火埜翔織という異物によるHEROACADEMYだ   作:完全怠惰宣言

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「うっす、ご心配おかけしました?」

 

職場体験が終了して1週間、強制検査入院をさせられていた火埜の復帰一言目は無駄に軽かった。

 

「おう、おかえり。お前なにかイベントあるごとに入院してるけどそう言う星の下に生まれたの?」

「そんなこと無いと思いたいけど」

 

互いを牽制し合っている一部とは関係なくさらりと話しかけてくる瀬呂。

こういう普段と変わらないスタンスでいてくれる存在というのは有り難く、一足先に復帰した緑谷・轟・飯田もその恩恵を受けたようであった。

 

「けろけろ、はい火埜ちゃんコレ休んでいた間のノートのコピーよ」

「蛙吹さんは理数系を、オレは文系を纏めといたよ」

 

そして流れるようにクラス内人徳者ランキングの高そうな蛙吹と尾白が休んでいた間のノートのコピーを渡してきてくれた。

 

「ありがと2人とも。いやぁのべ2週間も抜けてたらマジでヤバいからね」

「けろけろ、火埜ちゃんは頑張ってるけど中々結果に現れないものね」

「いや、本当にあれだけやってクラスでも平均ちょっと上の点数って、火埜呪われてない」

 

そんな和気藹々と会話の弾む中、教室の大きな扉が開かれる。

 

「おう、おはブフォッ!」

 

そこに居た人物、爆豪を目視した瞬間、挨拶すらキャンセルさせられる笑撃を受けたのは上鳴だったが、クラス全員がその攻撃を受けてしまっていた。

 

「だぁっ、ひゃひゃひゃひゃひゃ!爆豪まだ“その頭”なのか?」

 

峰田の馬鹿笑いの理由、それは。

 

「アッハハハハハハハ! マジ最高だぜ爆豪!」

「・・・・笑ってんじゃねぇぞコラァ!!

 クセついちまって洗っても直んねえんだ。

 オイ笑うなブッ殺すぞ」

「ブハハハハハハハハハハ! やってみろよ8:2坊や!」

 

それは芸術的なまでに見事に極った美しい8対2に分けられたヘアスタイルの爆豪の髪型だった。

あまりにも不釣り合いなその姿に、瀬呂と切島は涙を浮かべるほどに笑い転げていた。

 

「だ、ダメだ全然馴れねぇ。壊滅的に似合わねぇ」

「うっせーぞ塩顔っ!」

「お、やっといつもの頭に戻った」

「どーいう仕組みだ! アハハハハハハハハ!」

「笑うなっつってんだろうがクソ髪コラァッ!」

 

笑いすぎてまともに動けない切島瀬呂の2人が捕らえられている間にも、続々と生徒は教室へとやって来る。

 

「あーお腹痛い。で、麗日は何があったの?」

 

涙目になりながらも火埜の言葉に、全員の視線がそちらへ向けられる。 そこには、この1週間でお馴染みとなった何かの武道の型のような何か、といっても放たれる一撃一撃に凶悪な回転が加わった一撃を中空に放つ麗日の姿があった。

 

「充実した職場体験だったんよ」

 

コホーと息を吐くその姿に見慣れていない火埜を除く全員が、そっと視界からその姿を外す。

 

「確か、麗日はガンヘッドの所に行ってたんだよね?」

「まぁ、そうなんだけど流石にあれは1週間で感化されすぎじゃないか?」

「せ、成長だよ・・・・多分、きっと」

 

揃って詳しい言及を避けたのはご愛嬌だ。

 

「皆!!そろそろ相澤先生がお見えになるぞ!!席に着くんだ!!」

 

飯田のその声にいつもの日常を感じる1A生徒達であった。

 

「あぁ、そろそろ夏休みも近いが、もちろんお前らが1ヶ月も休める道理は無い」

 

教壇に立つ相澤の言葉に、どよめきが起きる。

 

「夏休み、林間合宿やるぞ」

 

休みがなくなる、などと言われれば普通の学生なら落胆するのかもしれないが、そこはヒーロー科に籍をおくヒーローの卵。

誰もが自身を高める機会を喜んでいた。

 

G(学校)P(ぽいこと)K(キターーーーー)!!!」

「肝試そうよぉ!」

「風呂!」

「花火、打ち上げ花火もしようよ!」

「風呂ぉっ!」

「林間学校って言ったらカレーだろ」

「フロ!」

「枕投げとかしようよ!!」

「OHURO!!!!」

「・・・・・、峰田黙れ」

「はい」

 

己の欲望を声高に叫ぶ峰田、相澤からストップがかけられた。

ついでに、他の生徒たちも相澤の眼光に圧されて口を塞ぐ。

 

「ただし、その前に行われる期末テストで赤点だった奴。

 そいつは、学校で補習だ」

 

相澤はそう言うと、とてもサドサドしい笑顔で可愛い生徒達を見回したのであった。

そんな顛末が朝のホームルームで繰り広げられた教室では。

 

「「まったく勉強してねぇ!!!」」

 

悲壮感漂う上鳴と、なぜか笑顔の芦戸が異口同音に叫んだ声が響きわたっていた。

中間テストクラス内成績は20人中、芦戸が19位、上鳴が20位であった。

2人の名誉のために補足しておくと、あくまでA組の中での順位であり、学年共通科目での学年順位であれば2人とも上位に名前が挙がる程には学力は高い。

ただ、ヒーロー科の授業が途轍もなく速く、ヒーロー科専攻科目といういままで経験してこなかった科目が追加された結果、試験範囲が異常に広くなってしまうのであった。

 

「体育祭やら職場体験やらでまったく勉強してねぇよ!!」

「いやぁ、まいったねぇ、あっはっは!」

「ん?芦戸、随分と笑顔だけど」

「なんかもぉさぁ、笑うしかないよね!!ふぇーん、ひのぉ」

 

放課後、屋上にてランチラッシュが最近提供するようになったクッキー等のお菓子類を持ちよった1A生徒達。

そんな中、話は期末テストの話題になっていった。

笑顔から一転して悲しげな表情になった芦戸は、癒やしを求めて火埜に抱きつく。

峰田の顔が色々とマズい感じになるも、誰もが「いつものこと」とスルーしていた。

 

「皆さん、宜しければ週末は我が家でお勉強会をなさりませんか?」

「鬼畜軍師と鬼軍曹よりヤオモモがいい!」

「「いい度胸だな上鳴!!」」

「私もお願いしますヤオモモ!」

 

とても良い笑顔で下位ツートップに声をかけたのは、学年1位の八百万。

まさに救いの女神と、2人は飛びついた。

 

「ウチもいいかな? 二次関数、応用で躓いてて」

「わりい、俺も!誰か、古文の“ここ”わかる?」

「俺もいいかな」

 

そこに続くのは、耳郎、瀬呂、尾白の3人。

頼られたのが嬉しいのか、八百万の表情がパッと明るくなる。

そして、八百万の視線はズルリと湿度を持って火埜に向く。

中間テストの結果はAクラス内では7位であった火埜。

個性学やヒーロー情報学といった分野や文系教科で3位~5位という位置についていたのだが理数系が伸び悩んだ結果である。

その結果を知るからこそ八百万は視線を向けた。

あわよくばお泊まり個人授業をなどと考えているのだが、普段の笑顔を張り付けた彼女からその思考を読み取ることはできなかった。

翌日、午前中の授業カリキュラムを終えた1A全生徒は食堂へ向かっていた。

この2人を除いて。

 

「ちっ、陰湿教師が!!」

「いやまぁ、職場体験のレポート5枚で済んで良かったじゃないか」

 

1週間の検査入院に対する罰則という名の心配かけ過ぎた事への八つ当り罰則を相澤から受けた火埜が文句を口にする。

その横で付き添いで来てくれた障子は馴れ始めたこの駄々っ子のようなクラスメートに苦笑を漏らしながら頭をポンポンと軽く叩いていた。

 

「ぉーーーーーーぇーーーーーーーーーぁーーーーー」

 

そんな2人の後ろから誰かの声が聞こえてきた。

しかし、聞こえる声は1人なのだが足音は複数人聞こえてくる。

 

「おーーーねーーーえーーーさーーーまーーー!!」

 

声に振り向く火埜と障子。

そこにはこれまたお馴染みになってきた満面の笑みを浮かべた波動とそんな彼女を必死に追いかける通形と天喰、元気で可愛らしい波動に目をキラキラさせた甲矢がいた。

 

「はぎゅう!」

「おうっふ、お久しぶりです皆さん」

「うんうん、入院していたときいたけど元気そうで何よりだ!」

「ひ、火埜くん大丈夫かい?」

「はぁ~、最近火埜君とセットの時は絶妙に精神年齢が幼くなるねじれが可愛すぎて私どうにかなりそう」

「先輩方も変わらない御様子で」

 

一方、食堂では。

 

「はっはははは、みてなよA組!!本当に優秀なのは僕らB組なのだ!!」

「・・・、フンッ!!」

「オゲッ」

 

毎度のごとくA組に絡んだヤカラ(物間)をイワさん直伝の意識を刈り取る手刀にて沈めた拳藤が少し怒り気味でいた。

 

「本当にごめんなA組、コイツがB組の総意と思わないでくれ。

 後、八百万は職場体験の時はありがとな」

「あら、ご心配されなくても放課後に切磋琢磨する仲の学友を疑うことなんてありませんわ

 それと、職場体験の件はお互い様ですわ」

 

ウワバミに1週間職場体験に行った2人は当初、タレントのようなことしかさせられなかったが、それがいかにヒーローという存在が周囲から見られ続ける職業なのかということを教えられ、品行方正でいる大変さを学んだのだった。

 

「しかし、物間の言うとっておきの試験内容って一体何なんだ?」

「まぁ、例年通りならロボとの戦闘試験が演習試験になるらしいな」

 

飯田の疑問に答えたのは遅れてきた火埜であった。

3年生達は途中で各々のインターン先からの連絡を受けて職員室に向かったのであった。

なお、障子の増やせるだけ増やした腕には自身の昼食であるお好み焼き(海鮮ミックス)と火埜の本日の昼食である食パン10斤使ったフレンチトーストがあった。

 

「火埜くーん」

 

既に体に染み付いた習性からか、抱きついてきた葉隠をフワリと抱えると火埜は空いていた机1つを占領してフレンチトーストを攻略し始めた。

 

「ついさっき、3年生から聞いたんだが“例年”であれば入試試験の際のロボを倒すタイムアタックらしい」

「マジで!?」

「イヤッホウ! ロボならブッパで楽勝、楽勝!」

 

学科に不安しかなかった上鳴と芦戸は両手でハイタッチしながら喜びを露にしていた。

 

「まぁ、“例年”通りいけばだけどね」

 

葉隠を背中に抱きつかれた状態ながら既に10斤あったフレンチトーストを完食し八百万が特別許可とって淹れた紅茶を楽しみながらしんみりと漏れた火埜の一言。

 

「翔織よぉ、いやに“例年”て強調するな」

「勝己さぁ、USJの襲撃や職場体験で全員が何かしら敵と戦闘になる事態に巻き込まれたんでしょ。

それこそ、例年ではあり得ないこの状況。あの陰湿教師がなにもしない訳ないだろう」

 

その言葉にピタと、上鳴と芦戸の動きが止まる。

両腕は喜びを表して高々とハイタッチしたまま上がっているのに、表情だけが絶望に染まっている。

その顔からは、「マジで?」「嘘だよね」と言っているのが丸分かりであった。

 

「けろ、そうなるとより実戦的な対敵を想定した内容ということになってくるんじゃないかしら。それも、相澤先生達が絡んでくるのなら私達の長所短所を把握して相性の悪い相手をぶつけてくる可能性があると言うことね」

「確かに、正直考えすぎじゃねぇかとは言えないよな。個性犯罪の増加に加えて、ステインの事件に感化された敵が出てくることも考えられるし、何よりここは雄英だしな」

「そこも含めてプルスウルトラしろ、ということか」

 

蛙吹、砂藤、常闇の考えを聞き顔色を青くする上鳴と芦戸。

 

「ちくしょう、やること多すぎじゃね!?」

「普通に授業受けていれば、赤点は出ねえだろ」

「とーどーろーきー、言葉には気をつけろよぉ!! 」

「もうむりぃ、演習試験もヤバイよぉ!」

「お前らは個性の制御、大変そうだしな」

 

峰田の言葉通り、上鳴も芦戸も、いくら調整が出きるようになってきたと言っても出力に気を付けなければ相手に重症を負わせてしまいかねず、下手をすれば相手の命を奪ってしまう個性。

 

「ロボでも人でも、ブッ飛ばすのは同じだろ、アホか」

「アホとは何だぁ!アホとは」

「うるせぇ! 調整なんざ勝手にできるもんだろ!」

 

鬼軍曹と言われたことを根に持っているのか、騒ぎをうっとおしそうにした爆豪の目は、やる気に満ちていた。

 

「その為の準備期間だろうが、学科も演習も出きることやるだけやってぶつかんぞ!ぜ、全員で林間学校行くなら準備だって全員でやるぞ!週末だけじゃ足んねぇから、今日から放課後訓練は期末テスト対策にすんぞ!!」

 

デレ豪だ、あれがツンデレかと弄られる爆豪であったが、これよりやる気に火をつけたA組生徒達。

彼らは試験へと向けて準備を進めていくのであった。

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