火埜翔織という異物によるHEROACADEMYだ   作:完全怠惰宣言

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勢いで走り続けろ。
テンション上げてけ。


65th/誰かのORIGIN、誰かのRISING

オールマイト、八木俊典のヒーローの原典は日本人なら誰しもが知っているヒーローだった。

愛と勇気を胸に沢山の友と共に戦い、悪と戦い、悪と共に戦い、戦い続けたヒーロー。

何者でもない(無個性)から世界の端にいるモブ(脇役)にもなれなかった存在。

ONE FOR ALL(この力)を引き継いで支柱となることを決めたあの時、誰かの役に立てることが何より嬉しかった。

だからこそ、自身の原典を忘れてしまっていたのかも知れない。

 

『『俊典』』

 

暗闇の中、自分を呼ぶ懐かしい声が聞こえた。

思わず振り返ると、そこには自分にとって誰よりも大切だった2人の女性が立っていた。

 

「お師匠、お母さん」

 

暗闇の中にそこだけ明るく光るその場所はNo.1ヒーロー(オールマイト)になって久しく忘れていた、護られる暖かさに満ちていた。

 

『まったく、あんたのお母様とこんな形でお話させていただく機会をいただけるなんて思わなかったよ』

『えぇ、ワタシも俊典の先生とお話出来てとても嬉しかったです』

 

自分そっちのけで会話する2人の女性、よく似た気質を持っているからか完全に意気投合しておりオールマイトは疎外感を感じていた。

 

『さて、こんな話をするためにここに居るわけじゃないのよね』

『えぇ、俊典。貴方はもう気がついているのでしょう?』

 

2人の後ろに焚火のような小さな焔が揺らいで見える。

しかし、その後ろに黄色く輝く焔が徐々に勢いを増して燃え上がっていっている。

 

『OFA継承者としてのアンタはここまでだね』

 

別れを告げるようなそのもの良いとは対局で、弟子を見つめる志村の顔はオールマイトが弟子入りしたときに見た温かな笑顔だった。

 

『俊典、生徒さんが見せてくれた頑張りを貴方も見せてあげなさい』

 

母親の強い意志が宿った言葉が“オールマイト”ではなく“八木俊典”に力を与えてくれる。

 

「お師匠、お母さん」

 

コレが最後だと解るから、八木は“オールマイト”ではなく“八木俊典”として声を上げる。

 

「いってきます」

 

全盛期を思わせる筋骨隆々の大男の姿はそこになく、年相応の姿をした等身大の漢がそこには立っていた。

 

『『いってらっしゃい、ヒーロー』』

 

AFOが顔を上げた時、最初に目についたのは美しく黄色に輝く憎っき(愛しい)怨敵(親友)だった。

まるで晴天の日に輝く太陽のようなその光は怨敵(親友)の腰回りに集中し始める。

すると、今までオールマイトから感じていたOFAの残火とは別の力を感じ取れるようになってきていた。

黄色の光が収束して行くにつれてオールマイトの身体にも変化が現われた。

身体は萎み、逆立っていた髪は後ろに靡き、そこにはNo.1ヒーローとしてのオールマイトの姿は無くなっていた。

しかし、そこには黄色に輝く宝石を中央に携えたチャンピオンベルトを彷彿とさせるバックルをする1人の漢の姿があった。

 

「ふん、随分と情けない姿じゃ無いか愛しい(憎っき)親友(怨敵)。私達の因縁もそろそろ決着を付けようじゃないか」

 

“個性”という絶対の力を失いかけているというのに、全盛期にも勝る迫力を感じる目の前の憎っき(愛しい)怨敵(親友)

理解しがたい現状と現象に苛立ちを募らせていくAFOだが1つだけ明確に理解したことがあった。

 

「やっぱり、ボクは君が大っ嫌いだ」

 

しょぼくれていた面影は消え、ただ1人、歴代の中でも長い付き合いとなった怨敵(親友)を前にAFOは自然と口から言葉が漏れ出した。

 

「世界一、いや今世紀で最も無残で凄惨で酷たらしく殺してあげるよオールマイト(ゴミクズ)!!!

 

その言葉を聞き、全盛期と何ら変わらない人々に安心感を与える笑顔を向ける八木。

 

決着をつけようぜ!!ALL FOR ONE(大親友)!!!

 

 

恐らく、この戦いの最終局面であろう場面を見ながら死柄木姉弟は漠然と怒りがこみ上げていた。

 

「なぁ、姉ちゃん」

「なによ、転弧」

 

自分達の人生を玩具で遊ぶ気軽さで弄んだ憎き怨敵が何故か分裂して友達と元憎悪の対象と対峙している。

始まりは確実にAFOなのだろうが、姉弟にとって壊すための一歩を踏み出してしまったのは「ヒーローが蔓延するせいでなんでも他責思考で他人任せな世界」そのせいで見捨てられた自分達。

そんな自分達にも気がつけば友達が出来たし、楽しいと思える時間が増えた。

 

「火埜くん、やっぱり格好いいじゃん」

「そりゃ、あたしが見初めた友達だからね」

 

転弧は時折黒霧のワープでスピナーと共にFPSをやりに火埜宅に忍び込んで馬鹿騒ぎをしていた。

無論その時は爆豪もいて世界中のランカーたちを4人で蹂躙していくその時間はとても爽快だった。

華もそれについてきては緑谷と渡我と共に女子トークに花を咲かせていた。

顔が割れている志村姉弟を気遣ってどんどん増えていくモノ、久しぶりに“人間”として扱われているという実感。

 

「姉ちゃんはどうか知らないけど、初めてオレこんなクソみたいな人生でも生きてきて良かったよ」

「あら、珍しく気が合うじゃん」

 

転弧はいつもの世界を馬鹿にしたような笑顔では無く、少年のような無邪気な笑顔を浮かべていた。

華もまた、世界を慈しむような、暖かい笑みで目の前の光景を見ていた。

 

「「だから、助けたいんだ」」

 

2人の声に火埜から漏れ出していた白銀に煌めく焔が反応したかのように揺らめく。

すると志村姉弟も突如として焔が灯った。

2人に灯った焔の色は赤、見る者全てを魅了し自分に刃向かう全てを蹴散らすまるで嵐を思わせる激しく燃え上がる赤い焔と共に燃え上がり、その焔がに収束していく。

収束した焔は転弧の首元で真っ赤に輝く宝石となり、その宝石を中心にコーギーの委託を持つペンダントトップとなるとチェーンが顕現し転弧の首にまるで昔からしていたように収まった。

華は右手首に真っ赤な宝石が現われると、その宝石を中心に鳥の翼を思わせるブレスレットが現われる。

 

「うっわ、姉ちゃんめっちゃお洒落じゃん」

 

死に体だった転弧は笑いながら瓦礫から身体を起こす、不思議と自分の中にあった気持ち悪さは消え失せ今までで一番からだが軽く感じる。

 

「あんたの“それ”まるでモンちゃんみたいな顔つきしてるわねカーイイんだ」

 

華も解っていたかのように頭が晴れ渡っていた、余分なモノが消え失せ自分の考えが纏まっていくのを確かに感じていた。

 

「それじゃ、AFO」

「ぶん殴りに行かせてもらうよ」

 

世界が変わる瞬間、それを目撃したのはその場にいた者だけではなかった。

 

「翔織、あの野郎心配かけやがって」

 

個室のテレビに映るのは数日前に自分が取りこぼしてしまた幼馴染みの姿であった。

ただし、その姿はもう1人の幼馴染みと最初に出会った時の自信に満ちあふれ無茶も無謀もやってのける意思をその瞳に宿した姿だった。

 

「HAHAHAHAHAHAHAAHAHA!!最高もうサイコーだよ火埜君!!!それでこそ僕が越えるべき壁だよ!!!!」

 

とち狂ったように笑う物間、彼は自分達が行けないならドローンで行けば良いじゃんとA組に提案に来ていた。

しかし、八百万が記憶していた発信器の位置、火埜が捕らわれているであろう場所まで飛ばすエネルギーは現代科学には無かった。

そんな中、発目が思い出したのだった。

火埜の天候の焔が現行のどのエネルギーよりも効率よく物を動かせるということを、実験の一環で作っていたバッテリーもありコレでいけると思った矢先、そのエネルギーである天候の焔が無いという事態になった。

しかし、そこから発目の執念が凄かった。いつもなら火埜に強制お持ち帰りされる3徹を強攻しとあるデータを見つけた。

それは爆豪の異形の球体状のエネルギー、それが火埜の天候の焔に近しいエネルギーであるデータであった。

そして、爆豪をたたき起こしてでもエネルギーを奪うと血走った目で病院まで来ていたらしい。

なお、その凶行は拳藤の対物間鎮圧チョップで意識を刈り取ることで落ち着かせた。

 

「というわけで爆豪君、出来るだろ」

 

物間にとって火埜翔織という存在は林間学校時点でライバルなんて生易しい物を越えていた。

B組の団結を乱し、聖人ぶって“個性”特訓だけでなく勉強まで見てくれるウザい象徴であった。

特に拳藤が一緒に居る時、自分には見せないような顔をさせることに何故か異常にイライラするが取り敢えずそれは放置した。

 

渡されたバッテリーを手にしながらなんのアクションも起こさない爆豪。

彼は自信に発現した“個性”とはまた別の“この力”の本質を本能で理解していた。

 

「(今のオレに、“あれ”を灯すための覚悟がある筈ねえ)」

 

バッテリーを見つめる左手、するとその手を握る者が現われた。

 

「かっちゃん」

 

心配そうに自分を見つめる緑谷。

その時、爆豪の脳裏に嘗て火埜と躱した約束が思い出される。

 

『勝己、オレにとって静空は一番距離が近い異性、ってだけだよ』

『お前はそうでも静空はどう思ってるか』

 

中学に上がりお前の栄養どこに行ってるんだよという勢いで肉体が急成長した緑谷を厭らしい視線・企みから護ってきた自負がある2人。

だから、未だに緑谷が“個性”に憧れ、“個性”を欲していることを一番近くで見てきたからこそ理解していた。

 

『まぁ、静空のことは勝己が護ってくれるからオレは好き勝手にやらせてもらうんだけど』

『阿呆か、静空を護るのは当たり前だけど、お前に何かあった時は必ずオレが護ってやるよ』

 

そう言って不敵に笑う爆豪を火埜は不思議そうに見つめ声を上がれて笑った。

 

『じゃあ、その時はよろしく頼むよ』

『おうよ、“死ぬ気”で約束は守るぜ』

 

緑谷だけが知らない男2人の約束、あの時の覚悟を思い出し、今までのことを思い出し、爆豪に変化が現われた。

左手に握られたバッテリーがエネルギーの充填を感知したのだ。

 

「(あの時、覚悟を持っただろ。もう二度とオレはオレの大切な物を取りこぼさねえって)」

 

それは己に向けた怒り、友に護られ、友を護れなかった己に対する怒り。

怒りはやがて自分の明確化された覚悟を核にし光り輝く球体となった。

そして、秘密兵器を積み込んだドローンは飛び立った。

 

「ぶっ飛ばせ翔織!!」

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