ガッシュペアの暗殺教室   作:シキガミ

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 鷹岡の登場回になります。よろしくお願いします。


LEVEL.19 親愛と恐怖の時間

 外の気温は上がってきているが、暑さに関係なく暗殺の訓練は行われる。しかし烏間先生の絶妙な采配により、熱中症で倒れる生徒は出ていない。烏間先生は無愛想に見られがちではあるが、生徒達のことをよく見てくれている。そんな彼はガッシュペアと対峙する。

 

「赤い本を持っているのは、より実戦に近い状況にするためだな?高嶺君」

 

「そうです。烏間先生に電撃を撃つようなことはしない。俺もガッシュも使うのは対先生ナイフだけ!」

 

「ナイフを当てて見せようぞ!」

 

清麿は本を手に持っているが、呪文は使わない。まずはガッシュが烏間先生に突撃する。ガッシュは小柄な体格とスピードを生かしてナイフを当てようとするが、彼が上手くさばくのでナイフは中々当たらない。しかし烏間先生がガッシュの攻撃を受け流す際も、清麿に対する警戒は怠らないが、

 

「ヌオオオォ、全然当たらぬのだ!」

 

「まだまだ攻撃が直線的すぎるぞ!変則的な攻撃を行うんだ!」

 

「いや、そこだ!」

 

「⁉、何と!」

 

これまで直線的な攻撃を仕掛けていたガッシュが一転、突如フェイクを入れてきた。ガッシュの身体能力を生かしたフェイクなら、対応するのは烏間先生とて容易ではない。そこで一瞬のスキが出来てしまったが、それを清麿は見逃さず、烏間先生にナイフを当てた。

 

「よし、次!」

 

次の生徒が烏間先生との訓練を開始した。

 

(高嶺清麿・ガッシュベルのコンビ、見事な連携だ。しかも2人にはナイフに加えて呪文まであるからな)

 

ガッシュペアのコンビネーションに、烏間先生は感心していた。

 

(先ほどの彼等を始め、「可能性」のある生徒が増えてきた。同じくコンビネーションで攻めてくる磯貝悠馬と前原陽人、目に悪戯心を宿す赤羽業、女生徒なら元体操部の岡野ひなた、リーチの長い片岡メグあたりが優秀だ。それ以外の生徒達も、確実に進歩している)

 

烏間先生は生徒達とナイフ術の相手をしながら、生徒達の観察と評価も欠かさない。そんな時、烏間先生は背後から強い殺気のようなものを感じ取り、後ろから攻撃を仕掛けた生徒を強く突き飛ばしてしまった。

 

「すまん、立てるか?」

 

「はい、大丈夫です……」

 

「ばっかでー、ちゃんと見てないからだ」

 

(潮田渚……気のせいか?今感じた得体のしれない気配は……)

 

突き飛ばされた生徒は渚だ。そんな彼を見て杉野が冷やかすが、烏間先生は渚に対して言い知れぬ不安を感じる。そうして今日の訓練の時間は終了した。

 

 

 

 

「烏間先生―!放課後皆でお茶してこーよ‼」

 

「……ああ。誘いは嬉しいが、この後は防衛省からの連絡待ちでな」

 

 倉橋の誘いを烏間先生は断る。私生活でもスキがない。しかしそんな先生の態度を見て、少し冷たく思ってしまう生徒もいた。

 

「烏間先生って、私達との間に壁っていうか、一定の距離を保ってるような……」

 

「厳しいけど優しくて、私達のことを大切にしてくれてるけど、でもそれってやっぱり……ただ任務だからに過ぎないのかな」

 

矢田と倉橋は寂し気に烏間先生の後姿を見る。そんな2人の話を聞いて、殺せんせーが割り込んできた。

 

「そんな事ありません。確かにあの人は先生の暗殺のために送りこまれた工作員ですが、彼にも素晴らしい教師の血が流れていますよ」

 

殺せんせーも同じ教師として、烏間先生の事をとても評価している。殺せんせーも烏間先生も、どちらも生徒を本当に大切に思ってくれる良い先生だ。

 

「ずいぶん烏間先生への評価が高いんだな、殺せんせー」

 

「もちろんです、高嶺君。このクラスの体育教師は、()()()()()()()()と思っています」

 

「やっぱり烏間先生は、良い先生だの!」

 

殺せんせー含めてE組が烏間先生の話をしていると、たくさんの荷物を抱えた大男が近付いてきた。

 

「やっ、俺の名前は鷹岡明‼今日から烏間の補佐としてここで働く!よろしくな、E組の皆!」

 

鷹岡と名乗るその男は親し気に生徒達に話しかけて、荷物の口を開ける。そこには、高級そうなケーキなどのスイーツが多く入っていた。茅野を始めとした女性陣の多くは、美味しそうなスイーツに目がくらむ。

 

「さあ、食え食え!モノで釣ってるなんて思わないでくれよ。おまえらと早く仲良くなりたいんだ。それには……皆で囲んでメシ食うのが一番だろ!」

 

そう言って鷹岡は自らもケーキを食べ始める。そして数多くのスイーツを見て、甘党の殺せんせーはよだれを垂らしていた。

 

「お~殺せんせーも食え食え‼まあいずれ殺すけどな」

 

そんな殺せんせーに対しても鷹岡はスイーツを差し出す。

 

「同僚なのに、烏間先生とずいぶん違うスね」

 

「なんか鷹岡先生、近所の父ちゃんみたいですよ!」

 

「ははは、良いじゃねーか父ちゃんで!同じ教室にいるからには、俺達家族みたいなもんだろ?」

 

木村と原の言葉に対して、鷹岡は大きな声で笑う。そして自分達は家族同然だと言って、近くにいた三村と中村の肩を組む。そんな鷹岡を、ガッシュペアは何かを疑うような目で見ていた。

 

「清麿。あの者、私達を家族だと言っておったが何か嫌な気がするのだ。上手くは言えないのだが……」

 

「そうだな、ガッシュ。あいつからはこの前のシロとはまた違う良くない感じがする。警戒が必要だろうな」

 

鷹岡を警戒していたガッシュペアだが鷹岡と視線が合う。そして鷹岡は肩を組んでいた三村と中村から離れて、スイーツの入った箱を持って2人のもとへ近付いた。

 

「よっ!お前等が理事長の推薦で転入してきた生徒達だろ?なあお前等の力、父ちゃんに見せてくれないか?実力を見ておきたいんだ!」

 

「こんにちは、鷹岡先生。お言葉ですが、俺達の力はとても危険な物です。安易に見せびらかすのは控えたい」

 

「……そっか、まあいいや!お前等も辛気臭い顔してないで、食え食え。少しは明るくなるだろ!」

 

清麿は鷹岡を信用していない。よって鷹岡に呪文を見せる事を断った清麿だったが、鷹岡は特に気にも留めずにガッシュペアにスイーツを勧めてきた。

 

 

 

 

 一方職員室では、烏間先生が部下の園川雀と鷹岡について話している。

 

「まさか鷹岡さんが暗殺の訓練を一任することになるとは。これで良かったのでしょうか?」

 

「良いも悪いも上の決定だ。従うしかない」

 

何とこれからの暗殺の訓練は全て鷹岡が行う事に決定したのだ。園川さんは怪訝な顔をしたが、上の決定に逆らう訳にはいかない。

 

「防衛省での鷹岡さんの評判、あんまり良くないんですよね。悪い話もかなり聞きます。大丈夫だとは思いますが、我々も極力生徒達を見守ってた方がいいかもしれません」

 

「……そうか。俺も鷹岡の事は調べておく。今は様子を見よう」

 

園川さんの言葉を聞いた烏間先生は何とも言えない表情をして、外で生徒と仲良さげにしている鷹岡を見ていた。

 

 

 

 

 一方外では、倉橋と矢田がガッシュペアと話していた。

 

「ねぇガッシュちゃんと高嶺ちゃん。これからの訓練、あの人が全部担当するらしいよ?」

 

「……そうみたいだな。鷹岡の指導で皆の調子が狂わなければ良いんだが(どうもあの人は嫌な感じがするんだよな)」

 

「私は烏間先生が良いぞ……」

 

「ねー、私も烏間先生じゃなくなるのは嫌だな~」

 

清麿は教官が変わる事による不和を恐れており、鷹岡自身に対する警戒を強めていた。またガッシュと倉橋は、担当が烏間先生でなくなるのを残念がる。特に倉橋は烏間先生に気があり、その落胆は一段と大きい。

 

「んー、でも鷹岡先生も悪い人には見えないけどなー。案外楽しい訓練になるかも。実際始まらないと何とも言えないけど……」

 

一方で矢田は鷹岡の訓練も悪くないのではと考える。現状鷹岡も生徒達に親しみを持とうとしてくれている。清麿達がそんな話をしていると、鷹岡が近寄ってきた。

 

「何だぁ、父ちゃんに隠れて内緒話か?」

 

「!……そんなんじゃないよ~、鷹岡先生」

 

「さっきのデザート、とっても美味しかったです」

 

「そうだろそうだろ!これからの訓練は厳しくなると思うが、また美味いもん食わしてやるから」

 

鷹岡の突然の出現に驚いたガッシュペア。彼等が返答に困っていると倉橋と矢田が愛想よく鷹岡をはぐらかしてくれた。そのおかげでその場は事なきを得て、鷹岡は上機嫌なままその場を離れた。

 

「明日以降、どうなってしまうのかの……」

 

(ここで【答えを出す者】(アンサートーカー)を使えば鷹岡の本性を見抜けるのだが、まだ安定してないからな。しかし万が一の事態になれば、使うしかない!)

 

清麿は、いざとなれば【答えを出す者】(アンサートーカー)の使用も辞さないつもりでいた。そして彼等の不安は見事に的中してしまう。

 

 

 

 

 翌日、遂に鷹岡の指導が開始された。当初は烏間先生が訓練の担当から外れる事に対して不満げに思う生徒もいた。しかし鷹岡は父親のようなフレンドリーな態度で確実に生徒の心を掴んでいく。そんな様子を烏間先生は職員室から見ており、安心したような表情をする。

 

(確かに鷹岡の事を調べた結果良くない噂も聞いたが、見た限りでは軍隊とちゃんと区別も出来ている。あれなら大丈夫そうだ……俺のやり方が間違っていたんだろうか?プロとして一線を引いて接するのではなく、あいつのように家族の如く接した方が……)

 

烏間先生はそう思いながら、軍隊での鷹岡とその部下達の仲の良さそうな写真を眺めていた。

 

 

 

 

 その一方で鷹岡は、自分が新たに担当になるという事で訓練内容も変更してもらったことを生徒達に話し、新たな時間割を生徒達に配布した。

 

「訓練内容の一新だ。厳しくはなるが、一緒に頑張ろうな!」

 

しかし、その時間割を見た生徒達は顔色を変えた。それも無理はない。なぜなら授業の半分以上は訓練の時間となっており、月~金曜日までは夜九時まで訓練が行われるのだから。

 

「このぐらいは当然さ、理事長にも話して承認してもらった。“地球の危機ならしょうがない”って言ってたぜ」

 

鷹岡は昨日までと変わらないフレンドリーな表情で話を進める。そんな鷹岡の表情が、より生徒達の恐怖心を煽る。その時、前原が物申そうと立ち上がる。

 

「……無理だぜこんなの‼勉強の時間これだけじゃ成績落ちるよ!理事長も()()()()()承諾してんだ‼」

 

「よせ、前原!今口答えをしてはいかん‼」

 

鷹岡に反論するために前に歩み寄る前原を、清麿が制止する。清麿は【答えを出す者】(アンサートーカー)を使い、これ以上前原が鷹岡に逆らうと大変な事になるという答えを出していた。清麿は不安定ながらも、どうにか【答えを出す者】(アンサートーカー)を発動出来た。ところがそんな事を知る由もない前原は、清麿の制止を振りほどいて更に鷹岡に近付く。

 

「何言ってんだ高嶺!こんな時間割じゃあ遊ぶ時間もねーし、出来るわけねーだろ、こんなの‼」

 

「やめろぉ‼」

 

清麿の制止も空しく、前原は鷹岡に頭を掴まれ、そのまま腹を蹴られた。前原に鷹岡が暴力を振るおうとしても、清麿がいる距離では止めることが出来ないという答えを、【答えを出す者】(アンサートーカー)は出していた。そして悶絶する前原に対しては、磯貝・岡野・ガッシュが駆け寄る。

 

「“できない”じゃない。“やる”んだよ。言ったろ?俺達は“家族”で、俺は“父親”だ。世の中に、父親の命令を聞かない家族がどこにいる?」

 

鷹岡の目は狂気に満ちていた。

 

「まあ、厳しいけど頑張れよ!終わったらまた美味いスイーツ食わしてやるからよ!」

 

これが鷹岡の教育方針だ。暴力でとことん恐怖を味合わせる恐怖(ムチ)、それが終わった後にはわずかな親愛(アメ)。こうして部下を洗脳し、自分に忠実な兵士を今まで作り上げてきた。これこそが彼の本性だ。鷹岡の表した本性によって多くの生徒達が恐怖する。しかし、

 

「お主、どういうつもりなのだ‼」

 

ガッシュは鷹岡を睨みつける。

 

「あ?罰だよ罰。父親に逆らった事に対するな。あと、父ちゃんに向かって“お主”呼ばわりはねーんじゃねーか、チビ?」

 

前原に暴力を振るった事に対して、鷹岡は悪びれる様子も無い。さらにガッシュのお主呼びを咎めて来る。

 

「何が父親だ!アンタは恐怖で俺達を束縛しようとしているだけじゃないか‼」

 

「ああ?お前か。そーいや昨日から俺を警戒してたっけなぁ。理事長からの推薦か知らんが、俺に逆らうとどーなるか教えてやるよ!」

 

鷹岡は清麿の方に近付き、思い切り殴ろうとする。しかし、その一撃はかわされる。攻撃をかわした清麿に対して鷹岡は今度は蹴りを入れようとしたが、【答えを出す者】(アンサートーカー)を使用した清麿がこれを回避するのは容易だった。

 

「(コイツ、俺の二段攻撃をかわしただと⁉)テメェ、調子に……⁉」

 

攻撃がよけられた事が気に食わない鷹岡は清麿に暴言を吐こうとするが、鷹岡を睨みつける清麿の気迫に怯んでしまった。

 

「(何だこの気迫は⁉ただの中学生がこんな……)ふっ、まぁいい。俺のやり方が気に入らないなら、出てけばいいだけだからな!その時は俺の権限で新しい生徒を補充する」

 

清麿に怯みながらも、鷹岡はそう言い放つ。

 

「ガッシュ!(赤い本を持ってきてくれ!)」

 

「ウヌ!(本を持ってくるのだな)」

 

清麿はアイコンタクトで、ガッシュに赤い本を持ってこさせる。清麿は初めから鷹岡を信用しておらず、ガッシュが魔物であることがばれない様注意していた。そのために本も教室において来ていたが、これ以上暴力を振るおうとする鷹岡を止めるために、呪文の使用を決意した。

 

「けどなぁ、俺はそんな事をしたくないんだ。お前等大事な家族なんだからな。家族みんなで地球の危機を救おうぜ‼」

 

清麿の気迫に驚いていた鷹岡は平常心を取り戻す。そして初めてE組と会った時と同じくフレンドリーな表情で生徒達に声をかける。そんな鷹岡は清麿から離れて、今度は神崎の頭に手を乗く。

 

「な?おまえは父ちゃんについてきてくれるよな?」

 

神崎は怯える。鷹岡から目を逸らして、細身な体を震わせていた。それでも、

 

「は、はい。あの……私は嫌です。烏間先生の授業を希望します!」

 

彼女は言い切った。体を震わせながらも、体中に冷や汗をかきながらも、恐怖に抗い、自分の意見を口にした。そんな神崎を見た鷹岡は口元に笑みを浮かべて、彼女を殴ろうとした。しかし鷹岡は後ろから強い怒気を感じ取る。そして鷹岡は肩を叩かれ、後ろを振り向いた。

 

てめェ、いい加減にしやがれ‼

 

鷹岡の後ろには、鬼の如き表情をした清麿が立っていた。

 




 読んでいただき、ありがとうございました。清麿の気迫なら、鷹岡をビビらせてもおかしくないでしょう。
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