火埜翔織という異物によるHEROACADEMYだ   作:完全怠惰宣言

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勢い、勢いだけで突き抜けるぜ。
突き抜けるしかないぜ。
そして、アニメ「僕のヒーローアカデミア」約10年間ありがとうございました。


66th/Re:1St

八木は確かに感じ取っていた。

自らの中にあったOFAが消え、今その波動を力強く感じる自らの腰に現われたバックル。

 

『トシ、聞こえるか!!』

 

その時、自身のバイタルチェックを行ってくれていた相棒『デヴィッド・シールド』の声が聞こえてきた。

 

「どうしたデイブ、ワタシの身体に何か問題でも」

『君の身体は問題ない、寧ろ観測史上最高に絶好調だ。だがそんなことよりも重大なことだ』

 

デヴィッド・シールドの声の後ろでは幾人もの関係者の慌てふためく声が聞こえてきている。

 

『トシ、君の腰に“それ”が現われたのと同時に僕らのラボにあった未完成の“あれ"が消えて君と同じ位置から反応がするんだがそこで何があった』

 

デヴィッドの言葉に八木は笑みを深める。

OFAが無くなった後、ヒーローとして活動できなくなるその時のことを初めて弱音として発露した八木。

心友であるデヴィッドは自身の持てる技術の粋を集めてとあるモノの開発に着手してくれていた。

それが完成するのは更に先になるはずだった、その理由は稼働させるため最適なエネルギーが見つからなかった。

より正確に言うとエネルギー源としての候補はあったが、それをエネルギ-源にすることで生じるデメリットの方が問題であった。

そんな、相棒『デヴィッド・シールド』の最高傑作の発する位置信号が自分と重なっているという事実に八木は益々と笑みを深める。

 

「デイブ」

『なんだトシ、今更間に合わなかったことに対する苦情かい』

 

2人には2人にしか解らない声色があった。

今がまさにそれであった。

憎まれ口にしか聞こえない筈が互いに安堵の音が漏れていた。

 

「感謝する、君からの贈り物に!!」

『無事に済んだら調整に行かせてもらうからな』

 

八木の明らかな変化に反応する者がまだいた。

 

「なんだ、なんなんだ。どんな手品だどんな玩具だどんな意味の無い抵抗だオールマイト!!

 

AFOが理解しがたい現象に苛立ちを隠そうとせずに吠える。

彼にとって目の前に居るのは手を振れば消し飛ぶゴミカス同然であった。

そのはずなのに、今目の前に居る男から感じるのは純粋なまでの恐怖。

未知という久方ぶりに感じる得体の知れないモノへの圧倒的な恐怖であった。

 

「これは、ワタシが紡ぎワタシと共に歩んできたワタシの魂の輝き」

「この輝きは我が友にして最高の科学者が与えてくれた力」

「この焔はワタシに可能性を示してくれた教え子の灯火」

 

バックルの発光がより強くなる。

雲1つ無い晴天の太陽のような黄色の輝きがバックルから発せられる。

 

「起きたまえ」

 

火埜のサポートアイテムの設計思想。

それは【如何なる状況においても瞬時に対応し、如何なる困難も打ち砕く】。

その思想を体現するための装備がどうしても作りあげられなかったデヴィッドであったがその設計思想を元に八木への贈り物にも同じ物を付け加えていた。

しかし、その贈り物となる存在のモデルを聴いたとき、娘であるメリッサは不思議そうな顔をしていたが、デヴィッドだけは笑っていた。

八木の声に呼応するように黄色い輝きが形となっていく。

それは、力強い四肢で大地を駆け抜け。

どのような強敵であっても一歩も退かず。

巨大な牙を持った存在。

AFOの目の前には八木を護るようにその巨体を晒し、巨大な口を開けAFOを威嚇する動物がいた。

その牙には八木の放つ黄色い輝きと同じ焔が灯り、耳と尻尾の先にも黄色く燃え滾る焔が灯っていた。

 

「ヒポス!!」

 

自然界では絶対にそう鳴かないであろう獣が主人を護るように巨大な口を開けてAFOを威嚇していた。

その動物、それ即ち。

 

「「「「カバじゃん!!」」」」

『ヒッポーーーーーーーーー!!』

 

周囲のヒーローもAFOもテレビの前の視聴者すらその時、心が1つとなった。

武きこと獅子の如く、強きことまた獅子の如く。

そんな強さを誇示していたオールマイトの眼前にはプリプリに艶やかな皮膚を持ち、愛嬌のある瞳。

どこかファンシーに可愛らしくデフォルメされたカバが立っていた。

場の空気を敏感に感じ取ったのか開けていた口を閉じるとドスドスと足音を立てながら八木の元に歩み寄るカバ。

 

『ヒッポ?』

「心配してくれているのかいヒポス?私は大丈夫だよ」

『ヒッポ!!』

 

八木に撫でられ嬉しそうに目を細めその巨体で八木にすり寄り甘えるその姿はまさに愛玩動物のようであった。

 

「ふざけるなよ、なんだ、なんなんだこれは!!」

「へぇ、“これ”はこうやって使うんだ」

 

理解不能な現象が次々に起こり続けAFOも混乱している中、志村華は自分のブレスレットを撫でながら戦場へ歩み寄る。

 

「葬、君まで一体何が起きてるって言うんだ」

「葬?誰それ、私は“志村華”!!アンタが大っ嫌いで、アンタが追いつけなかった“志村奈々”の孫だよ」

 

とんでもない発言が聞こえた八木は顎が落ちるのではと錯覚する勢いで驚きのあまり声を上げることなく顎が落ちる。

そして、華と火埜の傍に悠然と歩み寄る転弧を交互に見ながら驚きを隠せないでいた。

八木の横に並び立つとブレスレットに口づけをする華。

するとブレスレットから真紅の焔が立ち上る。

全てを蹂躙し破壊する自然の脅威を思い起こさせる程に荒れ狂う真紅。

 

「おいで」

 

華は優しくブレスレットを撫でながら呼びかける。

 

「カズラ」

『クッピ!!』

 

気がつくと華の肩に一羽のオウムが止まっていた。

全身に真紅の焔を纏い、AFOを睨み付けるその姿は、まるで姫を護る騎士のようであった。

 

「AFO、アンタは“ガイア理論”を知っていますか」

「なにをきゅうに」

 

カズラと呼ばれたオウムを肩に話し始める華。

そんな今まで手駒としか見てこなかった存在に反旗を翻され苛立ちを覚えるAFO。

 

「ガイア理論、たしか【地球は自己調節能力を持ったひとつの生命体であると考える説】だったかな」

「ウァオ、博識ですねオールマイト。そして、その理論を飛躍させた“とある論文”が発表されていたことを知っていますか」

「それ即ち【“個性”という異物を持った存在を排除するために新たな“異能”を持った存在が誕生する】という論文でした」

「これは【個性終末論】によって消え去ってしまった理論ですが、今この星で“個性”によって起こされた事件に対して生命体として惑星を見た時、防御機能が発動するとしたら」

「それは、今ココで私達が“彼”に感化され灯した“この焔”なんじゃないかな。て思うんですよ」

 

“個性”を特別な力として崇拝してきたAFOや“個性”が当たり前に使えた者達にとってそれは看破できない発言であった。

 

「つまり、華君が言いたいのは私達のこの焔は“個性”に対抗するために生まれたと言いたいのかい」

「そうじゃなきゃ、AFOアンタが奪った彼本来の“個性”である“オーラレイ(光線)”の無くなった筈の彼に新たに“個性”が生み出される筈がない」

「“この焔”は恐らく人間誰しもが持って生まれた力、その力を目に見えて使用し、安定させて使えた初めての存在、それが“火埜翔織”」

「AFO、アンタが【“個性”の初まりの人】なら翔織君は【焔の初まりを告げる人】なんだよ」

 

華の顔には自然と笑顔が浮かぶ。

火埜翔織が起点となって始まったこの戦い、コレは確実に歴史の転換点になるはず。

 

「だから、害悪でしか無いアンタを排除するために地球という星が私達に奇跡を起こしてくれている。オールマイト、次は何をしなきゃいけないのか解ってるよね」

「全く、最近の子と来たらオジさん使いが荒いぜ」

 

八木の腰ベルト、華のブレスレットに今まで以上の輝きが集まり始める。

2人は次の行動が解っていた、それこそ昔から知っていたかのように。

 

「ヒポス!!」

「カズラ!!」

 

名を呼ばれた2匹のパートナーは全身から焔を発する。

その焔はそれぞれの主人である2人と同質の焔であった。

 

「「形態変化(カンビオフォルマ)」」

 

『ヒッポーーーーーーーーーーーーーー!!』

『クピーーーーーーーーーーーーーーー!!』

 

黄色い閃光に姿を変え八木へと飛んでいくヒポス。

真紅の閃光に変わり華へと集まるカズラ。

2種類の閃光が止んだそこに立っていた者。

 

サンシャイン(極晴天)アーマード(鎧装甲)・オールマイト!!」

 

全身を漆黒の無骨な機械の鎧で身を固めたオールマイト。

 

ロッソテンペスタ(赤大嵐)ワルキューレ(戦乙女)・アーチェリー」

 

真紅のドレスに両手に大型のガントレットを装備した仮面を付けた志村華。

 

「「(ツラ)は見せておかないとな」」

 

 

 

 




この10年間アニメ「僕のヒーローアカデミア」に携わってくださった演者・スタッフの皆様。
そして堀越神(ほりこしん)先生、本当にありがとうございました。
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