【うたわれるもの】 Re:マシロ様は過去のトゥスクルに飛ばされた様です   作:黒鉄ナオト

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12 それぞれの思い。

ガラガラ——

 

 部屋に入るとそこには広い空間が広がっていた。窓側には寝床。物を入れられそうな大きなタンスが置いてあった。賓客という扱いからなのか、かなりいい部屋に案内された。

 

 

「……ここが今日からの貴方の部屋です。何かあれば兵にお伝えください。それでは。」

 

 

 ベナウィは一礼をして、部屋から退出した。

 

 

「……ふぅ、全く、濃い一日だった……」

 

 

 マシロはここに来るまでの事を思い出してみた。

 

 

「珍しいタタリの浄化をして、それが終わったから、ヤマトに居る皆に会いに行こうとして、何故か転移に失敗して、オシュトルの刀を無くしかけたり、なんか、ヤバめな場面に出くわしたと同時にあしらって、若かりし頃のオボロ皇と、あいつ――ハクオロに会った。……この事から過去のトゥスクルに来ちまったわけだ。……全く、これが事故じゃなかったら、こんなことをやりやがった奴に時間外労働手当を請求してやる……」

 

 確かにこんなところまで飛ばされて堪ったもんじゃない。だが、自分が介入した事で助けられた命もある事をマシロは忘れてない。

 

「知らないとはいえ、村人を見捨てるのは元ヤマト総大将としてあるまじき行為だしな。……まぁ、ここヤマトじゃないんだが……」

 

 

 

 

「……大将。」

 

 

 ベナウィの背後より何者かに話しかけられる。

 

 

「クロウですか、何の様ですか?」

 

 

「いやぁ、大将は例の賓客をどう思っているのかと思いましてね。 ……んで、どうなんです? 大将の意見は。」

 

 

 クロウはベナウィに問う。あの賓客をどう思うのか。その問いにベナウィは表情を変えずに答えた。

 

 

「正直なところ。私は彼を信用できません。可能であるなら監視をつけたいぐらいです。」

 

 

 ベナウィは戦をしているときの瞳でクロウの問いに答える。この事から、クロウはあの賓客をかなり警戒していることが読み取れた。

 

 

「大将がそう言うなんて珍しい事もあるっスね。」

 

 

「まずはタイミングが良すぎます。 何故こんな時期に姿を現したのかです。 ……話によると、エルルゥ殿とアルルゥ殿叔母君の友人との事ですが…… それであるならなぜ彼は若いのでしょう? エルルゥ殿とアルルゥ殿の叔母君であるトゥスクル殿は既随分なご年齢と聞いています。彼がどの時期に友人になったのかは分かりませんが、いろいろ都合が良すぎるのです。」

 

 

「エルルゥの姐さんと同じ薬師って聞いてますし、エルルゥの姐さん達が生まれる前にヤマト……つう国に行って、治療してもらったんじゃないですかね? 俺達だって最初から総大将に仕えていたわけじゃないですから。 怪しんだってしょうがないと思いますよ。」

 

 

「ですが、彼はまだ不安分子です。くれぐれも警戒を怠らないようにしてください。」

 

 

「ういっス」

 

 

 二人はそういう会話をしながら賓客部屋から離れていった。

 

 

**

 

 

「マシロ。か」

 

 

 月が綺麗に見える今夜、ハクオロは酒を片手に月を見上げていた。今日は本当に色々あったと、ハクオロは思い返していたのだ。自身の故郷にも等しいヤマユラ村の襲撃に、それを助けた男マシロ。 初めて会った時は驚いたものだ。 自分の生き写しが目の前に居るのだから。

 

 正確には違うのだが、雰囲気を自分に寄せたら自分に似るほどに。

 

 

「……あの男には、何故か、安心感が湧く。まるで何もかも任せても良い様な、そんな気にさせる。

 ……だが、私がこの戦を降りることはできない。 この国にはまだ侵略者が居る。また今日のようなことが起きかねない。……また来る前に今度はこっちから……」

 

 あっちが仕掛けてくる前に、今度はこっちが進軍すべきかと、悩むハクオロ。今回は未遂だった。ヤマユラの住人が何人も亡くなったのは辛いが、まだテオロさん達が生きている。今度も自分たちが守れば良いのではないかと。色々浮かんでくる。

 

 どれをしたら最善か、何をすれば身内を守れるのか、そんな不安な思いがハクオロを襲う。

 

 

「……だが、私が何度もテオロさん達を守れるとは限らない。なら、進軍を……」

 

 

「ハクオロさん?」

 

 

「……エルルゥか。何の用だ?」

 

 

 ハクオロはいつの間に? と思ったが、自分がエルルゥが入ってきたこともわからないほど集中して考えていたという事だろうと半ば無理やりであるが納得させた。

 

 

「……今日は私も月を見ようと思って……」

 

 

「……そうか。」

 

 

 ハクオロは受け答えが終わると、エルルゥが窓近くまで寄ってくるのを確認し、一緒に月を見上げた。

 

 

「……エルルゥ。君はあの男…… マシロ殿の事をどう思っている? エルルゥの今の気持ちを知りたい。」

 

「今の気持ち……ですか。 ……そうですね。 私もあの人の事を心の底から信用したのか、と言われたら嘘と言いかねません。 確かに彼は、マシロさんはテオロさん達を助けてくれた。それは本当に嬉しい事なんです。 私は小さい頃からあの人たちと触れ合ってきました。いろんな話をしました。 そんな人たちを彼があの時に助けてくれなかったら、永遠に失っていた。……なんて、今でも信じられないです。」

 

「……そうだな。」

 

「けど、私は彼を今後信じられるように頑張ろうと思っています。 疑っているだけだと何も進展しませんし、ギクシャクするだけですから。 ……ただ疑っていてはその人の持つ本質を見失ってしまう可能性もありますから……」

 

「……そうか。エルルゥは強いな。」

 

「そうでもありませんよ。 信じて行こう。って思っているだけなので、本当に実行に移せるのか、不安もありますので……」

 

「……大丈夫さ、エルルゥなら出来るさ。何故なら、この私の事も見知らない相手だったのに手当てしてくれたのだからな。……心配ないさ。 ……もうこんな時間か。 ……エルルゥは寝室戻ってくれ、エルルゥに倒れられると困るからな。 それに夜更けはかなり冷え込むからな。」

 

「……分かりました。 ではお休みなさい。ハクオロさん。」

 

「あぁ、お休み。エルルゥ。」

 

 

 エルルゥはそういうとハクオロの部屋を後にしたのだった。

 

 

「……クッチャ・ケッチャを野放しには出来ない。……明日、進軍する。 ……皆を守る為に。」

 

 

キャラのセリフは台本式か名前なしどっちがいい?

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