火埜翔織という異物によるHEROACADEMYだ 作:完全怠惰宣言
雄英高校最寄り駅。
そこでは毎年の風物詩の如く1年生の生徒で溢れかえっていた。
彼等彼女等は、これから現役且最前線で働く“プロ”ヒーローのもとに数日間の職場体験に出掛けるのである。
様々な表情をする生徒達を、長年改札の良く見える場所に店を構える団子屋の老夫婦は朗らかに眺めていた。
「えぇっ、今日から1週間の職場体験が始まるわけだが、お前ら先方には絶対に迷惑かけるなよ」
「ハイッ!!」
いつものやぼったい不審者スタイルではなく、髪を結いスーツに袖を通しシャキッとした立ち姿の相澤が
そんな彼の激励に答えるように元気良く返事をする1ーA生徒達。
「まぁ、お前達ならそこまで大事になるような迷惑を掛けないと思うが、先方も忙しい中対応してくれていらっしゃることを忘れるなよ」
「ハイッ!!」
「それじゃ、各員コスも持ったな?それを着ると言うことは、世間からすればお前らもヒーローだ。半端なことしてくるんじゃないぞ。時間も時間だそれじゃ行ってこい」
その言葉を合図に散けていく生徒達。
そんな中、身動き一つせずその場に留まる生徒が2人いた。
「ん、どうしたんだ緑谷と火埜の奴動こうとしねえぞ」
「なんでも、インターンに行ってる先輩がいるらしくて一緒に行くことになっているらしい」
そんな2人をめざとく見つけた峰田に事前に話を聞いていた尾白が答える。
そんな最中、峰田の耳がどこからともなく聞こえる美少女の声を捉えた。
「よろしくお願いします、ミリオ先輩」
「うん、いつも通り笑顔で行こうか緑谷ちゃん」
金髪に薄めの顔をした大男が緑谷の荷物を持ち、一緒に行こうとしている姿。
そこに注視しがちだったが、ミネタアイはまったく別の光景を捉えていた。
「お~ね~え~さ~ま!!スリスリ」
「うん、皆見てるからね。落ち着こうね“ねじれちゃん”」
火埜とほぼ同じ身長と思われる美少女が嬉しそうに火埜に抱きつき、公衆の面前にもかかわらず互いの頬を摺り合せている姿であった。
「うぐぅ、ひ、火埜の裏切り者!!」
この言葉を最後に峰田は職場体験先に至るまでの記憶を消失することになるのだが、些細なことである。
「いらっしゃい“若”、ようこそリューキュウ事務所へ」
負ぶさったねじれをそのままに、ねじれナビで目的地へとやってきた火埜。
出迎えたのは数ヶ月前、キャマバッカ事務所を退職し新事務所に移った嘗ての顔見知りであった。
「お久しぶりですニャーゴさん。これ皆さんで食べてください」
「あら、シャルモンのフルーツタルトじゃない」
「開業祝いも兼ねてますから。で、“所長”は」
ニャンコロヒーロー・ニャーゴは嬉しそうにタルトを受け取るとマスクを外した素顔を隠そうとせず、明らかに血色の悪い顔を崩して火埜に泣きついた。
「若の推察通りよ、お願い助けて」
「だから、せめて事務員は貸し出して貰いなっていったのに。はぁ~、助っ人に来たよ
腰に猫耳美人、背中に天然系美少女を貼り付けたまま勝手知ったるなんとやらで所長室を強めに開け放つ火埜。
そこには。
「え!?うそなんでもういるの?」
「若が来てくれた!これで今日は定時で帰れる」
「わかだぁ。ひさしぶりにべっどでねれる」
目の下に隈を作り、ヨレヨレのジャージ姿の女性3人が高く積まれた書類と格闘していた。
「イワさんから、立ち上げて3年目ならそろそろ事務所関連の必要書類が一気に押し寄せてくるだろうから手伝いに行ってあげてだって。てか竜ねぇも
「わぁー、地獄絵図」
流石の波動も引くほどの地獄絵図、それにあきれたような顔をしている火埜はさらに問いただす。
「で、この現状を作り出した張本人は今ど「たっだいまぁー!!やっぱ敵を蹴っ飛ばすのは気持ちいいなぁ!!」
火埜の言葉に被せるように所長室の窓を勢いよく開け放ち女性が1人飛び込んできた。
「でさリューキュウ、若はまだ来てないよな?この現状バレたらお説教じゃすまないよ」
「もう来てるわよ」
そう言ってリューキュウが指さした方に女性は固まった顔を油の切れたロボットのようにぎこちなく向ける。
「はぁい、ミル姉。それじゃ、お説教の時間だよこの大馬鹿兎」
「うぎゃー、説教はいやー!!と言うわけでパトロールに「行かせるか!!」
青筋を浮かべた凶悪な笑顔の火埜を視認した女性、ラビットヒーロー・ミルコは全速力で逃げだそうとするが先読みにしていた火埜の有幻覚の鎖が部屋中から伸びてきて空中で拘束されてしまった。
「それじゃ、イワさんのお説教準備出来てるから頑張ってねミル姉」
「いやー、イワママ許してぇ」
『許せるわけないっちゃぶるよ、こんのオバカちん!!』
そこから2時間、所長室ではランカーヒーローがテレビ電話でお説教されるという珍しい光景があるのだった。
「職場体験、ウチを選んでくれてありがとう」
応接室にてヒロコスに着替えたリューキュウと3人のサイドキック、そしてねじれはお土産にと持ってこられた洋梨のフルーツタルトとメロンのフルーツタルトに舌鼓をうちながら火埜と職場体験の段取りを話していた。
「いえいえ、まぁ1週間毎日毎日、
「・・・・!?ね~じ~れ~?」
リューキュウが顔を向けた方では、美味しそうに火埜が淹れた紅茶を飲みながら満面の笑みでご満悦な波動の姿があった。
「だってぇ、おねえさまと一緒に職場体験したかったんだもの」
顔を赤く染め、照れたように身体をくねらせる波動の反応を見て驚愕の色を表すリューキュウ事務所のメンツ。
「え、この子誰?」
「ね、ねじれちゃん大丈夫?風邪?調子悪いの?」
「あぁ、とうとう疲れが頭にも・・・・」
そんな異常事態とも取れる状況にサイドキック3人が慌てふためいている中。
「おっしゃぁぁぁぁぁぁ、あたしのキャロットケーキドコ!!」
会議室代わりに使用されていた一室からミルコが姿を現した。
「まぁ、99%終わった書類に目を通してサインするだけだからね。それでも2時間、ミル姉にしたら頑張った方か」
そう言いながら、朱色のケーキ1ホールとアイスティをミルコの前に出す火埜。
「あぁ、うんめぇ!!てか若が来たなら早速蹴り合おうぜ」
「あのね、あなた当然のようにいるけどチームアップは
そんなプロヒーロー2人の言い合いをバックに火埜は慣れた手つきで休憩室の掃除をしていた。
「まぁ、見慣れているからかもしれないけど。せめて下着は片付けとこうよ、一応オレ男だよ」
「いや、若はアタシらの死屍累々な姿なんて見慣れてるでしょ?なんせ日本で一番厳しい修業先で有名なキャマバッカ事務所に出入りしてたんだから」
「それより、久しぶりに若の手料理食べたい」
「いや、摸苽あんた何言ってんの!?」
「あたしもおねえさまのご飯食べたい」
多種多様な美人からの懇願、少し困惑したような笑顔を浮かべた火埜の答えは。
「大人5人胃に優しい物が良いと思ってお鍋にしました。まぁ、現職ヒーローの仕事ぶりに関しては明日以降と言うことで」
「あぁ、この感じイワさんのところにお世話になってた頃の感じね」
「デスマーチ後は必ず若の胃に優しいお鍋だったものね」
「おねえさま、〆はやっぱり」
「うどんだね」
こうして、火埜の職場体験1日目は過ぎ去ったのだった。
寝鼓 音胡(ねこ ねこ)
ヒーロー名「ニャンコロヒーロー・ニャーゴ」。
リューキュウ事務所所属サイドキック。
リューキュウと同期で年齢は2個上の元キャマバッカ事務所所属ヒーロー。
リューキュウ事務所の頼られたいお姉さん。
独身仲間だったミッドナイトに彼氏が出来てちょっと焦っているが、同じ業界の人間は一寸勘弁と思っている。
個性:柔軟
触れた物の硬度を自在に柔らかく出来る。
ただし、動植物に効果は無い。
音無 踏恵(おとなし ふみえ)
ヒーロー名「カゲヌイヒーロー・カゲオニ」。
リューキュウ事務所所属サイドキック。
元キャマバッカ事務所所属ヒーローで結婚を機に引退するが旦那(プロヒーロー)が大怪我で動けなくなってしまい、仕方なくサイドキックとして復帰。
キャマバッカ事務所に所属していた際リューキュウがサイドキックであった。
定時上がりを条件にしていたが、なんやかんや世話のかかる可愛い妹分がほっとけない。
個性:影鬼
自身が踏んだ、又は刃物を突きつけた影の持ち主の動きを束縛することが出来る。
踏恵の身長よりも大きい存在を縛り付ける事は出来ない。
富和 摸苽(ふわ もこ)
ヒーロー名「モコモコヒーロー・フワフワシープ」。
リューキュウ事務所所属サイドキック。
学生時代にキャマバッカ事務所にインターンに来ていた関係でリューキュウに声を掛けられリューキュウ事務所に就職する。
モコモコした髪の毛は天パーと言うよりもデフォルメされた羊のようなモコモコ感がある。
容姿・振る舞い・趣味趣向から美少女と勘違いされるが、生物としての性別は男。
俗に言う男の娘。
ストレスが天元突破するとドスの利いた声に変わる。
某4人組ヒーローに奥さんが居る(夫婦別姓)。
個性:フワフワモコモコ
両手を叩くことでピンクの綿毛のような物質を生み出すことが出来る。
綿毛には癒やし効果のある香りがついており、寝心地抜群。
大きさも20cm~15mまで調整可能。
ただし、あまりに大きくし過ぎると香りが安っぽい消臭剤みたいな香りになってしまう。