ガッシュペアの暗殺教室   作:シキガミ

13 / 81
時系列変更で、湿気の時間はロヴロの登場後になりました。オリジナル展開もあります。アンチ・ヘイトの要素もありますのでご注意ください。


LEVEL.13 湿気の時間

 雨の季節、梅雨の6月。教室内の湿度も高くなり、そのせいで殺せんせーが水分を吸ってふやける。律曰く、33%頭部が巨大化していたそうだ。それだけではなく殺せんせーの帽子が少し浮く。

 

「先生、帽子どしたの?」

 

そのことに気付いた倉橋が殺せんせーに質問した時、先生は自慢げに帽子を取る。

 

「よくぞ聞いてくれました。先生ついに生えてきたんです、髪が」

 

「「「「「キノコだよ‼」」」」」

 

湿気が多いからと言って頭からキノコが生えるとは、殺せんせーの体の構造はどうなっているのやら。クラス一同そんなことは知る由もなかった。

 

 

 

 

 その日の帰り道、ガッシュペアは渚、茅野、杉野、岡野の6人で帰路に着く。杉野は茅野の食べているデザートのイチゴをねだっており、渚と清麿は雑談をかわしていた為、ガッシュと岡野が隣り合って話をする。

 

「ねえガッシュ、雨の日でも裏山で特訓してたよね?大丈夫、風邪ひかない?」

 

「ウヌ、心配してくれてありがとうなのだ。しかしひなた、私は魔物ゆえ、そんな心配はいらぬぞ!」

 

雨の日でも外に出ていたガッシュを彼女は気にかけてくれる。今日の様な悪天候でも、彼は特訓をやめるつもりは一切ない。

 

「魔物って、体が丈夫なんだね……」

 

「ウヌ、その通りなのだ!」

 

「そんなこと言って、前に熱を出してた時があったじゃないか」

 

ガッシュが自信満々にしていると、渚と話してたはずの清麿が口を出す。

 

「そ、そんなこともあったかの……」

 

「ガッシュ君、無理はだめだよ」

 

ガッシュは一度熱を出してしまった事がある。そして熱を出したのにも関わらず清麿の学校に来てしまい、その日は保健室で休むことになってしまった。ガッシュがとぼけていると、今度は渚に注意をされる。

 

「E組に来て、ここまで強い雨は初めてだ。悪天候の時ガッシュがどうすれば良いか、考えないとな。……ったく、今日はその話をしようとした矢先に外に飛び出しやがって」

 

今日は雨模様の為、清麿がガッシュの外での特訓について考え直したかった。しかしガッシュは聞く耳を持たない。結局彼はこれまで通り外で特訓を行った。

 

「心配はいらぬ。今まで通りで良い」

 

「そんな事言って、風邪ひいたら特訓も出来なくなるぞ」

 

「高嶺君て、完全にガッシュ君の保護者だよね」

 

「確かに」

 

そんなガッシュペアのやり取りを見て、清麿は渚と岡野に保護者認定を受けてしまった。2人の関係は友・仲間・パートナーと色々な見方が出来るが、今の清麿は保護者のようにしか彼等の目には映らない。

 

「保護者って……」

 

「清麿、問題ないぞ。それに私は毎日特訓して、もっと強くならねばならぬからの」

 

「ったく、風邪引かんようにちゃんと体拭いとけよ」

 

「ホント、2人って仲いいよね!」

 

岡野は2人の会話を微笑ましく思う。そんな彼女がふと周りを見渡すと、前原が本校舎の女子と相合傘をしている所を見かけた。

 

「あれ、前原じゃんか。一緒にいるのは確か……C組の土屋果穂」

 

「はっはー、相変わらずお盛んだね、彼は」

 

「ほうほう」

 

岡野達が前原を見ていると、突如合羽を着た殺せんせーが姿を見せて、前原の相合傘についてメモを取る。生徒のゴシップに目がない殺せんせーだ。

 

「……アンタ、国家機密という自覚はあるのか?」

 

人目に付きかねない場所にもお構いなく出現する殺せんせーを、清麿は呆れ混じりの目線で見る。前原はイケメンで、見た目通りのジゴロな性格だ。女子にもモテており、一緒にいる異性はしょっちゅう変わるという話だ。

 

 

 

 

 そんな前原を清麿達は見ていたが、前原と土屋の方に別の本校舎の生徒達が数人近付いてきた。

 

「あれェ?果穂じゃん、何してんだよ」

 

「瀬尾君。ち、違うの、そーゆーんじゃなくて……たまたまカサが無くてあっちからさして来て……」

 

瀬尾と呼ばれた男子生徒が呼び止めると、土屋はいきなり前原を突き放して瀬尾の方へ駆け寄る。そんな土屋を見た前原は何かを悟ったように話し始めた。

 

「あー、そゆ事ね。最近あんま電話しても出なかったのも、急にチャリ通学から電車通学に変えたのも。で、新カレが忙しいから俺もキープしておこうと?」

 

「果穂、おまえ……」

 

前原の話を聞いて、瀬尾は土屋に視線を向けた。土屋は言い訳を重ねていたが、一瞬明らかに人を見下したような表情を見せた。その後、攻撃的な目線で前原を睨み付ける。

 

「あのね、自分が悪いってわかってるの?努力不足で遠いE組に飛ばされた前原君。E組の生徒は椚ヶ丘高校進めないから私達接点無くなるじゃん。E組落ちてショックかなと思ってハッキリ別れは言わなかったけど、言わずとも気付いて欲しかったなー。けど、E組の頭じゃわかんないか」

 

「「「はははは」」」」

 

土屋のみならず、周りの男子生徒達も前原をあざ笑う。そんな土屋の理不尽な主張を聞いて前原は物申そうとするが、そんな彼を瀬尾が思い切り蹴飛ばす。

 

「わっかんないかなぁ。同じ高校に行かないって事はさ、俺達お前に何したって後腐れ無いんだぜ」

 

そう言うと、瀬尾達男子生徒は前原を袋叩きにし始める。土屋は笑いながら傍観する。そんな光景を見かねた清麿達は前原の方へ向かう。

 

「お主達、何をしておるのだ⁉」

 

まずはガッシュが前原と瀬尾達の間に入り、暴力をやめさせた。

 

「前原、大丈夫か?」

 

「ほら、こういう事もあるから女遊びも程ほどにしなさい」

 

「お前等、見てたんかい……」

 

清麿が倒れている前原に手を差し伸べて立たせ、岡野は濡れてしまった前原にタオルを渡す。渚達も前原をかばうように駆け寄った。

 

「何だぁ、E組の連中が次々と……」

 

「ていうか、このチビ何?邪魔なんだけど」

 

瀬尾達がガッシュ達を睨み付けるが、ガッシュはそれを気にも留めない。彼はただ、理不尽に暴力を振るう連中が許せないのだ。

 

「お主達、なぜこのようなひどいことをするのだ⁉前原がE組だからなのか、E組には何をしても良いと思っておるのか⁉」

 

「いや、E組の奴に彼女が付きまとわれたら、普通こうするでしょ?」

 

「そうそう、E組は底辺だからね、付きまとわれたくないよね!」

 

この認識こそ、彼等にとっての普通だ。E組の生徒に対してならどんな差別も侮辱も、時には暴力でさえも許される。この常軌を逸した差別待遇も、椚ヶ丘中学校では当たり前のことである。

 

「ていうか、こいつ何なの?生意気でむかつくんだけど」

 

「関係ないなら首突っ込まないでくれる?目障りなんだが」

 

瀬尾達はガッシュを不快に思い、暴言を吐いていく。そんな連中の言葉に対して、ガッシュは怒りの感情を露わにした。

 

関係なくなどない!私は前原の友達だ‼いい加減にしろ、貴様ら‼

 

ガッシュが声を荒げて言い放ち、瀬尾達を威圧する。そんな彼等はガッシュの視線に一瞬怯んだが、再び暴言を吐き始めた。

 

「何だよ、その目は!」

 

「E組が俺達に逆らおうってのか⁉」

 

そんな連中にガッシュはさらに物申そうとしたが、今度は清麿が前に出る。そしてその時の清麿の表情は、周りを震撼させるのには十分なほど怒気に充ち溢れていた。

 

さっきから黙って聞いてりゃ、何好き勝手言ってやがんだ⁉いい加減にしやがれ、コラァ‼

 

「「「「ひ~~~~‼」」」」

 

怒りのあまり清麿の表情は、人外のそれへと変貌していた。瀬尾達は冷や汗を掻きながら体を震わせる事しか出来ない。

 

E組になら何言っても、何しても許されると思ってんのか⁉ンなわけねーだろ‼オイ、とっとと前原に詫び入れろ、詫び‼

 

「「「「ハイ、ゴメンナサイ……」」」」

 

何で俺の方向いてんだ⁉前原に謝れっつってんだろーが‼

 

清麿の気迫により、瀬尾達は完全に恐怖に支配される。先程まで好き勝手な言動を行った連中と同一人物とは思えない。彼等だけでなく前原達も清麿の気迫で言葉を失う。そんな時、

 

「やめなさい」

 

彼等の近くの道路に1台の黒い高級車が停まっており、そこから理事長が降りてきた。

 

「高嶺君とガッシュ君。あまり本校舎の生徒達に歯向かわないよう言ったのだがね」

 

「しかし、理事長殿!あの者達が前原に暴力を振るっておったのだ‼」

 

「なるほど、確かに暴力は良くない。しかしこのままでは危うく、君達は学校にいられなくなる所だったんだよ。この意味が分かるね?」

 

E組が本校舎の生徒に立ち向かうことは、理事長の理想に反する。必要とあらば邪魔な生徒を退学に追い込むことさえいとわない理事長の強い意志によって、場の支配権が清麿から理事長に移り変わろうとする。

 

「そ、そうだ!E組が俺達に逆らいやがって」

 

「謝るのはお前等の方だ!」

 

理事長の力を後ろ盾に、瀬尾達は清麿に怯えながらもどうにか反論が出来るようになった様だ。しかし、

 

あ゛ーーー⁉

 

「「「「ひ~~~~」」」」

 

鬼の如き形相の清麿の威嚇によって瀬尾達は再び恐怖し、そのまま逃げ去ってしまった。場の支配権はまだ完全には理事長に移らない。その光景を見た理事長はため息をつく。

 

「やれやれ。そういうのをやめるよう言ってるんだがね……」

 

「お言葉ですが理事長、俺達は暴力を振るわれたクラスメイトを放っておけません」

 

「ならば、先ほどのように彼等を必要以上に脅かす必要はあったのかい?」

 

「……カッとなり過ぎたのは(・・・・・・・・・・)認めます」

 

理事長は清麿をたしなめようとしたが、清麿の目は反骨精神に満ちている。そんな彼を見た理事長は、不快になるどころか口元が笑っていた。

 

「……やはり君達との会話は面白い。それに、今君達を手放すのも惜しい。ふむ、今日はこの辺にしておこうか。それでは、あまり今回のような荒事は起こさないようにね」

 

理事長はそう言って車に戻る。その場にはE組の生徒達のみが残された。

 

 

 

 

 清麿達の間には何とも言えない雰囲気が漂う。そんな中で初めに言葉を発したのは杉野だ。

 

「高嶺とガッシュ、あの理事長相手に一歩も引いてなかったな。見ててヒヤヒヤしたぞ」

 

「ホント、心臓に悪いよね。2人が退学とか勘弁だよ……気を付けてよね」

 

彼の言葉を聞いた後、ガッシュペアの退学の危機を茅野が心配してくれた。

 

「……悪い、心配かけたか」

 

「済まなかったのだ」

 

「マジそれな!俺をかばってくれたのは嬉しいけど、それでお前等が退学とかシャレになんねー。まあ、助けてくれたのはサンキューな」

 

ガッシュペアの素直な謝罪を聞いて、前原達も安心する。しかし、

 

「……けどさっきの本校舎の連中、E組相手なら何しても許されるくらいの勢いだった。俺、それ見て悲しくなったし、何より怖かったんだ。ヒトって皆、相手が弱いと見たらああなっちまうのかなって」

 

先ほどの表情とは打って変わり、前原は悲し気な顔を見せる。だが、

 

「何を言う、前原。清麿の方がよっぽど怖かったであろう」

 

「あ、ガッシュ。俺の言いたいこと言うなよ!」

 

「お前等……」

 

悲し気な表情は、清麿の鬼の形相についての話題のための前振りに過ぎない。そんな前原達に清麿は呆れるが、皆の雰囲気は明るくなる。そして笑いが出てくる。また雨も止んできており、少しではあるが日が差していた。

 

「確かに高嶺君は怖かったですねぇ。しかし、根本的に本校舎の生徒達とは違う」

 

先ほどまで姿を見せていなかった殺せんせーが出現する。安易に外を出歩いている所を理事長に見られる訳にはいかず、隠れていた。

 

「彼等は自分より弱いと判断したものにのみ、攻撃的だった。しかし高嶺君はそうではない。友達をかばうためにどのような相手にも立ち向かっていける、それは凄いことだと思います。もちろんガッシュ君や、すぐに前原君のもとへ駆けつけてくれた君達もです。暗殺を通して確実に絆が結ばれてますねぇ、ヌルフフフ」

 

殺せんせーはかなり嬉しそうだ。クラス間に絆が芽生える、先生にとってこれ程嬉しいことはそうない。

 

「そういえば前原君、怪我とかしてない?」

 

「ああ、大丈夫だぜ渚。それに今は気分も悪くない。罵倒されたり蹴られた事も、高嶺にビビりまくってた連中見てたら、もうどうでも良くなっちまった」

 

「そっか、怪我がなくて良かった」

 

ひどい目にあわされた前原だったが、どこか清々しい顔をする。他の生徒達も先ほどまでE組が罵倒されていたとは思えないような表情だ。

 

「E組って本校舎からは弱者として差別されてるけどさ、皆どこかに頼れる武器を隠し持ってるのを俺は見て来た。だから皆で色んな事に挑戦していけるんだ。そこには俺が持って無い武器も沢山あって……」

 

「そういう事です。人の能力はひと目見ただけじゃ計れない。それをE組で暗殺を通して学んだ君達は、この先弱者を簡単にさげすむ事は無いでしょう。さて、この先本校舎の生徒達を見返す機会は多くある。皆の武器をふんだんに生かして彼等にぎゃふんと言わせてやりましょう、ヌルフフフ」

 

雨降って地固まるとでも言うのか、今回の事で清麿達はクラスの絆を強く実感する。そして雨は完全に止み、空は晴れてきていた。また後日、前原が他校の女子と遊んでいたことが発覚したのは別の話である。

 

 

 

 

 その頃理事長は本校舎に戻り、自分の部屋にてある男と対面している。

 

「やれやれ、高嶺清麿とガッシュベル。あの2人はあくまで私の理想に逆らうのだろうね。困った生徒達だ。そうは思いませんか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナゾナゾ博士!」

 

「ハハハハハ、學峯君。随分と彼等相手に手を焼いているようじゃないか!」

 

理事長と話していた相手はナゾナゾ博士だった。これまで何度もガッシュペアを助け、今回はその彼等を殺せんせー暗殺のために理事長に紹介した張本人だ。

 

「手を焼いているという程でもないのですがね。ただ、彼らが私の理想とは決して相容れることは無いだろうことは非常に残念だ」

 

「ハハハ、私も彼等が誰かに屈する場面は想像出来んよ」

 

「さて、雑談はこの辺にして、本題に入りませんかね?」

 

気付けばガッシュペアの話題ばかりになっているところを理事長が遮る。

 

「そうだったね。今回はE組に暗殺のための助っ人を紹介しようと思ってね」

 

「ほう、それはどんな?」

 

理事長が尋ねると、ナゾナゾ博士は助っ人の写真を渡した。

 

「あまり強そうに見えませんがね……」

 

「見た目で判断してはいけないよ。この者もまた、何度も死線を潜り抜けているからね」

 

「となると、魔物絡みですかね?」

 

「ああ、その通りだ。最も、魔物の方は魔界に帰ってしまったがね」

 

「なるほど、いいでしょう。E組の助っ人として歓迎します」

 

ナゾナゾ博士が紹介した助っ人は、理事長の許可によってE組の暗殺の手伝いをすることになった。それがE組にどのような影響を与えるのかは定かではない。

 

 

 

 




 読んでいただき、ありがとうございました。仕返しの時間はカットです。さて、E組の助っ人は誰なのやら……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。