火埜翔織という異物によるHEROACADEMYだ 作:完全怠惰宣言
一人の男の話をしよう。
男はどこにでも居る普通の存在だった。
子供の頃は友人を作り、どちらかというと遊んでばかりで勉強はからっきしだった。
そんな男も大人になり、社会に出て仕事をするようになった。
必死に働き、幼き日に描いた理想からかけ離れた人生を送ろうとも満足しながら生きていた。
理不尽にも思えることもあった。
そんな中でも必死に生きてきた。
そんなある日、唐突にその生涯を終えることになる。
切欠は誰にもわからなかった、目の前で鉄パイプのような者を振り回す存在。
男の目の前には恐怖で泣き出し立ちすくむ子供が居た。
丁度、男の2人目の子供と同じ年の頃だろう。
子供に振るわれる凶器を前に気が付いたら男は子供をかばうようにその凶器を受けてしまっていた。
混濁し消え行く意識の中、凶器を振るっていた男は周囲の人間に取り押さえられた。
男はそこで意識を失った。
一人の少年の話をしよう。
少年は両親にも恵まれ、幼馴染みとも呼べる友人と共に過ごしていた。
ある日、少年は誘拐された。
両親により捕縛された犯罪者が逃げ出し少年を捕まえ逃げていたのであった。
そんな中、少年は気が付くと液体の中にいた。
薄れている意識の中、両親が大男と対峙していた。
大男は笑みを浮かべると少年に向けて槍のように尖った指を撃ちだした。
少年を守るように両親は盾となった。
その時、少年は不思議な感覚に陥る、両親の心とそれ以外の複数の心が流れ込んでくる。
そんな感覚に陥っていた。
数秒ごとにその流れ込んできた何かは少年の中で混ざり合い、調和し少年の中で1つとなった。
そして、少年の心を守るように一際大きな何かが布のように被さった。
その後、大男に対して別の大男が殴りかかっていく姿を最後に、少年は再び意識を失ってしまう。
少年が意識を取り戻した後に待っていたのは大好きな両親では無く、世間の好奇の目であった。
連日、心ない言葉が少年を傷つけていく。
両親への謂れのない誹謗中傷、少年自身に対する悪意の塊のような何か。
そんな生活の中、一人の男性記者が少年の病室に乗り込んできた。
病院関係者が居らず、たまたま少年の関係者も席を外していた時だった。
その男が興奮気味にまくし立てるような言葉は少年には理解できなかった。
ただただ、目の前の男に恐怖を抱いていた少年の疲弊しきった心は壊れたのだった。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
少年の口から悲鳴に似た何かが発せられるのと同時に、少年から黒い焔があふれ出した。
そして、数秒と立たないうちに7色の焔が黒い焔を覆い尽くし、オレンジの焔と****の焔が全ての焔を少年に押し戻した。
侵入してきた記者は少年の暴発した力に巻き込まれ重傷を負ってしまい、以降自力での行動すら困難になってしまったが誰も少年をとがめることはなかった。
これは“火埜翔織”が心の奥底に押し込めた記憶であり、“日野透吏”がその意識を呼び起こされた瞬間であった。