火埜翔織という異物によるHEROACADEMYだ   作:完全怠惰宣言

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遅れに遅れて申し訳ありません。
そして、話も進んでいません。
敬愛する多くのハーメルン筆者の方々の様に定期更新できるようになりたいです。
あぁ、マジで労働がクソ。


56th

「えぇ、お前ら意外とやるな」

 

本気で驚いた後なのだろうと考察できるレベルな相澤が発した一言はそれだった。

期末試験が終わり、全員が無事に実技試験を突破したA組では芦戸・上鳴両名以外の生徒は自己採点の結果なんとか落ち着いて今日という日を迎えていた。

そんな学科の結果発表当日、1Aクラスではとある異変が起きていた。

 

「とぉりぃ、ん」

「はいはい、次はイチゴ味が良いかな?」

 

幼児退行に近い状態に陥っている芦戸が火埜の膝の上を独占して口を上に向けるひな鳥のような行動を取っていた。

その手に握られたマシュマロの袋(個包装)から火埜が適宜、違う味を探して与えるというルーティーンが生まれそうな光景だったがコレには訳があった。

 

「まさか、途中まで“記載欄を1個ずつずらして書いていた”なんて古典的なお約束をやらかすなんてなぁ」

「みなちゃん、わるくないもん。がんばったもん」

「しかも、苦手なヒーロー情報学なのがまたなんとも言えないな」

「ぜんぶうめたもん、がんばったもん」

「はいはい、三柰は頑張ったな」

 

そう言って自分の胸を枕にしている芦戸の頭、より正確にはふわふわの癖毛を優しく撫でる火埜。

今朝方、なぜか連絡先を知られていた芦戸母から連絡を受けてお家にGOした火埜と切島が見たのは確実に現実逃避に浸っている芦戸三奈がいた。

 

「あ、とぉりだぁ」

「「なにがあったよお前!!」」

 

その結果、芦戸母から説明を受けた切島であったが火埜は芦戸に抱きつかれ、それをあの手この手であやしていたので登校中に切島から説明を受けてクラス全員にメッセージを送り現在に至っている。

なお、上鳴に関しては普通に自己採点がギリギリ赤点がありブツブツと上の空で呟いている。

 

「先生が来られるぞ、芦戸君は・・・・クッ、オレはなんて無力なんだ」

「諦めるな委員長、ほれ三奈着席しな。また後で」

「うにゅ、はぁい」

 

そして、冒頭に戻る。

 

「芦戸は親御さんから連絡来ているから知っていたが、上鳴は大丈夫か」

「いや、やばいかもしれません。さっき塩崎が朝のキス(まだ頬にしかできません)をしても無反応でしたから」

「・・・・・、まぁいいか。兎に角実技は全員合格だったことは既に知っているだろうが学科の結果が出た」

 

その言葉に黙っていた芦戸と上鳴からクフクフと危ない笑いが木霊してきたが全員無視した。

相澤も流石に声を掛けようか迷ったようだが、結果発表をすることにした。

 

「全員、赤点無し。補修なしで林間学校に行くぞ」

「「ふぉーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」

 

相澤の言葉が特効薬になったのか奇声を上げて喜ぶ芦戸と上鳴。

 

「あ、戻ってきた」

「まぁ、今回は頑張った方だもんな」

「オイラ、こればかりは茶化せねぇぞ」

 

なお、今回クラス内順位で10位になった火埜は誰にも知られない様に机の下でガッツポーズしていた。

 

「と、いうわけで今週の日曜日みんなで林間学校の買い物行こうよ」

「いつもの調子で喋ってるけど朝の件、忘れたわけじゃないからねあたしらは」

 

放課後になり教室で少しおしゃべりをしていたA組で芦戸が発案したのはクラス全員でいく林間学校の買い物だった。

 

「皆で買い物、絶対楽しいよ」

「あ、三奈ちゃん勢いで朝の事無かったことにしようとしてる」

「まぁ、流石にそれは許されませんわよ」

皆で買い物、絶対楽しいよ!!

 

朝のやらかしに関して恥ずかしさが勝っている芦戸はある意味必死だった。

 

「それじゃ、ヒトっさんと発目も誘うか。2人とも林間学校同行するらしいし」

「お、心操も期末合格か」

「発目さんは何故に?」

「ヒーロー仮免許取得するんだって、後は色々な個性を観察してサポートアイテム作成のインスピレーションにするんだって」

 

という話があってから数日後。

 

「やって来ましたショッピングモール!!」

「いやぁ、こういうとこ来るとなんかテンション上がるよな!!」

「あなた様、お洋服が素敵ですわ」

「おぉ、塩崎ちゃん今日もフルスロットルだねぇ」

「ノコ、もうB組では日常茶飯事で馴れてきたよ」

「しかし、1人既に死にかけてる奴がいるんだけど、どうしたんだ火埜?」

 

友達との買い物というイベントでテンション上がりまくりなAB組。

しかし、ただ1人ベンチに座り込み青ざめた顔で天井を見上げる火埜がいた。

 

「あぁ、マジか。悪いな、こいつ人酔いするんだわ」

「久しぶりだから私たちも忘れてたけど、とー君実は人の香りが苦手なんだよね」

「まぁ、と言うわけで来て早々で悪いけど少し休む」

「かっちゃんと私が付き添うから皆は先に買い物行ってきて」

 

相手に話かけるヒマさえ与えない幼馴染み2人の息の合った言葉のラッシュに押され3人を置いてそれぞれの買い物に向かうAB組生徒達。

 

「・・・・・、お前無理してこなくても良かったんだぞ」

「やだ、いく」

 

全員が遠く離れたのを見届けた爆豪があきれた顔をしながらも心配そうに買ってきたペットボトルを火埜に手渡す。

一口だけ口を付けると片言だが返事をする火埜。

 

「オバさん達の月命日だったんだもんね。あんまり無理しちゃダメだよ」

「・・・・おう」

「へぇ、本当に弱ってるよ。ウケるわぁ」

 

3人の会話に突如として男の声が割って入ってきた。

声がした方向に顔を向ける爆豪と緑谷。

声のした緑谷の後に立っていたのは夏が間近だというのに真っ黒な厚手のパーカーを着た青年だった。

その時、今まで青ざめていた顔を無理矢理起こし身体を起き上がらせようとした火埜。

その火埜に反応したようにパーカーを着た青年は緑谷の首に小指一本残して片手を宛がう。

 

「やっぱり、気付くか。久しぶりヒノくん」

「おい、翔織。こいつ誰だ」

 

緑谷に知らない、しかも見るからに怪しい存在が近づく。

それだけに飽き足らず、その首を触る変態(と認識した)に対して抗戦モードに突入した爆豪。

そんな爆豪に意識を裂く余裕がないのか目の前の青年に意識を集中させる火埜。

 

「静空に完全に触れてみろ、お前この場でマジで殺すよ“死柄木 弔”」

 

本来押さえ込んでいる殺意が気分の悪さで漏れ出している火埜。

瞬時に状況を判断した爆豪と緑谷が動こうとしたその時だった。

 

「あ、いたいた勝手にいなくならないでよ転弧」

「本当です、今日は私たちのお買い物に付き合ってくれる約束でしたよね」

 

そんな男性の後ろから女性2人分の声が聞こえてきた。

 

「あたし、たこ焼き」

「トガはアメリカンドックが良いです」

「・・・・・、ブートジョロキア饅」

「えっと、“オールマイトコラボ”ドーナツ全種」

「コーラ、ジョッキで」

「いや、お前らもうちょっと加減しろよ!!」

 

6人は何故かフードコートに移動していた。

 

「でも、じゃんけんで一人負けした転弧が悪いと思うなぁ」

「転くん、転くんケチャップマシマシでお願いします」

「どうでも良いから、さっさと買い行ってこいよ負け犬」

「あ、コラボセットのアクリルスタンドも忘れないでくださいね」

「氷無しな」

「ちくしょーーーーーー!!」

 

涙目ダッシュでパシられる転弧。

敵のなんともいえない姿にため息を一つつくと火埜は席を立つ。

 

「“あの個性”じゃお盆も持ちづらいでしょうに。オレも付き添ってくるよ」

「はいはーい、うちの弟をよろしくね火埜くん」

 

スタスタと先程よりは軽くなった足取りで転弧を追いかける火埜が人混みに消えていく。

 

「ねぇ、緑谷ちゃん爆豪くん。お願いがあるんだけど」

 

唐突に呟かれた葬の言葉、それは何を意味するのか。

 

「ちくしょぉ、姉ちゃん達もあんまりだよな!!火埜くんもそう思うよな!!」

「わかったから落ち着け、フード取れ掛かってるぞ」

「直してくれよ」

「子供か!!お前の方がデカいんだから手が届かないんだよ屈め!!」

 

転弧に追いつき一緒に並んだ火埜は、以外と社会ルールを守る転弧と呼ばれた“死柄木 弔”を見上げる。

 

「お前、どっちが本名なの?」

「はぁ?今“それ”聞くかぁ」

 

その光景に違和感はなく誰もヒーローの卵と敵が仲良く行儀良く並んでいるとは思わないだろう。

そんな雰囲気だったからか漏れた何気ない言葉に反応した転弧。

そんな彼も雄英を襲撃した時や保須市で見せた凶気は一切感じられなかった。

 

「いや、会敵したオレだから思うんだけど学校であった時より周り見て行動してるしあの時との違いってそれくらいじゃないかなって」

「あぁ、“あっち”もオレだけどあっちは先生に合わせた演技だからなぁ」

「はい?」

 

なにやら考え込むように指を噛みながらボソリと呟いた転弧の言葉、それに思わず素っ頓狂な声が漏れた火埜。

 

「今のオレと姉ちゃんがいるのは先生のおかげだし感謝してるけど、それ以上にオレと姉ちゃんを自分の駒としてみてる先生には正直ムカついてるんだよね」

「でも、お前オールマイト嫌いなんだろ」

「あぁ、それな。オレも姉ちゃんもオールマイトが嫌いな訳じゃないんだよな」

「え、どういうこと」

 

2人は周囲に聞こえない程度の小声で列を乱さずに話しながら進み続けている。

だから、誰も気が付かないし気づけないでいた。

 

「OFA、というかこの個性ありきの社会が、個性が社会構成の根幹になったしまったこの世界が大嫌いなんだよ」

 

転弧から出た言葉、それは火埜の中にある今の社会構成を否定する気持ちと同じだった。

 

「ぶっちゃけよ、“個性”ってオブラートに包んでるけど完全に“異能力”じゃん。無個性の奴にしてもドクターの話じゃ個性発現期以前の旧人類と違って個性が発現するレベルじゃないってだけで個性因子はあるっぽいし」

「オールマイトをコロコロしたいのも、アイツが現代社会の象徴だったからで、先生みたいな私怨じゃないし」

「まぁ、オレと姉ちゃんが狂ったのってOFAと先生が原因だし、そう考えるともう少しすれば無個性に戻るオールマイトってどうでも良くないか?」

 

緑谷の如くブツブツと呟く転弧。

自分の思考を整理するように呟くその内容に火埜は驚愕していた。

 

「転弧、お前やっぱ怖いよ」

 

その個性が、ではなく誰しもが一度は考えそして忘却の道を選ぶ社会の不条理と異質さを受け止めながら、世界を壊す事に躊躇がないこと。

“死柄木 弔”の原典でなく、“転弧”自身のどす黒い原典を垣間見えた瞬間に火埜は知らず知らず緊張の汗を流していた。

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