火埜翔織という異物によるHEROACADEMYだ 作:完全怠惰宣言
広く穏やかな心で許してください。
切欠は覚えていない。
強いて言えば、偶々そこに居合わせたからだろう。
こんな日があってもいいんじゃないかと私は強く思う。
「しょ、障子君のことご存じなんですか」
何この可愛い小動物系女子は?
皆仲良しA組では珍しく、本日は女子だけの集い女子会がファミレスで行われていた。
というのも偶には男子でバカしたいという変なノリが発動して男子だけ火埜の部屋に集まり何やらやっているらしい。
そうなると彼女たちの話題も必然的に。
「にしても、ウチのクラスの男子はキャラが濃いよね」
芦戸の何となく呟いた言葉から始まったクラスの男談義。
切島は漢漢煩いよね、とか。
最近の轟は何か構ってあげたくなる、とか。
砂藤の美味しい洋菓子のせいで実は体重が、とか。
尾白は普通に良い奴だよね、とか。
峰田はいつかどうにかしないとダメだ、とか。
そんな中、話は一人の男子の話になった。
「ウチの男子で一番大人なのは明らかに障子だよね」
そんな耳郎の言葉で障子の話に移行する面々。
「そうね、障子ちゃんが一番大人びてるわよね」
「最近、障子君の傍に居るとかっちゃんもとーくんも年相応の反応するし」
「皆から頼られているだけじゃなくて、今日も一緒に遊びに行ってるらしいね」
「あの、すみません!!」
A組女子会の障子トークの最中、突如小柄なカワイイ系の女の子が声を掛けてきた。
「しょ、障子君のことご存じなんですか」
「「「「「「・・・・・・・・え?」」」」」」
そして、冒頭に戻る。
「私たちの育った村は未だに閉鎖的で、その“異形系”の個性持ちに対する個性差別がひどいんです」
少女の名前は「
東京の高校を受けるために塾の冬休み合宿で来ており、本日は偶々休日だったため、このレストランで勉強をしていたらしい。
すると、近くからずっと気になっていた人の名前が聞こえてきてしまいつい声を掛けてしまったのだとか。
異能が個性と呼ばれるようになった長い歴史の中で異形の人々への差別を撤廃する活動が続けられており、出久達の世代では異形の子供達とそうでない子供達が当たり前のように共に暮らしている。
ただ、それはあくまでも人の入れ替わりの激しい都会での話であり、社会の変化に疎い地方部には、異形の人々への差別が根強く残っている地域もある。
ある日、障子は大雨によって氾濫した川のほとりで、溺れかけていた富須磨を偶然にも助け出した。
富須磨は障子の優しさにとても感謝したが、その後障子は「穢れた体で子供に触れたから」という理不尽な理由で村の大人達から集団リンチを受け、口元に大きな傷跡を付けられてしまう。
障子に助け出された富須磨は、自分のせいで彼が傷ついてしまったことにひどく心を痛めてしまい、その出来事があって以来、障子はマスクを身に着けて自分の口元を隠すようになった。
「障子君が雄英に受かった話は村中に直ぐに広まって今までの雰囲気が嘘のようになったんです。でも私はそんな大人達が気持ち悪くて、今はこっちの叔父の家に居候させてもらいながら来年雄英高校を受験しようと思ってたんです」
障子の性格が周囲に比べて大人びて見えるのは、単に早熟だったというよりも、辛い幼少期を過ごす中で、無理やりにでも大人にならざるを得なかったからなのかもしれない。
「ちゃんとお礼が言いたくて、でも言えなくて。障子君も入学が決まると直ぐに村を出て行っちゃって、私、比較的仲良くさせて貰ってたけど、助けて貰ってから障子君のこと意識しちゃって、でも何も言えなくて、それで皆さんの話に障子君の名前が出てきたから」
富須磨のまとまらないしゃべりに芦戸の恋バナセンサーが反応する。
「富須磨ちゃん、つまり“そういうこと”よね!!」
「はい、“そういうこと”です!!」
タップタップ
「あ、もしもし瀬呂。今男子どこで何してる」
『今、寮出て全員でカラオケ向かってる。てか
「もしかして、何人か別行動?」
『火埜と常闇が銀行よって金下ろすからって先に出たから2人だけ別行動』
「よし、あんた達今からL〇NE送る位置に1時間後集合」
『電話越しでも解る鬼気。なんで?』
「訳は来れば解る!!うし、次」
その結果。
「今日、女子会でしょ。何で呼ばれたん?」
「して、そちらの女子は?」
実は意外に近くに居た火埜と常闇だけ先に召集された。
「この子は富須磨 水琴ちゃん」
「どうも」
芦戸に紹介され挨拶する富須磨。
「それで?」
「実はこの子がカクカクシカジカシカジカカクカクで」
「!!、つまりそういうことか!!」
「えぇ、そういうことよ!!」
「障子ならば納得だな」
改めてボックス席に座り直した火埜と常闇。
2人の目の前にはピッチャーパフェ(5人前×3)に緑茶とソフトクリームがのったアップルパイにアップルティが並んでいた。
「取りあえず、今はそういった対象は居ないんじゃないかな」
「根拠は」
「障子の部屋には必要最低限の荷物しか置いてなかった。峰田が隅々まで探したがそういった本も無かったし、彼女がいたらせめて写真ぐらいは有りそうだし」
「それに、オレ達障子から事情聴いてたからアイツが実は夏頃までオレ達のことも怖かった時期があるらしいから余裕ないでしょ」
男2人からの情報を纏め上げ、取りあえず、そういった対象は居ないと判断した女子陣。
「ねぇねぇ、火埜君」
「ん、なんじゃい葉隠」
そして、ここで一気に話を進めるべく葉隠が動いた。
「障子君の好みのタイプとか聴いてないの?」
「あぁ、確か」
「うむ、言ってたな」
男子だから、というわけではないだろうがその場の雰囲気でおもわず漏らしてしまったのだろう。
2人は思い出すように少し思考する。
「「目がぱっちりとした子、って言ってた」」
その瞬間、周囲に雷が落ちる。
勝ちを確信した女子一同。
「うっしゃ、勝ち確定!!富須磨ちゃん障子呼ぶよ!!」
「はい、お願いします!!」
そして、僅かな静寂の中、富須磨が思いきった質問を投げかける。
「あ、あの“皆さん”は障子君のことどう思っているんですか」
「「「「「「は?」」」」」」
グリュンと音がしそうな勢いでA組女子の顔が向く。
「あの、皆さんの中に障子君のこと好きな人が、それ以上の恋人がいらっしゃるなら私、諦めれると」
「「「「「「「それは、無い(わよ)(あり得ませんわ)」」」」」」」
人間こんなに感情が消えた真顔になれるんだと男子2人が心の中でシンクロした。
「大丈夫だよ富須磨ちゃん。私たち静空ちゃん以外はちゃんと旦那いるから」
麗日はにっこりと意味深に笑みを浮かべながら火埜のほうを見て富須磨に伝える。
「本当に、なんでこんなに好きになれちゃったかね」
日々成長中の胸部装甲を持ち上げるように腕を組み片目で火埜を見つめる耳郎。
「いやぁ、コレが恋かって自覚するまで早かったけど今はもう離す気は無いし」
対面に座り最近は大人びてきた笑みを浮かべる様になった芦戸が火埜を嬉しそうに見つめる。
「だいたい、みんな降りる気更々無いんだから。あんな法律通っちゃってウチのご主人様は罪作りだね」
スルリと後ろの席から火埜の首を交差するように抱きつく葉隠。
「それにしても、もう少し増えていただかないと私たちの身体が持ちそうにありませんわ」
ほぅっと色っぽくため息をつきながら、鏡越しに火埜を見つめる八百万。
「ケロケロ、消太さんとやっと手を繋げるようになった私への挑戦かしら」
思い人を出来れば今すぐ捕食したい蛙吹はとても艶やかに頬を染めている。
「わ、わたしべつにまだこくはくされて・・・・・うみゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」
つい最近、複数の男子から告白され思い出すだけでテンパる緑谷。
「火埜、罪深いなお前は」
「罪深イナ」
「責任はとるけどそれは頑張ってくれた子だけだよ。こんなオレを好きでいてくれる、言葉にしてくれた子だけだよ」
お互い飲み物を口に含み息を落ち着かせる。
「遅くなったな」
指定した時間よりも早い時間、火埜と常闇とと対面になる廊下に立っていたのは障子1人だった。
「お、みんなは?」
「轟が楽しみ天元突破して下でワクワクフンスフンスしてる。そして、それを瀬呂と爆豪が窘めている。他は先に店に行ってると言っていた」
そこで女子一同に戦慄が走る。
火埜と常闇の会話から故郷に良い思い出が少ない障子が富須磨のことを覚えているだろうか。
『ところで、この子は誰だ?』
思い人に恋する乙女が一番言われたくないであろう台詞が彼女たちの脳裏を走る。
「障子、この子は「あれ、もしかして水琴ちゃん?久しぶりだな」
耳郎が思わず声を掛けようとした次の瞬間、障子は自分の死角になる位置に座っていた富須磨に気がつくと自分から声を掛けた。
煩わしさも、イヤイヤという雰囲気もなく久しぶりに会う友人に会えてうれしさすら有りそうな声色にA組メンバーは心の中で全員が10点満点のプラカードを出していた。
合宿所の門限があるからと富須磨は一足先に帰っていった。
その際、A組女子とLI〇Eの連絡先を交換して。
『もし、本気で雄英を目指すなら、今は頑張ってくれ』
障子に背中を押され、その覆面を外した笑顔で見送られながら。