【うたわれるもの】 Re:マシロ様は過去のトゥスクルに飛ばされた様です 作:黒鉄ナオト
「……クッチャ・ケッチャだと?」
トウカと名乗った女性が最後に発した、クッチャ・ケッチャの傭兵と、つまり、敵国の兵士が、わざわざこの國訪れた事となる。冷静に考えるなら、余程のことだと思うが……
「……エヴェンクルガ、 聞いたことがあります。 」
「武と義理を重んじる種族と。 しかし、その数は少数、 あまり居ないと聞いております。 ですが、どんな種族よりも強いと言われており、かの伝説の武士、ゲンジマルも彼女と同じ種族とか。」
「ベナウィ、特徴とか無いのか?」
「特徴は長い耳です。 我々のものや、聖上の物とも違う、独特な形をしておられます。 丁度彼女の耳と同じでしょう。」
「では、彼女が……?」
「はい、 先程自分でも名乗っていたので、確かでしょう。身分を隠すというのは、助けを求める上で、自分が不利になりやすいですから。」
「……」
冷たく沈みかえる部屋。 誰もがこの状況を整理出来ないでいた。
しかし、今この場に居る者が思ってい事はある。しかし、それを言い出したら歯止めは効かなくなるだろうから。
しかし、思っている事は同じであろう。
こいつを殺して、 クッチャ・ケッチャを滅ぼせば良いのでは?
と。
だが言わない。
それは、まだ理性が効いているからだ。
天下のエヴェンクルガでも、手負いなら、自分達でもやれると。
武人として恥ずべき事ではある。
男としてなら尚のこと。
しかし、この女は、……こいつは、 自分達の故郷を責めた國の兵だ。
なら、報復して良いでは?
やっても文句は言われない。
なら……
「なら、やっちまえよ。」
何処からか、その声が出た。
一瞬だった。
「そ、うだよな。 ……やって良いよな!」
猛る男達の声、 さまざまな声が飛び交う中、 その言葉に共感を示した瞬間、オボロは立ち上がり、反論した。
「お、お前! 何を言っているんだ!?」
オボロは兵士問う。どういう意味か、しかし——
「オボロ様! 止めないでください! こいつは、俺達の故郷を……!」
言葉に共感した兵士はオボロの静止を聞く耳を持たず、声を荒げる。
「だが!」
「殺ればバレない!」
「そうだ! バレない!」
「ッ……!」
この場に居た兵士が既に、その言葉に呑まれてしまっている。 もはやここに居るのは誇り高い武士ではなく、 復讐に燃え、周りが見えなくなっている獣だ。
***
「(……)」
一方、マシロは、この盤面を冷静に考えていた。 どうして、わざわざ、敵陣に、しかも、昨夜襲撃した國に避難してきたのか。
「(冷静に考えるなら、 敵とか、関係ない出来事が起こったという事。 ……しかし、それなら自国の周辺に逃げ延びた方がまだ助かる確率が上がる。 それなのに……)」
マシロはふと、盛り上がっている兵士達を見る。 怒りと目の前に復讐出来る対象が現れたことにより、完全に制御を失った兵士。
ハクオロは勿論、 その他のメンバーはこの流れに便乗はしていない。 ハクオロ達には倒すべき相手であって、憎しみをぶつける相手では無いからだ。 しかし、これはテオロという人達が助かった事に起因しているのは、間違い無いだろう。
自分が元いた時代、自分はあの人達と会っては居ない。
自分はコールドスリープから目覚めた存在なので、正確な時間は分からないが、 少なくとも、この時代から数十年は経っているのは明らかだ。
おやっさんは自分達で言うところの中堅のオヤジ、デコイは自分達、人よりも永く生きる。 亡くなっていない限り、自分がトゥスクルに訪れた際に会っている筈だ。
それなのに会っていないということは、この時代で、ここで彼らは亡くなってしまったのだろう。
そこは、自分で予測するしかないだろう。 なんせ、その話は、トゥスクル皇であるクオンからも聞いたことが無いからな。
恐らく、おやっさんはあのヤマユラが襲撃された際に亡くなったと見て良いだらう。 確証はないが、なんとなくそんな気がする。
「(そこで、自分が助けた事によって、おやっさんは生き残ることが出来た。 だから、ハクオロ達は冷静でいられるのだろう。)」
「総員、静まれ! 静まれ!!」
ハクオロが静止の号令を出す。 兵にとって、帝の言葉は何よりも優先される言葉。 通常の兵士ならこの言葉を聞き、鎮まれるだろう。だが、今の兵士達には、それは通用しなかった。
「聖上! 許可を! ただ許可を求めます!!」
「我が國を攻めた無法者に罰を与えるチャンスを!!」
「聖上!」
「聖上!!」
「ぐっ……」
「(だめだ。私がもう彼等を止めることが出来ない…… 人は、怒りに駆られたらここまで制御が効かぬものなのか……)」
「大将、こりゃ、面白くない雰囲気っすね。」
「……クロウ、いつでも動けるようにはしておいてください。 もしかしたら、争う事になるかもしれません。」
「ウィッス。」
**
「くそ、どうしたら良いんだ…… 」
「「若様」」
「あまり、おイタをするなら、ねじ伏せるのもいいかもしれませんね。」
「あまり怖いことを言うな!! ……今は暴走しているが、彼等は貴重な戦力だ。 無益な身内争いはしたくない。」
「お優しいんですわね。 オボロさん」
茶化すカルラ。 しかし、確かにもう武力を行使しなければこの流れは止められないだろう、と思う自分がいた。
「おと〜さん……」
「ハクオロさん……」
心配そうな目で見るエルルゥとアルルゥ。
「……っ」
自身が持つ、鉄扇の握りを強く握ぎり、出そうとした次の瞬間。
「双方そこまでだ!!」
大きな音を立て、その声が響いた。
「(今の声は、マシロ……? それになんだ? 今の音は……)」
**
マシロが立てた音は、刀を思いっきり地面に突き刺したのだ。 マシロの周りには刀を廊下に刺した事によるヒビと木の破片が辺りに飛び散っていた。
「(……さて、ここからオシュトルとして培った演説による話術と、自分の頭をフルに回転させるんだ……!!)」
「其方ら、もっと視野を広く持て。 確かに目の前に仇が来たのなら動揺し、相手を倒せる機会がある以上、倒したいという気持ちがあるのは解る。しかし、何故、こうも考えない?」
「敵国に、しかも昨日襲撃した國に逃げ込まなければいけない程の事が起きたと、なぜ想像つかない? 余程の事だと、聡明なトゥスクル兵なら解るはずだが?」
(実際のところ、敵陣に真正面から来るなんて、余程のアホか、腕に自信があるものだけだ。 それに、トウカは義を重んじるエヴェンクルガ。 敵國に居たのなら、敵國の帝を裏切ることはしないはずだ。 なればこそ……)
「某……いや、自分ならこう考える。 この逃避行は救援だと。 敵国に逃げなければいけないほどの重要な事が起きたのだと。」
マシロは当然でもあった疑問をトゥスクル兵に説いた。
兵士の多くは動揺したが、内心納得をしている者は多く無さそうな印象を受ける。 それはある意味当然ではあるが。
「其方らがそんなに気になるのであるなら、自分が彼女の事を見よう。 何、暴れるなら取り押さえるさ。」
マシロは自身が、この女の監視をすると言い放ったのだった…
キャラのセリフは台本式か名前なしどっちがいい?
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台本式
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名前なし