火埜翔織という異物によるHEROACADEMYだ 作:完全怠惰宣言
ひとまず、一区切りつきました。
「全く、嫌になるぜ!!」
八木はそう言いながら、アーマーに覆われた右腕をコンパクトに打ち付ける。
ボクシングのボディーブローのように、流れの起点になるようなその一撃は長年培ってきたフットワークとアーマーの身体補助機能により全盛期以上のフットワークを可能とし、コンボのキレも八木の脳裏に描いた動きを完璧に行えている。
「十何年来の決着がこんなもんなんてな!!」
AFOの顎を打ち抜くストレート。
AFOは混乱していた、アーマーを纏い黄色いオーラを放ち始めてから明らかに目の前にゴミクズは全盛期に否、それ以上のパフォーマンスを発揮していた。
火埜の“個性”と性質が近似しているオーラであるとするならば、その発している色的に特性は“活性”なのは間違い無いだろうが、自分の攻撃でアーマー内部の機構を破壊しても直ぐに再生しているように見える。
「ふんぬ!!」
再度振り抜かれる八木の右ストレート。
AFOの顔面を捉えたその一撃は易々とAFOを崩れた壁へと打ち付ける
「どういうことだオールマイト、その力は機械には意味をなさない筈じゃないのかい」
AFOの言葉通り、八木の纏うアーマーはAFOの攻撃を受け装甲は傷つき、フレーム内の疑似筋繊維も断裂が見えた。
「私のアーマーの装甲は近年発見されたウロコフネタマガイの一種の鱗を素材として製造された特殊金属とジャングルの奥深くにて発見された繊維が筋肉繊維とほぼ同じ植物を加工して作られた医療用人工筋肉を使用している。
謂わば“細胞をもった鎧”!!そして私の宿すこの焔、特性は“活性”、即ち我が親友がもたらしてくれたこの鎧は“高速自己治癒能力”を持ったアーマーである!!」
八木はオールマイト時代からの決めポーズを堂々と行っていた。
その横を6本の真紅の矢が同時に通り過ぎていく。
「あら、無様ねセンセイ。淑女のドレスを褒めることすら出来てないじゃない」
ヒールを鳴らし、八木の隣に並び立つのは妖艶な笑みを浮かべる志村華。
「なるほど、華少女のその武装はそのように使うのか」
「あらイヤだわオールマイト、手品の種明かしなんて無粋ね」
志村華の“ロッソテンペスタ・ワルキューレ・アーチェリー”の攻撃の核となっているのはリボルバーのシリンダーのような形状をした両腕のガントレット。
弓を構え矢を番える動作をすることでガントレットに充填された焔エネルギーを開放状態にし、弦を弾くことで12発の真紅の矢を華の意思に従って放つことが出来るというモノだ。
こと左腕だけに絞れば即座に6連射が可能という化け物ギミックでもある。
壁に縫い付けられた状態のAFO、この絶望的な状況において更に彼を追い詰めることが起きていた。
「舐めるな!!ボクのおもちゃ共が!!」
オーラAFOが幾度目となる黒い炎をレーザーのように放出する。
自身に幾ばくの時間もないと知った焦りが余裕を奪っていく。
絡めてによる意識を裂くことも忘れ放たれたそれは人々の脳裏に凄惨な現場を想起させる威力を持っていた。
「ニックス!!」
火埜が羽織っている漆黒のコート、その留め具である8個の宝石が着いたチェーン、その宝石全てに焔が灯る。
「
放たれたレーザーを受け止め、黒い焔が空気に溶けていくように霧散していく。
「はっは!!隙有りだぜセンセイよぉ!!」
転弧が握る鞭を振るう、その鞭の軌道にあわせて真紅のコーギーがオーラAFOへと殺到する。
「ヴァウ!!」
「「「ギュワン!!」」」
転弧の鞭の柄に銀の装飾として杖頭として鎮座するコーギーから指令の如く鳴き声が聞こえると殺到していたコーギーたちが大爆発を起こした。
肉体のないオーラAFOにとってその攻撃はさして意味の無いものの筈であった。
しかし、攻撃を受け続けたことで彼は気が付いてしまった。
「(このままでは身体を維持出来ない)」
『“個性”火の鳥』と『死ぬ気の焔』。
似ている異能ではあるがその成り立ちが根本的に違う。
『“個性”火の鳥』はその身に宿す『個性因子』を燃やし焔のようなオーラを使用する。
『死ぬ気の焔』は使用者の持つ『絶対的な覚悟』を核としてオーラより密度の濃い超圧縮エネルギーが様々な焔の姿を形取っている。
肉体を持たないオーラAFOは時間が経つにつれてオーラ量と純度は上がっていくが変わりに肉体を構成するための“個性因子”が消えていく。
そして、それは攻撃を受けオーラを消費することでも同じであり、オーラを消費しても“個性因子”が焼失し自動的にオーラが元に戻る。
それは通常とは違い消失分を補うための機能であるため、オーラ量は減り純度も上がらない。
さらに、防御を固めても目の前の二人による圧倒的な火力によってその防御すら意味をなさない。
そのことに気が付いた故の苛立ちと焦りが益々オーラAFOから余裕を奪っていく。
そして、生来の気質に戻り“1歩引いた場所”から俯瞰的に全体を見ていた火埜の手には新たに進化した愛銃が握られていた。
「ニックス!!MODEATTACK!!」
火埜の声に反応したように、コートが輝くと白銀に輝く鳥となり右手に握られていた銃へと姿を重ねる。
キンバー1911ウォーリアーをモデルにSISTEMA C.A.I.の中核となる中距離武装としてデヴィット・シールドが開発した世界初の「死ぬ気の焔」がエネルギー源となる武装。
そこに、この世界に産声をあげたばかりの力が重なる。
「“OPERATION ARCO BALENO”」
火埜が呟く。
『YES、MY MASTER』
周囲にハッキリと聞こえる女性の声。
その声は何処と無く、この装備に携わるようになった発明狂いの少女の声に似ていた。
火埜の腰の周りに小型の匤型のサポートアイテムが展開され、かけていた眼鏡のレンズがオレンジ色に染まると耳にかかっていたフレームがヘッドホンのような形状に変化した。
しかし、変化はそこで終わらなかった。
銃身下部と上部には翼を想起させる4枚のパーツが現れ、銃口付近には鳥と頭のようなデザインが追加されていた。
光をかき消すように銃が握られた右腕を横に凪ぐ。
「
そして、横に凪いだ右手をそれが当たり前であるようにオーラAFOへと向ける。
その瞳には一切の負の感情が見えなかった。
ただ、目の前の敵を倒すという“覚悟”が“静かなる闘志”として宿っていた。
「
瞬間、銃口から超極太のレーザーのようなものが直線状に発射された。
「ぬうぉ!!」
身体が縮んだ分、動き出しが早かったからか間一髪で直撃を免れたオーラAFO。
しかし、その代償は彼が想像する以上のモノであった。
「まさか、たった一撃で」
たった一撃、僅かに避けきれなかった攻撃はオーラAFOの身体をごっそりと削りきっていた。
「今、オレはオレの意思に沿って、オレの意思の元、オレの今までの人生でオレに与えてくれた様々な人たちの想いも含めて」
火埜の頭上を飛ぶ一台のドローンが唐突に爆発した。
「お前を消し飛ばす」
そこにドローンがあったことを誰も感知していなかったが、火埜が左手を空に向けて開くとオレンジに光り輝く弾丸がその手に収まる。
「お前がどのような意味を持って生まれたのかだとか、これが殺人になるだとか、そんなこと今はどうだって良い」
「お前という存在を、不死の化生を倒す為に今のオレの全てをかき集めて」
遠く現場から離れた病院音ベッドの上で爆豪が凶悪に敵を倒す時の笑みを浮かべながらテレビの画面を食ういるように見つめる。
涙を流すことが少なくなった緑谷が大粒の涙を流しながらも笑顔で爆豪の手を握りながらテレビの画面を見つめる。
その周囲で集まったクラスメートたちが画面に向けて声援を送る。
「終わらせる」
態々マガジンを引き抜きその一番上に先ほどのオレンジ色に輝く弾丸をセットして再装填する火埜。
オーラAFOはその弾丸の輝きが火埜の手に渡ったときからより一層熱く輝く様に見えていた。
2人のAFO、彼らの視線の先には互いのボロボロになった姿が映っていた。
自分たちを終焉に導く4人の姿など目には入らず、それぞれの目にはかつてボロ雑巾と揶揄してきた存在達と同じ惨状の自分の姿しか映っていなかった。
八木のアーマー背部、マントに隠されていた噴射口から両脚部の噴射口からも黄色に輝くオーラが噴射され八木が加速する。
異変を感じたAFOが迎撃のために腕を向けるがその腕に真紅に燃える炎の矢が次々と刺さっていく。
火埜の構える銃に虹を想起させる様々に色のオーラが集まっていく。
根源的な焼却の恐怖にかられたオーラAFOが火の鳥に転移して逃げようとするが周囲を真紅のコーギーが囲い逃げ道を塞ぐ。
「さよなら、センセイ」
華の言葉は誰に聞こえるわけでもなく空中に溶ける。
「ユナイテッド・サンシャイン・オブ・スマッシュ!!」
八木の黄色に輝く渾身の右ストレートがAFOの顔面をとらえる
「さらばだ、AFO」
過去に類を見ないその一撃は超再生の個性を発動させたAFOをもってしても意識を刈り取るのに充分であった。
「じゃあな、センセイ」
転狐の声を合図にオーラAFO周囲を取り囲んでいた真紅の犬たちが一斉に爆発する。
本能的に上空へと逃げ出してしまったオーラAFOの目の端が捉えたのは、金色に輝く銃を握る火埜の姿であった。
「
金色に輝く銃から放たれた弾丸は金色の鳥へと姿を変え、オーラAFOへとぶつかると金色の焔の球体となりオーラAFOを滅却する。
「あばよ、AFOモドキ」
曇天に覆われた空が裂け、スポットライトのように4人に光が降り注ぐ。
その中でも最も高い位置にいる八木が右腕を動かす。
周囲が不可思議に思うその行動、しかし気が付いた者もいた。
そして、八木の右腕は天へと高々と掲げられた。
ふら付きながらも、右腕を掲げるその姿はまさに「No.1ヒーロー」、「平和の象徴」の姿であった。
「オールマイト、あまり無茶は「続けさせてやってくれ」
その姿に見入っていたヒーローが声をかけようとするがその声を遮るようにグラントリノが言葉を発する。
「まだ、仕事中だ(“No.1ヒーロー”、“平和の象徴”、“オールマイト”として最後となるであろう仕事のな)」
愛弟子の雄姿を一筋の涙と共に見つめるグラントリノ、彼の心には愛弟子に対する賛辞であふれていた。
後に「神野の惨劇」と呼ばれる事件はこうして幕を閉じたのである。
今後もしばらくはこんな感じで進んでいきますがよろしくお願いいたします