火埜翔織という異物によるHEROACADEMYだ   作:完全怠惰宣言

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本当は前話と繋がる筈だったんですけど。
まぁ、キレが良かったんです。


43th

爆豪勝己対火埜翔織となった準決勝第2試合。

先に行われた緑谷静空対轟焦凍とは違い、その始まりは静かなモノだった。

ミッドナイトの開始の合図でフィールド中央へと静かに歩いていく選手の2人。

そこから徐々に加速していき中央で互いの拳が交差する、俗にいうクロスカウンターとなるが互いに読んでいたのか首を傾げ綺麗に避けていた。

そこからはまるでお手本のような格闘戦が行われていった。

爆豪は個性を生かすためにか蹴り技を主体にしたまるでムエタイのような一撃一撃が必殺と言っても過言でない攻撃を流れるように、火埜へと襲い掛かる。

そんな火埜は時には両手で蹴りの力の方向を流し、時には爆豪の攻撃の勢いを利用しその勢いを乗せて肘鉄を見舞っていた。

 

「まるで舞踏のようだ」

 

観客席の誰かがつぶやいた、それはもしかしたら自分の口から洩れた言葉だったかもしれない。

フィールドの2人が行っているのは紛れもない格闘戦である。

それほどまでに爆豪と火埜の攻防は人を魅了していった。

誰もが席を立つことなく数分の時間が流れていった。

 

「・・・・・、待たせたな」

 

気が付くと体中から汗を流す爆豪がそれはそれは子供がみたら泣きだしそうな笑顔で対面にて同じく息も荒く、疲労を隠そうともしない火埜が呆れたような顔をしていた。

 

「別に、元々オレが提案したことだし」

 

火埜の両手に黄色い焔が灯る。

その焔は徐々に小さくなっていく。しかし、その輝きは増していき遂には晴れの日に見る太陽光のような眩しい黄色となっていった。

火埜は、両手に灯った焔を自身の体に押し付け何かを耐えるように深く息を吐く。

 

「面白れぇじゃねえか、楽しませてくれよ翔織!!」

 

今日一番の爆発を利用して高速で突っ込んでいく爆豪。

そのスピードは速さに定評のある飯田ですら目を見開き驚いていた。

 

『爆豪の奴、速っや!?』

『あいつのは“爆破”。掌の汗腺からニトロのような物質を出す事ができ、それを爆発させる。爆発力は汗の量に比例するため、動くほどに強力になる。何より推進力としても利用でき、それで空飛んだりもしてるがそれで地面を滑るように移動してるんだろ(もっとも、爆発の威力には限界もあるし、最大火力の爆破は自身もダメージを受けるけどな)』

『なるほど、つまり体が温まった今、あいつは最高のパフォーマンスを発揮できるということか』

『まあ、それを見越して火埜の奴も何かしたみたいだがな』

 

「くたばれや翔織!!」

 

驚異の速さで間を詰める爆豪。

その勢いのまま火埜に対して蹴りを放つ。

会場全員がその蹴りにより吹き飛ばされる光景を想像した。

 

「勝己には悪いけど、1RでK.O.してやるよ」

 

しかし、彼らが見たのは全く別の光景だった。

黄色く輝く肉体を持ち、フィールドに焦げ跡すら残さず爆豪の後ろに移動し、逆に爆豪を蹴りつける火埜の姿がそこにあった。

 

『What!?何が起きた!?火埜の奴が黄色く発光したと思ったらスゲー速さで爆豪を蹴りやがったぞ!!』

『あれは“活性”の力を持った“晴れの焔”、しかもそれを高純度で燃やして自身に打ち込んだんだろう。それにより肉体の強制活性を引き起こさせ目にもとまらぬ速さで行動できるようになったんだろう』

『しかし、普段冷静な火埜らしくない勝負を急ぐ戦法だな』

 

解説席でのやり取りが流れる中、試合の流れは2人のギアが上がっていくごとに熾烈になっていった。

両手の爆破を絶妙にコントロールし、爆破による攻防をもって火埜を制圧しようとしている爆豪。

それに対して、肉体を超活性させて普段以上の反射速度と攻撃の接続回数で爆豪を圧倒しようとしている火埜。

互いに決め手に欠けながらも手を緩めることなく、一進一退の攻防が続いていた。

そんな中、2人の異変にいち早く気が付いたのはフィールド外で見ていた蛙吹梅雨(1A皆のお姉ちゃん)だった。 

 

「(何かしら、この感じ?まるで何かを見落としているかのような言い知れないこの違和感)」

「しっかし、普段クールぶってても火埜も男の子だよな“ステゴロ”で決着つけようなんてよ」

「!?切島ちゃん、今なんて言ったの」

 

いつもは静かに穏やかにクラスを見てくれている蛙吹、そんな彼女が突如声を荒げて切島に問いかける。

 

「うぉ、えっと確か「“ステゴロ”で決着つけようなんて」とか言ったような」

「それよ!!なんで火埜ちゃんは“鳥”にならないの?」

 

その言葉に顔を強張らせる1Aクラスメート。

普段の戦闘訓練において攻撃を先読みし、身体を焔の鳥の性質に変化させオーラ化することで攻撃をいなして肉体的ダメージを負うことが皆無な火埜。

そんな火埜が肉体を使用する格闘戦を自ら仕掛けている、この異常事態ともとれる状況にクラス内でも困惑の色が見えていた。

 

「トーリボーイも流石に騙し切れない状態になっちゃぶるね」

「えっと、どういうことですかイワさん?」

 

観客席にて一定の空席地帯を作り上げたイワさんの横(姉弟揃って父親の隣を拒否した)に座り、その呟きに反応したのは教員でもある冬美だった。

 

「トーリボーイの個性は焔の鳥に転化する際に膨大なエネルギーを必要とするちゃぶる。無論、人間の姿に戻る際も同じ量のエネルギーが必要になるっちゃぶるけど、普段は補給を欠かさないからそんなんこと起こるはずないっちゃぶる。でも、今回はどの試合もその時出せる全力で挑んで、何回かあの子も動けなくなってたことを顧みて流石にエネルギー切れが近いんじゃないかしら」

「つまり、火埜くんはこの試合、開始当初から無理していたということですか」

 

フィールドの火埜に明らかな変化が現れたのは、発光してから2分経過したあたりからだった。発光は弱まり、爆豪からの攻撃を避けるのではなく防御するようになり、時間が経過するとともに動きに鈍さが出てきていた。

 

「かっ、翔織はやっぱスタミナ無いな」

 

それはそれは凶悪な笑みを浮かべ、テンション爆上げで攻撃を続ける爆豪。

 

「一応“今出せる”全力である事に違いはないんだけど、勝己は不完全燃焼かな」

 

発光が収まり、フィールドの端で膝をつき息も絶え絶えな火埜

そんな火埜に対して一切の油断も見せない中央にてたたずむ爆豪。

その顔にはあからさまな不満の色が浮かんでいる一方でどこか満足げな雰囲気を全身から漂わせている。

 

「はん、お前が俺に勝とうなんざ3年は早いんだよヴォーケ」

「それじゃ、本当に最後に、轟のために削れるだけ削らさせてもらうよ」

 

そう呟くと両手にオレンジの焔を灯した火埜。

その鮮やかなオレンジ色を見た爆豪はより凶悪な笑みを浮かべる。

半身をずらし、焔を灯した左手を後ろに引くと右手に更に焔を集中させていった。

 

「セメントス先生には申し訳ないけど、勝己とは最後までやり合いたいから、今のオレの正真正銘最高威力の技だ」

「はん、いいぜ。“それ”に対抗するためにオレの個性も一段階進化してんだ」

 

互いに不敵に笑い、互いが気になることを言っているが今の2人には目の前の存在しか認識していなかった。

 

「「くらえ」」

 

火埜の右手から鮮やかなオレンジの焔が放射される。

よくよく見ると同出力だと思われる焔が左手からも放出され、それが支えとなり右手の焔がより出力を上げていく。

爆豪の両手に赤みがかったオレンジ色の球体の焔が灯された。

火埜の右手から放射された焔をその両手の焔で受け止めるように前に突き出す爆豪。

互いの焔が拮抗し、爆豪が徐々に押されていく。

そんな熱い勝負の中、不意に火埜の焔が途切れた。

それと同時に誰かが倒れる音がした。

音の発生源、火埜の状態を確かめるためにミッドナイトが近づいていく。

一方の爆豪も片膝をつき、彼には珍しく息も絶え絶えにしながら、それでも火埜から視線を逸らすようなことはなかった。

確認を終えたミッドナイトが徐に立ち上がると両手を頭上で交差させ大きなバツ印を作る。

 

「火埜君、気絶を確認。戦闘続行不可能とみなし勝者爆豪君」

 

周囲からまばらに、そして徐々に大きくなっていく拍手の中、爆豪はやりきったという顔をし、火埜は笑顔で気絶していた。

 

『おいおいおいおいおいおいおいおい、爆豪の奴の“あれ”なんでゅあ!!』

『爆豪曰く敵に対する憤怒の象徴、奥の手中の奥の手“憤怒の焔(ヴォルカニカ)”というらしい。火埜と訓練し続けたある日出来るようになったらしいが出力も安定しないし、集中しないと出来ないから普段はまだ練習中とのことだ』

『まるで、火埜の個性のようだな』

 

爆豪の隠し技にどよめく会場。

それを得意気に見ている存在がいた。

 

「おうおう、勝己の奴やっぱ使ったか」

「そうですね、火埜君のあの技に対抗できる唯一の力ですから」

 

そこには私服に着替えたグラントリノとサー・ナイトアイが立っていた。

 

「しかし、彼の個性はあくまで“爆破”のはず。あの力はその範疇から超えています」

「未だ誰も完全に解き明かせていない“個性(この力)”。もしかしたらあれも一つの可能性なのかもしれんな」

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