火埜翔織という異物によるHEROACADEMYだ   作:完全怠惰宣言

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リハビリ中、意地でもこの章は書き切りたい


61th

液体の満たされた容器に服を着たまま浮かぶ少年。

 

「遂に、遂に僕の求めた僕の個性(ちから)が目の前にある」

 

体中にチューブを繋げられた大男が歓喜の声を上げる。

 

「(クソ!!どうするんだよ姉ちゃん)」

 

その傍に連れられてきた青年はその光景を前に自分達の策略が崩れていくのを感じていた。

 

「君が“完成”するのをずっと待っていたよ、“永遠の象徴”、“不死の鳥”、“燃えさかる栄光の炎”」

 

壊れ物を扱うように大男は容器を愛おしそうに撫でる。

容器の中の少年は傷だらけで、様々な箇所から出血しているが容器に入れられる前までは死んでいる筈の大怪我だった。

 

「おかえり、火埜(My,)翔織(Son)

 

まるで眠る様に容器に浮かぶ火埜、時間は数日前まで遡る。

 

 

「「怖いの無理!!」」

 

涙目で抱き合う耳郎と火埜、方やホラーが苦手な乙女、方や物理的に殴れない存在が苦手なバカ。

 

「火埜が“こういうの”苦手とは意外だな」

 

林間学校4日目の夜、肝試しが実行されたのだが、午前中から明らかに行動がおかしかった火埜は事情を知ってる幼馴染み(爆豪)に抱きついてまるで幼稚園に初登園する子供のようにだだをこね始めた。

 

「だって物理的に対処できないんだよ?なんで怖くないの!?」

「あ、コレダメな奴だ」

 

爆豪が無理矢理引き剥がすと目が合い何か共鳴したのか、耳郎と抱き合って本当に嫌がり始めた。

その光景、普段なら嫉妬する筈の数人からは何やら美味しそうに見つめられているが。

 

「ほれ、さっさとくじ引け」

「勝己の裏切り者!!薄情者!!そんなんだからいつまでたっても日和って告れないんだよ!!」

「お前、マジでぶち殺すぞコラ!!」

「ほら、とーくん。手握っててあげるからくじ引こうね」

「しじゅくぅ」

 

若干幼児退行仕掛けているようにも思えるが、本当に嫌らしくもうなりふり構っていない。

 

「もうお前、ラグドールと一緒にろうそく渡す係で固定な」

「あれあれあれあれ?なんか子供がいるぞ?子供がいるぞぉぉぉぉぉぉ」

 

相澤が呆れたように言い放ち、そして水を得た魚のように物間が煽るが、A組は理解している。

 

「ウルサイ、〇ネ」

 

直後に物間へと放たれるレーザーの如き焔と無表情となった火埜。

狙いがはずれて物間の顔面真横スレスレを飛んでいくレーザーだが当たった木々はそこだけくり抜かれたように消失している。

 

「・・・・・・・・ん!?」

「物間煽るなよ、今此奴感情のリミッター外れてるから躊躇無くヤリにいくぞ」

「火埜、落ち着け。ラグドール早く連れて行ってください」

「はいはーい、そんじゃ行こうか」

「モノマ〇ネ、モノマ〇ネ、モノマ〇ネ、モノマ〇ネ、モノマ〇ネ」

 

そうして始まる肝試し。

 

「にゃははははは、若大丈夫?」

 

蝋燭が並べられた机の後ろに立ち、林の中から聞こえる様々な悲鳴やらなんやらに笑うラグドール。

 

「きこえないきこえないきこえないきこえないきこえないきこえないきこえないきこえないきこえないきこえないきこえないきこえない」

 

耳を押さえて音を遮断しようと努力する火埜、だが任された係の関係上、音が聞こえないと意味が無いので僅かに隙間が空いているが。

ふと、火埜の中にある何かが警報を鳴らした。

 

「知ねぇ!!逃げろ!!」

「にゃ!!」

 

火埜の声と長年の経験から立っていた場所から瞬時に飛び退くラグドール。

彼女が今し方まで立っていた場所には巨大な大木の幹のような黒い腕が深々と刺さっていた。

全身をマントのような布で覆っているため姿形は解らないが、特徴的な真っ黒な肌が露になっている。

 

「脳無!!なんで、此所に」

「こちら、ラグドール!!ヴィランを確認、生徒達を避難させて!!」

 

意識を戦闘に切り換える2人、そんな2人を他所に脳無に変化があった。

 

「ラ、ぐ、ド、ォ、るル、ツ、か、ツカ、マエ、まエエエエエエエエエエエエ!!」

 

「「(喋った!)」」

 

人の遺体を素体として作られた存在である脳無。

自我はなく、命令を遂行するだけの存在。

故に言葉を発することはない、そう思われていた存在が言葉を発した。

言葉を発したことで顔の部分を覆っていた布が落ちる。

そこにあったのは驚愕の事実。

 

「マスキュラー!?」

「にゃ!?タルタロス行きになったんじゃないの!?」

 

脳無の特徴的なマスクの下にあった顔、それは数ヶ月前に綠谷とグラントリノ、ウォーターホースにより捕縛されタルタロスに護送されたはずの敵だった。

 

「あ、ガ、は、ハはハハハ」

 

地面から引き抜かれた右腕が再び膨張する、その目がラグドールを捉える。

 

「ラぐドおーーーーー!!」

 

ドゴッという音が暗闇に包まれた森に響く。

 

 

「イレイザーーー!!」

「なんでだよ、なんで知られていない筈の場所に敵がいるんだよ!!」

 

そこはA・B組が集まっていた広場。

そこには戻ってきた生徒達と担任、マンダレイがいた。

その場に突如そらから降ってきた脳無。

フードで顔を隠されているが露わになっている両腕はまるでタコの触手のようであるが先端は明らかに刃物のように鈍く光っている。

 

「ケロ!?まさか、インスマス?」

 

自身が職場体験でその捕縛に関わった敵と特徴が一致する存在に蛙吹。

 

「****、******ーーーーーーー!!」

 

口を縫われているのか言葉が音として漏れて聞こえてくる。

次の瞬間、触手を振り回す脳無、その結果脳無を中心に木々が斬り割かれていく。

 

「ラグドールから伝達!!向こうも脳無と会敵、虎とピクシーボブが残った生徒をこちらに誘導中!!」

 

マンダレイの声に意を決した様に相澤とブラドがうなずく。

 

「プロヒーロー“イレイザー・ヘッド”の権限から自己防衛の観点から個性の使用を許可!!」

「同じ“ブラドキング”の権限から個性の使用を許可、自身の身を守れ!!」

 

2人の声にいち早く戦闘態勢を整えたのはA組の生徒だった。

障子と耳郎が即座に索敵を開始する、口田が動物たちに指示を出すと3人を守るように尾白と砂藤が近場に控える。

その4人から少し離れた位置に上鳴と峰田、芦戸の中距離で戦えるメンバーが控え、前衛に切島と瀬呂が立つ。

今いるA組のメンバーの中では理想とも思えるフォーメーションであった。

A組がフォーメーションを組んで直ぐだった。

 

「邪魔だ!!クソ共がぁ!!!」

「オレ達の前から消えろ!!」

 

四肢を爆散させられ炭化し再生出来ない脳無を蹴り飛ばした爆豪。

四肢を凍結し粉砕し炎の推進力で脳無を吹き飛ばした轟。

2人が森の中から出てきた。

 

「こちら虎、残りのB組生徒の誘導終了」

「ピクシーボブも残ってたA組生徒の誘導終わり」

 

2人の後方から虎とピクシーボブに誘導され生徒達が戻ってきた。

 

「せ、先生」

 

すると口田が焦ったように相澤に駆け寄る。

 

「今、このフクロウが教えてくれました。緑谷さんがラグドールを背負ってコッチに向かってるけど、火埜君が残って脳無の相手してるって」

「あんの大馬鹿がっ!!」

「イレイザー!!」

 

口田の報告を聞いて頭をかきむしる相澤、火埜の暴走癖というか自分の優先度を低く見る癖がこの状況で出てしまったことに苛立っているようだ。

自分が迎えに行くとブラドキングが叫ぼうとしたその時だった。

 

「翔織!!」

 

誰よりも早く、誰よりも焦りを含んだ爆豪の声が辺り一面に響く。

その顔には普段の冷静さはなく、ただただ焦りの感情しかなかった。

 

「ゴァァァァ!!」

 

上空から翼を持った脳無が爆豪に向かって飛来する。

恐らく、広場から出ようとする者を襲うように設定されていたのだろうその脳無は両手の爪を刃物のように伸ばし爆豪へと襲いかかる。

 

「オレの」

 

プロでも出遅れそうな強襲に対して爆豪は反応していた。

その顔には焦りしかなかった筈だが、脳無を認識した瞬間、その表情には憤怒で満ち溢れていた。

 

「邪魔を」

 

両手から焔が脳無を襲う。

爆豪が普段個性として扱っている爆破とは違い、光球状に輝く焔に脳無は飲み込まれた。

 

「するな!!」

 

爆破による加速を凌駕する速度で駆け出す爆豪。

そんな爆豪の目の前に黒い靄が現れ、中から傷だらけのクラウディーホープとフワフワシープが吐き出される。

 

「白雲!!」

「ダーリン!!」

 

いたるところから出血が見られるフワフワシープ、それ以上に片腕の義手が完全に破壊され明らかに重傷のクラウディーホープ。

 

「やれやれ、私の“一欠片”と聞いておりますが」

 

靄の中から現れたのはA組にとって悪夢の象徴のような存在。

 

「これは如何なものでしょうね」

「黒霧」

 

靄の中から現れた黒霧、しかし以前直接会ったA組生徒達は強烈な違和感を感じていた。

紳士的な振る舞い、しかしその言動からにじみ出る強烈な悪意。

 

「あぁ、“あれ”と一緒にしないでいただきたい。私、ご主人様に仕える忠実な執事“闇霞(やがすみ)”と申します」

「親愛なる雄英高校の皆様にはこの場にいていただきたいのです、“あのお方”が“完成”に到るまで」

 

暗い森の中

 

「がアあアあああア!!」

 

ドカドカと雷撃に似た焔の壁を殴りつけるマスキュラー脳無。

 

「くっ!!(マジかよ!?純粋な雷の焔だけとはいえこの硬度のシールドを殴り続けられるなんて)」

 

逃げる途中、綠谷に気絶したラグドールを預け1人残った火埜。

防御に徹することで相澤達が来るのを待っていた。

 

「あがガぎゃがギャギャぎゃがあああアぁああ!!」

 

硬化の効果を持った雷の焔で出来たシールドを殴りつける両腕は焼けただれ幾度となく折れているが、そのたびに超速で再生するマスキュラー脳無。

何らかの指令を帯びているのか殴りつけるのを一向に辞めようとせず雷の焔のシールドに罅を入れ始めていた。

殴り続けられること数分間、突如マスキュラー脳無が殴るのを辞めると後方に跳び、火埜の横に目を向けた。

木々の僅かな隙間、そこから緑谷に背負われるラグドールが見えていた。

すると全身の筋繊維を膨張させ身体を巨大化させていくマスキュラー脳無。

 

「ち!!(もう、此奴を止めるためには)」

 

彼が行おうとしていることに気がついた火埜はその射線上へと飛び出した。

左手を後ろに、右手をマスキュラー脳無へと向ける。

 

「お前を止めるためには、“こうする”しかないのかよ」

 

その言葉に応えるようにその巨体に似合わない超加速で火埜へと突っ込んでいくマスキュラー脳無。

マスキュラー脳無が火埜の右手に触れるか否かという刹那の時間、火埜は決めた。

 

「WEATHEREAL PROMINENCE」

 

『X BURNER』と呼ばれるはずのその技を全ての焔を集約して放つ『WEATHEREAL PROMINENCE』。

本来であれば銃型のサポートアイテムをもってして使用可能となる殺傷能力の高いこの技を敵とはいえ生きていると判断できる存在に全力で放つ。

後には抉られた大地だけが残っていた。

 

「ふう、人を殺しちゃった」

 

そんな独白を呟く火埜だが、心の中はひどく落ち着いていた。

 

「あぁ、遂に自分の意思で殺めたね」

 

暗闇からかすかに記憶に残る男の声が聞こえた。

次の瞬間、火埜は体中を黒いアンカーのような何かに貫かれていた。

 

「迎えにきたよ翔織くん」

 

AFO、闇の帝王が表の世界に再び現れたのであった。

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