火埜翔織という異物によるHEROACADEMYだ 作:完全怠惰宣言
終了を告げるチャイムの音が校内に鳴り響く。
「そこまで。全員、テストから手を離して回収するのを待て」
相澤が最後の教科となる総合個性学のテスト用紙を回収し教室から出て行く。
相澤が扉を閉めるのと同時に机に突っ伏す音が2カ所から響いた。
「「お、終わったぁぁぁぁぁぁ((色々な意味で))」」
芦戸と上鳴は涙目になりながらも、死力を尽くした自分を讃えるように声を絞り出した。
「終わってねえわアホども、まだ実技テストが残ってんだろうが」
「現実に引き戻すな爆豪!!せめて30分は自分を褒めたいんだよ」
リアリスト(某少女に関してはロマンティスト)の爆豪によって現実に引き戻された上鳴が声を荒げる。
なお、芦戸は癒やしを求めてフラフラと火埜に近づき抱っこを請いギュッと抱きしめられ癒やされていた。
「だったら、上鳴は嫁さんを労らないとな。時間無いのにお前に時間割いてギリギリまで付き合ってくれたんだから」
「確かに、上鳴はさっさとB組に行って奥さんを労ってこい」
芦戸を抱きしめて頭を撫でながらなんとなしに発した火埜の言葉。
それに同調するように真顔の瀬呂の声が上鳴の耳に届く。
「嫁さん扱いすんなや、まだ手は出してないんだぞ」
「静粛に!!まだ、テストは終わってないぞ!!明日に向けて万全の体調で望むためにも今日はまっすぐに帰ろう!!」
皆が浮わつく中、冷静でいようとする飯田の声がA組全員の思考を冷やしていく。
そして、この日はそのまま帰宅となった。
「HAHAHAHAHAHA 、遂に雌雄を決するときが来たようだねA組!!」
学科テスト後、何故か1週間の期間後に開催されることとなった実技テスト。
1年AB組全員がヒーローコスチュームで体育館へと集められていた。
物間のお決まりの煽りが木霊する中、合同訓練を行っている組は嫌な予感に苛まれていたのであった。
「やーやーやー、皆お待たせしたのさ」
体育館の壇上、そこに突如として現れたのは校長の根津であった。
後ろには担任の相澤とブラッドキングを控えさせ何かを発表しますよと言っているようなものであった。
「もう気がついている子達もいるようだけど、例年であれば実技テストはこちらで用意したロボットを相手にした戦闘テストにしようと思っていたんだけど」
「ん?」
そんな根津の言葉に1人疑問符を浮かべる物間。
彼以外のB組メンバーは天を仰いでいる者こそ居れど大多数が目をぎらつかせやる気に満ちていた。
「今回は僕らVs君ら生徒で試験なのさ」
「そして、お前らが集められている理由だが、お前らの自己分析能力と情報収集能力、結束力を顧みて1年ヒーロー科+αでくじ引きをしてのコンビ試験となった」
相澤の言葉にA組メンバーだけは「でしょうね」みたいな顔をしている。
自分たちの思考を読み切った生徒たちに最近蓋と箍が外れて漏れ出している父性がひょっこり顔を出しそうになるが顔の筋肉を引き締めることで耐える相澤。
「質問です、その“+α”とは」
「ふむ、今回普通科でありながら自ら望んで総合個性学をヒーロー科の範囲で望んだ彼らだ」
スナイプの指さす方から歩いてくる人影。
「紹介するのさ、今回の
全身を黒い軽装甲に覆われ、口元を金属のマスクで覆い漆黒の捕縛布をマフラーのように纏う心操人使。
騎士の鎧のような出で立ちで各所にレンズのような物体を取り付けたコスチュームを着た青山優雅。
2人が堂々と歩いて来たのであった。
その後サクッと行われたくじ引き、くじで書かれた場所に向かう心操は雄英が所有する森林フィールドの中を歩いていた。
「・・・・・縁があるね、ヒトっさん」
「オレとしては大助かりだ、お前がパートナーで嬉しいよ火埜」
目的地に着いた彼の目の前にはヘッドホンで音楽を聴きながら岩の上で目をつぶっていた火埜がいた。
「相手、誰だろう」
「1番の不安は根津校長が明言しなかったことなんだよな」
サングラスの奥にある瞳に不安の色を色濃くし嫌な予感に身体を硬くする火埜。
未だかつて見たこと無い限定相棒の姿に心操は驚きを隠せずにいた。
「何をだ?オレ達と教師陣が対決して相手を捕まえるか生徒のどちらかもしくは両方がゲートを通れればオレ達は合格だろ?」
「いや、根津校長は一言も“教師”とは明言していないんだよね」
そんな火埜の不安の発露に呼応するようにどこからともなく地響きを立てて誰かが走ってくる音が聞こえてきた。
「おいおいおいおいおいおいおい、“
「ん?だれのことw「ヒーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーハーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
突如、森の奥から爆走してきた巨大な二頭身の影に火埜はゲンナリとし、心操は驚き目を丸くしていた。
「久しぶりね翔織ボーイアンデュ心操ボーイ!!」
突如、森の奥から爆走してきた巨大な二頭身の影に火埜はゲンナリとし、心操は驚き目を丸くしていた。
「や、イワさん今朝ぶり」
「相手プロヒーローかよ!!」
「さぁ、翔織ボーイアンデュ心操ボーイ!!私を倒してご覧なさい!!」
その光景を別室で見ている者たちが存在していた。
「イヤイヤイヤイヤイヤ、相手プロとかありかよ」
「そりゃ、確かに校長先生一言も相手が教師なんて言ってないけどさあ!!」
「まぁ、今年は
そこには実技試験を終えたAB組それも合格を言い渡されたペアが揃っていた。
「でも、両手両脚に“自分の体重の四分の一の錘”を付けていればプロヒーローと言っても」
『DEATH・WINK!!』
画面の中でイワンクフがまばたきをした。
そうそれはただのまばたきだった。
ただのまばたきで木々をへし折っていく爆風のような風圧を放つ。
繰り返すが、“個性”の類ですら無いただのまばたきである。
「でたぁ!!イワさんの必殺技。ただのまばたき“DEATH WINK”!」
「あの人に四肢に錘とか言うハンデ意味ないよな」
「おい連射されてんぞ、火埜の奴イワさんが目開いた瞬間に両腕翼に転化して高速飛行で逃げてるし、脚に心操を抱きつかせて連れて行ってるようだけどマジで洒落になってないな」
教師でもない相手は対策のしようが無いと言いたいところだが火埜にとって義男母さんなイワンクフはデータが揃いに揃っているので対策を立てようと思えば立てれる存在と認識された。
しかし、実際は違っていた。
「ヒトっさん、試験落ちたわゴメン」
「おい、諦めんな!!いつもの不敵な笑顔はどうした!!マジで確りしろ!!」
「いや、むりだよ。見たでしょ“あれ”。こせいもさようしないただのまばたきであのいりょくだよ」
「くっそ、諦めの極致に達してやがる」
「あれでこせいつかわれた・・ら・・・・ん?」
突如何かを思いついたように言葉が詰まる火埜。
そして、そこに浮かんでいたのは悪戯を思いついた悪ガキの笑みであった。
「んふぅ、翔織ボーイの性格からしてそろそろ攻めに転じてくるでしょうけどそうはいかなっしブル」
森林群を見渡せる丘の上、ゲートの前に立つイワンクフ。
徐に広げられた両手の指は注射器を思い起こす形に変化していた。
「エンポリオ・顔面成長ホルモン!!」
そのかけ声と共に自分の顔にホルモンを注射したイワンクフ。
数秒と経たずに、ただでさえデカい頭部を更に巨大化させていく。
「HELL・WINK!!」
顔面成長ホルモンによって巨大化した顔面から放たれるDEATH WINK強化版。
威力・攻撃範囲が強化されたそれはさらに広範囲の木々を一掃する。
「おかしいわね、ここまでやって出てこないなんて。ならヴァターシも、もうちょっと本気でいくわよぉ」
すると突如飛び上がったイワンクフ、その身体が微振動を始めた。
「GANMEN・残像!!」
身体の微振動は止まるが顔面を高速で移動させ、残像を作り出す。
そこには20人を超えるイワンクフ(の濃い顔面)があった。
「
GANMEN・残像からの一連の動きから放たれるDEATH WINK。
攻撃範囲こそ「HELL・WINK」に劣っているがその連射性と制圧能力により瞬く間に木々が吹き飛んでいく。
そして荒れ地と化した平野にあってイワンクフの目の前には。
「勝負だイワさん」
不敵な笑みを浮かべた舌を出した火埜であった。