火埜翔織という異物によるHEROACADEMYだ   作:完全怠惰宣言

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63th

爆豪が目を覚ました、その連絡はA組グループLIN〇によって全員に知れ渡った。

そして今、お通夜の会場と言われても不思議で無いほどに重苦しい空気が爆豪の病室には漂っていた。

幸いにも爆豪以外の生徒はほぼ無傷であったため全員自宅退避させられていた。

その結果、爆豪が目を覚ますまで全員があの夜の出来事を鮮明に思い出してしまっていた。

そんな中、病室のテレビでは今回の事件での雄英高校の対応の遅さとプッシーキャッツの実力に対して非道く貶したニュースが流されていた。

 

「クソが」

 

いつもの覇気が感じられない爆豪の言葉、彼にとって今回の出来事がどれだけショックだったかが伺え知れる。

そんな空気の中、再びドアが開かれた。

 

「やっぱり、全員“ココ”にいたか」

 

いつものダボッとしたヒロコスとは違い、髪を結い、髭を剃り、スーツをビシッと着た相澤がそこには立っていた。

その後ろには同じくスーツ姿のブラドキングが扉を封鎖するような位置に立っている。

 

「これから記者会見に行かねばならんのだが、まずは八百万」

 

“個性”の影響か鋭い眼光が八百万を貫く。

有無を言わせないその迫力に生徒たちは自分の体がこわばるのを感じていた。

 

「出せ、二度は言わんぞ」

 

すっと右手を差し出す相澤に何かを躊躇するように、ほんのわずかな時間考え込むように黙る八百万であったが、相澤の手にある機械を渡す。

 

「やはり、持っていたか発信機を」

「はい、泡瀬さんに無理を言って途中で遭遇した脳無に溶接していただきました。急なことでしたので発信機に対になる受信機を作るので精一杯でしたが」

 

悔しそうに顔を歪める八百万。

恐らく、受信機を作り直しても発信機から発せられる電波が波長が合わないのか拾うことができないのだろう。

 

「お前たちのことだ、火埜を助けに行こうとか考えている者もいるだろうから言っとく。今回の件はお前たちの範疇を超えている、もしも火埜を助けに行こうと行動を起こすのならその者たちだれかれ区別なく“退学”も視野に入れて厳重に処罰する」

 

相澤の言葉にその場にいた全員がその真意をくみ取る。

普段、何があっても“除籍”としか口にしない相澤。

それは彼が自分で負える責任の範疇を示している言葉だったのだろう。しかし、今回彼が口にしたのは“退学”の二文字。

これは今回の事件がそれだけ大事であり、相澤自身にもどうにもできない事柄なのだと相澤からの伝言でもあるのだと。

 

「今回の件でお前たちに我々のことを信頼してくれとはけして言えない状況なのは解っている。それに、お前たちがどれだけ仲間を思いやれる奴らなのかというのもこの短い間でオレは解らせてもらっていると自負している」

 

受信機をブラドキングに手渡し、下を向いた相澤が抑揚のない言葉で紡ぐ。

全員の視線が相澤に集まるのと同時だった。

それは、この場にいる誰もが予想しなかった行動だった。

 

土下座

 

自分たちの担任が、大人が、自分たちのような子供に対してまず行わないである行動。

相澤の後ろにいたブラドキングですら驚いている。

 

「だからこそ、お前たちは無茶な行動をしないでくれ。これ以上“オレ”の生徒がオレの手の届かないところで危険な目に合うのだけは止めてくれ」

 

行動が言葉に重みを与える。

誰もが相澤に言葉をかけられなかった。

 

「だから、頼む。けしてお前たちだけで無茶な行動はせずに大人しくしててくれ」

 

そう言葉を残すと病室を後にした。

誰もが言葉を発せずにいた、それは無論相澤の言葉によるものだ。

病室に来る前は全員が救助に向かおうと躍起になっていた。

しかし、手段を奪われ、意思を折られて現状では誰も行動に移ろうとはしなかった。

 

病院からの移動中、相澤は一言も喋らなかった。

それは自分の発言が原因に他ならない。

 

「(なぜ、オレはあんなこと口走った)」

 

思い返されるのは病室での言葉。

 

『けしてお前たちだけで無茶な行動はせずに大人しくしててくれ』

 

いつもの相澤ならけして付け加えない言葉。

 

『お前たちだけで無茶な行動はせず』

 

それは心のどこか奥底にある救えたはずの弟分を、救えなかった贖罪のためか。

 

『けしてお前たち“だけ”で』

 

頭の回る自分の教え子たちは必ずこの言葉の意味を理解してしまう。

この言葉をつけることで、ヒーロー又はそれに準ずる実力者が同伴すれば無茶な行動さえしなければ良いと許可を出したようなものだった。

 

「お前はスゴいよ、相澤」

 

職務中、しかもヒーロー活動でもある現状において普段公私を分けるために本名を呼ばないブラドキングが同僚を本名で呼んだ。

それは今からする発言が私語にあたるという明確なモノであった。

 

「まだ、出会って半年にも満たないのにお前は生徒達をあそこまで成長させている。オレは今年、生徒達にあそこまでしてやれていないと痛感している」

「管、だがあの言い方だとあいつらは」

「信じてやれ、そしてもしもの時はオレ達を頼れ。オレ達は同僚でもあるが、仲間だろうが」

「だから、今はオレ達の役目を全うしよう」

 

そこから二人の会話は無かった。

だが二人の瞳には焔が灯っていた。

それは責任ある大人の覚悟の焔であった。

 

 

病室から相澤達がいなくなり静寂があたりを包む中、緑谷はここに来る前に見たモノに思いをはせていた。

そこは真っ黒な空間に8つの椅子が鎮座する不思議な空間だった。

そして、その椅子には7人の人間と1人のオーラが座っていた。

 

【まさか、本当にここに来れるなんて】

 

「六」と書かれている椅子に座る口元を覆った服装の黒髪の青年が驚いたように椅子から立ち上がった。

 

【だから言ったでしょ、。この子が私たちの求めていた子だって】

 

「七」と書かれた椅子に座る女性、体育祭で緑谷が出会った女性がその男性に笑顔で喋りかけていた。

 

【でも、まだ一方通行だな。彼女と対話は出来そうに無いか】

 

「四」と書かれている椅子に座る顔に大きなヒビがある男性が冷静に分析する。

 

【どうやら、まだオレ達の名前は聞こえてないみたいだしな。しかし、歴代最速じゃないか?まぁ菜奈の弟子に関してはこちらに来ることすら無かったが】

 

「五」と書かれている椅子に座るファンキーで筋骨隆々な男性が皮肉も交えて話してくる。

 

緑谷は現状を理解しようとしたが頭が追いついてこなかった。

この不可思議な現象について答えが出ないままの彼女に中央の「一」と書かれた椅子に座っていた虚弱そうな青年が歩み寄ってきた。

 

【初めまして、九代目。君がココに来たと言うことは兄さんと接触したということなんだろうな】

【僕らが言えるのはただ1つ、冷静に考えて行動して欲しい】

【僕らは急いだために色々と取りこぼしてしまったから、だから落ち着いて考えて答えをだすんだ】

 

青年に頭を撫でられたと思った次の瞬間、緑谷は自分のベッドにいた。

そして、そこでの出来事が彼女を冷静に思考する余地を与えていた。

 

「ボクは、先生達を信じて待とうと思う」

 

緑谷の言葉にクラスメート達は驚きを隠せなかった。

四ヶ月ほどしか過ごしていないが緑谷の幼馴染み達に対する執着は異常ともとれるものであった。

それは“依存”であり、3人で完結された誰も寄せ付けない緑谷静空の絶対の世界。

その象徴ともいえる少年を救助できるかも知れないこの場面で、少女は待つことを選択した。

 

「おい、緑谷。お前「今!!ボク達が行って、とーくんが救えるの?確実に?」

 

切島が何かを尋ねようとする行動を、普段の彼女からは考えられない大声でかき消す。

顔を上げた緑谷の瞳から大粒の涙がこぼれ落ち続ける。

しかし、それは悲しさからくる涙では無かった。

悔しさ、それも己に対する悔しさからこみ上げてくる涙であった。

 

「現状で確実性を求めることがどれだけ意味が無いかボクだって解ってる!!でも、ここで勝手に動いたら、ボクは胸をはってとーくんに会えない」

 

そんな緑谷を壊れ物を扱うように大事に抱きしめる少女がいた。

 

「そやね、待つことも大事だよね」

 

反対側からもそんな2人を抱きしめる存在がいた。

 

「待つのは辛いわ、でもみんなで帰ってくるって信じましょ」

 

『A組のお姉ちゃん』、いつの間にかそんな称号が全員に認識された蛙吹が2人をまるごと抱きしめている。

 

「そうだね、でも歯がゆいな」

「でも、ここで勝手に動くのはロックじゃないよね」

 

笑顔で頬を掻く、困ったときの癖が出ている芦戸とそれに呼応するように涙を拭う耳郎。

 

「だったら、直接行かなきゃいいんじゃないかい」

 

ニヒルな笑みを浮かべ、いつものようにA組を煽るような態度をとりながらも、いつもと雰囲気の違う。

 

「やあやあA組の諸君!!今回はやけに大人しそうじゃないかい?」

 

道化芝居のような態度は相変わらず、それでも明らかに違う生粋のアジテーターでありエンターテイナー。

B組の問題児、後に「雄英の負の象徴」と呼ばれることになるかもしれない男「物間 寧人」が目の下にとんでもない濃いクマを作って立っていた。

 

「さぁ、僕らをコケにしてくれた奴らに反撃といこうじゃないか」

 

その後ろにB組と心操とこれまたいつも以上に薄汚れとんでもないクマを作った発目を伴って。

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