼馴染はオレとシズだ!!」

 

「で、どういうことかな翔織君?」

「わぁー、可愛い笑顔(怯)。少し落ち着こうや静空さん」

 

至近距離で微笑む緑谷静空(幼馴染)のそれはそれは見惚れそうな笑みと押し倒されていると誤解しそうな顔の両脇に打ち付けられた拳に殺意を感じて怯える火埜。

 

「いや、あのね。2人と会えてなかった時期、イワさんが本格的に拠点を日本に写した時期に八百万家に預けられててね。そこで何故か気に入られて幼馴染を自称するようになったんだけど」

「つまり、押し切られたんだ。ボク達という幼馴染がいるのに」

 

笑顔とは本来威嚇するために生まれたのだと誰かが言っていた。

事実、緑谷の笑顔はとても愛らしく見えたが、正面から見ている火埜は怖くて震えそうになっていた。

 

「ケロケロ、静空ちゃん。私たちとの“約束”忘れちゃったのかしら?静空ちやんの“それ”は好意でなくて依存よ?」

 

そんな火埜の隣に座り、緑谷に真正面から意見を言う蛙吹。

その顔はいつもの愛らしい笑みではなく、弟妹に言い聞かせる時のお姉さんの顔だった。

 

「誰かを大切に思うことはとても素敵なことよ。でもそれで相手を縛り付けるのなら、それはとてもダメなことよ静空ちゃん」

 

蛙吹の声に次第に落ち着きを取り戻していく緑谷。

その顔はただただふてくされた子供のようになっていった。

 

「解ってるもん、解ってるけど理解したくないもん」

 

無個性だった自分の初めての理解者。

同情や憐れみでは無く、ただ傍にいてくれた大切な幼馴染。

そこで止まることの出来た関係。

そんな居心地のよい関係が壊れるのが嫌だと緑谷は考えていた。

 

「ケロケロ、そんな静空ちゃんが私は大好きよ」

「ぶぅ、梅雨ちゃんには敵わないなぁ」

 

“A組のお姉ちゃん”蛙吹梅雨は今日も平和を愛している。

そんな平和空間が復活したアリーナとは違い、フィールド上では予想に反して爆豪が逃げ回っていた。

 

「おま、マジふざけんな!!“M134(ミニガン)”なんて反則だろ!!」

 

言葉と所作で爆豪から見えないように右腕に創造した機関銃。

某国にて使用されているそれを小型化したようなその兵器からばら蒔かれる暴徒鎮圧用ゴム弾から逃げるように加速する爆豪。

 

「ご心配無く、これはM134を模倣して創られた電動ガンを小型化して創造したものですわ。うふふ、でもなんでしょうこの感覚は」

 

引きっぱなしのトリガーと次々に創造されるベルトリンク。

そして、恍惚とした表情で爆豪を撃ち続ける八百万。

状況が状況なだけになんとも言えないが、その表情は控えめに言っても、とてもエロかった。

 

『トリガーハッピーかよ!!』

『なんだあのミッドナイト先生レベルの顔は。放送禁止だろ!?』

『まぁ、普段大人しい奴ほどはっちゃけたら危ないと言うことか』

『『お前の生徒だろうが!!』』

 

解説ブースで相も変わらず行われるコントであったが、相澤の目はどの試合よりも真剣だった。

 

『八百万の個性は出来ることが多すぎるからな。その場その場の最適な判断と膨大な知識が求められる。さらに、普段のあいつはクラスでも大人しい分類だ』

『確かに“The・優等生”って感じたものな!!』

『育ちのせいか所作も見事なものだしな』

『とれる手段が多いからか、判断が間に合わず、あいつは戦闘訓練での成績はかなり悪い。特に爆豪が相手になると今のところ全敗な訳だ。だが形に填まったからか、苦手な爆豪を圧倒しているからかいつになくテンションが高いが大丈夫だろうか?』

 

相澤の心配そうな呟きを合図にか、爆音とも言うべき銃撃音が止んだ。

音の発生源である八百万に視線を向けると。

 

「あぅぅぅぅぅぅぅ」

 

頭を抱えるように悶絶した八百万がいた。

 

『What?終始優位に立っていた八百万が目回してるぞ?どうした?』

『八百万の個性“創造”は「自分の体内、正確には脂質からあらゆる無生物を創り出す」と言うものだが、その際に脂質と同時にとある物も大量に消費している』

 

「それは“糖分”だよ」

「「「「「「「「「糖分?」」」」」」」」」

 

A・B合同席にて何故か説明役になっている火埜の言葉に全員が解らず首をかしげていた。

 

「はい!火埜先生!」

「なんですか、上鳴(リア充)?」

 

片腕を塩崎に抱き込まれた(色々諦めた)上鳴が勢いよく挙手をする。

 

「脂質元々は本人から聞いてるけど、糖分の消費がいまいち意味解りません!」

 

そんな上鳴の言葉に全員が肯定を示すように頷く。

 

「何かを考える時、人は糖分を消費すると言われています」

 

ここまでは大丈夫ですか?と火埜が顔を向ける。

その雰囲気を察したのか「はーい」と元気よく返事する良い子達。

 

「それが細部、分子構造に至るまで必要な上に、常に創造するために八百万は体を動かしながら創造して頭の中でも出来上がり品を想像して、脂質だけじゃなくて糖分も消費し続けていたわけで」

 

火埜が視線をフィールドに移すと全員もつられてフィールドに視線を向ける。

そこには勝利宣言をされながらも、不完全燃焼でやり場の無い怒りをどこに発散して言いか解らない爆豪と、敗けを宣告され至急で点滴を射たれる八百万がいた。

 

「ははは、相変わらず真っ直ぐなんだから“モモちゃん”は」

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